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28.ミオ・ロックフェル
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王都サリュース、その中心地にこの都市で一番の商家、ロックフェル商会があった。ロックフェル商会は、王室、貴族との取引も多く、アリシアのシ-ドル公爵家とも、長年に渡り取引を重ねており、信用の出来る商会としてもよく知られている。
いつも賑やかな商会も周りの商店の賑わいと違い、今日は店を閉めて他とはどこか違っていた。
そんな商会から、店の使用人が出て来る。
「あの、すみません。ミオさんは、おられますか?」
アリシアと響は、連れ立って王都まで出て来ていた。目的はもちろん、アルン村の作物を買って貰うためだ。
「はい、ああ、これはアリシア様。今ミオさまは……旦那様に、お伝えしますのでどうぞこちらへ」
流石は、王都一の商会である。取り潰しになった貴族と言えども、その対応に変わる事がない。普通であれば、店主に取り次ぐ必要はないのだから。
響達は、商会の応接室に通されて、店主を待つ事となる。
「アリシア様、ようこそお越し下さいました。公爵様の事を聞き、娘と心配しておりました」
「ありがとうございます。今は、こちらの響様の所で、お世話になっております」
「それは、よろしゅう御座いました。私が、この商会の当主、マ-ク・ロックフェルでございます」
品定めでもするように、響を見つめる目は真剣である。
「初めまして、大地 響です。よろしくお願いします」
「所で響様は、どちらからおこしですかな?」
王都一の商会店主であれば、幾らアリシアを信用していても、自分で確かめるのは当然である。
やっぱりな! そう来たか……
「マ-クさん、私の家が襲われたのはご承知と思いますが、今は安全を保つために、お教え出来ないのです」
マ-クが、信頼出来るかどうか探りを入れるように、響とアリシアも事前に話し合い、アルン村の件は伝えない事にしていた。
「さようですか。それで、本日はどのようなご用件でしょうか、アリシア様」
マ-クは、『アリシアが言うのであれば』と、話題を変えて来る。
響とアリシアは、このような展開になるのを、回避するために娘のミオに話を通して、マ-クに取り次いで貰おうと思っていたのだが、あてが外れてしまっていた。
「はい、響様の領地で出来た作物とお酒などの取引を、お願い出来ないかと思いまして参りました。」
アリシアは、取引についての話をし始める。
「そうですか……となりますと、アリシア様のご紹介と言えども、やはりご領地のことなど、お聞きしない事には、お取引の方は出来ません」
やはりそこの話になるか~今教えると、何かあった時に迷惑をかけるからなぁ~
どうしたものか?
「旦那様、冒険者の方々がお戻りです」
慌てて店の者が、部屋に飛び込んで来る。
「これ、お客様の前で……アリシア様ご無礼をお許し下さい。後はまたにお願い致します。後を頼みますよ。では、失礼致します。」
マ-クは、何か気がかりなことが有るのか、急いで冒険者のもとに向かった。
「先程、冒険者と言われていましたが、何かあったんでしょうか?」
響は、単刀直入に聞いてみた。
「…………」
言いあぐねているようだ。
「ミオさんは、お元気ですか? 私の両親が亡くなってから、お会いしていないので、出来ればお会いしたいのですが」
いつも飛んでくるミオが、出てこない事を不思議に思ったアリシアは、尋ねてみる。
「お嬢さまは…………さらわれて……」
店の男性は、その場に泣き崩れて、これ以上話が聞けそうにない。
その姿を見たアリシアは部屋を飛び出し、マ-ク達がいるであろう部屋に飛び込んだ。
「マ-クさん! ミオさんがさらわれたとは、どう言う事ですか!」
アリシアに驚いた冒険者達は、剣を抜き立ち上がる。
「アリシア様、娘の心配をしていただけるのは、ありがたいのですが、今は取り込んでおりますので」
マ-クも、急に飛び込んで来たアリシアに対して、憤慨の色を隠せない。
「すみません。アリシアも悪気があったのではなく、心配でたまらないのだと思います。もしよろしければ、我々にもお手伝いをさせて貰えませんか」
