【完結】初恋のあの人との結婚。だけど私のこと覚えてないんですね?

MEIKO

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第二章・その頃ラシア王国では

11・国境の砦にて

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 俺達は、あっという間に国境の地までやってきた。
 この砦に駐在している者達が、先に着いていた馬車を磨き上げ、塔の部屋の調度ちょうどを整えて万全の状態で花嫁をお迎えせねばと、皆忙しく動き回っている。

 俺はこの中でなるべく目立たないようにするにはどうしたら?と思案した。
 だけどこの特徴的な浅黒い肌は隠しようがない。
 どうせ我が国の者達にはバレてしまうし、せめて自分がここに来ている事はグラン聖国側には絶対に言ってはならないと、皆に周知させた。

 ──グランの第四王子には近寄らない方が良いだろう…俺の事など全く見た事も聞いた事もないような者達ならともかく。
 アスバルは人を見る目は確かだ。使者として直接王子に会うのは間違い無いし、その話を聞いて判断するしかないな…

 やっと全ての仕度が整った後、直ぐにグラン聖国一行がやって来た。我が国のものほど豪華ではないが、壮麗な仕立ての馬車がいくつもの荷馬車と共に着いたのが見える。
 俺の容貌の特徴については、あちらの王族や要職についている者達には知られているだろうし、目立たぬように建物の陰に隠れる。

 ──そして…。ザワ…ザワザワ。ん?何やらザワついてる?
兵達の、ホォーッ!という感嘆の声まで聞こえる。どうしたのだろう…馬車の内装が豪華だったのか?それとも衣裳が珍しいのか…
 
 気になって仕方がない俺だが、見られる訳にはいかない!
 そうこうしていると、国境の警備隊長が声を上ずらせながら「こ、こちらへどうぞ!」と何故かしどろもどろになりながら一行を、塔の方へと案内している。それを見て驚く俺。

 ──緊張してんのか?あの警備隊長が!?熊でも倒しそうな人物なのに…

 不思議に思って皆が塔の中に入った後外に出てみると、兵達の顔が何故か赤くなっていて、口々に綺麗だったなぁ~と話している。

 ──だから何が?馬車か衣裳か?何だよ…俺だって見たかったな!って思いながらも、次の行動に移らなければならない。
 
 「はっ?アスバルはどこ行った?使者、出番だぞー!!」

 アスバルは久々の大役にテンパっていたのか、礼装用マントの家紋入りのピンを忘れてしまうという失態を犯す。それで丁度この地を治めている従兄の所へ拝借しに走っていた。それから二時間ほどして、息せき切ってやっと戻って来た。
 
 「アスバル!何やってる?もうとっくに一行は着いてるぞ!」

 「フゥ、ハァハァ!急いで行ってきた…大丈夫だ。警備隊長にはあちら側との伝達や荷物の受け渡しがあるからと、暫し殿下にはお休みいただくように言ってくれと伝えてある。第四王子殿下もお疲れだろうからな。お疲れを取って今から面会していただくのが理想だろ?」

 自分の失態で遅れたのに、なんて都合の良い事を言ってるんだ?と呆れるが…
 まぁ、それも一理あるし良いとして、本来の役目を忘れないでくれよ?と、尻を叩いて送り出す。アスバルは身なりをサッと整え、さっきとは別人のように颯爽と塔へ向かって行った。

 アスバルって、ああして身綺麗にしていると別人のようなんだよなぁ…鍛え抜かれた大きな身体が剣を携え辺りを圧倒しながら進む。男の俺が見ても惚れ惚れするなぁ…と感心してしまったが、俺だって負けてないぞ?

 ──それにしてもグラン聖国の第四王子。どんな人物なのだろうか…?
 
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