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17.亜空間固定
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ホールの隔離スペースには、窓一つ無い広い空間と、ベッド、トイレ、シャワールーム、食事用テ-ブル等が用意されている。
ティスに傷の手当を受けた村人達の様子は、放心状態で動けない者、泣きじゃくる者、ベッドで横になる者、それぞれ目の前で繰り広げられた事を、どのように理解し今後に向けて生きて行けばいいのか、考えあぐねている。
とにかく助かったのであろう、目の前にはティスが用意した、コ-ンス-プ、ハムサンド、たまごサンド、オレンジジュース、コ-ヒ-と言った、見た事もない物がテーブルに並んでいる。
これらの食べ物に、いち早く手を付けたのは、やはり子供達であった。
それぞれの記憶を消し去るかのように、はしゃぎながらサンドやジュースを、貪るように口へ運び腹の中へ納めている。
子供達を見る母親達の目には、『この子を守らなければ』と言った、力が湧きだし食べ物へと手をのばす者もいる。
男達と少女達は、いまだ放心状態のままか、泣き止まない者がほとんどであった。
野人の襲撃を受ける前の村には、百二十六人の村人が住んでいた。響達が助けた村人の数は五十八人、男性七人、女性三十四人、子供十七人、その中でただ一人生き残った老人が、村長のウルムだった。
ウルムには、働き者の息子夫婦と孫がいた、だが野人に捕まり『やるなら、わしを殺せ!』と懇願したが、ウルムの目の前で三人とも、見せしめにように殺された。その行為は、ウルムの意志を砕くのに、十分な破壊力を持っていた。
今のウルムは、村長としての威厳が消え失せ、抜け殻のようにベッドで壁を見つめる、だだの老人となっていた。
響はメインコントロールルームで、モニターに映る村の様子を見ていた。
その映像には、野人達が深い穴を掘り、村人の遺体を投げ込む姿が映し出されていた。
残りの村人が六十八人、一人でも生きていれば助けに行こうと思ったけど、この映像を村の人達には、見せられないよなぁ~ あまりにも酷過ぎる。俺も強化されていなければ、冷静じゃいられなかったかもな。
「マスター、野人の集団が村へ向かっているよぉ~」
「琴祢、映像を出してくれ」
「はぁ~い!」
映し出された映像には、北から村に向かう三百人近い野人の列と、牛に引かれた荷車がその後に続く、中には女子供の姿もあり、一部族の移動のようであっった。
「部族の移動のようですね」
村人達の所から戻ったティスは、映像を見て呟き、分析作業に入る。
どうしたものかなぁ~ 皆殺し覚悟で、クロエと二人で襲えば、何とかなるんだろうけど……
皆殺しは、いやだなぁ~
「アタイは、やんないよ~」
ちょっと目が合っただけなのに、こいつ勘の良いやつだなぁ。
「マスター、ガ-ディアン百体を戦闘用に設定すれば、野人の討伐は出来ますが、どうされますか?」
「ティス、今はやめとく。村長と話してみるよ……今後どうしたいのかを」
人相手の実戦を経験した響は、何処となくたくましくなっていた。
人助けについてはいいけど、政治的な問題になるとな……悩むよなぁ~
響が、悩むのには訳がある。襲われている人をただ助けるのと、占領された村を奪還する事には、大きな違いがある。それは、前者は助けるだけだが、後者は小規模でも、野人とこの国との間で、戦争になる可能性があるからだ。
「マスター、第一ブロックの設定が出来たよ」
「琴祢、何が設定出来たって?」
「うん、ここの大陸をモデルに、探したからね!」
「……」
えっ! あの転送ゲ-トの先には、この大陸と同じ規模の大陸が、固定されていると言うのか……
俺が琴音に言ったのは、『魔素の無い世界でも、魔素の補充が出来るように考えて』と、言っただけなんだけど……
「ン~ 琴祢さん、いくつか質問していいかな?」
「いいよ」
「じゃ取りあえず三つ、固定した大陸はどこの大陸なのか? その大陸は安全なのか? 亜空間固定で、俺の住んでいた地球に固定出来るのか?」
響にとっては、三つ目の質問が一番気になる質問だ。
「えっとね、魔素があって、知的文明が存在しない場所を選んだだけだから、固定した大陸がどこかは、分からない。安全に付いては、当面は大丈夫、強そうな生き物はいないから。地球に固定出来るかに付いては、出来ない。ここ異世界だからね」
響は、『地球に戻れるのではないか』と言う、僅かな期待感を持って、琴祢の説明を聞くのだが、その期待もあっさりと否定されて、ため息をついていると、ティスがコ-ヒ-を手渡して、琴祢の説明を捕捉してくれる。
それによると、ティス達の居た世界の亜空間座標データはあるが、こちらには今の所、亜空間を利用する文明も無く、今は探査用のポッドを出して、亜空間内の座標データを取得しているとの事だった。
