26 / 53
第四章・予期せぬ告白
26・最期の言葉(※少々暴力的な表現あり)
しおりを挟む
瀕死のロリーはゴボッと血を吐いて、だけど薄ら目は開いている状態。頭からの出血と、それから手足の擦り傷。着ていた服は衝突された衝撃の為か、ズタズタになっている。そして足首は骨折しているらしく、有り得ない方向に曲がっていて…
──ああ、どうしよう!意識はあるの?
「誰か!早く医者を呼んで下さい。それに警備兵も!」
イーゴリがそう声を掛け、周りにいた人達が焦りながら駆けて行く。そしてロリーを跳ね飛ばした馬を懸命に抑える人達。その中にはスチワートもいて、イーゴリも駆け付けようとしている。
その場は騒然とし、慌ただしく動き回る人達の中で、私だけがロリーの側にいる。そして…
「気を確かに、ロリー!直ぐにお医者様が来るからね?大丈夫…大丈夫だから!」
懸命にそう伝えて、医者はまだなのかと焦りが募る。すると通りの向こう側から白衣を着た人物が、こちらへと走って来るのが見える。
「お医者様よ、ロリー!きっと元気になるからね?もう少しの我慢だから」
相変わらず目は開いているけど、朦朧としている表情のロリー。意識があるのかないのかも判断出来ない…
「先生、早くこちらに!」
そう叫びながらロリーの手を上からそっと触れる。怪我をしているかも知れないから、ぎゅっと握れないのがもどかしい!だけど少しでも安心して欲しいから。すると…
「ゴボッ…わ、私が…間違、ってたわ。あの…子を信じる…んじゃなかった。私…が言いたかった、の…は、ノート…ン、伯爵…様が、ご、存じなこ…と。だけど、あの子…シン、シアを信用…しないで!悪魔…よ、あ…の子は」
──シンシアが悪魔…ですって?
どういうことなの?それに言いたかったことはお父様が知ってるって。確かに私だけが知らない…って言っていたから、お父様とお兄様はご存知のことなんだと思ってはいたけど。それだけじゃないってこと?
「そ、れに…伯爵…さ、まは騙され…て、いる。エ、リカの…ゴブッ!」
何とかそう伝えて、大量の血を吐くロリー。流石の私も恐ろしくて、咄嗟に後ずさる。その時医者が駆け付けてくれたけど、ロリーはもうぐったりとしていた。そしてほぼ身動きさえもなくて…
それから人々に担架に乗せられたロリーは、急いで運ばれて行く。その傍らでは、呆然と立ち尽くす私が…
分からなくなっていた…お父様は全て知っていて、かつ騙されているという言葉。そしてロリーの言うところによる『シンシアは悪魔』という言葉。何かを企んでいるってことなの?おまけにロリーが最後に言ったのは、シンシアの母親の名前…エリカ。
「おい、フレデリカ!大丈夫か?あの馬やっぱりおかしいぜ、薬か何かを盛られたんじゃないかな…」
「俺もそう思います。明らかに正気じゃなかった!ここは危険です…一旦領主城に戻りましょう」
馬をやっとのことで捕獲し、これ以上の騒動を防いだ二人。そしてその馬の様子がおかしいと言う…それって、誰かがワザとってこと?何が何だか分からなくなる。
「皆様、もう行きましょう。ロリーさんには申し訳ないですが、恐ろしくてこんなところにはいられません!」
そういえば姿を見せなかったオリアナは、カフェの隅でブルブルと震えいた。まだ年若いメイドだもの…怖くて当然だわ。そんな状態のオリアナを放っておく訳にもいかず、私達はその混乱の場を後にした。ロリーの無事だけを祈りながら…
──その翌日。
「フレデリカ、悪い報せだ…ロリーが亡くなったよ」
そんなスチワートの報せに絶句する!ロ、ロリーが…亡くなった?