響は、考えがあって提案したのではない。ただ、この場を収めるために、言ったに過ぎないのだ。
「マ-クさん、信用出来る人なら、今回は頼んだ方が良い。相手の数が多いからね、助けるのは我々だけじゃ無理だ!」
冒険者ジュリアンの言葉に、マ-クは考え込む。
「わかりました。アリシア様ご協力を、お願い致します」
「はい!」
公爵家の者で無くなったアリシアに、協力を依頼したところで、どれだけの力があるか分からない。それに、手助けと言っても、この二人だけでは何の戦力にもならない。
せめて公爵家の騎士団が健在であれば、助けになっていたのかもしれない。などと思うのが当然である。
その後、アリシア達を含めた作戦会議が、長時間にわたって行われた。
ジュリアンの報告によると、五日前に供を連れ町に出たミオが、何者かに誘拐され商会に一通の手紙が届いた。その内容は、『お前の娘を預かった。無事に返して欲しければ、大金貨一万枚を用意しろ。期日は七日、引き渡しは後日知らせる。この事をどこに知らせようと、我らの知るところとなる。その時娘の顔を見ることは、二度とないであろう』とあった。
手紙にあった大金貨一万枚とは、日本円にして十億ぐらいになるだろうか、王都一の商会と言えども直ぐに手配出来る金額ではない。それに、一度金銭を渡せば相手の懐を肥やし、金銭が無くなればまたどこかで同じことが、果てしなく繰り返されるだろう。
その様な事から、『ロックフェル商会』では、人知れずジュリアン・コ-ン率いるチ-ム『ファルコン』のスポンサーを、して来ていたのだ。
そして、チ-ム『ファルコン』の捜索の結果、盗賊の拠点が王都東の森林の奥にあり、ミオもその何処かに、捕らわれていることが分かった。
敵の数はおよそ四十人。テントが五つ。その中にはミオとは他に、数人の女性が捕らわれているとのことだった。
いつも賑やかな商会も周りの商店の賑わいと違い、今日は店を閉めて他とはどこか違っていた。
そんな商会から、店の使用人が出て来る。
「あの、すみません。ミオさんは、おられますか?」
アリシアと響は、連れ立って王都まで出て来ていた。目的はもちろん、アルン村の作物を買って貰うためだ。
「はい、ああ、これはアリシア様。今ミオさまは……旦那様に、お伝えしますのでどうぞこちらへ」
流石は、王都一の商会である。取り潰しになった貴族と言えども、その対応に変わる事がない。普通であれば、店主に取り次ぐ必要はないのだから。
響達は、商会の応接室に通されて、店主を待つ事となる。
「アリシア様、ようこそお越し下さいました。公爵様の事を聞き、娘と心配しておりました」
「ありがとうございます。今は、こちらの響様の所で、お世話になっております」
「それは、よろしゅう御座いました。私が、この商会の当主、マ-ク・ロックフェルでございます」
品定めでもするように、響を見つめる目は真剣である。
「初めまして、大地 響です。よろしくお願いします」
「所で響様は、どちらからおこしですかな?」
王都一の商会店主であれば、幾らアリシアを信用していても、自分で確かめるのは当然である。
やっぱりな! そう来たか……
「マ-クさん、私の家が襲われたのはご承知と思いますが、今は安全を保つために、お教え出来ないのです」
マ-クが、信頼出来るかどうか探りを入れるように、響とアリシアも事前に話し合い、アルン村の件は伝えない事にしていた。
「さようですか。それで、本日はどのようなご用件でしょうか、アリシア様」
マ-クは、『アリシアが言うのであれば』と、話題を変えて来る。
響とアリシアは、このような展開になるのを、回避するために娘のミオに話を通して、マ-クに取り次いで貰おうと思っていたのだが、あてが外れてしまっていた。
「はい、響様の領地で出来た作物とお酒などの取引を、お願い出来ないかと思いまして参りました。」
アリシアは、取引についての話をし始める。
「そうですか……となりますと、アリシア様のご紹介と言えども、やはりご領地のことなど、お聞きしない事には、お取引の方は出来ません」
やはりそこの話になるか~今教えると、何かあった時に迷惑をかけるからなぁ~
どうしたものか?
