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30.救出作戦1
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深夜その男は、書斎で貴族の名前が書かれた紙と、ランベル王国の所領が書き込まれた地図を広げて、酒の入ったグラスを傾けながら、薄笑いを浮かべていた。
この男は、ランベル王国でシ-ドル公爵家と並ぶ、もう一つのム-ス公爵家の当主、ハイリガ-・ム-ス公爵その人である。
現在は、シ-ドル公爵家が取り潰しとなり、ランベル王国唯一の公爵家であり、王家に対しての発言力、財力、軍事力を握る実力を、手に入れていたのである。
書斎の窓が開き、風と共に黒い影が入ってくる。
「どうですか。目障りなシ-ドル公爵も消え、所領も増えて懐も温まったのではありませんか?」
その黒い影は、羽が生えカラスのような顔をした。悪魔ガルニアが、そこに立っていた。
「ふっん! 何を言っているのだ。お前の失態のお陰で、シ-ドル公爵家の所領の半分を、あの成り上がり者のヘン・タイに持って行かれたんだぞ。あの能無しに……」
ハイリガ-公爵は、酒の入ったグラスを片手に、悪魔ガルニアに臆することなく、言い放つのであった。
「ジャマが入っただけですよ。何なら、その成り上がりの男爵も、始末すればよいだけですよ」
カラス顔の表情は分かり難いが、悪魔ガルニアは、薄笑いを浮かべていた。
「そうだな……ロックフェル商会の方は、大丈夫なんだろうな?」
悪魔ガルニアの薄笑いに気付いたハイリガ-公爵は、これ以上突っ込むのをやめて話題を変える。あまり追い詰めると相手が悪魔だけに、いつ気が変わって標的が自分になっても、おかしくはないからだ。
「東の森林には、キメラがでますからね。誰もあんな所を、探そうなんて思いませんよ。盗賊も付いていますからね。大金貨一万枚は、貴方のものですよ」
悪魔の言う事をどこまで信用するのか、普通であれば考えるのかもしれないが、金銭が目先にぶら下がっていれば、話は変わってくるのかもしれない。
昼前から寝ていた響達が、夕方になるとそれぞれのタイミングで、起きて来る。戦いを前にした戦士は、それぞれに決まったルーチンワークが決まっているものだ。
響も今までに数度の戦闘を経験して、ソ-ドブレ-ド一の他に持っていたサーベルを、全長七十センチのブロードソード二本に変更していた。サーベルは、どちらかと言えば騎乗して使うのには良いが、近接戦闘になった場合、突いて斬ると言った細かい動作には、むいていない事が分かったからだ。
そして響は、たばこを一晩水につけた溶液を、ひざ下に振りかけていく。
「響、お前何をしているんだ。そんな物振りかけて?」
そんな響の行いを、不思議に思ったジュリアンが、尋ねて来る。
「ああこれはね、この前森林に入った時、ヘビや毒虫がいる事がわかったから、ヘビや毒虫よけに掛けているんだ。ヘビや毒虫は、たばこのニコチンを嫌うって、前に本で読んだ事があったからね」
ジュリアン他全員が、顔を見合わせている。
「俺にもその液体をくれ!」
「「あたし達にも!」」
みんな、噛まれたり刺されたら、その時はその時と、諦めていたらしい。
「本当に騎士達を呼ばなくて、よかったんですか?」
アリシアは昨夜の会議で、少人数で救出作戦を行うことが決まり、それが少し不満だったらしい。
「夜に、森林の中で戦闘じゃあ、騎士に勝ち目はないんだ…………それじゃぁ行こうか!」
ジュリアンが冒険者らしく、アリシアに説明する。
「お頭……ロックフェル商会の娘、本当に金と引き換えに、帰すんすか?」
ミオに近付き、盗賊の男がミオの髪の毛を触る。
「バカかお前は、金を受け取ったらその娘は娼館へ売り払うんだよ。生娘だから高く売れるぞ!」
お頭の言葉に、ミオは『話が違う』と叫びたいが、口を塞がれしゃべる事が出来ない。
「それじゃあ、売る前に相手して貰っても、いいすか?」
「バカ野郎、それじゃ生娘じゃ、なくなるだろうが! 黙って見回りでもして来い!」
お頭は、話の分からない手下に、いら立ちグラスを投げて、追い出してしまう。
「明日になりゃあ、大金が手に入るんだ。別にお前が生娘でなくてもいいんだぜ……まあ大人しくしとく事だ!」
この男の言う事が、大人しくさせるための言葉なのか、どうかは定かではない。
響達は、昨夜とは違う場所に集まっている。同じ場所だと気付かれていた場合、アンブッシュの危険性があるからだ。
「クロエ、時間だぞ」
響は、小声でクロエを呼び出す。
「はいよ」
「「「…………!」」」
昨夜の作戦会議の時に、『使役しているサキュバス』と説明しておいたが、流石に真夜中に見ると、ジュリアン達も驚いたようだ。
「それじゃ話した様に、犬の餌を撒いた後は、ジュリアン達の援護をたのむ」
響はクロエに、睡眠薬入りの肉団子を渡し、作戦の確認をする。
「空から援護するよ」
ジュリアンに話した後、クロエは空を飛んで行った。
「後は手はず通りで……行って来ます」
響の言った手はずとは、クロエに餌を撒かせて犬が寝たら、ジュリアン達が陽動を仕掛けて、盗賊を引き付ける。その隙に響が突入して、ミオ達女性を助けると言った作戦だ。
「俺達は、陽動だからな。もう少し離れて、火矢を射かけるぞ! 二人ともタイマツを持った奴から、弓で倒す。そして直ぐに後退して、先頭を倒して後退の繰り返しだ。忘れるなよ!」
