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最終章・私を呼ぶ声
46・エズラの本音
「昨日はごめんなさい。心配を掛けるって分かってたけど、飛び出しちゃって……」
「いいや、大丈夫だ。それにフレデリカが行こうとしているところの見当は付いていたから。スチワートのところ……これは間違いないって思ってた」
私はあれからいつの間にか眠ってしまって、今朝になってから研究所へと帰って来た。もちろんエズラと話をする為……そうでなければ、二人共に前に進めない。そう確信していた私は、勇気を振り絞って帰ることにした。エズラはそんな私の気持ちを分かっていたのか、静かな面持ちで待ってくれていた。それならと私は、早速本題に入ることにして……
「昨日は私、一遍に数々のことを知り過ぎて頭の整理が出来ていなかった。だけど一晩が経った今では、ほんの少し冷静になれたつもり。それによって気になってきたのは、エズラ……あなたの心なの。私にはまるで見えない!あなたの本心が」
そんな心からの叫び……それにエズラは、まるで懐かしい物を見ているような表情をしている。目を細めて、口元だけをほんの少し綻ばせていて……その表情の意味は何なの?前とは似ても似つかない顔をするエズラに動揺してしまう。
「そう思われて当然だよ。弟から聞いたと思うが、俺達の家族は歪な関係性だった。錬金術の力に執着している父は、もっと錬金術師の子供を増やそうと、外に何人もの愛人を囲っていた。それなのに父に何故か執着している義母は、それ以外には何の興味もない人だった。そんなまともでいる方が無理な状況で、俺は家族というものに一切の期待を抱いていなかった」
スチワートからも聞いたロウレン侯爵家の恥部。前侯爵とは私は直接会ったことはなかったけど、相当自分勝手な人だったと聞く。そんな人を父親に持った二人は、どれだけ苦労してきたのだろうと思う。私達って、こういうところまで同じだったのね……
「前の人生の時、そんな両親が急に亡くなり、それで侯爵を継ぐことになった俺は、どうしても妻を迎える必要があったんだ。それで目を付けたのが、君の義妹であるシンシアだった。そこに特別な感情はなく、きっと養女という立場の令嬢なら、二つ返事で了承するだろう……それだけだった。なのに君と結婚を」
手紙にもあったけど、予想を反してシンシアは断った。それで私と結婚することになったのね?
それからエズラを見ると苦しそうに顔を歪めている。その訳は何なのかとジッと見つめて……
「結婚した当初から、君を愛するつもりなんてなかった。家を継ぐ為の条件だった結婚は、冷たく接すれば直ぐに離婚になると期待していた。だけど……君は一度もそれを言い出さなかったね?苦しくて仕方がなかったんだ!いっそ自分からそれを言い出せたらって、何度も考えたよ」
愛するつもりはなかった……そう俯きながら吐き出すように告白するエズラ。そしてそうだったのかと、どこか納得する部分もあった。結婚した当初からの冷遇は、離婚したいが故のことだったのね。
「それでもあなたから、離婚を言い出さなかったのはどうして?そんなのあなたにしてみれば簡単なことじゃない!二年も結婚を維持する必要なんてなかった筈だわ」
突如虚しい毎日を思い出し、そう吐き出してしまう。するとエズラは顔を上げ、あの時とは違っている海のような瞳を私へと向けて……
「どうしようもなく君を愛してしまったんだフレデリカ。もう離せないと思うくらいに。恨まれていてもいい……君が側にいてくれるだけで良かったんだ!そう思っていたら、二年という年月が経っていた」
二年……私にとっては、長く悲惨なものだった。簡単に口に出せるものではなく、永遠に続くかとも思われた果てしなき日々。私だってそう!あなたを愛していたから側にいたのよ?だからどんなに冷たくされても耐えられた。それなのに同じ気持ちだったなんて……
「ならどうしてそう言ってくれなかったの?最初はともかく、気持ちがあるなら改めて欲しかった。そうだったら、幸せな夫婦になれたのかもよ?何故なの……エズラ」
感情が高ぶり、ブワッと涙が溢れてしまっている私。それならそうと、言うことくらいは出来た筈だわ。だったらあんな未来を回避出来たのかも?子供だって失わずに済んだかも知れないのに!
「ロウレン家の場合はそう簡単にはいかないんだ。後腐れなく離婚出来ると思って君の義妹を選んだのに、その代わりの君と結婚してしまった。それで愛してしまったが為に、もっと困難を招いてしまったんだ。君は能力者を産むということを簡単に考え過ぎているんだ。現に……君は死ぬ羽目になったじゃないか?」
そんな意外な言葉に、息をヒュッと吸い込んだ。能力者を産むことを……?
