【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO

文字の大きさ
23 / 96
第四章・それぞれの想い

23・絶体絶命のピンチ

しおりを挟む
 突然そんな事実を突きつけられ、言葉もない…そして窓の外から見える、スティーブ殿下を見つめながら呟いた。

 ──それじゃあ、あなた…廃嫡ルート確定よ?

 もちろん殿下がそれを知る由もないけれど、皇帝陛下の心の内は決まっている。それを知らない殿下は…そうなったら、立ち直れないほどの衝撃を受けるだろう…それこそ恋だ愛だと、言っていられない程に。

 そして私はあれから、スティーブ殿下の真意を探れてはいない。廃嫡されてまでもルーシーとの愛を、貫く気持ちがあるのかを。もしも今、ルーシーとの愛を選択したなら、廃嫡する運命だと知ったら殿下はどうするのだろうか?そう思ってしまった私は、ちょっとだけイタズラ心が湧いた。嫌がらせ…といってもいいかも知れない。そして不貞行為だというのに、あんなに堂々と楽しそうにしている二人に対して、お灸を据えてやりたいという意味でも…

 「んん…んん、あ、あーっ」

 中庭にいる人達には聞こえないように発声練習をした。そして一度廊下に出て、誰も居ないのを確認する。それからまた窓際に戻った…

 それから私は、喉仏に力を入れ精一杯低い声を出そうとする…

 「スティーブ殿下って、婚約者がいるんじゃないのか?それなのに違う令嬢と二人きりなんて…間違ってる!」

 中庭に居る全ての人達に聞こえるような大声で、そう叫んだ。

 それから私は、全速力で走った!財布を握り締めながら。体力強化の授業のおかげで、思ったより身体が軽い。そして走りながら何だか愉快になって来る。『ついに言ってしまった!』というのと同時に『ついに言ってやった!』という二つの感情に包まれる。そして私は、間違ったことは言ってないのだ…と。

 誰にも見られていないという安心感から、ドレスを翻しながら階段を二つ飛ばしで降りる…なんだか前世が懐かしい。そして校舎から中庭へと続く通用口のところで息を整えようと止まった。

 「ハァっ…ふぅ…」

 そして息が整ったところで、何食わぬ顔をしながら中庭に出ようとする。すると…そこで見た余りのことに絶句した!

 そこには仁王立ちになっているスティーブ殿下、そして泣きべそをかいているルーシーが!そしてその後ろにはもちろん、ロブとニクソンも居て私を睨んでいる。それから中庭にいて声を聞きつけたらしい生徒達も集まって来ていて…

 ──私が言ったんだと疑ってる?声を変えたしバレないと思ったんだけど…甘かったかしら?

 そんな私の心が分かっているかのように、スティーブ殿下は私を睨みながらも薄っすらと笑う。殿下とは今まで何度も対決しているけど、これほど冷ややかな視線を受けたことはなかった…明らかな『怒り』の表情だ。そして…

 「ランドン嬢…君か?私に暴言を吐いたのは!いや、君しかあり得ないだろう…そうだな?」

 そう詰め寄られ、どう言い逃れようかと頭をフル回転する。一番失念だったのは、教室に誰も居ないことだ。居ないからバレないと思ったんだけど、ここでまさか見つかってしまうことは考えても無かった!そうなると教室に誰も居ないからこそ、言い逃れ出来なくなってしまう…私、絶体絶命のピンチ!そうは思うが、何とか誤魔化さなければ…

「えっ…何のことですの?私は今からカフェテリアに行こうとここまでやって来たのですが…どうかされましたの?」

 出来るだけ平常心を装い、苦し紛れにそう言った。だけど心臓は早鐘を打っている。ドキドキ…ドキと、まるで全身が心臓なんじゃ?と思うような動悸を感じて、それを何とか鎮めようと深い呼吸を繰り返して…

 「私に対する批判があったのだ。皇族の私を批判するなど、あってはならないだろう?それに面と向かってではなく、隠れて批判するとは…小癪な!」

 そう言いながら殿下は、私を睨み激高している。そしてジリジリと間合いを詰めて、私を恐怖に陥れようとしているようだ。

 「あの声は、本当にランドン嬢ですの?いくら私が気に入らないからといって…酷いわ!酷すぎますっ」

 ただスティーブ殿下の隣で泣いてるだけかと思われたルーシーも、そう言ってポロポロと涙を溢す。その迫真の演技(?)を見ていた生徒達からは「酷いわよね?ルーシー様が可哀想!」「いくら気に入らないといっても、あの言い草はないよな…卑怯だよ」などと言っているのが聞こえる。自分達は殿下達のことを黙認しているくせに、こういう時だけは批判してくる。と、そんなやり場のない怒りを感じて…