「どうしよう…私が訪ねて行ったから?そんなのって!」
わあぁと叫び泣き出した私。それに驚いたスチワートは、優しく身体を抱き締めてくれる。その温かな胸で泣きじゃくりながら、己の行動を後悔する私が…
「フレデリカのせいなんかじゃない!あの馬をあんなにした奴のせいだ。そして元々はあのロリーの発言から始まったこと…自分のせいだなんて思っちゃいけないよ?」
それに泣きながらコックリと頷く。だけど…
いろんな偶然が重なって起きた今回の不幸。やはり責任を感じてしまう…ひとしきり泣いて、スチワートの逞しい胸に包まれていると、落ち着いてくる私が。それからロリーの最期の言葉をスチワートにも伝える。すると…
「それって、どういう意味だ?やっぱり全てがノートン伯爵とシンシアに繋がっている。フレデリカ、一度父親と会ってみてはどうだろう。君の気持ちも分かるけど、このままでいいとは思えない…そうだろ?」
私もあれから、そのことが頭の中をグルグル回っている。どう考えてもお父様に聞く必要がある!その上でシンシアがどう動くのか…
「そうね、そうする!お母様にロリー…関わって亡くなった人までいるのに、黙ってなんていられないわ」
そう決意する私に、スチワートは大きく頷いている。そして…
「うん!その時は俺も同席するから大丈夫だよ。それとさ、今回の騒動って…どう思う?」
「どう思う…とは?」
スチワートの言いたいことって何だろうと考える。暴走する馬に、そして亡くなったロリー。もしかしてその二つが、同じ理由から起きたことだっていうの?
「どう考えても、偶然とは思えないんだ!俺達が偶然訪ねた日に、本来起こるはずのない馬の暴走…それに被害者はロリー。そんな偶然は普通有り得ない。何か裏に隠されている気が…だから被害者は俺達だった可能性もある」
「ええっ、私達が狙われていたのかも知れないってこと?そんな馬鹿な…」
そう言ってしまって思い出すのは、あの時タイミングよく走って来る馬。もしも私達が来ないロリーに痺れを切らして、店を訪ねてみようと通りを渡った可能性もある。ほんの少しの差だけで、私が死ぬことだって…
「そうよ!きっと裏がある…だから私も一緒に行くことにする。帝国の首都なんて何十年かぶりだけれど、それでも大事な姪と妹も関わっていること…黙っていられないわ!」
そんな声に驚き振り返ると…伯母様!その目には一切の迷いはないように見える。それなら…
「ええ、是非伯母様にも一緒に行って欲しいです。そして私は、何を聞いたとしても挫けることはありません。私には伯母様やスチワート…大事な人達が付いていますから!」
こうして私達は、早速領主城を出発した。約半年ぶりのノートン家の家族達…少し会うのは怖いけど、きっと大丈夫…皆がいてくれるから!
──ああ、どうしよう!意識はあるの?
「誰か!早く医者を呼んで下さい。それに警備兵も!」
イーゴリがそう声を掛け、周りにいた人達が焦りながら駆けて行く。そしてロリーを跳ね飛ばした馬を懸命に抑える人達。その中にはスチワートもいて、イーゴリも駆け付けようとしている。
その場は騒然とし、慌ただしく動き回る人達の中で、私だけがロリーの側にいる。そして…
「気を確かに、ロリー!直ぐにお医者様が来るからね?大丈夫…大丈夫だから!」
懸命にそう伝えて、医者はまだなのかと焦りが募る。すると通りの向こう側から白衣を着た人物が、こちらへと走って来るのが見える。
「お医者様よ、ロリー!きっと元気になるからね?もう少しの我慢だから」
相変わらず目は開いているけど、朦朧としている表情のロリー。意識があるのかないのかも判断出来ない…
「先生、早くこちらに!」
そう叫びながらロリーの手を上からそっと触れる。怪我をしているかも知れないから、ぎゅっと握れないのがもどかしい!だけど少しでも安心して欲しいから。すると…
「ゴボッ…わ、私が…間違、ってたわ。あの…子を信じる…んじゃなかった。私…が言いたかった、の…は、ノート…ン、伯爵…様が、ご、存じなこ…と。だけど、あの子…シン、シアを信用…しないで!悪魔…よ、あ…の子は」
──シンシアが悪魔…ですって?
どういうことなの?それに言いたかったことはお父様が知ってるって。確かに私だけが知らない…って言っていたから、お父様とお兄様はご存知のことなんだと思ってはいたけど。それだけじゃないってこと?
