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第六章・御使いの秘密
45・ラシアの神殿へ
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アルジェは幸せだった…人生で一番の幸せ。
だけど…いいの?私なんかで。
「身分差は気にしなくていいんだよホントに。俺の母親は平民でメイドなんだ。たまたま跡継ぎに恵まれなかったからって正式に嫡男になっただけだ。」
そんな家なんかよりアルジェが大切だよ…と抱き締めてくれる。
アルジェの目に涙がキラリと光る。母が亡くなってから、スリ様以外に大切な人なんて居なかった。大切な人が、もう一人増えた!と笑った。
こんな幸せな気分になったら、スリ様に会いたくなっちゃったぁ~!
だから早く行って、早く帰ろうと旅路を急ぐ。
平坦な道を過ぎ、山道になってきた。もう直ぐなんだろうか?
それから少し勾配のキツい山道をぐるりと登った先に突然、その神殿が見えて来た。
グラン聖国の大神殿とは比べ物にはならないが、それでも小さいながらも何やら強い力を感じる。ちょっとドキドキしながらアスバルと中に入って行く。
「わあ、中は意外に広いんだなぁ~」
岩を削って造られたようなその神殿は、何処までも無限に続くような高い天井がある。それをあんぐりと口を開けて見上げてそう驚いた。
「ホントだな!これは元々の天然の地形を利用して建てたみたいだ。洞窟だったのかもな」
──コツッ!急に物音が聞こえて、アスバルがサッと剣に手を掛ける。すると…
「もしかして、アルジェ!?」
その声の方を振り向くとそこには一人の御使いが…
「コーダ?コーダじゃないか!久しぶり~」
アルジェとその御使いは、笑顔でひしっと抱き合った。
「なんで…なんでここにいるの?確か写し身様と一緒に神殿を出たよね…?」とコーダは不思議そうにしている。
「写し身…スリ様はね、ラシア王国の王族となる為にこの国に来たんだ。王子と婚姻を結ぶ為だよ。コーダはずっとここにいるから知らなかったかな?」
コーダは平民出身の御使いで、私達と同じような時期に神殿に入った。
桁違いの癒やしの力を使うスリジャとは違い、ほんの少しの力しかなかった為に派遣される側の御使いとしてラシア王国に来ていた。突然現れたアルジェに不思議そうな顔をして…
「あのね私がここに来た理由なんだけど、聞いてるかな?コーダは…女神アイリスの御神託が受け取れない事態になってるって事を」
そして御使い長様からの手紙を発端にここへと訪ねて来た経緯を話した。
「嘘!本当に?聞いてないよ…僕は。御神託が受け取れないなんて、未だかつてない事だよね?そんな重大な事を私達に伝えないなんて…」と驚きを隠せないコーダだが、アスバルの方をチラッと見て…
「ところでこの方は?アルジェの護衛に付いてくださった騎士様なの?」
アルジェはその問いに一瞬戸惑ったが、よく見知ったコーダだしって「この人は私の婚約者…だよ」と自分で言って顔を赤らめる。
それから馴れ初めなんかを聞き出され二人で笑い合う。
「うわぁ~いいなー。僕も役を辞したら結婚相手見つかるかなぁ?」
コーダは可愛いから大丈夫だよ!と励まして、それから近況などを話し出した。
そんな楽しそうな二人を見ていたアスバルは安心し、自分が居ると話し辛いだろうとこの場を離れる提案をする。
「アルジェは今日ここに泊まったらどう?ホントはもう一人御使いがいるんだけど、今買い出しに行っていて。明日しか帰ってこないし…是非そうして!積もる話しもあるしさ」とコーダにお願いされる。
「うん、そうしようかな。アスバル悪いんだけど、今朝まで泊まっていた宿で待っててくれないかな?明日朝ここを出て宿へ戻るから」
ちょっとだけ渋るアスバルに大丈夫だからと送り出して、アルジェとコーダは神殿の内部へ入っていく。
「ここは私達の住んでいる所だよ。ここのベッド使ってね!今夜は。意外と住心地悪くないよ?この神殿。ちょっと寂しい所に立っているけど、村まで下りれば買い物も出来るし。さあ一緒に料理して夕飯食べようよ!」
久しぶりの再会にワクワクとして、お祝いしよう!と盛り上がる。
これがまさか…あんな事になるとは!