 「どうなんだ?そう澄ましていられるのも、あと少しだ。今ニクソンに頼んで校舎を見廻っているのだから」

 そう告げられドキッとする…もちろん皇帝陛下のお墨付きを貰っている私は、これによって不敬罪に問われることはない。だが卒業まで…が叶わなくなってしまう可能性がある。きっと今回のことが私の仕業だとバレた時点で、この学園に通うのは難しくなってしまうだろう。そうなったら…もうキャロラインを守ることが出来なくなってしまう。

 そこに二クソンが、校舎を見廻って戻って来た。そして…

 「二階の教室には誰もいないようです!それこそ一人も…」

 マズい…と焦る。この高等部の校舎は三階まであるが、どうも声の響きから発生源は二階だと割り出したようだ。おまけに私も校舎の反対側の階段を降りれば大丈夫だったのに。まさか殿下がこっちから現れるとは…想定外だった!

 「そら見ろ?今校舎には、生徒は誰も居ない。今の時点で、そこの通用口から現れた君だけだ!それはどう言い逃れする?」

 それには流石の私も言い淀む。そして背中にはスゥーッと汗が流れ落ちるのが分かる…そんな万事休すな状況だが、何とかそれをひっくり返せないかと、画策してみることにする。

 「本当ですか?ですが一つだけお聞かせ下さいませ。それはどんな内容だったのでしょう。その…批判というのは?それに、その声の主は女性なのですか?」

 それに今度は、殿下の方が動揺したようだ。口の中でモゴモゴと呟いているが、ハッキリと言うことはない。それはそうでしょうね?ルーシーとの関係は、いわば不貞行為なのだから。それをこのような沢山の人達の前で、堂々と言えるのなら言ってみなさいよ!そう思いながら殿下の次の言葉を待つ。

 「ウッ…内容については言えない…皇族の威信に関わることだからだ!それに今はそんなことは関係ないだろう?そして声だが、男とも女とも言えないような声で…だが、それはいかようにも真似出来ると思うが?そして君は、キャロラインの取り巻き令嬢Aだ!その犯人である可能性が一番高いということ…さあ、白状したまえ!」

 ──もうダメか…私だと告白しなければ場が収まらない?

 そんな絶体絶命のピンチに、もう無理だと弱気になった時…

 「それは違います!皇太子殿下。ランドン嬢は、私と一緒にいました。ですからそれはあり得ません!」

 「えっ…」

 突然私を庇うような声がこの場に響く!だ、誰?


 
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。

潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

遊鷹太
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】悪役令嬢の断罪から始まるモブ令嬢の復讐劇

夜桜 舞
恋愛
「私がどんなに頑張っても……やっぱり駄目だった」 その日、乙女ゲームの悪役令嬢、「レイナ・ファリアム」は絶望した。転生者である彼女は、前世の記憶を駆使して、なんとか自身の断罪を回避しようとしたが、全て無駄だった。しょせんは悪役令嬢。ゲームの絶対的勝者であるはずのヒロインに勝てるはずがない。自身が断罪する運命は変えられず、婚約者……いや、”元”婚約者である「デイファン・テリアム」に婚約破棄と国外追放を命じられる。みんな、誰一人としてレイナを庇ってはくれず、レイナに冷たい視線を向けていた。そして、国外追放のための馬車に乗り込むと、馬車の中に隠れていた何者かによって……レイナは殺害されてしまった。 「なぜ、レイナが……あの子は何も悪くないのに!!」 彼女の死に唯一嘆いたものは、家族以上にレイナを知る存在……レイナの親友であり、幼馴染でもある、侯爵令嬢、「ヴィル・テイラン」であった。ヴィルは親友のレイナにすら教えていなかったが、自身も前世の記憶を所持しており、自身がゲームのモブであるということも知っていた。 「これまでは物語のモブで、でしゃばるのはよくないと思い、見て見ぬふりをしていましたが……こればかりは見過ごせません!!」 そして、彼女は決意した。レイナの死は、見て見ぬふりをしてきた自身もにも非がある。だからこそ、彼女の代わりに、彼女への罪滅ぼしのために、彼女を虐げてきた者たちに復讐するのだ、と。これは、悪役令嬢の断罪から始まる、モブ令嬢の復讐劇である。

処理中です...