【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO

文字の大きさ
42 / 96
第六章・身を守る方法

42・スティーブの決心

しおりを挟む
 「そ、それは!あの…」

 私は驚き過ぎて、それ以上何も言えなかった…だってスティーブ殿下が私と話したいなんて、言う筈もないと思っていたから…だけど本当に?

 「そうだな…今までのスティーブの行動ではアリシアが躊躇するのは無理もない。あれのしたことが赦せないと思って当然だ。私も始めはそう思って問い詰めた!何か企んでいるのでは?と。だが…今回だけは、あれを信用してやっては貰えないだろうか?詳しくは本人から聞いて欲しいのだが、あやつの覚悟は相当なものの筈だ…」

 そう言う皇帝陛下に戸惑う。どうして?どうして私なの?と。だけど…私に話したいこととは何だろう?と気になる気持ちも正直ある。相当の覚悟?それを聞いてみたい気持ちも。それで…

 「分かりました。私、スティーブ殿下にお会いしてみようと思います。だけど…もしもふざけたことを言ったなら、殴ってもいいでしょうか?」

 それに皇帝陛下は目を丸くする。だけど次の瞬間、ワハハハッと豪快に笑い出す。

 「それでこそアリシアだ。是非そうしてくれ!私がそれを許そう。そしてもしもの時に、アリシアを守る騎士も当然同席させる。それに…そなたの祖父である、前ルーベルト侯爵も同席すると言っている。だから安心して欲しい!」

 ──ええっ…お祖父様も?それで今日こちらにいらっしゃってるの!

 それには驚いたが、あのお祖父様のこと…何かお考えがあるのだと理解する。それに大好きなお祖父様の前では、スティーブ殿下も滅多なことなどしないだろう。それで私は好奇心が勝って、「はい!分かりました」と元気よく返事をした。

 それから皇帝陛下の御前を失礼して、一旦控室で身なりを直し、それからジャックマンと共に庭園の方へ向かう。それに私は「えっ…外で?」と少し驚いたが、キョロキョロとしたまま後に付いて行った。すると…目の前には大きな温室が!何だろうここは?

 「こちらは珍しい植物が植えられた温室でございます。もうすっかり秋ですし、それほど暑くは御座いませんので安心なされて下さい。内部はそれはそれは美しいですよ?」

 ジャックマンのその言葉に、そうなの?と頷く。すると…

 「それにこの温室は、前ルーベルト侯爵様が管理をしておいでです。もちろん専任の庭師はいますが、このように珍しい植物ばかりです…分からないことばかりで、博識な前侯爵様にご指導いただいているのですよ?そしてスティーブ殿下のお気入りの場所でもあります…」

 そう言ってジャックマンは、少し寂しそうな顔をした。きっと幼少期の頃から殿下を知っていると思われるジャックマン。あの時は厳しいことを言われていたけど、それだけではないんだろう。孤独な少年だった頃もきっと…

 だけどそれで一つ分かったことがある。何故あの時、お祖父様が駆けつけて下さったのか?ってことだ。もう叔父様に侯爵の地位を譲っているし、どうして皇居に?と思っていたけど、それで納得した。あれからお祖父様は、一度お見舞いに来てくださり、その後ルーベルト邸でもお会いした。だからあの事件の時も含めたら三度お会いしているが、今でも少し緊急する。もちろん私には優しい笑顔を見せていただいているけど、あれほど立派な方だから…そのうち慣れるのかしら?
 そう思いながらジャックマンの後から中へと入って行く。

 一瞬ムワッと暖かい空気に襲われ、だけど不思議に中へ入ってしまうと暑さは感じない…過ごしやすいくらいで。そしてキョロキョロと辺りを見回すと、色とりどりの花々が咲き誇っている。ランドン邸にも咲いているような花から、こんな花があるの?と驚くものまで…まるで森の中にでも居るように感じる。

 ──わああ!思った以上に広いわ。それに内部は外から見えないように蔓性の植物で壁を造ってある。そしてこれは秘密の会合に便利かも知れないと、この皇居の奥を垣間見たような気がする。その壁を抜けると突然拓けたところに出た。そして目の前に目を向けると、その先にテーブルが配置されていて…一番奥にいるのはスティーブ殿下だ!
 
