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13.ナイトベアー
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木々の間から匂いに釣られたのか、たまたま見つけた獲物が響達だつたのか、黒い毛皮に包まれた大きな影が近づく。響達を狙うナイトベアーである。
ナイトベアーは、響達の後ろから飛び掛かれる距離まで間を詰めて行き、後ろ足に力お込めて飛び掛かる。
「響き後ろ!」
クロエが、叫ぶ。
ナイトベアーの鋭い爪が、響の背中を狙う。
一線、背中から抜き放ったソ-ドブレ-ドが、ナイトベアーの繰り出した腕と首を切り落とす。
少しの間でも、練習の成果はあったようだ。
「へぇー、やるね。 レベル五のアンタが、レベル二十のナイトベアーを倒すなんて」
「えっ、俺ってレベル五なのかぁ? 五ってどのくらいのレベルなんだクロエ」
「騎士で三十、ウォ-カ-で四十、農夫くらいだね。だけど今ので十に上がったから……おめでとう」
クロエのもの言いに、何か見下されている感が残るのであった。
農夫……ですかぁー …… クロエがレベル五十以上て言ってたな。
「だけど、あっちの世界で受けた再生強化のお陰で、アンタあたしより強いはずだよ。多分……」
クロエのスキルでも、再生強化を受けた響のレベルは分からない。何故なら、クロエの見える経験値は、響が実際に倒した。巨大トカゲとナイトベア-で得た数値だからだ。ただ、クロエは魔素とは違う、『亜空間エネルギー』
と言う物を、響の演習の時にじっくりと見ていたのだ。そして、千倍のベクトル効果がある事も、クロエのは知っているのだ。
「クロエのスキルでも、再生強化の効果は分からないのか?」
「分からないね。 だけど、その剣はあまり見せない方がいいよ。 勇者が使うレベルの秘宝だからね。 アンタ狙われ続けるよ」
狙われるて言われてもなぁー。 このソ-ドブレ-ド使えるの俺だけだし……
また、食べ始めているクロエを見ながら、網膜スキャンを熱感知モ-ドにして、周りを見回して見る。
近くに大きな熱原体がないのを確認し、響は落葉や小枝を集めて、アクセサリーに入っているマッチで火を点けて、コ-トの識別カラーをオフにする。
「なんだい、火打石を持っていたのかい?」
「火打石? 生活魔法とかで、火を熾したりするんじゃないのか?」
「火属性を持ってないと、火は熾せないよ」
ラノベの異世界物とは違い、この世界には生活魔法なんてないのか。
響は、期待を裏切られて、大きく落胆した。
響は、リストコントロールを操作して、バッグから護身用の武器を探す。
「食糧と飲み物以外ないかぁー」
そう言えば、クリスタルガン……惜しい事したなあ~ 『武器は体から離すな』て、メリンダさんに言われていたんだよな~
響は、落ち込みをあらわに、剣技演習の時にガンベルトをテ-ブルに置いて来た事を、悔やんでいた。今あの武器が有れば、遠距離攻撃が出来たのにと。
その後、食事を済ませた響達は、交替で寝る事にした。
響のクリスタルに固定されている、亜空間べ-ス。
コードネーム『レオン』で、ティス・メイリンは慌ただしく端末を操作している。
異世界に飛ばされたことを、まだ知らないのだ。
「こちら亜空間べ-スレオン、メモリア聞こえますか? おかしい、どことも連絡が取れない……琴祢(ことね)、どのような状況か分かりますか?」
「何か大きなエネルギーにより、マスターが異空間へ飛ばされたようです」
ティスと会話をしている『琴祢』とは、亜空間べ-スレオンの高量子コンピューターである。
「異空間……マスターと連絡が取れますか?」
「データ破損箇所が多く、修復が必要です……マスターとの網膜リンク、修復完了」
「修復、早いですねー!」
「網膜リンクだけですから……モニターに出します。」
『レオン』内のモニター画面に、響が見ている映像が映し出される。そこには、ソ-ドブレ-ドで首と腕を切り落とされた、ナイトベアーが映し出されていた。
そして、突如モニターが真っ暗になる。
「琴祢、どうしました?」
映像に見入っていたティスは、急に見えなくなったことに驚く。
「マスターが、寝たようです」
「……何とかなりませんか?」
「マスターのクリスタルから、マルチモ-ドで映像を出します」
そんなのあるなら先に出せよと、言いたい所だが、順次修理中なので……
ティスの周りにモニターが現れ、響の周りの映像が映し出される。
そこには、焚き火を囲み寝ているクロエと、首と腕を斬られたナイトベアーの骸が横たわっていた。
「あの方は、マスターのガ-ディアン…… 琴祢、あの方達をこちらへ転送出来ますか?」
ティスは、クロエを見て姫が言っていた、響のガ-ディアンの事を思い出す。
しかし、姫が言っていたガ-ディアンは、影がうすいと聞かされていたのだ。
だが今モニター画面に映るクロエは、色がハッキリして周りに、飲み食いした残骸があるのだ。
ティスの知るガ-ディアンは、飲食しないのである。
「了解、転送ターゲットロック、シ-クエンス……3……2……1……マ-ク!」
ドサァ!
