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第六章・御使いの秘密
51・更なる秘密
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その鮮やかな朱色の玉を、震える手で取り出した。
すると辺りは眩しい光に包まれて…
──怪我が…治ったのか?
自分の身体のその変化に愕然としながら、震える指で包帯を解く。傷が…ない!!
あれだけの痛みを抱えていたのに、何事も無かったかのように傷痕が消えていた!
触っても全く痛くない…何だ?何が起きたんだ…
暫く茫然と立ち尽くしていたが、ハッとしてキリエの元に戻る。すると、キリエの身体から残り火のように先程よりも小さな光の玉が一つ飛び出した。その玉が自分の持っている朱色の玉に吸い込まれていく。
──い、癒やしの力が戻るのか?この玉に…?
「ハハッ…アハ、アハハッ!そんな馬鹿な!」
笑いながらも後から後から止め処なく涙が流れ続ける。
──何の為にキリエは死ななければならなかったのか?
こんな物が…こんな玉があるのだったら、キリエが死ぬ事なんてなかっただろう?
あんなにお役目後に苦しんで、それでも力を使って…そんな酷い思いをする必要あったのか…?
この玉で、跡形もなく消える傷の為にキリエは死んだのか──!
女神アイリス…キリエはあなたの下僕として、一生懸命役目を務めて来ました。なのに何故こんな酷い仕打ちを?
一生あなたを恨みます!
◇◇◇◇
御使い長の話す余りにも悲哀な経験に一堂は静まり返る…
そして御使い長は、更に衝撃の真実を語る。
「これは御使いや癒やしの力で助けられた人々が亡くなった時に、力だけがその身体から飛び出しこの玉に戻ってくる。この御神体の玉には何十年、もしくは何百年分ほどの癒やしの力が詰まっている」
ショックを受けて黙り込んでいるスリジャに御使い長はフフンと鼻で笑い、信じられないだろう?自分の存在意義を疑ってしまうだろう?そう声を掛ける。
「私はこの力を少しづつ取り出し、この歳まて御使い長を続けてきた…。それは私利私欲なんかじゃない!あの人が…あの愛しい人が救ってくれた命だからだ!」
だけど…今回はどうだ?
「お前だよ、スリジャ。お前だけが何故先に知らされる?命が危うい事を…。キリエと何が違うというんだ?そう思ったらもう我慢ならなかった…。もうこんな役目一切止めさせてやる!」
──神殿など滅びていまえばいいんだ!!
哀しい怒りが女神アイリスに…そして神殿そのものに向いている!その余りの狂気、それに気圧されて…
だけどきっとそれだけじゃない筈だ!あの優しい声をスリジャは思い出していた…役を辞してから一度は忘れてしまったけれど、あの慈愛に満ちた女神アイリスの声を…
この状況を何とかしなければ…でもこの人は今何を言ったところで、狂気に囚われて一切耳に入らないだろう…一体どうしたらいいんだ!?
その時突然、凛とした声がそこに響く。
「御使い長、もう止めるんだ!」
その聞き覚えのある声に皆が振り向く。そこにはアラン王子が!そして何故かアランの右の鎖骨には赤いアイリスの花が浮かんでいて…
それを見たスリジャは慄いた!…何故?何故アラン王子にアイリスの花が!?
御使い長は不敵な笑みを浮かべながら、更に驚くべきことを言った。
「これはこれは御使い長様。お久しぶりですね?」
すると辺りは眩しい光に包まれて…
──怪我が…治ったのか?
自分の身体のその変化に愕然としながら、震える指で包帯を解く。傷が…ない!!
あれだけの痛みを抱えていたのに、何事も無かったかのように傷痕が消えていた!
触っても全く痛くない…何だ?何が起きたんだ…
暫く茫然と立ち尽くしていたが、ハッとしてキリエの元に戻る。すると、キリエの身体から残り火のように先程よりも小さな光の玉が一つ飛び出した。その玉が自分の持っている朱色の玉に吸い込まれていく。
──い、癒やしの力が戻るのか?この玉に…?
「ハハッ…アハ、アハハッ!そんな馬鹿な!」
笑いながらも後から後から止め処なく涙が流れ続ける。
──何の為にキリエは死ななければならなかったのか?
こんな物が…こんな玉があるのだったら、キリエが死ぬ事なんてなかっただろう?
あんなにお役目後に苦しんで、それでも力を使って…そんな酷い思いをする必要あったのか…?
この玉で、跡形もなく消える傷の為にキリエは死んだのか──!
女神アイリス…キリエはあなたの下僕として、一生懸命役目を務めて来ました。なのに何故こんな酷い仕打ちを?
一生あなたを恨みます!
◇◇◇◇
御使い長の話す余りにも悲哀な経験に一堂は静まり返る…
そして御使い長は、更に衝撃の真実を語る。
「これは御使いや癒やしの力で助けられた人々が亡くなった時に、力だけがその身体から飛び出しこの玉に戻ってくる。この御神体の玉には何十年、もしくは何百年分ほどの癒やしの力が詰まっている」
ショックを受けて黙り込んでいるスリジャに御使い長はフフンと鼻で笑い、信じられないだろう?自分の存在意義を疑ってしまうだろう?そう声を掛ける。
「私はこの力を少しづつ取り出し、この歳まて御使い長を続けてきた…。それは私利私欲なんかじゃない!あの人が…あの愛しい人が救ってくれた命だからだ!」
だけど…今回はどうだ?
「お前だよ、スリジャ。お前だけが何故先に知らされる?命が危うい事を…。キリエと何が違うというんだ?そう思ったらもう我慢ならなかった…。もうこんな役目一切止めさせてやる!」
──神殿など滅びていまえばいいんだ!!
哀しい怒りが女神アイリスに…そして神殿そのものに向いている!その余りの狂気、それに気圧されて…
だけどきっとそれだけじゃない筈だ!あの優しい声をスリジャは思い出していた…役を辞してから一度は忘れてしまったけれど、あの慈愛に満ちた女神アイリスの声を…
この状況を何とかしなければ…でもこの人は今何を言ったところで、狂気に囚われて一切耳に入らないだろう…一体どうしたらいいんだ!?
その時突然、凛とした声がそこに響く。
「御使い長、もう止めるんだ!」
その聞き覚えのある声に皆が振り向く。そこにはアラン王子が!そして何故かアランの右の鎖骨には赤いアイリスの花が浮かんでいて…
それを見たスリジャは慄いた!…何故?何故アラン王子にアイリスの花が!?
御使い長は不敵な笑みを浮かべながら、更に驚くべきことを言った。
「これはこれは御使い長様。お久しぶりですね?」
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