楽しい時間を過ごすアルジェには知る由もなかった…
だけど…いいの?私なんかで。
「身分差は気にしなくていいんだよホントに。俺の母親は平民でメイドなんだ。たまたま跡継ぎに恵まれなかったからって正式に嫡男になっただけだ。」
そんな家なんかよりアルジェが大切だよ…と抱き締めてくれる。
アルジェの目に涙がキラリと光る。母が亡くなってから、スリ様以外に大切な人なんて居なかった。大切な人が、もう一人増えた!と笑った。
こんな幸せな気分になったら、スリ様に会いたくなっちゃったぁ~!
だから早く行って、早く帰ろうと旅路を急ぐ。
平坦な道を過ぎ、山道になってきた。もう直ぐなんだろうか?
それから少し勾配のキツい山道をぐるりと登った先に突然、その神殿が見えて来た。
グラン聖国の大神殿とは比べ物にはならないが、それでも小さいながらも何やら強い力を感じる。ちょっとドキドキしながらアスバルと中に入って行く。
「わあ、中は意外に広いんだなぁ~」
岩を削って造られたようなその神殿は、何処までも無限に続くような高い天井がある。それをあんぐりと口を開けて見上げてそう驚いた。
「ホントだな!これは元々の天然の地形を利用して建てたみたいだ。洞窟だったのかもな」
──コツッ!急に物音が聞こえて、アスバルがサッと剣に手を掛ける。すると…
「もしかして、アルジェ!?」
その声の方を振り向くとそこには一人の御使いが…
「コーダ?コーダじゃないか!久しぶり~」
アルジェとその御使いは、笑顔でひしっと抱き合った。
「なんで…なんでここにいるの?確か写し身様と一緒に神殿を出たよね…?」とコーダは不思議そうにしている。
「写し身…スリ様はね、ラシア王国の王族となる為にこの国に来たんだ。王子と婚姻を結ぶ為だよ。コーダはずっとここにいるから知らなかったかな?」
コーダは平民出身の御使いで、私達と同じような時期に神殿に入った。
桁違いの癒やしの力を使うスリジャとは違い、ほんの少しの力しかなかった為に派遣される側の御使いとしてラシア王国に来ていた。突然現れたアルジェに不思議そうな顔をして…
「あのね私がここに来た理由なんだけど、聞いてるかな?コーダは…女神アイリスの御神託が受け取れない事態になってるって事を」
そして御使い長様からの手紙を発端にここへと訪ねて来た経緯を話した。
「嘘!本当に?聞いてないよ…僕は。御神託が受け取れないなんて、未だかつてない事だよね?そんな重大な事を私達に伝えないなんて…」と驚きを隠せないコーダだが、アスバルの方をチラッと見て…
「ところでこの方は?アルジェの護衛に付いてくださった騎士様なの?」
アルジェはその問いに一瞬戸惑ったが、よく見知ったコーダだしって「この人は私の婚約者…だよ」と自分で言って顔を赤らめる。
それから馴れ初めなんかを聞き出され二人で笑い合う。
「うわぁ~いいなー。僕も役を辞したら結婚相手見つかるかなぁ?」
コーダは可愛いから大丈夫だよ!と励まして、それから近況などを話し出した。
そんな楽しそうな二人を見ていたアスバルは安心し、自分が居ると話し辛いだろうとこの場を離れる提案をする。
「アルジェは今日ここに泊まったらどう?ホントはもう一人御使いがいるんだけど、今買い出しに行っていて。明日しか帰ってこないし…是非そうして!積もる話しもあるしさ」とコーダにお願いされる。
「うん、そうしようかな。アスバル悪いんだけど、今朝まで泊まっていた宿で待っててくれないかな?明日朝ここを出て宿へ戻るから」
ちょっとだけ渋るアスバルに大丈夫だからと送り出して、アルジェとコーダは神殿の内部へ入っていく。
「ここは私達の住んでいる所だよ。ここのベッド使ってね!今夜は。意外と住心地悪くないよ?この神殿。ちょっと寂しい所に立っているけど、村まで下りれば買い物も出来るし。さあ一緒に料理して夕飯食べようよ!」
久しぶりの再会にワクワクとして、お祝いしよう!と盛り上がる。
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楽しい時間を過ごすアルジェには知る由もなかった…
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