「「了解!」」
ジュリアンは必ず作戦開始前に、もう一度手はずを確認する事を忘れない。一流の冒険者としての、振る舞いである。
この男は、ランベル王国でシ-ドル公爵家と並ぶ、もう一つのム-ス公爵家の当主、ハイリガ-・ム-ス公爵その人である。
現在は、シ-ドル公爵家が取り潰しとなり、ランベル王国唯一の公爵家であり、王家に対しての発言力、財力、軍事力を握る実力を、手に入れていたのである。
書斎の窓が開き、風と共に黒い影が入ってくる。
「どうですか。目障りなシ-ドル公爵も消え、所領も増えて懐も温まったのではありませんか?」
その黒い影は、羽が生えカラスのような顔をした。悪魔ガルニアが、そこに立っていた。
「ふっん! 何を言っているのだ。お前の失態のお陰で、シ-ドル公爵家の所領の半分を、あの成り上がり者のヘン・タイに持って行かれたんだぞ。あの能無しに……」
ハイリガ-公爵は、酒の入ったグラスを片手に、悪魔ガルニアに臆することなく、言い放つのであった。
「ジャマが入っただけですよ。何なら、その成り上がりの男爵も、始末すればよいだけですよ」
カラス顔の表情は分かり難いが、悪魔ガルニアは、薄笑いを浮かべていた。
「そうだな……ロックフェル商会の方は、大丈夫なんだろうな?」
悪魔ガルニアの薄笑いに気付いたハイリガ-公爵は、これ以上突っ込むのをやめて話題を変える。あまり追い詰めると相手が悪魔だけに、いつ気が変わって標的が自分になっても、おかしくはないからだ。
「東の森林には、キメラがでますからね。誰もあんな所を、探そうなんて思いませんよ。盗賊も付いていますからね。大金貨一万枚は、貴方のものですよ」
悪魔の言う事をどこまで信用するのか、普通であれば考えるのかもしれないが、金銭が目先にぶら下がっていれば、話は変わってくるのかもしれない。
昼前から寝ていた響達が、夕方になるとそれぞれのタイミングで、起きて来る。戦いを前にした戦士は、それぞれに決まったルーチンワークが決まっているものだ。
響も今までに数度の戦闘を経験して、ソ-ドブレ-ド一の他に持っていたサーベルを、全長七十センチのブロードソード二本に変更していた。サーベルは、どちらかと言えば騎乗して使うのには良いが、近接戦闘になった場合、突いて斬ると言った細かい動作には、むいていない事が分かったからだ。
そして響は、たばこを一晩水につけた溶液を、ひざ下に振りかけていく。
「響、お前何をしているんだ。そんな物振りかけて?」
そんな響の行いを、不思議に思ったジュリアンが、尋ねて来る。
「ああこれはね、この前森林に入った時、ヘビや毒虫がいる事がわかったから、ヘビや毒虫よけに掛けているんだ。ヘビや毒虫は、たばこのニコチンを嫌うって、前に本で読んだ事があったからね」
ジュリアン他全員が、顔を見合わせている。
「俺にもその液体をくれ!」
「「あたし達にも!」」
みんな、噛まれたり刺されたら、その時はその時と、諦めていたらしい。
「本当に騎士達を呼ばなくて、よかったんですか?」
アリシアは昨夜の会議で、少人数で救出作戦を行うことが決まり、それが少し不満だったらしい。
「夜に、森林の中で戦闘じゃあ、騎士に勝ち目はないんだ…………それじゃぁ行こうか!」
ジュリアンが冒険者らしく、アリシアに説明する。
「お頭……ロックフェル商会の娘、本当に金と引き換えに、帰すんすか?」
ミオに近付き、盗賊の男がミオの髪の毛を触る。
「バカかお前は、金を受け取ったらその娘は娼館へ売り払うんだよ。生娘だから高く売れるぞ!」
お頭の言葉に、ミオは『話が違う』と叫びたいが、口を塞がれしゃべる事が出来ない。
「それじゃあ、売る前に相手して貰っても、いいすか?」
「バカ野郎、それじゃ生娘じゃ、なくなるだろうが! 黙って見回りでもして来い!」
お頭は、話の分からない手下に、いら立ちグラスを投げて、追い出してしまう。
「明日になりゃあ、大金が手に入るんだ。別にお前が生娘でなくてもいいんだぜ……まあ大人しくしとく事だ!」
この男の言う事が、大人しくさせるための言葉なのか、どうかは定かではない。
響達は、昨夜とは違う場所に集まっている。同じ場所だと気付かれていた場合、アンブッシュの危険性があるからだ。
「クロエ、時間だぞ」
響は、小声でクロエを呼び出す。
「はいよ」
「「「…………!」」」
昨夜の作戦会議の時に、『使役しているサキュバス』と説明しておいたが、流石に真夜中に見ると、ジュリアン達も驚いたようだ。
「それじゃ話した様に、犬の餌を撒いた後は、ジュリアン達の援護をたのむ」
響はクロエに、睡眠薬入りの肉団子を渡し、作戦の確認をする。
「空から援護するよ」
ジュリアンに話した後、クロエは空を飛んで行った。
「後は手はず通りで……行って来ます」
響の言った手はずとは、クロエに餌を撒かせて犬が寝たら、ジュリアン達が陽動を仕掛けて、盗賊を引き付ける。その隙に響が突入して、ミオ達女性を助けると言った作戦だ。
「俺達は、陽動だからな。もう少し離れて、火矢を射かけるぞ! 二人ともタイマツを持った奴から、弓で倒す。そして直ぐに後退して、先頭を倒して後退の繰り返しだ。忘れるなよ!」
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