「旦那様、冒険者の方々がお戻りです」
慌てて店の者が、部屋に飛び込んで来る。
「これ、お客様の前で……アリシア様ご無礼をお許し下さい。後はまたにお願い致します。後を頼みますよ。では、失礼致します。」
マ-クは、何か気がかりなことが有るのか、急いで冒険者のもとに向かった。
「先程、冒険者と言われていましたが、何かあったんでしょうか?」
響は、単刀直入に聞いてみた。
「…………」
言いあぐねているようだ。
「ミオさんは、お元気ですか? 私の両親が亡くなってから、お会いしていないので、出来ればお会いしたいのですが」
いつも飛んでくるミオが、出てこない事を不思議に思ったアリシアは、尋ねてみる。
「お嬢さまは…………さらわれて……」
店の男性は、その場に泣き崩れて、これ以上話が聞けそうにない。
その姿を見たアリシアは部屋を飛び出し、マ-ク達がいるであろう部屋に飛び込んだ。
「マ-クさん! ミオさんがさらわれたとは、どう言う事ですか!」
アリシアに驚いた冒険者達は、剣を抜き立ち上がる。
「アリシア様、娘の心配をしていただけるのは、ありがたいのですが、今は取り込んでおりますので」
マ-クも、急に飛び込んで来たアリシアに対して、憤慨の色を隠せない。
「すみません。アリシアも悪気があったのではなく、心配でたまらないのだと思います。もしよろしければ、我々にもお手伝いをさせて貰えませんか」
響は、考えがあって提案したのではない。ただ、この場を収めるために、言ったに過ぎないのだ。
「マ-クさん、信用出来る人なら、今回は頼んだ方が良い。相手の数が多いからね、助けるのは我々だけじゃ無理だ!」
冒険者ジュリアンの言葉に、マ-クは考え込む。
「わかりました。アリシア様ご協力を、お願い致します」
「はい!」
公爵家の者で無くなったアリシアに、協力を依頼したところで、どれだけの力があるか分からない。それに、手助けと言っても、この二人だけでは何の戦力にもならない。
せめて公爵家の騎士団が健在であれば、助けになっていたのかもしれない。などと思うのが当然である。
その後、アリシア達を含めた作戦会議が、長時間にわたって行われた。
ジュリアンの報告によると、五日前に供を連れ町に出たミオが、何者かに誘拐され商会に一通の手紙が届いた。その内容は、『お前の娘を預かった。無事に返して欲しければ、大金貨一万枚を用意しろ。期日は七日、引き渡しは後日知らせる。この事をどこに知らせようと、我らの知るところとなる。その時娘の顔を見ることは、二度とないであろう』とあった。
手紙にあった大金貨一万枚とは、日本円にして十億ぐらいになるだろうか、王都一の商会と言えども直ぐに手配出来る金額ではない。それに、一度金銭を渡せば相手の懐を肥やし、金銭が無くなればまたどこかで同じことが、果てしなく繰り返されるだろう。
その様な事から、『ロックフェル商会』では、人知れずジュリアン・コ-ン率いるチ-ム『ファルコン』のスポンサーを、して来ていたのだ。
そして、チ-ム『ファルコン』の捜索の結果、盗賊の拠点が王都東の森林の奥にあり、ミオもその何処かに、捕らわれていることが分かった。
敵の数はおよそ四十人。テントが五つ。その中にはミオとは他に、数人の女性が捕らわれているとのことだった。
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