【完結】初恋のあの人との結婚。だけど私のこと覚えてないんですね？

第二章・その頃ラシア王国では

10・達っての頼み

　何故か思った以上に結婚に対して浮かれている様子のアラン。それを俺は、心底心配になってきていた。

　やっぱり後ろめたい気持ちもある…まだ若いアランに結婚を押し付けてしまったのかも？って。　だけどどう考えてもアランの方から立候補してきた。それでも兄としては心配で…６つも年上は流石にヤバいだろ？って思うけど…
　
　アランは今まで身体が弱く、剣術などの訓練を殆ど受けてはいない。だからどちらかというと線の細い体型だが、王族特有の白金の髪に綺麗な榛色はしばみいろの瞳の王子然おうじぜんとした姿をしている。
　
　だから決してアランが自分で言っていたような将来を悲観する程とは思わないけど…。そうなるとやっぱり、この先現れるかもしれない本当に好きな相手と結婚した方がいいんでは？って思ってしまう…

　だんだんと心配が募ってきた俺は、使者として砦に向かう命を受けている近衛騎士団のアスバルの元を訪ねた。

　「アスバル、達たってのお願いがあるんだ…聞き入れてくれないだろうか？」
　　
　近衛騎士団の副団長アスバル・グルシアとは、子供の頃から一緒に学問に剣術に切磋琢磨した間柄だ。伯爵家の嫡男で幼い頃から側近として選ばれて以来、兄弟達よりも仲良くしてきた。

　「ロイ、聞いたぞ～結婚を断ったんだって？それを事も有ろうにアラン様に押し付けたんだって？」

　押し付けてはいない…とは思う。なのにその言いい草ぐさは気のおけない間柄とはいえ酷いんじゃないかな？これは誤解を解いておかなければ！

「俺が無理矢理言ったんじゃないぞ？アラン自らそうしたいと言ってきたんだ。」
　
　俺のイメージってそんなに酷いのか？って、アスバルの奴を睨みながらそう言った。

　「ハハハッ！すまない。俺だって皆が話していた内容をそのまま信じていた訳じゃないさ！」
　と冗談半分でからかった事を謝るアスバル。
　
　アランはまだ19歳。成人しているとはいえ、まだ十代だ。だから余計にそう疑われて俺のせいだと言われてしまってるんだろうな…

　それでお願いって一体何だ？とアスバルが尋ねてきたので、俺は真面目な顔になる。
　
　「使者としてお前が赴おもむく時に、俺を一緒に連れて行って欲しいんだ！」

　アスバルが一瞬、怪訝けげんそうな顔をした。だけど思い当たる理由があったようで、フーッと深い溜息をついていた。
　
　「どうせあれだろ？アラン様が心配で相手の第四王子のことを事前に知りたいんだな？」

　やっぱりコイツは俺の親友だ…言い当てられたなって感心する。

　「なにも使者としての対面の時に共にとは思っていない。そんな事をしたら後々会った時に困るのは俺だし。ただちょっとだけどういう人物なのか知りたいんだ。だってアランの相手がヒゲの花嫁かもしれないんだぞ？」
　
　──男の花嫁など想像もつかない。冗談めかしてそう言ったけど、ヒゲだけは生えていない事を祈る気持ちだ！
　
　渋々ながらも気持ちは分かると、同行を赦ゆるしてくれたアスバルは、くれぐれもあちら側に顔を見られないようにしてくれと条件をつけてきた。俺がロイだとバレたら、一悶着ありそうだしな…


　◇◇◇◇


　それから少し経って、グラン聖国の第四王子一行が国境の砦に明後日にも着く予定だと連絡があった。待ってました！とばかりに、国王からの歓迎の書状を携えたアスバルと共に馬を走らせ砦に向かう。

　アランの相手として相応しい人物なのか、とくと見てやる。それで相応しくないと判断した時には追い返してやろう…と思っていたんだ。