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最終章・私を呼ぶ声
44・怒りの理由
私の目から見れば、とても仲の良い兄弟だと思っていた。そしてそれは間違いなんかじゃなくて、あの時点の二人は実際そうだったのだと思う。それが……そのキッカケは恐らく私の死。私の知らないところで、何があったというの?
「まずは俺達二人の関係を話さないといけない。フレデリカはどこまで聞いているのかな?俺が父親から攫われて、無理矢理侯爵家に連れて来られた件は知ってるんだよね」
スチワートは少しだけ落ち着いたらしく、いつもの冷静な物言いに戻っている。そして今言ったことは、エズラからも聞いていたこと。だけど待って!お母様の件は、スチワートから聞いたことをそのまま自分のことのように言ってたの?それとも……
「俺がロウレン家に連れて来られた当初、兄さんは子供ながらに冷静過ぎるほどで、冷めた目で俺を見ていた。私生児の俺をそう扱うのは当然だし、それに対して何の恨みもなかった。だけど……後で知ったことだけど、兄さんも侯爵夫人の実子ではなく、亡くなった前夫人の子供だったんだ。それも愛人だった女、後の侯爵夫人から母親は追い出され、それから一人で亡くなったらしい。だから俺達二人は、非情に境遇が似通っていたんだ」
「えっ、エズラのお母様も一人でお亡くなりに?そんな……」
そんな真実に相当驚く。だけど同時に、私も同じように一人で死ななければならなかったことを数奇な運命のように感じる。エズラ、あなたは私の死を知った時、何を思って何を感じたの?母親と同じ一人で死んだ私を見て……
「兄さんはそれで、父を憎悪していたんだ。だから堅く心を閉ざしていた。そして諸悪の根源の父こそが一番、錬金術の能力に固執していた。自分の持てなかった力を己の子が発現する……そんなことを望んで、確率を上げる為に俺達を産ませた。だからね、兄さんは能力に目覚めた事実を隠すことで、父に復讐しようとしたんだ。だけど……」
ロウレン家の真実……そこまで話したスチワートは、再び悲しそうに顔を伏せる。このことが関係あるのは、きっと怒りの元……それは何なのかしら?
「ある日初めて兄さんが俺に話し掛けてきたんだ。一緒に遠乗りに出掛けようって。俺は凄く嬉しくて、二つ返事でそれを了承した。だけど……それこそが兄さんの目的だったんだ。俺に力を発現させる為に、ワザと落馬させた。そんなことを露とも知らない俺は、発現したのが兄さんじゃなくて良かったって、心からそう思った。だから喜んで研究所に行ったんだ」
ああ、そうか……何だか見えてきたように感じる。そしてエズラが言った、俺達はの意味。私を生き返らせようとしたのは二人。その時スチワートは初めて、エズラが能力があることを知ったのね?
「そうだったなら言って欲しかったんだ!それで責めたりはしないよ。それを知っても俺はきっと、喜んで研究所に行ったよ。それなのに……長年兄さんは黙っていた。結局は俺を、信じてはいないってことだろう?そしてそれが分かったのはあの時……二人の力を合わせれば、フレデリカを死に戻りさせることが出来ると、兄さんが告白した時なんだ」
ああ……結局は全てが、私の死に繋がっている。良くも悪くも怖いくらいに。そしてそれなら、スチワートの憤りも納得出来る。だけど私はまた違う感情も持ってしまう。それほどまでに秘密にしていた力を出す……それなら、あなたは私を愛していたの?それとも死んでから気付いたのか。本人に聞かなきゃ分からないけど。
「そうだったのね。それでエズラは十七年もの先の死に戻り後、全てを正そうとしたんだと思う。本来なら自分が行く筈だった研究所に行き、そしてスチワートを侯爵家の跡継ぎにと」
そう本人からは聞いていたけど、それでもスチワートから聞いたのとは印象が違う。恐らくエズラの行動は、贖罪の意味もあったんだと思う。
「だけどそんなの俺は望んでなかったんだ!死に戻り……ってひと言で言うけど、ようは時間の移動なんだ。俺はそんなことよりも、正直に言って欲しかっただけなのに。だからこっちに戻った時、余計に裏切られた気持ちになった。結局は逃げたんだろう……って」
その気持ちはよく分かるわ……私だってそう思ってしまった。死に戻り自体はお腹の子が望んでいたのかも知れないと、受け入れようと努力してきた。だけどそれとはまた別の心の深いところで、あの子と一緒にに逝ってあげたかったという想いもある。結局は一人で逝かせてしまった…
「それでフレデリカはどうするんだ?兄さんのことを再び好きになってるんじゃないかって感じるんだけど……今後はどうするのか決めたのかい」
そう聞かれてハッとする。そうだわ…私の心。スチワートだと思い込んでいた人が、エズラだったと判明した今。離れるのか、再び一緒に?私はどうしたら良いのかしら……誰か教えて!
