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第五章・西の離宮
33・謎の光
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…スリジャ…ス…リ…
ハッと飛び起きた!
「な、何?今のは…」
なんだか胸騒ぎがするのは何故だろう?
それにしても今の声…聞き覚えがあるような気がするけど…だけどもどうにも思い出せない!動揺で心臓がバクバクしてしまっているのを、深呼吸して何とか落ち着かせる。
それにしても、ずいぶん早い時間に目が覚めてしまったな。
アルジェもまだ起きていないようだし…
チラッとアルジェの寝ているはずの続き間に目をやるが、まだ物音ひとつしない。
そこで誰も見ていないだろうと寝間着姿のままガウンを羽織って部屋を出た。
夜が明けたばかりの離宮の中は、しんと静まり返っていてまるで神殿にいるような感覚に包まれる。
そう言えば毎朝こんなふうに一人でお祈りに行ってたなぁ…と思い出す。まだそんなに経っていないのに、もう随分前な気がするな…と思いながら外に出る。
夏とは言え、この時間の朝の空気は少しヒンヤリしている。
夜閉じている性質の花が薄っすらと開きかけていて、中にはもしかして妖精がいるのではないかと想像してしまって笑みが出た。
誰もいない東屋を過ぎて、もっと湖の近くまで行ってみる。
湖面は少しだけ靄がかかっており幻想的なその姿に感動を覚える。
蒼く澄んだ水面に、そこから煙のように白くかかる靄。
遠くに見える山々の間からちょっとだけ朝日が覗いて湖の方に射し込んでくる。
「わぁ、綺麗だ!」思わず声が出た。
それをじっと眺めていると、湖の向こう側からチラチラと微かな光が見える。
何だろう?とじっと見ていると、何故かどんどん近付いて来るような気がして…
一つだけだと思っていたその光が三つに分かれ、それぞれ湖の上を滑べって来る。
やがて目の前の湖上まで近づき、そして…
その光はあろう事かこちらに飛んできて、私の身体は光に包まれた…そして、すうーっとこの身に吸収されていく感覚が。
──な、何?今のは!光が私の中に…入っていった!?
不思議と嫌な感じはしない。それどころか温かいものが身体中に染み渡り心地良く感じる。
──これは癒やしの力に…似ている?
自分は今まで力を施す側で、もちろん受けた事は一度もない。なので確証はないが、この心地良さは…そんな気がしてならない!
もしかして、神殿で何かあったのだろうか…?
この不思議な体験は事実であっても、他の人達を不安にしてしまうかもしれないと自分だけの心に仕舞っておくことにした。
◇◇◇◇
「スリ様~ビックリしたじゃないですか!ベッドに居られず…」
部屋に戻ってみると慌てて泣きべそをかいているアルジェがいた。それにごめんね!と謝り、早く起きすぎて散歩に行ってた事を説明した。
「もーう!起こしてくれたらいいのに。心配したんですよ?」と、アルジェは膨れっ面で睨む。それに何度も謝って、何とか許しもらう。
バツの悪さを誤魔化すように、お腹空いたよね?朝食を食べに行こう!と一緒にダイニングルームへ向かった。
使用人達はもうとっくに起きて用意してくれているだろうが、まだ時間が早いし一番かもしれないね?と言いながら扉を開けると…
「おはようございます!スリジャ様。」
そこには居るはずのないにこやかな笑顔を浮かべたアラン王子の姿が…
ハッと飛び起きた!
「な、何?今のは…」
なんだか胸騒ぎがするのは何故だろう?
それにしても今の声…聞き覚えがあるような気がするけど…だけどもどうにも思い出せない!動揺で心臓がバクバクしてしまっているのを、深呼吸して何とか落ち着かせる。
それにしても、ずいぶん早い時間に目が覚めてしまったな。
アルジェもまだ起きていないようだし…
チラッとアルジェの寝ているはずの続き間に目をやるが、まだ物音ひとつしない。
そこで誰も見ていないだろうと寝間着姿のままガウンを羽織って部屋を出た。
夜が明けたばかりの離宮の中は、しんと静まり返っていてまるで神殿にいるような感覚に包まれる。
そう言えば毎朝こんなふうに一人でお祈りに行ってたなぁ…と思い出す。まだそんなに経っていないのに、もう随分前な気がするな…と思いながら外に出る。
夏とは言え、この時間の朝の空気は少しヒンヤリしている。
夜閉じている性質の花が薄っすらと開きかけていて、中にはもしかして妖精がいるのではないかと想像してしまって笑みが出た。
誰もいない東屋を過ぎて、もっと湖の近くまで行ってみる。
湖面は少しだけ靄がかかっており幻想的なその姿に感動を覚える。
蒼く澄んだ水面に、そこから煙のように白くかかる靄。
遠くに見える山々の間からちょっとだけ朝日が覗いて湖の方に射し込んでくる。
「わぁ、綺麗だ!」思わず声が出た。
それをじっと眺めていると、湖の向こう側からチラチラと微かな光が見える。
何だろう?とじっと見ていると、何故かどんどん近付いて来るような気がして…
一つだけだと思っていたその光が三つに分かれ、それぞれ湖の上を滑べって来る。
やがて目の前の湖上まで近づき、そして…
その光はあろう事かこちらに飛んできて、私の身体は光に包まれた…そして、すうーっとこの身に吸収されていく感覚が。
──な、何?今のは!光が私の中に…入っていった!?
不思議と嫌な感じはしない。それどころか温かいものが身体中に染み渡り心地良く感じる。
──これは癒やしの力に…似ている?
自分は今まで力を施す側で、もちろん受けた事は一度もない。なので確証はないが、この心地良さは…そんな気がしてならない!
もしかして、神殿で何かあったのだろうか…?
この不思議な体験は事実であっても、他の人達を不安にしてしまうかもしれないと自分だけの心に仕舞っておくことにした。
◇◇◇◇
「スリ様~ビックリしたじゃないですか!ベッドに居られず…」
部屋に戻ってみると慌てて泣きべそをかいているアルジェがいた。それにごめんね!と謝り、早く起きすぎて散歩に行ってた事を説明した。
「もーう!起こしてくれたらいいのに。心配したんですよ?」と、アルジェは膨れっ面で睨む。それに何度も謝って、何とか許しもらう。
バツの悪さを誤魔化すように、お腹空いたよね?朝食を食べに行こう!と一緒にダイニングルームへ向かった。
使用人達はもうとっくに起きて用意してくれているだろうが、まだ時間が早いし一番かもしれないね?と言いながら扉を開けると…
「おはようございます!スリジャ様。」
そこには居るはずのないにこやかな笑顔を浮かべたアラン王子の姿が…
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