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16.アルン村襲撃
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ここアルン村は、南部の温暖で気候の良い、小麦・ブドウ・トウモロコシ等の、農産物が多く収穫出来る農村としては恵まれた、住みやすい村である。と言うのも領主への納税額が七割と高いにも関わらず、農民たちの生活は貧しくはなく、その収穫量の高さを示している。
村人達は、小麦の収穫に忙しく働き、子供達もその手伝いに走りまわっている。収穫期を迎えたのだ。
「村長、今年の小麦はいい出来ですよ」
「そうじゃな、これで今年の冬も、困らなくてすむのぉ」
村長が、安堵しているのには理由がある。実は五年前、餓死者が出る程の凶作を経験しているからだ。
そんな村に、危険を知らせる鐘の音が鳴り響く、村を襲う三十人の武装した野人の集団が、この村人達を襲っているのだ。
逃げる村人は後ろから弓で射抜かれ、あっけない自分の死にも気づかなかったであろう。
立ち向かう村人は首を跳ねられ、子供達にその勇気ある姿を、目に焼き付けた。
若い女性と子供は捕らえられ、縄で縛られ納屋へ連れて行かれた。
「年寄は殺せ。歯向かう男も殺せ。女、子供は、縛って納屋と宿屋に閉じ込めろ!」
リ-ダ-らしい、赤い髭を生やした大男が、叫んでいる。
亜空間ベースの食堂で、山盛りのサンドイッチを持ちながら、がっつくクロエの姿があった。
そして、その姿を見ながら響は、クロエから渡された一切れのサンドイッチを、恨めしそうに食べるのであった。
「マスター、この周辺で村を一つ発見。だけど……現在三十名の賊から、襲撃されているようだよ-」
「襲撃?」
琴祢の報告に、響は一瞬戸惑う。
モニターに映された映像を見た響は、怒りが込み上げてくる。
人が人を、こんなにもアッサリと、何の感情も見せずに、殺せるなんて……
「クロエ……ついてこい!」
「魔族は、人間の敵なんだよ。いいのかい?」
「敵の敵は、味方って言うだろ! 琴祢、転送だ!」
「了解~ぃ!」
響は、亜空間ベースを出て、村へ向かって走った。そのスピ-ドとジャンプ力は、宙に浮いた感じで走り、木々をひとっ飛びに越えて、村の近くにまでたどり着いた。
身体能力のリミッターを、全解除したらどうなるんだろう……これで十分の一だもんなぁ~
「琴祢、村人の位置情報は分かるか?」
「村の中央にある建物と、東側の納屋に捕らわれているみたい」
響のリストコントロールに、位置情報が送られてくる。立体のモニター画面が起動し響の前に現れ、位置情報を映し出す。
「クロエ俺が行くまで、納屋の村人を守ってくれ。俺は中央の建物に行って、村人を『レオン』に転送する。その後納屋へ向かう。ティス、村人の受け入れの準備を……」
野人の行動を見て、スイッチが入ったのか。次々と響は、指示を出して行く。
「はい、ホールへ隔離スペースを、設けます。」
救出後、村人に『レオン』の所在を知らせないために、ティスは隔離スペースを設けると言っているのだ。
野人はひと所に定住しない。力有る者が力無き者の上に立ち、放浪する民である。それぞれバラバラに、逃げた村人を追いかけ、家や収穫前の小麦畑に火を放ち、村人の逃げ場を押さえて行く。
中央の建物は……宿屋のようだな。この様な時には『小型遠隔ドローン・ハチ型』を、使ってみるか。初めて使うんだけど。
響は、リストコントロールを操作して、『小型遠隔ドローン・ハチ型』で中の様子を偵察する。琴祢に依頼しないのは、建物の中の偵察が出来ないからだ。
表の見張りが三人、村人はホ-ルに集められているのか……中に見張りが二人か……
ドォーン! バゴォォォ-ン!