 ほんの二週間ほど前まで、クラスメイトとして毎日のように共に学んだ殿下。だけどもう随分前のような気がする…少し痩せられたようだし、何か雰囲気も以前とは違うような気がして…

 「今日は会ってくれてありがとう、ランドン令嬢。感謝するよ」

 いつもの斜に構えたような態度は影を潜めて、私を真っ正面から見つめている。おまけに驚いたのはその穏やかな笑顔。そんな顔など初めて!今までとは全く違う、まるで憑き物が落ちたような変化で…

 「い、いえ、光栄でございます!」

 そう言うのがやっとだった…そんな殿下に、どうしたの?と動悸が止まらない!そこに…

 「ハハッ!アリシア、そんなに緊張せずとも良い。さあ、こちらに来てかけなさい」

 ──お祖父様~天の助け!お祖父様が居てくれて本当に良かった。二人だけだったら、普通の反応など出来ないところだったわっ。

 ちょっと戸惑いながらも二人に近付いた私に、タイミングを見計らったように殿下から声が。

 「堅苦しい挨拶など必要ない。どうぞ椅子にかけてくれ!」

 そんな殿下に従って、殿下の真向かいに座るお祖父様の隣に腰掛けた。少し緊張していたが、隣を見上げるとお祖父様の優しい笑顔があるので安心だ。
 さっきまで今でも緊急すると言っていたお祖父様に安心?その自分の気持ちの変化に戸惑う。そして隣のお祖父様をチラッと見上げると、普通は背の高さが違っても座れば案外高さを感じなくなるものだ。だけどお祖父様はそれでも大きい!そしてそれはお兄様も同じだが、その圧倒的な存在感…だけど今は安心出来る!ホント不思議~

 「まずは…ランドン令嬢。今まで君にしてきた数々のこと、本当にすまなかった!謝っても赦されないだろうが…」

 唐突にそう謝られてビクッとなる。だけど前も謝っていただけたけど…それなのにまた?と驚いた。

 「はい。それは前にも謝っていただきましたから…その時に謝罪を受け入れております。ですからもう…謝らないで下さい!」

 そう言う私に殿下は少し微笑んで、それから大きく頷いた。そして…

 「私は帝都学園を去るつもりだ。散々君やキャロライン、そして同級生達に迷惑を掛けてしまったが、新たに知らないところでやり直したいと思っている。まずは隣国に留学するつもりでいる。そして…尊敬する前侯爵様のように見聞を広めるつもりだ。だからもう暫く会うことはないだろう」

 「ええっ!隣国に…留学を?」

 まさか!と驚く。学園を休んでいるのは知っていたが、まさかもう戻らないなんて思ってもみなかった!そして殿下はそう告白して楽になったのが、お祖父様に笑顔を見せている。
 その穏やかな顔を見て分かった…そうか、お祖父様のようになりたいのね?と。
 若い頃のお祖父様のように各国に留学し、知識を身に付けたいのだと理解する。

 「今後暫くしたら、弟のウィリアムが皇太子になるだろう。今後はそれを少しでも助けていけたらと思うのだ。これまで兄らしいことなど、何一つやって来なかった私だが、その罪滅ぼしとも言えるな。そしてこれは君にも関係があることだが、許されるならキャロラインにも会って謝罪したいと思っている。それこそ赦してはくれないだろうが…」

 何だか情報が一度に沢山で頭に入ってこない。キャロラインへの謝罪はいい…是非誠心誠意謝って!それだけのことをしたのだから…
 だけどあなた…ウィリアム殿下やキャロラインのことを言う前に、肝心の人を忘れていません?

 ──ルーシーは?お付き合いしているルーシー・バーモント令嬢のことはどうするのよ!

 それからスティーブ殿下は、「どうしたらキャロラインは私と会ってくれるだろうか?」なんて私に相談してくるけど、一つ忘れてない?
 ルーシーのことなど全く頭にない様子の殿下に驚き戸惑う私。
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。

潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

遊鷹太
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】悪役令嬢の断罪から始まるモブ令嬢の復讐劇

夜桜 舞
恋愛
「私がどんなに頑張っても……やっぱり駄目だった」 その日、乙女ゲームの悪役令嬢、「レイナ・ファリアム」は絶望した。転生者である彼女は、前世の記憶を駆使して、なんとか自身の断罪を回避しようとしたが、全て無駄だった。しょせんは悪役令嬢。ゲームの絶対的勝者であるはずのヒロインに勝てるはずがない。自身が断罪する運命は変えられず、婚約者……いや、”元”婚約者である「デイファン・テリアム」に婚約破棄と国外追放を命じられる。みんな、誰一人としてレイナを庇ってはくれず、レイナに冷たい視線を向けていた。そして、国外追放のための馬車に乗り込むと、馬車の中に隠れていた何者かによって……レイナは殺害されてしまった。 「なぜ、レイナが……あの子は何も悪くないのに!!」 彼女の死に唯一嘆いたものは、家族以上にレイナを知る存在……レイナの親友であり、幼馴染でもある、侯爵令嬢、「ヴィル・テイラン」であった。ヴィルは親友のレイナにすら教えていなかったが、自身も前世の記憶を所持しており、自身がゲームのモブであるということも知っていた。 「これまでは物語のモブで、でしゃばるのはよくないと思い、見て見ぬふりをしていましたが……こればかりは見過ごせません!!」 そして、彼女は決意した。レイナの死は、見て見ぬふりをしてきた自身もにも非がある。だからこそ、彼女の代わりに、彼女への罪滅ぼしのために、彼女を虐げてきた者たちに復讐するのだ、と。これは、悪役令嬢の断罪から始まる、モブ令嬢の復讐劇である。

処理中です...