「ギャァァァ-!」
「琴祢、騒がしいですよ」
そこには、首と腕を斬られたナイトベアーの骸が、転送されて来たのである。
響の生まれた世界では、プログラムでない限り、コンピューターが悲鳴をあげる事はないのだが、ティスの世界では、この亜空間ベースレオンの高量子コンピューター琴祢のように、亜空間エネルギーの利用により、一人の個が形成されている。
「だって、こんなのが急に現れるんだもん!」
馴れ馴れしいのである。
「素が出ていますよ」
「はぁ~い!」
「おかしいですね。ナイトベアーだけが、こちらに転送されるなんて……」
ティスは、モニターに映る響とクロエを見ながら考え込む。
「マスターのガ-ディアンが、干渉しているようです」
「とりあえず、ナイトベアーの毛皮と食肉用に一部を保存して、後は『原子分解保存』しましょう。……それと、マスターとの、連絡が取れたら教えて」
『原子分解保存』とは、後で再構築して何かを作り出すために、物質を原子レベルに分解して保存出来るようにする装置である。実際に保管するのは、『ストックルーム』になる。
「かしこまりました」
ナイトベアーの骸が消え、血だまりと土汚れを、ガ-ディアンがクリ-ニングし始める。
ナイトベアーは、響達の後ろから飛び掛かれる距離まで間を詰めて行き、後ろ足に力お込めて飛び掛かる。
「響き後ろ!」
クロエが、叫ぶ。
ナイトベアーの鋭い爪が、響の背中を狙う。
一線、背中から抜き放ったソ-ドブレ-ドが、ナイトベアーの繰り出した腕と首を切り落とす。
少しの間でも、練習の成果はあったようだ。
「へぇー、やるね。 レベル五のアンタが、レベル二十のナイトベアーを倒すなんて」
「えっ、俺ってレベル五なのかぁ? 五ってどのくらいのレベルなんだクロエ」
「騎士で三十、ウォ-カ-で四十、農夫くらいだね。だけど今ので十に上がったから……おめでとう」
クロエのもの言いに、何か見下されている感が残るのであった。
農夫……ですかぁー …… クロエがレベル五十以上て言ってたな。
「だけど、あっちの世界で受けた再生強化のお陰で、アンタあたしより強いはずだよ。多分……」
クロエのスキルでも、再生強化を受けた響のレベルは分からない。何故なら、クロエの見える経験値は、響が実際に倒した。巨大トカゲとナイトベア-で得た数値だからだ。ただ、クロエは魔素とは違う、『亜空間エネルギー』
と言う物を、響の演習の時にじっくりと見ていたのだ。そして、千倍のベクトル効果がある事も、クロエのは知っているのだ。
「クロエのスキルでも、再生強化の効果は分からないのか?」
「分からないね。 だけど、その剣はあまり見せない方がいいよ。 勇者が使うレベルの秘宝だからね。 アンタ狙われ続けるよ」
狙われるて言われてもなぁー。 このソ-ドブレ-ド使えるの俺だけだし……
また、食べ始めているクロエを見ながら、網膜スキャンを熱感知モ-ドにして、周りを見回して見る。
近くに大きな熱原体がないのを確認し、響は落葉や小枝を集めて、アクセサリーに入っているマッチで火を点けて、コ-トの識別カラーをオフにする。
「なんだい、火打石を持っていたのかい?」
「火打石? 生活魔法とかで、火を熾したりするんじゃないのか?」
「火属性を持ってないと、火は熾せないよ」
ラノベの異世界物とは違い、この世界には生活魔法なんてないのか。
響は、期待を裏切られて、大きく落胆した。
響は、リストコントロールを操作して、バッグから護身用の武器を探す。
「食糧と飲み物以外ないかぁー」
そう言えば、クリスタルガン……惜しい事したなあ~ 『武器は体から離すな』て、メリンダさんに言われていたんだよな~
