【完結】初恋のあの人との結婚。だけど私のこと覚えてないんですね?

MEIKO

文字の大きさ
38 / 67
第五章・西の離宮

38・ロイの苦悩

しおりを挟む
 なんだって…?スリジャが死ぬ…あと五年で!?
 
 ロイは思ってもみないその驚愕の告白を聞いて放心していた…
 
 ──信じられない…信じられるものか!この人が、この愛おしい人が俺の前から永遠に居なくなるなど──
 
 思わずスリジャを抱き寄せ、きつく抱き締める。俺の前から決して居なくならないように。
 スリジャもこんな様子の俺を初めて見たのだろう…動揺し震え、哀しげに顔を伏せ咽び泣いている。

 ダメだ!しっかりしないと。俺がしっかりしないでどうする?辛いのはスリジャだ…これ以上悲しませてはいけない。

 「スリジャ、すまない。余りの事にすっかり動揺してしまって…。何故そうなるのか詳しく話してくれるか?」

 その言葉にスリジャも自らを落ち着かせようと深呼吸し、涙を拭って俺を見た。

 「私こそすみません。一から詳しくお話しします。少し長くなりますが…聞いて貰えますか?」

 それからスリジャは、神の御使いの役を早期に辞する事になった経緯と、寿命と癒やしの力の関係性について説明した。

 そして、もう一つ…

 「私が今、こうしてこの件を告白しようと思ったのはアラン様に言われたのです。ロイ様に伝えないのか?と。そう言われて、このままじゃいけない!と思いました…」

 自分には癒やしの力がほんの少し残っていて、それを使い過ぎると死ぬかもしれないこと、体調の悪いアランに癒やしの力を使った件も話した。

 「私、アラン様に力を使った時に思い知ったのです。自分が思っている以上に残り少ない命なのだと。それから一人でこの事実を抱えて過ごして来ました…」
 
 スリジャはここまで何とか言い切って、泣くまいと我慢していたのか再び泣き崩れた。

 ──どんなにかショックだっただろう?自分の寿命を知るなど…
 
 こんなスリジャの苦悩を知らずに俺はただ浮かれていただけではないか…と居た堪れない気持ちになる。

 ロイは泣いているスリジャの瞼にいたわるようにそっと口づけをし、お前には俺が付いているから大丈夫だよと伝える。
 そしてスリジャはおもむろに顔を上げ「もう私のこと嫌になりましたか?」と弱々しく呟いた。

 「スリジャ、俺も正直ショックだった。お前の命に関わることだろう?平気でいられる訳ない!だけどだからと言って嫌になどならないよ。こんな事で駄目になる間柄じゃないだろう?」
 
 そう言って落ち着くまでスリジャの背中をそっと撫でる。
 スリジャはそのまま黙って撫でられていたが、泣き疲れと告白出来た安心感とで眠くなってしまったようだ…

 ロイはそんなスリジャの身体をそっと横抱きにして自分のベッドまで運び、布団を掛けてやり自分はその脇に座ってスリジャの頭を撫でながら様子を見る。
  
 「安心していいよ…もうここで眠ったらいい。おやすみ、愛しいスリジャ。」
 
 そう言って額に口づけを一つ落とす。
 やがて穏やかな寝息が聞こえ出し、ロイはホッとする…

 そうしてからロイは考える。今まで罪悪感でアランには何も言ってこなかった。だがこのままではお互いに負担にしかならないだろう…と。

 アランと二人で話す必要がある──
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

欠陥Ωは孤独なα令息に愛を捧ぐ あなたと過ごした五年間

華抹茶
BL
旧題:あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~ 子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。 もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。 だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。 だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。 子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。 アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ ●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。 ●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。 ●Rシーンには※つけてます。

処理中です...