【完結】私が一人で死んだ夜。だからあなたを、捨てることにしますね?

MEIKO

文字の大きさ
42 / 53
最終章・私を呼ぶ声

42・告白

 ああ私は、二度もこの人に恋してしまったんだわ。あんな酷い結婚生活に疲れ果てて、もう二度と結婚しないって思ってた。それでもスチワートと出逢って、もう一度だけって…もう一度だけこの人を信じてみようって思っていたのに。何故なの?

 そしてまだ現実が受け入れられない私…そんなのは無理!
 柔らかい笑顔…こんなの知らない!おまけに貴族の見本のような厳しい口調だったあの人が、こんなに朗らかにしゃべるなんてことある?そして驚くべきことに、死に戻ったのは十七年も前だなんて…

 「信じられないのも無理はない。俺だってそうだった…大人だった筈の自分が、気付いたら子供に戻っていたんだからね。だけど…それこそが俺に科せられた罰だと思ったんだ。君を一人で死なせた罪の…」

 私が死んだ時、魂のままで辺りを彷徨っていた。そしてこの人が帰ってきたのに、まるで私に関心がないのを絶望し、あれからどうしたのかは見届けてはいない。どうせ淡々と葬儀の準備をし、さほど哀しむこともないまま見送られるのだろうと…そうじゃなかったってこと?

 「俺は十歳に戻って、自分のやるべきことをすることにした。不幸にしてしまった君やスチワートに、少しでも償おうとしたんだ!自ら錬金術師となって…」

 ああ、そうだわ…一つ目の違和感の正体は錬金術の力!何の能力もなかったのに、どうして今は力を使えているの!?

 「その能力はどうやって?前のあなたはそんな力はなかったわ。それなのに死に戻ったところで、そんなのどう考えても無理よ」

 エズラはフッと自らを蔑むように笑う。それは何を意味しているのかと見つめると…

 「俺はね、ずっと前から能力があったんだ。それこそ発現するのはスチワートよりも早くに…」

 衝撃の事実!それじゃあ、私と暮していたあの時も力を持っていたことになる。どうしてそうしたのかは知らないけど、それを隠すのは並大抵ではなかった筈だわ…

 「ええっ、あなたが能力者だったってこと?それに本物のスチワートよりも早くだなんて…でもそれって」

 「そうだ…研究所に行かなければならないのは、俺の方だったんだ。そしてスチワートは本来ならロウレン家の跡継ぎになる。そんな運命を捻じ曲げてしまったのは俺だ!だから死に戻ったついでに、本来の立場に戻ることにした」

 何度か耳にしてきた兄弟の言い争い。それがこのことだったなんて…そんなの分かる筈がないわ!
 そして今私が一番気になっていることが…
 スチワートがエズラだと気付いてから、直ぐに頭に浮かんだのはこのこと。それが私にとって、理解出来ない最たるものだった。

 「これだけは聞かせて欲しい。あなたは死に戻って、それまでとは全く違う人生を歩もうとした。それならどうして私に縁談なんて持ち込んだりしたの?あなたはさっき、私に償いの意思があると言った。なのにどうして!」

 これまでずっと助けられ、そして私自身を預けようとまで。だけど私はまだ、あの頃の寂しさを忘れてはいない。誰にも頼れず、そして愛されることもない…そんな孤独だった自分を一生忘れることなんて出来ないわ!ああ、それなら…
 
 「再び出逢わなければ良かった…そう思うフレデリカの気持ちは分かっている。そう思って当然なんだ!それだけのことを俺はしてしまった。だけど…無理だったんだ。君を遠くから見守ろうと決めたけど、噂で家族から虐げられていると聞いて、せめて近くにいれたら…って思ってしまった。君のことだから縁談を断るのは勿論分かっていた。だから友達にって…」

 私の気持ちを先回りしたエズラの告白を受けた私は、ぎゅっと目を瞑る。キツく閉じて、あの虚しい日々を忘れようとする。だけど…無理だわ!

 「ごめんなさい…私、一人になりたい。心配しないでいいから!」

 そう叫んだ私は、突如この場から駆け出す。その後ろからは、私の名を呼ぶ声が聞こえて…
 だけど私は止まらず家を出た。そしてエレベーターに乗って階下まで降りると、そこには不思議そうな顔をしたコンシェルジュの人が立っている。すると…

 「どうかされましたか?フレデリカ様」

 「え、ええ!すみませんが馬車を使いたいんですが」

 そう伝えると「少しお待ち下さい」と言い、手配をしてくれている。そして暫くすると…

 「直ぐに参りますよ。ですが…その格好でお出かけでしょうか?」

 そう聞かれてハッとする。見下ろすと、室内着に足元は室内履き…そんな散々な格好だった。でも…再びエズラには会えない!今日はとてもじゃないけど無理。

 「え、ええ。少し近くまで出るだけだから…」

 そう言って誤魔化した私は、恐る恐る聞いてみることにした。

 「あのう…馬鹿なことを聞くようですが一つ尋ねてもいいかしら?スチワート・ロウレンのことだけど…」

 スチワートがエズラだったとして、名義とかその辺りはどうなっているのかと疑問に思う。なりすましとか、そういうことだったら…罪に問われることなないのかと、心配になってしまった。それでこの研究所をよく知っているだろうコンシェルジュに聞いてみることにした。すると…

 「スチワート様ですか?家門のことは存じませんが…」

 ──えっ?家門のことは知らないって、どういうことなの。

 「私ども能力を持つ者は、親兄弟から離れてここに来ています。それは平民でも貴族でも…同じなのです。力の強弱で配置されるところは違いますが、この研究所にいる全ての者が錬金術師だとも言えるのです。ですから…役職や名前のみで呼ばれることになります。コードネームといいますか…」

 全然知らなかった…そんなの。それにもしかしたら、前の記憶と混同している部分もあるのかも?きっと私の周りの全てのことが、微妙に変化していても不思議じゃないわ。スチワートという名の錬金術師がいたとして、本名など気にする人もいないってこと。そうだったのね…

 「フレデリカ様、馬車が到着致しましたよ」

 コンシェルジュの言葉に我に返り、お礼を言ってから馬車に乗り込む。この馬車は普通とは違って無人。錬金術によって創り出された馬車は、行きたいところを念じると走り出す仕掛けになっている。それから…あの屋敷を思い浮かべると、馬車は静かに走り出して…

 今となっては懐かしい。喜びも確かにあったけど、辛く悲しい場所でもある。全てのことを知った後の今では、愛しいあの子を失った場所でもあるけど…

 「ロウレンコウシャクテイ二、ツキマシタ!」

 私は今、数奇な運命の出発点ともいえるロウレン侯爵邸までやって来た。前とは違って門前払いになるかも知れない。だけど…ここに来ることしか考えられなかった。

 「あの人にも聞かなくては…」

 そう私は呟いて、ロウレン侯爵家の門を叩いた。
感想 33

あなたにおすすめの小説

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。