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第五章・再びの首都
30・もう一つの秘密
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「そのことは私がよく分かっていた。わざわざ御祝いに来てくれたエリカが、産後のクリスティーヌの目を盗んで、あんなことをしでかすなんて…思ってもみなかったんだ!それから妊娠し、家門を継ぐことと子供の父親を得る為に、適当に好きでもない男と結婚したと手紙がきて…」
──ガタン!
お父様がそう告白した時、後ろの方で物音がする。それで気になって振り返ると、そこには蒼白な顔で蹲るオリアナ。どうして彼女が…
「す、すみません!ちょっとショックを受けたもので…」
隣に立っていたイーゴリも心配し、震えるオリアナの顔を覗き込んでいる。どうしたのかしら…長旅だったし具合が悪くなってしまった?
それで椅子を用意してもらおうとしていると…
「エリカの夫のことかい?好きでもない適当な男…そう言ったからじゃないのかな。そして君はロリーの死にも関係している…違うか?」
それに私は何を?と振り返って、スチワートを見つめる。ちょっと待って…オリアナがロリーの死と?そんなことって!
イーゴリに支えられながら何とか立ち上がったオリアナは、ブンと勢いよく頭を下げる。そして…
「そうです!ロリーさんのことは、私に責任があるんです。でも誓って言います!亡くなるなんてそんなこと…そんな恐ろしいこと意図してなかった。見たこともない男に、私達の待ち合わせの時間を伝えただけなんです。そう指示されて…」
唇を震わせながら、そう訴えるオリアナ。それであの時、一歩も動けないくらいショックを受けていたのね?確かにショッキングな場面だった。トラウマになりそうなくらいに…
だけどそれでも、怪我をしているロリーの元に駆け付けないなんてことは有り得ない。何の役にも立てないけど、安心させてあげたり励ましてあげることだって出来たはず。そう思ったけど…
「そのことで急に怖くなった君は、一刻も早くあの場から去りたかった…そうだね?いくら何でも態度が可怪しいから、君のことを調べさせてもらったよ?辺境伯様に頼んで」
スチワートのその言葉に、私達は伯母様を見る。すると…少し淋しそうな顔をしている。それから…
「私も知らなかったから驚いたの。ずっとあなたを平民だと思っていたから。調べてまさかと思った…あなたはエリカのもう一人の娘なのね?オリアナ。そして聞かせてちょうだい!どういう経緯でメイドとして働き始めたのかを」
伯母様は悲しそうな顔を引っ込め、毅然とした表情をオリアナに向ける。当主として、それだけは聞いておかねばと思ったのでしょう。すると…
「もうご存知なのですね。そうです…私の母はエリカで、シンシアは姉です。ですが私の父は…先程伯爵様がおっしゃっていた、母が適当に選んだ男です。ですから姉とは、父親の違う姉妹なんです。一緒に暮らした記憶など、殆どありませんが…」
なんて複雑な関係…私とシンシアは異母姉妹で、オリアナとシンシアは異父姉妹…そんな馬鹿な!おまけに記憶がないって…どういうことなのだろう。
そしてオリアナは、母親の書いた手紙の内容にショックを受けたんだわ…父のことをそこまで馬鹿するなんてと。それで動揺してしまったのね…可哀想に。
「それは義父がお母様の性格に耐え兼ねて、離婚を申し入れしたからです。きっと二人の子供が生まれたらお母様も変わってくれる…そう思っていたみたいね。だけど相変わらずだったから、離婚するって言って家を出た。小さな妹だけを連れて…私はハッキリと憶えています。あの日を…」
妹だけを…シンシアが話したことは、そこだけ強調されているように感じた。自分だけ義父に置いて行かれたって、もしかして恨んでいるの?
オリアナはそんなシンシアを見つめているけど、そこに姉妹の情みたいなものは存在しないように感じる。だけどさっき、ロリーとの待ち合わせの時間を、男に知らせたって言ってたわね?それも指示されて…ということはもしや。
「私は姉と全く接点はありません。存在そのものを知らなかったのです。ですが父が亡くなり、一人ぼっちになった時、初めて知りました。時折手紙とお金を送ってくれて、感謝していました。一人で生きるのは大変でしたから。だけどある時、フラウ家に奉公に行くことを勧められたんです。そして今回のことで、私やっと分かったんです。会って欲しいと言っても、会おうともしなかった姉など…所詮他人だったんだと。困った時に利用しようと思っていただけです…あの人は!」
オリアナは蹌踉めきながらも、激しい憎悪をシンシアに向ける。やはりシンシアから指示を受けて…
「あの馬に細工した奴も見つけたんだ。イーゴリ卿話してくれ!」
スチワートのその言葉に、イーゴリは大きく頷く。そして…
「あの馬は近くの農家所有のものでした。それが盗まれたのは前日です。それから錯乱作用のある薬を盛られていました。その犯人を捕らえましたが、手紙で指示を受けたと言っています。そしてその薬物も同封されていたと」
──錯乱作用の薬を?信じられない!
「そしてカフェにいるオリアナに、待ち合わせ時間を聞きに行ったらしい。そして指示通り時間よりも少し遅らせて馬を放った…もちろん薬を盛った後に」
少し…遅らせて?それってどういう意味なのかしら。それじゃあ、ワザと遅くしたことになるけど。
「あの日、ロリーの働いている食堂には騒ぎを起こした男がいた。その対応でロリーは、待ち合わせの時間を守れなくなった。そうなったらどうなる?ロリーを見た途端、普通は逃げるつもりかと慌てて近付くのが普通だ。機転を利かせたイーゴリ卿が事前に様子を見に行ってなかったとしたら、間違いなく俺達が危なかったんだ!死んだのは君だったのかも…フレデリカ」
スチワートの言葉に愕然とする。やはり私なの?狙いは私達だったなんて!そしてそう指示した者は聞かなくても分かる。あなたなのね?シンシア…
──ガタン!