「ハハハ、こんなに暴れたのも、ひさしいね~」
クロエは納屋の上から、集まって来る野人に向けて、『ダ-クショット』を撃っていた。
「マスター~、クロエが派手に暴れています~」
「了解、琴祢、何かあったらまた教えてくれ」
「はぁ~い」
クロエの奴、何にも考えてねえなぁ~。
まぁ…… おとりになってるから、いいかぁ! 見張りの三人もあっちに行ったし……
宿屋の中は……入口に一人、奥に一人か、右の窓を突破して、奥が第一、入口が第二だ。
響は、右の窓を切り裂き、一足飛びに奥の野人に近づき、野人の両手足のケンを切る。次に、入口で驚いて動かない野人に走り、同じく両手足のケンを切る。
響的には同じ人間なので、『殺さないように』との配慮からなのだが、そのままにしておけば、出血死確実な事には気づいていない。
響は、村人に近づく。そこには、若い女性が十六人、子供八人いた。
「この建物に、村人はこれだけか?」
「はい、騎士さま」
少女を抱いた女性が、震えながら答える。
「ティス、転送の準備は?」
「後、三十秒です」
「みんな、俺の所に集まってくれ」
村人達は、恐る恐る響の周りに、集まってくる。
村人を転送するためには、響の半径十メ-トル以内に居ないといけない。
「マスター、転送します」
響の周りに、光りが輝き始め村人を包み込み、村人達の姿が消えて行く。
クロエは納屋の上から、『ダ-クショット』の乱れ撃ちで、野人を六人倒したが、野人達もリ-ダ-の指示で動くようになると、おとりが納屋の周りを動き回り、クロエの『ダ-クショット』も命中しなくなる。
弓を持った野人達が納屋を取り囲み、物陰に隠れて四方からクロエに向けて矢を射かけてくる。
クロエは自分に『ダ-クオ-ラ』を掛けているので、矢で傷を負わないとは言え、野人の接近を食い止められなくなって来た。
「納屋の奴らを、押さえろ! そうすりゃ、あの魔族の女も手出し出来ねえはずだ!」
まだ、二十人以上の野人が残っており、クロエにも焦りが出て着ていた。
「何やってんだい……早く来ないともたないよ……」
「ギャ-!」
「何だ! ウガァ~」
西側からいっきに納屋に向けて高速で走る響は、途中で弓を持つ野人二人を倒し、納屋へ駆け込む。
「クロエ、もう少し時間を稼げ!」
「偉そうに、言うんじゃないよ!」
笑みを浮かべながらクロエは、『ダ-クオ-ラ』の威力を上げて放つ。
ドッカァ~ン! ボッカァ~!
納屋に入った響は、村人を見回し手を広げ、近寄るように手招きをする。
「みんな、俺の周りに集まってくれ! 早く!」
野人や外の爆発音に怯える村人達は、すぐには集まろうとしなかった。
武器を持った見知らぬ奴が、急に入って来て言う事など、すぐに聞けるはずもない。
「琴祢、転送用意だぁ!」
「了解!」
響の周りに光の輪が現れる。
その時、納屋の入口から野人が二人、武器を振り上げて走って来る。
響は、左手を野人達に向けて、覚えたての『ダ-クショット』を放つ。
手加減したつもりだったが、野人達が急に入って来た事と覚えたてなもので、一人目の野人の片腕と、二人目野人の肩に風穴を開けて吹き飛ばしてしまった。
やっべえ! やっちゃった!