「そ、れに…伯爵…さ、まは騙され…て、いる。エ、リカの…ゴブッ!」
何とかそう伝えて、大量の血を吐くロリー。流石の私も恐ろしくて、咄嗟に後ずさる。その時医者が駆け付けてくれたけど、ロリーはもうぐったりとしていた。そしてほぼ身動きさえもなくて…
それから人々に担架に乗せられたロリーは、急いで運ばれて行く。その傍らでは、呆然と立ち尽くす私が…
分からなくなっていた…お父様は全て知っていて、かつ騙されているという言葉。そしてロリーの言うところによる『シンシアは悪魔』という言葉。何かを企んでいるってことなの?おまけにロリーが最後に言ったのは、シンシアの母親の名前…エリカ。
「おい、フレデリカ!大丈夫か?あの馬やっぱりおかしいぜ、薬か何かを盛られたんじゃないかな…」
「俺もそう思います。明らかに正気じゃなかった!ここは危険です…一旦領主城に戻りましょう」
馬をやっとのことで捕獲し、これ以上の騒動を防いだ二人。そしてその馬の様子がおかしいと言う…それって、誰かがワザとってこと?何が何だか分からなくなる。
「皆様、もう行きましょう。ロリーさんには申し訳ないですが、恐ろしくてこんなところにはいられません!」
そういえば姿を見せなかったオリアナは、カフェの隅でブルブルと震えいた。まだ年若いメイドだもの…怖くて当然だわ。そんな状態のオリアナを放っておく訳にもいかず、私達はその混乱の場を後にした。ロリーの無事だけを祈りながら…
──その翌日。
「フレデリカ、悪い報せだ…ロリーが亡くなったよ」
そんなスチワートの報せに絶句する!ロ、ロリーが…亡くなった?
「どうしよう…私が訪ねて行ったから?そんなのって!」
わあぁと叫び泣き出した私。それに驚いたスチワートは、優しく身体を抱き締めてくれる。その温かな胸で泣きじゃくりながら、己の行動を後悔する私が…
「フレデリカのせいなんかじゃない!あの馬をあんなにした奴のせいだ。そして元々はあのロリーの発言から始まったこと…自分のせいだなんて思っちゃいけないよ?」
それに泣きながらコックリと頷く。だけど…
いろんな偶然が重なって起きた今回の不幸。やはり責任を感じてしまう…ひとしきり泣いて、スチワートの逞しい胸に包まれていると、落ち着いてくる私が。それからロリーの最期の言葉をスチワートにも伝える。すると…
「それって、どういう意味だ?やっぱり全てがノートン伯爵とシンシアに繋がっている。フレデリカ、一度父親と会ってみてはどうだろう。君の気持ちも分かるけど、このままでいいとは思えない…そうだろ?」
私もあれから、そのことが頭の中をグルグル回っている。どう考えてもお父様に聞く必要がある!その上でシンシアがどう動くのか…
「そうね、そうする!お母様にロリー…関わって亡くなった人までいるのに、黙ってなんていられないわ」
そう決意する私に、スチワートは大きく頷いている。そして…
「うん!その時は俺も同席するから大丈夫だよ。それとさ、今回の騒動って…どう思う?」
「どう思う…とは?」
スチワートの言いたいことって何だろうと考える。暴走する馬に、そして亡くなったロリー。もしかしてその二つが、同じ理由から起きたことだっていうの?
「どう考えても、偶然とは思えないんだ!俺達が偶然訪ねた日に、本来起こるはずのない馬の暴走…それに被害者はロリー。そんな偶然は普通有り得ない。何か裏に隠されている気が…だから被害者は俺達だった可能性もある」
「ええっ、私達が狙われていたのかも知れないってこと?そんな馬鹿な…」
そう言ってしまって思い出すのは、あの時タイミングよく走って来る馬。もしも私達が来ないロリーに痺れを切らして、店を訪ねてみようと通りを渡った可能性もある。ほんの少しの差だけで、私が死ぬことだって…
「そうよ!きっと裏がある…だから私も一緒に行くことにする。帝国の首都なんて何十年かぶりだけれど、それでも大事な姪と妹も関わっていること…黙っていられないわ!」
そんな声に驚き振り返ると…伯母様!その目には一切の迷いはないように見える。それなら…
「ええ、是非伯母様にも一緒に行って欲しいです。そして私は、何を聞いたとしても挫けることはありません。私には伯母様やスチワート…大事な人達が付いていますから!」
こうして私達は、早速領主城を出発した。約半年ぶりのノートン家の家族達…少し会うのは怖いけど、きっと大丈夫…皆がいてくれるから!
1,197
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる