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最終章・私を呼ぶ声
43・あの日
「こんなところにまで、一人でよく来たね、義姉さん。兄さんからは通信器を使って連絡が来ていたよ。きっとここに来る筈だからって…」
「義姉さん…?」
意外にもすんなり屋敷内に通され、呆気にとられていた私。そして本物のスチワートは、既に偽ることを辞めていた。義姉さん…と久しぶりにそう呼ばれ、マジマジと顔を見ると、確かにエズラとは違っている。勿論似ている兄弟だとは思うけど、本人だと思い込んでいた私は、じっと見るのを避けていた…だから気付かなかったのでしょう。よくよく見れば、かなり違うのに…
それに二人が入れ違って、十七年も経っている。それに気付く人なんてまず居ないんじゃないかと思う。それこそ親でもなければ。うん…親?そういえばエズラの両親は、それに気付かなかったのかしら…また秘密の匂いが。だけどまずは…
「あなたから義姉さん…と呼ばれると、何だか落ち着かないわ。フレデリカと呼び捨てしてもらっていいから。それにしても…前とは全然違うのね?」
以前のスチワートは、言っては悪いけどヒョロヒョロとした印象だった。今のエズラの研究所での生活を思えば納得だけど、騎士となったスチワートは別人級の変化を遂げている。きっと本人も相当驚いたに違いないわ。
「そうなんだ…フレデリカ。俺は兄さんとは違って、君と同じような時期への死に戻り経験をした。だから戻った時には既に騎士になっていてビックリしちゃったよ。それに還ってきたのは、二人が縁談で顔合わせしていたノートン邸の庭園…だから一瞬あの世かと思って焦ったよ」
やはりスチワートが戻ったのはあの時…エズラが言っていたのと同じだったのね。私はその場面は見ていたなかったけど、相当焦ったようだわ。
「おまけに乗って来た馬を見た兄さんが、俺のフリなんて忘れて、二人乗りして帰ろうなんて呑気なことを言って…他のことで怒りが湧いていた俺は、悪態をつきながらいつものように消えたんだ…パチン!って。それなのに帰った先が、研究所じゃなくてロウレン侯爵邸だったことに愕然としたよ。俺の家って今はこっちなんだって…」
そんなことがあったなんてまるで知らなかった。それと同じく気になったのは、口調までは誤魔化しきれないってこと。前に会った時はエズラの話し方に近く、あれは似せていたのだと思う。だけど今はすっかり元に戻っていて…
「それは混乱したでしょうね。私は前と大差なかったから、慣れるのは早かったけど。だけど不思議なのは、戻った方が精神が優勢になるのね?勿論記憶が消える訳じゃないけど、薄くなるというか…」
それにコックリと頷くスチワート。それはやはり、皆が同じ経験をしてるみたい。それから本格的に尋ねてみようと心を決める。もう待てないから…
「申し訳ないけど、順を追って話して欲しいの。まずは私が死んだあの日のことからお願いできる?」
それまで冗談を言っていたスチワートも、私の言葉には真剣な顔に変わる。エズラからは私を生き返らせようとして…と聞いたけど、その方法すら分かってはいない。そしていよいよあの真相を知れるのだとドキドキして…
「あの日、いきなり兄さんから連絡があったんだ。通信器ってあるだろ?鳥型の…。緊急で侯爵邸に戻れというので何があったのかと慌てて戻った。そしたら…君が既に亡くなっていた。兄さんは半狂乱になっていて、意味不明なことを大声で叫んでいる。そして俺に生き返らせてくれって頼んできて…」
「えっ、それほどに動揺していたの?エズラは…」
私が思っていたこととは違う。エズラがそんな状態になっていたなんて!もしかしたら…そんなことってないわよね?
「錬金術師といっても死んだ人を生き返らせたりは出来ない。諦めて欲しいって言おうとするとある違和感が…。フレデリカのお腹の辺りに能力の片鱗が見えた。それで君が妊娠していて、その子が能力を発現したんだと気付いた。おまけに君は亡くなっていたけど、その子は完全には死んでいなかったんだ…」
──ああ、私の赤ちゃん!
ポロリと一筋流れ落ちる雫…大切な命に向けた悼み。何とか生きようと、藻掻いていたのかも知れない…本当にごめんなさい!
「それで兄さんが、時を戻そうと提案してきたんだ。だけど…俺の力だけでは、戻せてもせいぜい一週間ほど。そんなの死因が病気だったなら無意味だ。だからその案も頓挫しかけたんだ。そしたら…兄さんが思ってもみないことを告白したんだ。それは俺にとって、到底赦すことが出来ないこと…俺自身の存在意義を揺るがすことだからね」
先程までとは一転して、吐き捨てるように話すスチワート。これはエズラから聞いていた、力の発現の順番のことなの?それにしては、怒りが凄まじい。二人の間に一体、何があったの?
「義姉さん…?」
意外にもすんなり屋敷内に通され、呆気にとられていた私。そして本物のスチワートは、既に偽ることを辞めていた。義姉さん…と久しぶりにそう呼ばれ、マジマジと顔を見ると、確かにエズラとは違っている。勿論似ている兄弟だとは思うけど、本人だと思い込んでいた私は、じっと見るのを避けていた…だから気付かなかったのでしょう。よくよく見れば、かなり違うのに…
それに二人が入れ違って、十七年も経っている。それに気付く人なんてまず居ないんじゃないかと思う。それこそ親でもなければ。うん…親?そういえばエズラの両親は、それに気付かなかったのかしら…また秘密の匂いが。だけどまずは…
「あなたから義姉さん…と呼ばれると、何だか落ち着かないわ。フレデリカと呼び捨てしてもらっていいから。それにしても…前とは全然違うのね?」
以前のスチワートは、言っては悪いけどヒョロヒョロとした印象だった。今のエズラの研究所での生活を思えば納得だけど、騎士となったスチワートは別人級の変化を遂げている。きっと本人も相当驚いたに違いないわ。
「そうなんだ…フレデリカ。俺は兄さんとは違って、君と同じような時期への死に戻り経験をした。だから戻った時には既に騎士になっていてビックリしちゃったよ。それに還ってきたのは、二人が縁談で顔合わせしていたノートン邸の庭園…だから一瞬あの世かと思って焦ったよ」
やはりスチワートが戻ったのはあの時…エズラが言っていたのと同じだったのね。私はその場面は見ていたなかったけど、相当焦ったようだわ。
「おまけに乗って来た馬を見た兄さんが、俺のフリなんて忘れて、二人乗りして帰ろうなんて呑気なことを言って…他のことで怒りが湧いていた俺は、悪態をつきながらいつものように消えたんだ…パチン!って。それなのに帰った先が、研究所じゃなくてロウレン侯爵邸だったことに愕然としたよ。俺の家って今はこっちなんだって…」
そんなことがあったなんてまるで知らなかった。それと同じく気になったのは、口調までは誤魔化しきれないってこと。前に会った時はエズラの話し方に近く、あれは似せていたのだと思う。だけど今はすっかり元に戻っていて…
「それは混乱したでしょうね。私は前と大差なかったから、慣れるのは早かったけど。だけど不思議なのは、戻った方が精神が優勢になるのね?勿論記憶が消える訳じゃないけど、薄くなるというか…」
それにコックリと頷くスチワート。それはやはり、皆が同じ経験をしてるみたい。それから本格的に尋ねてみようと心を決める。もう待てないから…
「申し訳ないけど、順を追って話して欲しいの。まずは私が死んだあの日のことからお願いできる?」
それまで冗談を言っていたスチワートも、私の言葉には真剣な顔に変わる。エズラからは私を生き返らせようとして…と聞いたけど、その方法すら分かってはいない。そしていよいよあの真相を知れるのだとドキドキして…
「あの日、いきなり兄さんから連絡があったんだ。通信器ってあるだろ?鳥型の…。緊急で侯爵邸に戻れというので何があったのかと慌てて戻った。そしたら…君が既に亡くなっていた。兄さんは半狂乱になっていて、意味不明なことを大声で叫んでいる。そして俺に生き返らせてくれって頼んできて…」
「えっ、それほどに動揺していたの?エズラは…」
私が思っていたこととは違う。エズラがそんな状態になっていたなんて!もしかしたら…そんなことってないわよね?
「錬金術師といっても死んだ人を生き返らせたりは出来ない。諦めて欲しいって言おうとするとある違和感が…。フレデリカのお腹の辺りに能力の片鱗が見えた。それで君が妊娠していて、その子が能力を発現したんだと気付いた。おまけに君は亡くなっていたけど、その子は完全には死んでいなかったんだ…」
──ああ、私の赤ちゃん!
ポロリと一筋流れ落ちる雫…大切な命に向けた悼み。何とか生きようと、藻掻いていたのかも知れない…本当にごめんなさい!
「それで兄さんが、時を戻そうと提案してきたんだ。だけど…俺の力だけでは、戻せてもせいぜい一週間ほど。そんなの死因が病気だったなら無意味だ。だからその案も頓挫しかけたんだ。そしたら…兄さんが思ってもみないことを告白したんだ。それは俺にとって、到底赦すことが出来ないこと…俺自身の存在意義を揺るがすことだからね」
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