【完結】私が一人で死んだ夜。だからあなたを、捨てることにしますね?

MEIKO

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第六章・過去の亡霊

35・憶測と確信

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 いつもはとっても優しいスチワート。だけど今は相当に声を荒らげている…どうしたの?二人で何を話しているのかしら。そしてさっき聞こえた私の名前…フレデリカと。

 死に戻り前での夫であるエズラと、今私が一番大切に思っているスチワート。そんな二人が言い争うなんて…
 自分の名前が出たことで臆してしまい、リビングに入ることが出来ずに立ち尽くしている。更に二人は…

 「どうしてなんだ?何故フレデリカを巻き込む」

 「俺だってそんなつもりはない…だけど分かるだろ?俺達二人がそれを一番分かっている筈なんだ」

 とてもよく似ている二人の声…だけど私はその違いを聞き分けられる。私を巻き込むな…と言っているのがエズラで、そんなつもりはないと言っているのがスチワート。私は何に巻き込まれているの?そんなの全く思い当たらない。だけど待って…あることに違和感を感じてしまう。これってどういうことかしら?

 ──何だか可怪しい。今はエズラとは、殆ど関係性はない。それなのにその言い方?

 おまけにスチワートが言っているの意味。それって二人と私が、密接に関係があるというような含みがある。もちろん私だけはその記憶があり、それが間違いないことは分かってる。だけど…それを知るのは私だけだったはずなのに。違うの?

 ──ドサリ。

 訳が分からなくなって、思わず手に持っていた上着を落としてしまう。それに気付いた二人はこちらを振り返って…

 「フレデリカ!」

 二人の声が嘘のように揃う。声だけでなく、見た目も似ている兄弟。特にこの帝国では珍しい艶のある黒髪…そんな二人が、驚きの眼で私だけを見つめている。

 「帰って来ていたんだね、早く声を掛けてくれたら良かったのに。そもそも追い出すようになってごめん!」

 スチワートは微笑みながら、そう言って私に近付いてくる。だけど後ろ暗い気持ちがあるのか、キョロキョロと視線が定まっていない。そんなスチワートには、こちらも落ち着かない気持ちになってしまう。

 「さあ、そんなとこに立ったままで居ないで、こっちに来たらいいよ」

 無理矢理笑顔を作り、それから私の手をぎゅっと握るスチワート。だけど少し冷たい!緊張しているのね?いつもは温かいのにと複雑な思いになる。
 これ以上困らせたくはない私は、大人しく付いて行くことにした。そして私自身、頭の中の整理がついていない。そしてリビングにいたエズラの前まで来ると…

 「ありがとう、フレデリカ嬢。おかげでゆっくり話が出来たよ。それじゃあ俺はそろそろ帰ることにする。ではまたな、スチワート」

 そう言ってエズラはクルリと踵を返す。迷いもなく歩き出そうとしているエズラは、私と一度も目を合わせることはなかった。

 「えっ…」

 自分でも予想外。何を思ったか私は、意外な行動を取ってしまう。思わずといった感じで…

 「ど、どうかしたのか?」

 先程までとは違い、私と目をしっかり合わせるエズラ。その大きな手は私の手と繋がっている。
 私は自分自身の行動が分からないでいた…どうして引き留めるような真似をしてしまったのかを!

 「どうして、どうしてなの。あなたはデビュタントで、私の父…ノートン伯爵に掴みかかったと聞いたわ。それは一体何故なの?」

 前からそれが気になっていた。そのことを聞いた時から心に芽生えたある疑惑。この人と夫婦だった時、話したことがあった。デビュタントで、シンシアとドレスを交換させられたことを…
 
 あの時はろくに返事もせず、聞いていたのかさえも定かじゃなかった。だからそれがどういう意味なのかまるで見当もつかなかったけど…もしやそれは!

 「あ…ちょっといざこざがあっただけだ。だから君とは一切関係はない。気にしなくて大丈夫だ」

 特徴的な蒼い瞳は揺らめいて、何かを誤魔化そうとしているのが分かる。そんなの私にはお見通しなの…そんな態度を取ろうとすればするほど、私の推測が確かな裏付けな気がする。

 「エズラ…あなたは記憶があるのね。かつてあなたは私の夫で、ある日突然私は死んだ…それを憶えているんじゃない?」

 「っ!ああ、君は…」

 目を見開いて私に向ける視線。それからグニャリと顔の片側を崩したエズラは、目を細め泣きそうな顔をする。そんな表情など見たことがないから…ドキリとしてしまう。

 震えながら私にと差し出される手…剣ダコが出来た無骨な指は、真っ直ぐに私に向かって伸びている。ブワッと溢れる涙…これはどういった涙なの?自分でも全然分からない!だけどその手を取らなきゃと…

 ──パシッ!

 横からいきなり、エズラの手を払ったのはスチワート。心なしか怒っているように見える。それにどうしたらいいのかと、出した手を引っ込める私。すると…

 「俺が説明するよ…君に起こった全てのことを」

 「す、全てを?」

 ここにきて判明した秘密。戻ったのは私だけではなかった!今私がここにいる意味は…何なの?
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