「まずは俺達二人の関係を話さないといけない。フレデリカはどこまで聞いているのかな?俺が父親から攫われて、無理矢理侯爵家に連れて来られた件は知ってるんだよね」
スチワートは少しだけ落ち着いたらしく、いつもの冷静な物言いに戻っている。そして今言ったことは、エズラからも聞いていたこと。だけど待って!お母様の件は、スチワートから聞いたことをそのまま自分のことのように言ってたの?それとも……
「俺がロウレン家に連れて来られた当初、兄さんは子供ながらに冷静過ぎるほどで、冷めた目で俺を見ていた。私生児の俺をそう扱うのは当然だし、それに対して何の恨みもなかった。だけど……後で知ったことだけど、兄さんも侯爵夫人の実子ではなく、亡くなった前夫人の子供だったんだ。それも愛人だった女、後の侯爵夫人から母親は追い出され、それから一人で亡くなったらしい。だから俺達二人は、非情に境遇が似通っていたんだ」
「えっ、エズラのお母様も一人でお亡くなりに?そんな……」
そんな真実に相当驚く。だけど同時に、私も同じように一人で死ななければならなかったことを数奇な運命のように感じる。エズラ、あなたは私の死を知った時、何を思って何を感じたの?母親と同じ一人で死んだ私を見て……
「兄さんはそれで、父を憎悪していたんだ。だから堅く心を閉ざしていた。そして諸悪の根源の父こそが一番、錬金術の能力に固執していた。自分の持てなかった力を己の子が発現する……そんなことを望んで、確率を上げる為に俺達を産ませた。だからね、兄さんは能力に目覚めた事実を隠すことで、父に復讐しようとしたんだ。だけど……」
ロウレン家の真実……そこまで話したスチワートは、再び悲しそうに顔を伏せる。このことが関係あるのは、きっと怒りの元……それは何なのかしら?
「ある日初めて兄さんが俺に話し掛けてきたんだ。一緒に遠乗りに出掛けようって。俺は凄く嬉しくて、二つ返事でそれを了承した。だけど……それこそが兄さんの目的だったんだ。俺に力を発現させる為に、ワザと落馬させた。そんなことを露とも知らない俺は、発現したのが兄さんじゃなくて良かったって、心からそう思った。だから喜んで研究所に行ったんだ」
ああ、そうか……何だか見えてきたように感じる。そしてエズラが言った、俺達はの意味。私を生き返らせようとしたのは二人。その時スチワートは初めて、エズラが能力があることを知ったのね?
「そうだったなら言って欲しかったんだ!それで責めたりはしないよ。それを知っても俺はきっと、喜んで研究所に行ったよ。それなのに……長年兄さんは黙っていた。結局は俺を、信じてはいないってことだろう?そしてそれが分かったのはあの時……二人の力を合わせれば、フレデリカを死に戻りさせることが出来ると、兄さんが告白した時なんだ」
ああ……結局は全てが、私の死に繋がっている。良くも悪くも怖いくらいに。そしてそれなら、スチワートの憤りも納得出来る。だけど私はまた違う感情も持ってしまう。それほどまでに秘密にしていた力を出す……それなら、あなたは私を愛していたの?それとも死んでから気付いたのか。本人に聞かなきゃ分からないけど。
「そうだったのね。それでエズラは十七年もの先の死に戻り後、全てを正そうとしたんだと思う。本来なら自分が行く筈だった研究所に行き、そしてスチワートを侯爵家の跡継ぎにと」
そう本人からは聞いていたけど、それでもスチワートから聞いたのとは印象が違う。恐らくエズラの行動は、贖罪の意味もあったんだと思う。
「だけどそんなの俺は望んでなかったんだ!死に戻り……ってひと言で言うけど、ようは時間の移動なんだ。俺はそんなことよりも、正直に言って欲しかっただけなのに。だからこっちに戻った時、余計に裏切られた気持ちになった。結局は逃げたんだろう……って」
その気持ちはよく分かるわ……私だってそう思ってしまった。死に戻り自体はお腹の子が望んでいたのかも知れないと、受け入れようと努力してきた。だけどそれとはまた別の心の深いところで、あの子と一緒にに逝ってあげたかったという想いもある。結局は一人で逝かせてしまった…
「それでフレデリカはどうするんだ?兄さんのことを再び好きになってるんじゃないかって感じるんだけど……今後はどうするのか決めたのかい」
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