その光景を見た村人達は、一斉に響に群がり、助けを求めるのであった。
「マスター、五秒前!」
「クロエ! 撤収だ!」
クロエが、響に戻った瞬間、光と共に村人達の姿は消えていた。
「魔族の女が消えたぞ、納屋へ行け!」
リ-ダ-の指図で、五人の野人が納屋へ入ったが、そこには二人の倒れている野人以外、誰もいなかった。
「何処へ行きやがったぁ! 探せ、遠くには行ってねえはずだ!」
野人達は、散り散りに村人達の捜索に入った。
村人達は、小麦の収穫に忙しく働き、子供達もその手伝いに走りまわっている。収穫期を迎えたのだ。
「村長、今年の小麦はいい出来ですよ」
「そうじゃな、これで今年の冬も、困らなくてすむのぉ」
村長が、安堵しているのには理由がある。実は五年前、餓死者が出る程の凶作を経験しているからだ。
そんな村に、危険を知らせる鐘の音が鳴り響く、村を襲う三十人の武装した野人の集団が、この村人達を襲っているのだ。
逃げる村人は後ろから弓で射抜かれ、あっけない自分の死にも気づかなかったであろう。
立ち向かう村人は首を跳ねられ、子供達にその勇気ある姿を、目に焼き付けた。
若い女性と子供は捕らえられ、縄で縛られ納屋へ連れて行かれた。
「年寄は殺せ。歯向かう男も殺せ。女、子供は、縛って納屋と宿屋に閉じ込めろ!」
リ-ダ-らしい、赤い髭を生やした大男が、叫んでいる。
亜空間ベースの食堂で、山盛りのサンドイッチを持ちながら、がっつくクロエの姿があった。
そして、その姿を見ながら響は、クロエから渡された一切れのサンドイッチを、恨めしそうに食べるのであった。
「マスター、この周辺で村を一つ発見。だけど……現在三十名の賊から、襲撃されているようだよ-」
「襲撃?」
琴祢の報告に、響は一瞬戸惑う。
モニターに映された映像を見た響は、怒りが込み上げてくる。
人が人を、こんなにもアッサリと、何の感情も見せずに、殺せるなんて……
「クロエ……ついてこい!」
「魔族は、人間の敵なんだよ。いいのかい?」
「敵の敵は、味方って言うだろ! 琴祢、転送だ!」
「了解~ぃ!」
響は、亜空間ベースを出て、村へ向かって走った。そのスピ-ドとジャンプ力は、宙に浮いた感じで走り、木々をひとっ飛びに越えて、村の近くにまでたどり着いた。
身体能力のリミッターを、全解除したらどうなるんだろう……これで十分の一だもんなぁ~
「琴祢、村人の位置情報は分かるか?」
「村の中央にある建物と、東側の納屋に捕らわれているみたい」
響のリストコントロールに、位置情報が送られてくる。立体のモニター画面が起動し響の前に現れ、位置情報を映し出す。
「クロエ俺が行くまで、納屋の村人を守ってくれ。俺は中央の建物に行って、村人を『レオン』に転送する。その後納屋へ向かう。ティス、村人の受け入れの準備を……」
野人の行動を見て、スイッチが入ったのか。次々と響は、指示を出して行く。
「はい、ホールへ隔離スペースを、設けます。」
救出後、村人に『レオン』の所在を知らせないために、ティスは隔離スペースを設けると言っているのだ。
野人はひと所に定住しない。力有る者が力無き者の上に立ち、放浪する民である。それぞれバラバラに、逃げた村人を追いかけ、家や収穫前の小麦畑に火を放ち、村人の逃げ場を押さえて行く。
中央の建物は……宿屋のようだな。この様な時には『小型遠隔ドローン・ハチ型』を、使ってみるか。初めて使うんだけど。
響は、リストコントロールを操作して、『小型遠隔ドローン・ハチ型』で中の様子を偵察する。琴祢に依頼しないのは、建物の中の偵察が出来ないからだ。
表の見張りが三人、村人はホ-ルに集められているのか……中に見張りが二人か……
ドォーン! バゴォォォ-ン!