響は、落ち込みをあらわに、剣技演習の時にガンベルトをテ-ブルに置いて来た事を、悔やんでいた。今あの武器が有れば、遠距離攻撃が出来たのにと。
その後、食事を済ませた響達は、交替で寝る事にした。
響のクリスタルに固定されている、亜空間べ-ス。
コードネーム『レオン』で、ティス・メイリンは慌ただしく端末を操作している。
異世界に飛ばされたことを、まだ知らないのだ。
「こちら亜空間べ-スレオン、メモリア聞こえますか? おかしい、どことも連絡が取れない……琴祢(ことね)、どのような状況か分かりますか?」
「何か大きなエネルギーにより、マスターが異空間へ飛ばされたようです」
ティスと会話をしている『琴祢』とは、亜空間べ-スレオンの高量子コンピューターである。
「異空間……マスターと連絡が取れますか?」
「データ破損箇所が多く、修復が必要です……マスターとの網膜リンク、修復完了」
「修復、早いですねー!」
「網膜リンクだけですから……モニターに出します。」
『レオン』内のモニター画面に、響が見ている映像が映し出される。そこには、ソ-ドブレ-ドで首と腕を切り落とされた、ナイトベアーが映し出されていた。
そして、突如モニターが真っ暗になる。
「琴祢、どうしました?」
映像に見入っていたティスは、急に見えなくなったことに驚く。
「マスターが、寝たようです」
「……何とかなりませんか?」
「マスターのクリスタルから、マルチモ-ドで映像を出します」
そんなのあるなら先に出せよと、言いたい所だが、順次修理中なので……
ティスの周りにモニターが現れ、響の周りの映像が映し出される。
そこには、焚き火を囲み寝ているクロエと、首と腕を斬られたナイトベアーの骸が横たわっていた。
「あの方は、マスターのガ-ディアン…… 琴祢、あの方達をこちらへ転送出来ますか?」
ティスは、クロエを見て姫が言っていた、響のガ-ディアンの事を思い出す。
しかし、姫が言っていたガ-ディアンは、影がうすいと聞かされていたのだ。
だが今モニター画面に映るクロエは、色がハッキリして周りに、飲み食いした残骸があるのだ。
ティスの知るガ-ディアンは、飲食しないのである。
「了解、転送ターゲットロック、シ-クエンス……3……2……1……マ-ク!」
ドサァ!
「ギャァァァ-!」
「琴祢、騒がしいですよ」
そこには、首と腕を斬られたナイトベアーの骸が、転送されて来たのである。
響の生まれた世界では、プログラムでない限り、コンピューターが悲鳴をあげる事はないのだが、ティスの世界では、この亜空間ベースレオンの高量子コンピューター琴祢のように、亜空間エネルギーの利用により、一人の個が形成されている。
「だって、こんなのが急に現れるんだもん!」
馴れ馴れしいのである。
「素が出ていますよ」
「はぁ~い!」
「おかしいですね。ナイトベアーだけが、こちらに転送されるなんて……」
ティスは、モニターに映る響とクロエを見ながら考え込む。
「マスターのガ-ディアンが、干渉しているようです」
「とりあえず、ナイトベアーの毛皮と食肉用に一部を保存して、後は『原子分解保存』しましょう。……それと、マスターとの、連絡が取れたら教えて」
『原子分解保存』とは、後で再構築して何かを作り出すために、物質を原子レベルに分解して保存出来るようにする装置である。実際に保管するのは、『ストックルーム』になる。
「かしこまりました」
ナイトベアーの骸が消え、血だまりと土汚れを、ガ-ディアンがクリ-ニングし始める。
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