待って!悪役令息だよ?

MEIKO

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2・強制力が発揮されないゲーム

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 「ロビン!こんな所で何してるのかな?さっき何かワイワイ言ってなかった?遠くに居た私も聞こえてきたけど…」

 そこに現れたのは、このゲームの攻略対象者で僕の婚約者であるデイビス王子。僕はさっきの悪役令息ターンが不発に終わったショックで、ブーっと口を尖らせ腕を組みながら「別に…」って呟く塩対応。おまけにデイビスに対して目も合わせていない。普通は婚約者と言えども、王族に対してこんな態度は許される訳もない。だけど…

 (デイビスのヤツ、何でさっきのタイミングで来ないんだよ?ベストなシチュエーションだっただろ?せっかくの僕のお膳立てをものにしていかないと、ゲームが進まないんだよ。ちゃんと分かってる?もーう!)

 密かにブーブー言ってる僕にデイビスは、何故か鮮やかな笑みを浮かべてくる。何がそんなに嬉しいの?って唖然とする僕の手を引き、そして誰も居ない控え室に僕を引き込んだ。な、何を?とビックリしている僕を、ぎゅっと抱き締めてきて…

 (ハアアア~ヤメて?そんな破壊力満点の笑顔見せるの反則でーす!誰かーっ、ペナルティをプリーズ!デコピンくらいで許してあげるよ。だけどさ、デイビスは無茶苦茶イケメンでとっても優しいんだ。だから僕だってデイビスのことが…。そんな複雑な感情に包まれるけど、絆されたらダメだよ?きっと僕はこの先、呆気なく捨てられるんだからね!)

 そう思いながらも目の前のデイビスをマジマジと見つめる。そして見つめれば見つめるほど、その姿に釘付けになる僕がここにいて…

 妖精さんの羽かな?ってくらいの艶のある美しい金の髪に、この世に降り立った神が沐浴してた?ってくらいの碧く澄んだ瞳。そして薄く結ばれた唇は、官能的でさえある…その造形はまさに神の領域!
 そんな超絶イケメンなデイビスだけど、そこは攻略対象者ナンバーワン!おまけに物凄く優しい性格で、僕に対する接し方も甘々で…誤解するなっていうのが無理でしょ?罪だよなぁ~
 それに、普通こんなに完璧な人間だったら、鼻持ちならない性格くらいで丁度良いんだよ?見た目はいいんだけど、性格がちょっとねぇ~くらいでバランスが取れるんですけどー!違う?

 「ねぇ聞いてる?ロビン…そんなにぼうっとしてたら心配だよ?私から離れたら絶対にダメだからね!ロビンはホントに可愛いからね…心配でならないよ」

 そのデイビスの言葉には、おどろ木桃の木さんしょの木で!それ…嘘でしょう?

 (な、な、何言ってんだよ?可愛い訳あるかーい!僕は憎むべき悪役令息だよ?可愛いなんて…そんなアホなぁ~冗談も佳子さん!誰ぇ?)
 
 だけど待てよ?うーん…ちょっとは可愛いかも。まあ、十人並みだけどね。それなりに色白だし、目だって紫のぱっちりお目々。だから並の上みたいな?自分に極甘な評価っす!
 だけどさ、主人公のアンジー・ホワイトには負ける!もうね、見た目女の子みたいだもんね?フワフワとした桃色の髪にエメラルド色のクリッとした瞳…天使じゃないのかな?って思うよ。おまけに性格も大人しくて、さっきみたいに泣いちゃうの。だからさ、僕だってもうイジメるの限界なのよ?
 あんな小さくて可愛い子、愛でるならまだしもイジメるなんてさ…もう無理なんです!辛いのよ~ホント。
 
 だからデイビスには早く婚約破棄してもらって、その後僕は…誰か好きな人作って?そんでもって結婚しちゃってさ、子供でもバカスカ産んで幸せになりたい訳!サッカーチーム作れるんじゃね?もしかして野球チーム!?みたいな家庭をね。

 「あのね…デイビス。突然だけど男爵令息のアンジーって可愛いと思わない?もうさ、この国の縁起良い色だとされている桃色の髪だしさぁ…それに宝石みたいな瞳だよね?将来王様になるデイビスにピッタリだと思うんだけど…」

 ちょっと様子をうかがいながらそう言って、デイビスの反応を見る。こうなったら僕が、背中を押してあげなきゃ!って。優しいからさ、僕に遠慮しちゃってる可能性があるしね。

 (可愛いだろ?桃色だぞ髪!そんな可愛い子自分には一番お似合いだと思うよね?そう思うのが普通だってさ。僕は、潔く身を引きますから~安心してくれ!)

 「チッ…」

 (えっ…今、舌打ちしてなかった?あのデイビスが!そんなの嘘でしょう?)

 そうドキドキしながらデイビスを見る。すると、今まで見たこともないような不機嫌そうな顔が!う、うっそ~
 
 「何言ってんだよ?ロビン。何故私がアンジーなんかと。それに君だって髪、桃色じゃないか?」

 (あーーっ、僕も髪が桃色だったー!キャラ設定失敗してない?それ。ヒロインと悪役令息が髪、おんなじ色って…おまけに眩しいくらいのピンクじゃん!)

 その事実に動揺を隠せない僕。そんな動揺しまくりの僕にデイビスは、自分の腕の中に身体を収めて桃色の髪を優しく撫でる。へっ…何で?

 「絹糸みたいな髪だね…美しい桃色の。これこそ縁起が良い色じゃないかな?」

 ──チュッ…

 そう言って僕のその髪を一房すくい取り、口付けを落とすデイビス。それから艶めいたその碧い瞳を揺らめかせながら、僕をじっと見る…

 (わ、わわっ!破壊力ハンパねぇ…でもそれ、僕にやってどうするの?人選間違ってますけどー!アンジー呼んで来ましょうか?)

 ──パチン…

 そんな音が響いて、何だろう?って不思議に思う。それからふと気付くと、デイビスが後ろ手で控え室の鍵を閉めたよう。

 (うん…鍵を閉めるの?何故なんだろう。この控室には二人だけだし、鍵を閉める必要性なんて…あるのかな?今頃は国王陛下の挨拶があるだろうし、誰も来ないと思うけど)

 僕はそのデイビスの予想外の行動におっかなびっくりで!な、何を…なさいます?
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