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第二章・その頃ラシア王国では
9・初恋の勘違い
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──俺の初恋。その人は天使のようだった…
あれは父上に連れられてグラン聖国を訪れた6つの時、自分以外は子供がおらず、俺は暇を持て余していた。
父上も大事な公務があって、いつも側に居てくれる訳でもない。一人で本を読んだり、城内をブラついたりしながらも日程は過ぎて行っていた。
もう明日帰国の途につこうかという時、帰りの支度をバタバタとし始めた従者達に、お外で遊んでいてくださいよと邪魔にされる。
仕方が無いので、今まで見た事ない所まで行ってみようか?と思い立って、城の奥の奥まで来てしまっていた。ここまで来ると流石にいいのかな?って思ったが、子供の自分を酷く叱る人も居ないだろう?と高を括って、素知らぬ顔で探険していた。
見ると、素晴らしい眺めが広がる薔薇園があった。色とりどりの薔薇が咲き誇っていて何とも芳しい香りが漂う。こんな場所があるなんて知らなかったな…来てみて良かった!
──そう言えば、俺の亡くなった母上が薔薇がお好きだったそうだ…と思い出した。
まだ生きていてくれていたら一緒に眺めたり出来たかな?なんて、ちょっと感傷的になってしまった…
少しだけ悲しくなっていると、向こうの薔薇の生垣の下辺に小さな足が見えた。
──えっ…誰かいるのかな?子供だろうか…
そう思って近付くと、小さな子が俯いてしゃがんでいるのが分かる。
「ねぇ、何してんの?」
思わず声を掛けると、その子供はビックリしたように俺に顔を向けた…
──つっ…天使!?嘘だろ?
綺麗な銀糸の髪がサラリと揺れる。まるで紫水晶のような輝く瞳はまん丸で、真っ白な肌は発光しているかのように艷やかだ…それに薄桃色のヒラヒラしたドレスを着ていて、とっても可愛い!控えめに言っても天使だ…
見た瞬間結婚する!って思った。こんな可愛い女の子がこの世にいるなんて~
俺はすっかり舞い上がってしまい、何とか案内を頼んで二人して城内のいろんな所を見て回った。だけどテンパり過ぎてほとんど覚えてはいない…
最後に辿り着いた城壁の上から見た夕日は一生忘れないと誓った。外見だけでなく、少しナイーブな性格がまた俺に特別な気持ちを抱かせる。
落ち込んでいるその子を励ましアドバイスして信頼されれば、以前からの親友なのかと思うように慕しみを向けてくれる…幸せだ!初めて心が満たされた想いがした。
後ろ髪を引かれながら帰国した俺は、父上にそれとなく聞いてみた。グラン聖国で小さな女の子に出会ったのですが…と。
それならば第一王女だろうと教えてくれた。王族に女の子は一人しかいないそうだ。
──また会えたらいいな…
淡い恋心を抱いた俺は、兄上に将来グランから縁談が来ても絶対に受けないで下さいね!受けたら恨みます…と根回しを忘れなかった。
そしてまた遊びに行きたいなと思っていた所に、驚愕の知らせが届く…
「王女が病で亡くなっただと?」
──なんで?…何故あの子が!?
俺はそれから三日三晩泣明かした。虚ろな脳裏にあの可愛い笑顔が浮かんでは消える…
幼い恋だったけど、この先もうあれほど恋い焦がれる事はないかもしれない…と思った。
そんな切なく終わった初恋と今回の縁談は全くの別物。
王女とは兄妹であるし見た目はもしかしたら似た所もあるのかもしれないな?とは思うが、だからこそ受け入れられない気持ちなんだ!
そんな誤解が生んだ縺れた糸…それが二人の運命を変えていく。
女の子と見紛うほどに可愛い幼き頃のスリジャ。その勘違いをまだロイは知らない…
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仕方が無いので、今まで見た事ない所まで行ってみようか?と思い立って、城の奥の奥まで来てしまっていた。ここまで来ると流石にいいのかな?って思ったが、子供の自分を酷く叱る人も居ないだろう?と高を括って、素知らぬ顔で探険していた。
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それならば第一王女だろうと教えてくれた。王族に女の子は一人しかいないそうだ。
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