【完結】初恋のあの人との結婚。だけど私のこと覚えてないんですね?

MEIKO

文字の大きさ
46 / 67
第六章・御使いの秘密

46・危機

しおりを挟む
 「コーダ、御使いってお酒飲めるの?知らなかった…」
 スリ様は一滴だって飲んでなかったけど?って思うが…

 「神殿付きの御使いはね、飲まないかも?御使い長様怖いしね…。でも派遣される側の御使いは割合飲んでるよ?飲まないとやってられない!っていうか…」 

 私は大神殿の事は良く知ってるつもりだったけど、各国の神殿の事は門外漢もんがいかんだったんだな~って改めて思う。

 今、御使いのコーダとラシア王国の神殿で夕飯を共にしている。王宮で食べている料理のような豪華さはないけど、久しぶりに自分で作った料理はとっても美味しく感じる。
 アスバルにも作ってあげたいな…なんて思ってしまう私は大概だよね?
 
 「それでさ、コーダにちょっと聞いてみたいのは、御使い長様の事なんだ」
 
 ちょっとお酒が進んで口も軽くなっているだろうと聞いてみる。本題はここからなんだよね!

 「御使い長様は、御使いから見ても尊敬出来る人かな?」
 
 …凄くぶっちゃけたよ?

 それにコーダはちょっと悩んだ様子だったが、そうだなぁ~って口を濁しながらも…
 
 「もうほとんど癒やしの力は残ってないんだと思うあの方は」

 ──癒やしの力が…ないだって!?

 「でもさ、癒やしの力っていうのは御使いのシンボルみたいなものじゃない?そんな力を無くした人がずっと続けられるの?御使いを…」

 通常は考えられないよね…ってコーダが呟く。
 グラン聖国の神殿で一体何が起こっているんだろう…?
 私とて、御使いではなかったけれど十五年もの間過ごしたいわば古参だ。
 その間に知り合った御使いも十人や二十人じゃない!沢山の御使いが、その人生を神殿と人々に捧げてきた…

 ──スリ様、これは危機です!神殿存続の危機ですよ…

 もしかしてこれは、私だけでもグラン聖国に帰って王に報告した方がいいのかも知れない!
 私達だけでどうこう出来る事態はとっくに過ぎているんだろうと思う。

 そう思った私は、取り敢えずスリ様とロイ様、ラシア王に報告して裁断を仰ごうと決める。
 そう決心したら、なんだか眠くなってきた…
 明日はアスバルと合流して、王城までひとっ走りしないといけない。酔ってうつらうつらしているコーダに、もう寝るよ!と声を掛けて片付けは明日するからとベッドに潜り込む。

 あぁ…疲れた、眠い…
 
 アルジェはあっという間に眠りに落ちていった──


 ◇◇◇◇


 「アルジェ~おはよう!早く起きて。早く起きてここを発たないとアスバルさんが心配するよ~」

 コーダの元気なその声に、そうだった!と飛び起きる。

 「ごめんね~あれから直ぐ寝ちゃった…。あまり話出来なかったね?これからもずっとこの国に居るんだし、また遊びにくるからね」と謝って、早速ここを発つ準備をする。

 馬上で食べて!とパンや果物を持たせてくれたコーダは、少し寂しそうだったが、また会う約束に嬉しそうな顔をして神殿の外まで見送ってくれる。

 「じゃあアルジェ、道中気を付けてよ。あっ、ちょっと待ってて!グランから送って貰った果物あるんだ!是非スリジャ様と食べて欲しい」と再び神殿の中へと入って行く。

 だが…待てど暮らせど戻って来ない。途端に心配になり神殿の中へと自分も戻って行った。

 「コーダ!どうかした?大丈夫なのかな…」

 直ぐ先に倒れているコーダを発見してハッとする!それに急いで駆け寄った。

 ──気を…失っている?
 
 揺すっても微動だにしないコーダの様子に何やら嫌な予感がして…その瞬間──

 アルジェは自分の頭から何かが流れ落ちるのをどこか遠くで感じていた…
 自分の身体なのに痛みも何も感じない!まるで自分が自分でないような感覚で…

 そのうち目の前が真っ赤に染まり、流れ落ちているものが自分の血なのだと分かる。

 …スリ様…スリ様がこんな目に合わなくて良かった!
 その真っ赤な目に涙が溢れてきて…

 ──アスバル、ゴメンね。プロポーズ嬉しかったよ!でも…叶いそうにないな…  

 そう覚悟してアルジェは真っ暗な闇に堕ちていった…
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

クールな義兄の愛が重すぎる ~有能なおにいさまに次期当主の座を譲ったら、求婚されてしまいました~

槿 資紀
BL
イェント公爵令息のリエル・シャイデンは、生まれたときから虚弱体質を抱えていた。 公爵家の当主を継ぐ日まで生きていられるか分からないと、どの医師も口を揃えて言うほどだった。 そのため、リエルの代わりに当主を継ぐべく、分家筋から養子をとることになった。そうしてリエルの前に表れたのがアウレールだった。 アウレールはリエルに献身的に寄り添い、懸命の看病にあたった。 その甲斐あって、リエルは奇跡の回復を果たした。 そして、リエルは、誰よりも自分の生存を諦めなかった義兄の虜になった。 義兄は容姿も能力も完全無欠で、公爵家の次期当主として文句のつけようがない逸材だった。 そんな義兄に憧れ、その後を追って、難関の王立学院に合格を果たしたリエルだったが、入学直前のある日、現公爵の父に「跡継ぎをアウレールからお前に戻す」と告げられ――――。 完璧な義兄×虚弱受け すれ違いラブロマンス

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

欠陥Ωは孤独なα令息に愛を捧ぐ あなたと過ごした五年間

華抹茶
BL
旧題:あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~ 子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。 もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。 だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。 だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。 子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。 アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ ●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。 ●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。 ●Rシーンには※つけてます。

処理中です...