「な、何を言ってるの。あの時、私が死ぬことになったのは、お腹に赤ちゃんがいたせいだってことなの?」
死に戻ってから私には、心の隅にいつもあった不安。それは罹る可能性のある病気のせいだと思っていたのに……違っていたなんて!
「いいや、大丈夫だ。それにフレデリカが行こうとしているところの見当は付いていたから。スチワートのところ……これは間違いないって思ってた」
私はあれからいつの間にか眠ってしまって、今朝になってから研究所へと帰って来た。もちろんエズラと話をする為……そうでなければ、二人共に前に進めない。そう確信していた私は、勇気を振り絞って帰ることにした。エズラはそんな私の気持ちを分かっていたのか、静かな面持ちで待ってくれていた。それならと私は、早速本題に入ることにして……
「昨日は私、一遍に数々のことを知り過ぎて頭の整理が出来ていなかった。だけど一晩が経った今では、ほんの少し冷静になれたつもり。それによって気になってきたのは、エズラ……あなたの心なの。私にはまるで見えない!あなたの本心が」
そんな心からの叫び……それにエズラは、まるで懐かしい物を見ているような表情をしている。目を細めて、口元だけをほんの少し綻ばせていて……その表情の意味は何なの?前とは似ても似つかない顔をするエズラに動揺してしまう。
「そう思われて当然だよ。弟から聞いたと思うが、俺達の家族は歪な関係性だった。錬金術の力に執着している父は、もっと錬金術師の子供を増やそうと、外に何人もの愛人を囲っていた。それなのに父に何故か執着している義母は、それ以外には何の興味もない人だった。そんなまともでいる方が無理な状況で、俺は家族というものに一切の期待を抱いていなかった」
スチワートからも聞いたロウレン侯爵家の恥部。前侯爵とは私は直接会ったことはなかったけど、相当自分勝手な人だったと聞く。そんな人を父親に持った二人は、どれだけ苦労してきたのだろうと思う。私達って、こういうところまで同じだったのね……
「前の人生の時、そんな両親が急に亡くなり、それで侯爵を継ぐことになった俺は、どうしても妻を迎える必要があったんだ。それで目を付けたのが、君の義妹であるシンシアだった。そこに特別な感情はなく、きっと養女という立場の令嬢なら、二つ返事で了承するだろう……それだけだった。なのに君と結婚を」
手紙にもあったけど、予想を反してシンシアは断った。それで私と結婚することになったのね?
それからエズラを見ると苦しそうに顔を歪めている。その訳は何なのかとジッと見つめて……
「結婚した当初から、君を愛するつもりなんてなかった。家を継ぐ為の条件だった結婚は、冷たく接すれば直ぐに離婚になると期待していた。だけど……君は一度もそれを言い出さなかったね?苦しくて仕方がなかったんだ!いっそ自分からそれを言い出せたらって、何度も考えたよ」
愛するつもりはなかった……そう俯きながら吐き出すように告白するエズラ。そしてそうだったのかと、どこか納得する部分もあった。結婚した当初からの冷遇は、離婚したいが故のことだったのね。
「それでもあなたから、離婚を言い出さなかったのはどうして?そんなのあなたにしてみれば簡単なことじゃない!二年も結婚を維持する必要なんてなかった筈だわ」
突如虚しい毎日を思い出し、そう吐き出してしまう。するとエズラは顔を上げ、あの時とは違っている海のような瞳を私へと向けて……
「どうしようもなく君を愛してしまったんだフレデリカ。もう離せないと思うくらいに。恨まれていてもいい……君が側にいてくれるだけで良かったんだ!そう思っていたら、二年という年月が経っていた」
二年……私にとっては、長く悲惨なものだった。簡単に口に出せるものではなく、永遠に続くかとも思われた果てしなき日々。私だってそう!あなたを愛していたから側にいたのよ?だからどんなに冷たくされても耐えられた。それなのに同じ気持ちだったなんて……
「ならどうしてそう言ってくれなかったの?最初はともかく、気持ちがあるなら改めて欲しかった。そうだったら、幸せな夫婦になれたのかもよ?何故なの……エズラ」
感情が高ぶり、ブワッと涙が溢れてしまっている私。それならそうと、言うことくらいは出来た筈だわ。だったらあんな未来を回避出来たのかも?子供だって失わずに済んだかも知れないのに!
「ロウレン家の場合はそう簡単にはいかないんだ。後腐れなく離婚出来ると思って君の義妹を選んだのに、その代わりの君と結婚してしまった。それで愛してしまったが為に、もっと困難を招いてしまったんだ。君は能力者を産むということを簡単に考え過ぎているんだ。現に……君は死ぬ羽目になったじゃないか?」
そんな意外な言葉に、息をヒュッと吸い込んだ。能力者を産むことを……?
「な、何を言ってるの。あの時、私が死ぬことになったのは、お腹に赤ちゃんがいたせいだってことなの?」
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