ティスが言うには『どこかで繋がっているかも、しれませんよ』との事だった。あまり笑顔を見せないが、気遣いの出来る優しい子だ。
ティスに傷の手当を受けた村人達の様子は、放心状態で動けない者、泣きじゃくる者、ベッドで横になる者、それぞれ目の前で繰り広げられた事を、どのように理解し今後に向けて生きて行けばいいのか、考えあぐねている。
とにかく助かったのであろう、目の前にはティスが用意した、コ-ンス-プ、ハムサンド、たまごサンド、オレンジジュース、コ-ヒ-と言った、見た事もない物がテーブルに並んでいる。
これらの食べ物に、いち早く手を付けたのは、やはり子供達であった。
それぞれの記憶を消し去るかのように、はしゃぎながらサンドやジュースを、貪るように口へ運び腹の中へ納めている。
子供達を見る母親達の目には、『この子を守らなければ』と言った、力が湧きだし食べ物へと手をのばす者もいる。
男達と少女達は、いまだ放心状態のままか、泣き止まない者がほとんどであった。
野人の襲撃を受ける前の村には、百二十六人の村人が住んでいた。響達が助けた村人の数は五十八人、男性七人、女性三十四人、子供十七人、その中でただ一人生き残った老人が、村長のウルムだった。
ウルムには、働き者の息子夫婦と孫がいた、だが野人に捕まり『やるなら、わしを殺せ!』と懇願したが、ウルムの目の前で三人とも、見せしめにように殺された。その行為は、ウルムの意志を砕くのに、十分な破壊力を持っていた。
今のウルムは、村長としての威厳が消え失せ、抜け殻のようにベッドで壁を見つめる、だだの老人となっていた。
響はメインコントロールルームで、モニターに映る村の様子を見ていた。
その映像には、野人達が深い穴を掘り、村人の遺体を投げ込む姿が映し出されていた。
残りの村人が六十八人、一人でも生きていれば助けに行こうと思ったけど、この映像を村の人達には、見せられないよなぁ~ あまりにも酷過ぎる。俺も強化されていなければ、冷静じゃいられなかったかもな。
「マスター、野人の集団が村へ向かっているよぉ~」
「琴祢、映像を出してくれ」
「はぁ~い!」
映し出された映像には、北から村に向かう三百人近い野人の列と、牛に引かれた荷車がその後に続く、中には女子供の姿もあり、一部族の移動のようであっった。
「部族の移動のようですね」
村人達の所から戻ったティスは、映像を見て呟き、分析作業に入る。
どうしたものかなぁ~ 皆殺し覚悟で、クロエと二人で襲えば、何とかなるんだろうけど……
皆殺しは、いやだなぁ~
「アタイは、やんないよ~」
ちょっと目が合っただけなのに、こいつ勘の良いやつだなぁ。
「マスター、ガ-ディアン百体を戦闘用に設定すれば、野人の討伐は出来ますが、どうされますか?」
「ティス、今はやめとく。村長と話してみるよ……今後どうしたいのかを」
人相手の実戦を経験した響は、何処となくたくましくなっていた。
人助けについてはいいけど、政治的な問題になるとな……悩むよなぁ~
響が、悩むのには訳がある。襲われている人をただ助けるのと、占領された村を奪還する事には、大きな違いがある。それは、前者は助けるだけだが、後者は小規模でも、野人とこの国との間で、戦争になる可能性があるからだ。
「マスター、第一ブロックの設定が出来たよ」
「琴祢、何が設定出来たって?」
「うん、ここの大陸をモデルに、探したからね!」
「……」
えっ! あの転送ゲ-トの先には、この大陸と同じ規模の大陸が、固定されていると言うのか……
俺が琴音に言ったのは、『魔素の無い世界でも、魔素の補充が出来るように考えて』と、言っただけなんだけど……
「ン~ 琴祢さん、いくつか質問していいかな?」
「いいよ」
「じゃ取りあえず三つ、固定した大陸はどこの大陸なのか? その大陸は安全なのか? 亜空間固定で、俺の住んでいた地球に固定出来るのか?」
響にとっては、三つ目の質問が一番気になる質問だ。
「えっとね、魔素があって、知的文明が存在しない場所を選んだだけだから、固定した大陸がどこかは、分からない。安全に付いては、当面は大丈夫、強そうな生き物はいないから。地球に固定出来るかに付いては、出来ない。ここ異世界だからね」
響は、『地球に戻れるのではないか』と言う、僅かな期待感を持って、琴祢の説明を聞くのだが、その期待もあっさりと否定されて、ため息をついていると、ティスがコ-ヒ-を手渡して、琴祢の説明を捕捉してくれる。
それによると、ティス達の居た世界の亜空間座標データはあるが、こちらには今の所、亜空間を利用する文明も無く、今は探査用のポッドを出して、亜空間内の座標データを取得しているとの事だった。
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