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第五章・西の離宮
31・運命の邂逅 1
私が神の御使いの癒やしの力によって病を克服して一年余りが過ぎた。
正直まだ身体は怠く、元々の病弱な体質のせいなのだろうか同じ年頃の者のように動くのは難しい。
──口惜しい…
剣術などの身体を使った鍛錬は無理だが、その代わりにと勉学に励んだ。
知識は力だ!どんなに剣術が優れていようとも知識がなければ所詮傀儡なのだ。
一見、その者が優れているように見えてその実は戦わせられているに過ぎない。
私は身体が弱い分、それを補う力を手に入れ『戦わせる側』になる!
そう心に決めて精進することで、自分を保った。
そんな時カイン兄上が王太子になって初めて外交に出られる事になった…グラン聖国へと。
私はずっと以前から、病気を治してくださった神の御使い達がいる神殿へ行ってみたいと思っていた。女神アイリスにお礼の祈りを捧げたい…って。
健康の面で渋る父や兄上達を何とか説き伏せて、外交の一行に加えていただいた。
グラン聖国までの旅路は私に新鮮な驚きを与えてくれた。
城の中に閉じ籠りぎみだった私が、初めて見る世界。
それはグラン聖国に着いた後でもそれが続いて…
信仰で成り立つ国など不思議でならないと思っていたのだが、成程神殿への巡行者で常に溢れ返っていて、それによってもたらされる外貨は相当なものだろう。
それでいて鉄や宝石が採れる鉱山もあって富める国がグランだ。我が国も負けないように発展させなければ…と心に誓う。
お役目があるカイン兄上とは違い、子供の私が一緒に参加できる場は限られている。それで私は、護衛と一緒に当初の目的である神殿に向かった。
グラン聖国の王城から馬車で30分ほどの所にある神殿は、白亜の巨大な建造物でその名を大陸中に轟かせているだけあって威厳に満ちている。
それに近づけば近づくほど何やらビリビリとした微かな波動のようなものを感じる。
──この感じは…私だけなのか…?
もしかするとだが、私が助けられた身であるから感じるのだろうか…
そんな運命のような不思議な経験に興奮を抑えられない私は、護衛が止めるのも聞かずなに足早に近付いて行った。
神殿の前には沢山の人達が祈りを捧げようと訪れていた。
──こんなに沢山の人が助けられている?信じられない!
余りの人の多さに慄きながらも何やら誇らしい気持ちになった。こんな凄い力に助けて頂いたのだなぁ…
そう感じ入っていると、そこに集まっている人達が何故か騒然とする。おまけに人々が口々に何やら叫んでいるのだ。
なんだろう?と訝しげに見ていたが、興味が勝って私もそれに近付いて行った。
すると神殿の中から一人の神の御使いが現れた。
御使いにしては少し高齢のようだが、優男に見えて不思議な迫力がある人物だ。
「御使い長様!」「御使い長様にお会い出来て嬉しい!」などと人々は言っていて感動しきりの様子だった。
あの方が御使い長様か…もしかして私を助けてくださった方なのかな?
そう思うと近くでお礼を言いたくなった。
子供の私が近づき過ぎると危ないと思い、少し後ろで順番を待つ。
すると先程とは比べようもない程の響きが起こった!此処にいる人々が歓喜して興奮しているのが分かる。
「神の写し身様だぞ!写し身様が出て来られたー!!」
──写し身様だって…?そのような方がいらっしゃるのか?
興奮の坩堝と化す人々を前に、私は何の事やらわからず困惑して…一歩下がろうとした。すると…
「あっ!危ないー!!」
病み上がりの小さな身体の私は一溜まりもなく人々から跳ね除けられ、その場にバタッと倒れ込んだ。
「い、痛い!」倒れたあまりの衝撃に涙が滲んだ。
涙を流しながらも人々の騒めきに気付いて顔を上げると…
その存在に圧倒された人々が私の前までくっきりとした一本の道を作り、その奥から真っ直ぐに私を見据えて近付いて来た人が…
そこにはこの世の者とは思えぬ美しい人が立っていたんだ。
正直まだ身体は怠く、元々の病弱な体質のせいなのだろうか同じ年頃の者のように動くのは難しい。
──口惜しい…
剣術などの身体を使った鍛錬は無理だが、その代わりにと勉学に励んだ。
知識は力だ!どんなに剣術が優れていようとも知識がなければ所詮傀儡なのだ。
一見、その者が優れているように見えてその実は戦わせられているに過ぎない。
私は身体が弱い分、それを補う力を手に入れ『戦わせる側』になる!