「ハハハ、こんなに暴れたのも、ひさしいね~」
クロエは納屋の上から、集まって来る野人に向けて、『ダ-クショット』を撃っていた。
「マスター~、クロエが派手に暴れています~」
「了解、琴祢、何かあったらまた教えてくれ」
「はぁ~い」
クロエの奴、何にも考えてねえなぁ~。
まぁ…… おとりになってるから、いいかぁ! 見張りの三人もあっちに行ったし……
宿屋の中は……入口に一人、奥に一人か、右の窓を突破して、奥が第一、入口が第二だ。
響は、右の窓を切り裂き、一足飛びに奥の野人に近づき、野人の両手足のケンを切る。次に、入口で驚いて動かない野人に走り、同じく両手足のケンを切る。
響的には同じ人間なので、『殺さないように』との配慮からなのだが、そのままにしておけば、出血死確実な事には気づいていない。
響は、村人に近づく。そこには、若い女性が十六人、子供八人いた。
「この建物に、村人はこれだけか?」
「はい、騎士さま」
少女を抱いた女性が、震えながら答える。
「ティス、転送の準備は?」
「後、三十秒です」
「みんな、俺の所に集まってくれ」
村人達は、恐る恐る響の周りに、集まってくる。
村人を転送するためには、響の半径十メ-トル以内に居ないといけない。
「マスター、転送します」
響の周りに、光りが輝き始め村人を包み込み、村人達の姿が消えて行く。
クロエは納屋の上から、『ダ-クショット』の乱れ撃ちで、野人を六人倒したが、野人達もリ-ダ-の指示で動くようになると、おとりが納屋の周りを動き回り、クロエの『ダ-クショット』も命中しなくなる。
弓を持った野人達が納屋を取り囲み、物陰に隠れて四方からクロエに向けて矢を射かけてくる。
クロエは自分に『ダ-クオ-ラ』を掛けているので、矢で傷を負わないとは言え、野人の接近を食い止められなくなって来た。
「納屋の奴らを、押さえろ! そうすりゃ、あの魔族の女も手出し出来ねえはずだ!」
まだ、二十人以上の野人が残っており、クロエにも焦りが出て着ていた。
「何やってんだい……早く来ないともたないよ……」
「ギャ-!」
「何だ! ウガァ~」
西側からいっきに納屋に向けて高速で走る響は、途中で弓を持つ野人二人を倒し、納屋へ駆け込む。
「クロエ、もう少し時間を稼げ!」
「偉そうに、言うんじゃないよ!」
笑みを浮かべながらクロエは、『ダ-クオ-ラ』の威力を上げて放つ。
ドッカァ~ン! ボッカァ~!
納屋に入った響は、村人を見回し手を広げ、近寄るように手招きをする。
「みんな、俺の周りに集まってくれ! 早く!」
野人や外の爆発音に怯える村人達は、すぐには集まろうとしなかった。
武器を持った見知らぬ奴が、急に入って来て言う事など、すぐに聞けるはずもない。
「琴祢、転送用意だぁ!」
「了解!」
響の周りに光の輪が現れる。
その時、納屋の入口から野人が二人、武器を振り上げて走って来る。
響は、左手を野人達に向けて、覚えたての『ダ-クショット』を放つ。
手加減したつもりだったが、野人達が急に入って来た事と覚えたてなもので、一人目の野人の片腕と、二人目野人の肩に風穴を開けて吹き飛ばしてしまった。
やっべえ! やっちゃった!
その光景を見た村人達は、一斉に響に群がり、助けを求めるのであった。
「マスター、五秒前!」
「クロエ! 撤収だ!」
クロエが、響に戻った瞬間、光と共に村人達の姿は消えていた。
「魔族の女が消えたぞ、納屋へ行け!」
リ-ダ-の指図で、五人の野人が納屋へ入ったが、そこには二人の倒れている野人以外、誰もいなかった。
「何処へ行きやがったぁ! 探せ、遠くには行ってねえはずだ!」
野人達は、散り散りに村人達の捜索に入った。
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