お父様がそう告白した時、後ろの方で物音がする。それで気になって振り返ると、そこには蒼白な顔で蹲るオリアナ。どうして彼女が…
「す、すみません!ちょっとショックを受けたもので…」
隣に立っていたイーゴリも心配し、震えるオリアナの顔を覗き込んでいる。どうしたのかしら…長旅だったし具合が悪くなってしまった?
それで椅子を用意してもらおうとしていると…
「エリカの夫のことかい?好きでもない適当な男…そう言ったからじゃないのかな。そして君はロリーの死にも関係している…違うか?」
それに私は何を?と振り返って、スチワートを見つめる。ちょっと待って…オリアナがロリーの死と?そんなことって!
イーゴリに支えられながら何とか立ち上がったオリアナは、ブンと勢いよく頭を下げる。そして…
「そうです!ロリーさんのことは、私に責任があるんです。でも誓って言います!亡くなるなんてそんなこと…そんな恐ろしいこと意図してなかった。見たこともない男に、私達の待ち合わせの時間を伝えただけなんです。そう指示されて…」
唇を震わせながら、そう訴えるオリアナ。それであの時、一歩も動けないくらいショックを受けていたのね?確かにショッキングな場面だった。トラウマになりそうなくらいに…
だけどそれでも、怪我をしているロリーの元に駆け付けないなんてことは有り得ない。何の役にも立てないけど、安心させてあげたり励ましてあげることだって出来たはず。そう思ったけど…
「そのことで急に怖くなった君は、一刻も早くあの場から去りたかった…そうだね?いくら何でも態度が可怪しいから、君のことを調べさせてもらったよ?辺境伯様に頼んで」
スチワートのその言葉に、私達は伯母様を見る。すると…少し淋しそうな顔をしている。それから…
「私も知らなかったから驚いたの。ずっとあなたを平民だと思っていたから。調べてまさかと思った…あなたはエリカのもう一人の娘なのね?オリアナ。そして聞かせてちょうだい!どういう経緯でメイドとして働き始めたのかを」
伯母様は悲しそうな顔を引っ込め、毅然とした表情をオリアナに向ける。当主として、それだけは聞いておかねばと思ったのでしょう。すると…
「もうご存知なのですね。そうです…私の母はエリカで、シンシアは姉です。ですが私の父は…先程伯爵様がおっしゃっていた、母が適当に選んだ男です。ですから姉とは、父親の違う姉妹なんです。一緒に暮らした記憶など、殆どありませんが…」
なんて複雑な関係…私とシンシアは異母姉妹で、オリアナとシンシアは異父姉妹…そんな馬鹿な!おまけに記憶がないって…どういうことなのだろう。
そしてオリアナは、母親の書いた手紙の内容にショックを受けたんだわ…父のことをそこまで馬鹿するなんてと。それで動揺してしまったのね…可哀想に。
「それは義父がお母様の性格に耐え兼ねて、離婚を申し入れしたからです。きっと二人の子供が生まれたらお母様も変わってくれる…そう思っていたみたいね。だけど相変わらずだったから、離婚するって言って家を出た。小さな妹だけを連れて…私はハッキリと憶えています。あの日を…」
妹だけを…シンシアが話したことは、そこだけ強調されているように感じた。自分だけ義父に置いて行かれたって、もしかして恨んでいるの?
オリアナはそんなシンシアを見つめているけど、そこに姉妹の情みたいなものは存在しないように感じる。だけどさっき、ロリーとの待ち合わせの時間を、男に知らせたって言ってたわね?それも指示されて…ということはもしや。
「私は姉と全く接点はありません。存在そのものを知らなかったのです。ですが父が亡くなり、一人ぼっちになった時、初めて知りました。時折手紙とお金を送ってくれて、感謝していました。一人で生きるのは大変でしたから。だけどある時、フラウ家に奉公に行くことを勧められたんです。そして今回のことで、私やっと分かったんです。会って欲しいと言っても、会おうともしなかった姉など…所詮他人だったんだと。困った時に利用しようと思っていただけです…あの人は!」
オリアナは蹌踉めきながらも、激しい憎悪をシンシアに向ける。やはりシンシアから指示を受けて…
「あの馬に細工した奴も見つけたんだ。イーゴリ卿話してくれ!」
スチワートのその言葉に、イーゴリは大きく頷く。そして…
「あの馬は近くの農家所有のものでした。それが盗まれたのは前日です。それから錯乱作用のある薬を盛られていました。その犯人を捕らえましたが、手紙で指示を受けたと言っています。そしてその薬物も同封されていたと」
──錯乱作用の薬を?信じられない!
「そしてカフェにいるオリアナに、待ち合わせ時間を聞きに行ったらしい。そして指示通り時間よりも少し遅らせて馬を放った…もちろん薬を盛った後に」
少し…遅らせて?それってどういう意味なのかしら。それじゃあ、ワザと遅くしたことになるけど。
「あの日、ロリーの働いている食堂には騒ぎを起こした男がいた。その対応でロリーは、待ち合わせの時間を守れなくなった。そうなったらどうなる?ロリーを見た途端、普通は逃げるつもりかと慌てて近付くのが普通だ。機転を利かせたイーゴリ卿が事前に様子を見に行ってなかったとしたら、間違いなく俺達が危なかったんだ!死んだのは君だったのかも…フレデリカ」
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