そう心に決めて精進することで、自分を保った。
そんな時カイン兄上が王太子になって初めて外交に出られる事になった…グラン聖国へと。
私はずっと以前から、病気を治してくださった神の御使い達がいる神殿へ行ってみたいと思っていた。女神アイリスにお礼の祈りを捧げたい…って。
健康の面で渋る父や兄上達を何とか説き伏せて、外交の一行に加えていただいた。
グラン聖国までの旅路は私に新鮮な驚きを与えてくれた。
城の中に閉じ籠りぎみだった私が、初めて見る世界。
それはグラン聖国に着いた後でもそれが続いて…
信仰で成り立つ国など不思議でならないと思っていたのだが、成程神殿への巡行者で常に溢れ返っていて、それによってもたらされる外貨は相当なものだろう。
それでいて鉄や宝石が採れる鉱山もあって富める国がグランだ。我が国も負けないように発展させなければ…と心に誓う。
お役目があるカイン兄上とは違い、子供の私が一緒に参加できる場は限られている。それで私は、護衛と一緒に当初の目的である神殿に向かった。
グラン聖国の王城から馬車で30分ほどの所にある神殿は、白亜の巨大な建造物でその名を大陸中に轟かせているだけあって威厳に満ちている。
それに近づけば近づくほど何やらビリビリとした微かな波動のようなものを感じる。
──この感じは…私だけなのか…?
もしかするとだが、私が助けられた身であるから感じるのだろうか…
そんな運命のような不思議な経験に興奮を抑えられない私は、護衛が止めるのも聞かずなに足早に近付いて行った。
神殿の前には沢山の人達が祈りを捧げようと訪れていた。
──こんなに沢山の人が助けられている?信じられない!
余りの人の多さに慄きながらも何やら誇らしい気持ちになった。こんな凄い力に助けて頂いたのだなぁ…
そう感じ入っていると、そこに集まっている人達が何故か騒然とする。おまけに人々が口々に何やら叫んでいるのだ。
なんだろう?と訝しげに見ていたが、興味が勝って私もそれに近付いて行った。
すると神殿の中から一人の神の御使いが現れた。
御使いにしては少し高齢のようだが、優男に見えて不思議な迫力がある人物だ。
「御使い長様!」「御使い長様にお会い出来て嬉しい!」などと人々は言っていて感動しきりの様子だった。
あの方が御使い長様か…もしかして私を助けてくださった方なのかな?
そう思うと近くでお礼を言いたくなった。
子供の私が近づき過ぎると危ないと思い、少し後ろで順番を待つ。
すると先程とは比べようもない程の響きが起こった!此処にいる人々が歓喜して興奮しているのが分かる。
「神の写し身様だぞ!写し身様が出て来られたー!!」
──写し身様だって…?そのような方がいらっしゃるのか?
興奮の坩堝と化す人々を前に、私は何の事やらわからず困惑して…一歩下がろうとした。すると…
「あっ!危ないー!!」
病み上がりの小さな身体の私は一溜まりもなく人々から跳ね除けられ、その場にバタッと倒れ込んだ。
「い、痛い!」倒れたあまりの衝撃に涙が滲んだ。
涙を流しながらも人々の騒めきに気付いて顔を上げると…
その存在に圧倒された人々が私の前までくっきりとした一本の道を作り、その奥から真っ直ぐに私を見据えて近付いて来た人が…
そこにはこの世の者とは思えぬ美しい人が立っていたんだ。
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