【完結】初恋のあの人との結婚。だけど私のこと覚えてないんですね?

MEIKO

文字の大きさ
45 / 67
第六章・御使いの秘密

45・ラシアの神殿へ

しおりを挟む
 アルジェは幸せだった…人生で一番の幸せ。
 だけど…いいの?私なんかで。

 「身分差は気にしなくていいんだよホントに。俺の母親は平民でメイドなんだ。たまたま跡継ぎに恵まれなかったからって正式に嫡男になっただけだ。」
 
 そんな家なんかよりアルジェが大切だよ…と抱き締めてくれる。

 アルジェの目に涙がキラリと光る。母が亡くなってから、スリ様以外に大切な人なんて居なかった。大切な人が、もう一人増えた!と笑った。
 
 こんな幸せな気分になったら、スリ様に会いたくなっちゃったぁ~!
 だから早く行って、早く帰ろうと旅路を急ぐ。
 平坦な道を過ぎ、山道になってきた。もう直ぐなんだろうか?
 それから少し勾配のキツい山道をぐるりと登った先に突然、その神殿が見えて来た。

 グラン聖国の大神殿とは比べ物にはならないが、それでも小さいながらも何やら強い力を感じる。ちょっとドキドキしながらアスバルと中に入って行く。

 「わあ、中は意外に広いんだなぁ~」

 岩を削って造られたようなその神殿は、何処までも無限に続くような高い天井がある。それをあんぐりと口を開けて見上げてそう驚いた。

 「ホントだな!これは元々の天然の地形を利用して建てたみたいだ。洞窟だったのかもな」

 ──コツッ!急に物音が聞こえて、アスバルがサッと剣に手を掛ける。すると…

 「もしかして、アルジェ!?」
 
 その声の方を振り向くとそこには一人の御使いが…

 「コーダ?コーダじゃないか!久しぶり~」
 
 アルジェとその御使いは、笑顔でひしっと抱き合った。

 「なんで…なんでここにいるの?確か写し身様と一緒に神殿を出たよね…?」とコーダは不思議そうにしている。

 「写し身…スリ様はね、ラシア王国の王族となる為にこの国に来たんだ。王子と婚姻を結ぶ為だよ。コーダはずっとここにいるから知らなかったかな?」

 コーダは平民出身の御使いで、私達と同じような時期に神殿に入った。
 桁違いの癒やしの力を使うスリジャとは違い、ほんの少しの力しかなかった為に派遣される側の御使いとしてラシア王国に来ていた。突然現れたアルジェに不思議そうな顔をして…

 「あのね私がここに来た理由なんだけど、聞いてるかな?コーダは…女神アイリスの御神託が受け取れない事態になってるって事を」

 そして御使い長様からの手紙を発端ほったんにここへと訪ねて来た経緯を話した。

 「嘘!本当に?聞いてないよ…僕は。御神託が受け取れないなんて、未だかつてない事だよね?そんな重大な事を私達に伝えないなんて…」と驚きを隠せないコーダだが、アスバルの方をチラッと見て…

 「ところでこの方は?アルジェの護衛に付いてくださった騎士様なの?」

 アルジェはその問いに一瞬戸惑ったが、よく見知ったコーダだしって「この人は私の婚約者…だよ」と自分で言って顔を赤らめる。
 それから馴れ初めなんかを聞き出され二人で笑い合う。

 「うわぁ~いいなー。僕も役を辞したら結婚相手見つかるかなぁ?」

 コーダは可愛いから大丈夫だよ!と励まして、それから近況などを話し出した。
 そんな楽しそうな二人を見ていたアスバルは安心し、自分が居ると話し辛いだろうとこの場を離れる提案をする。

 「アルジェは今日ここに泊まったらどう?ホントはもう一人御使いがいるんだけど、今買い出しに行っていて。明日しか帰ってこないし…是非そうして!積もる話しもあるしさ」とコーダにお願いされる。

 「うん、そうしようかな。アスバル悪いんだけど、今朝まで泊まっていた宿で待っててくれないかな?明日朝ここを出て宿へ戻るから」

 ちょっとだけ渋るアスバルに大丈夫だからと送り出して、アルジェとコーダは神殿の内部へ入っていく。

 「ここは私達の住んでいる所だよ。ここのベッド使ってね!今夜は。意外と住心地悪くないよ?この神殿。ちょっと寂しい所に立っているけど、村まで下りれば買い物も出来るし。さあ一緒に料理して夕飯食べようよ!」

 久しぶりの再会にワクワクとして、お祝いしよう!と盛り上がる。

 これがまさか…あんな事になるとは!
 楽しい時間を過ごすアルジェには知る由もなかった…

 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

欠陥Ωは孤独なα令息に愛を捧ぐ あなたと過ごした五年間

華抹茶
BL
旧題:あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~ 子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。 もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。 だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。 だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。 子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。 アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ ●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。 ●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。 ●Rシーンには※つけてます。

処理中です...