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33.冒険者登録
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ジュリアンに連れて行かれた冒険者組合は、三階建ての高級ホテルのような外観で、中に入ると吹き抜けのホ-ルが広がり、その奥には受付カウンタ-で、三人の女性が冒険者の対応に追われていた。
そして、左には食堂があり、右には武器屋、防具屋と雑貨屋が店を連ねていた。
この組合中でも、顔を知られているジュリアンは、誰に止められる事もなく、カウンタ-横の扉を開き、響を連れて中に入って行く。
そこには、薄暗い室内に重工なテ-ブルが一つあり、制服を着た女性が一人座っていた。
「いらっしゃい、ジュリアン。ノックくらいはして欲しいものね。今日はどのようなご用件?」
彼女はマリア・レジ-ナ、三十歳とまだ若いがこの冒険者組合の組合長だ。三年前までは、チ-ム『ファルコン』のメンバーで、両手剣を使い、火属性持ちの冒険者だったのだ。
「今日は、彼の冒険者登録をしに来たんだ。これが、チ-ム『ファルコン』の推薦状だ! そして、驚くなよ……これが、『ロックフェル商会』マ-ク・ロックフェルの紹介状だ!」
「ほぉ~、ロックフェルの紹介状か……事情は話せないが、若いのに、余程の実力者と言う所だね?」
マリアは、マ-クの紹介状に目を通す。
マリアが、感心するのには訳がある。それは、マ-ク・ロックフェルが、この大陸に点在する冒険者組合連合の理事だからだ。
そしてこの事は、機密扱いとなっている。
マ-クが、冒険者組合連合の理事になったのは、『ロックフェル商会』の支店が他国にも点在しており、問題が起きても各国の冒険者組合に、手助けをさせるのが狙いなのだ。だから、理事の殆どが商人なのである。
冒険者組合自体も、物資、金銭問題に頭を悩ませる事が無くなるので、お互い様なところもある。
ちなみに、マリア・レジ-ナが組合長になったのも、マ-クの後押しがあっての事だ。
「それでは……響くんか? この石板に、両手を乗せてもらえる」
「はい」
響が石板に両手を乗せると、石板が紫色に光りだし、十五と言う数字が浮き上がって来る。
「魔族性持ちとは珍しい……だけどレベル十五と言うのは、低いんじゃないかしら?」
この世界で計測出来るレベルは、最高が九十九となっている。
それを超えると勇者クラスになり、冒険者組合連合の理事の仲間入りとなる資格を持つ。
このレベル確定の元になるのが、個人の持つ魔素量だ。
そして、属性持ちになる為には、最低レベルが三十以上の魔素量が必要で、それ以下では魔法を使う事が出来ないと言われている。
だからマリアは『レベル十五が低い』と、言っているのだ。
「それでは、腕試しと行きましょうか!」
やっぱりそうなるんだぁ~。
ジュリアンさん、笑い堪えてるし…………
こうなる事を、黙っていたな!
マリアの執務室、奥の扉を開くとそこには、地下に続く真っ暗な階段がある。
マリアは、階段わきにある溝に、コップ一杯の油を流し、そこに火を点けると……火を点けると……点けると……あっ!
火打石を忘れたんですか。
響は、ポーチからマッチを出して火を点ける。その火は、溝に沿って階段わきを下へと、照らしていく。
「ななぁんですか、それ~!」
「話が長くなるので、行きましょうか……それ差し上げますので……」
響は、マリアにマッチを渡す。
マリアとジュリアンは、階段を下りながらマッチを点けて、遊んでいる。
火事起こすなよ!
地下に降りるとそこには武闘場があり、マリアは備え付けの松明に火を点けて回る。
「武器はどうします。壁にある物を好きに使って構いませんよ。あたしは、自前のこれで」
マリアは、腰に差した刃渡り五十センチの、二振りの『グラディウスソード』を、叩いて見せた。
響は、マリアの武器を見て、ブロードソード二振りを取り出す。
これで、お互いに両手剣での腕試しとなった。
ジュリアンが立ち合いとなり、向き合う二人は剣を抜き、ジュリアンの一声で戦い始める。
戦いの前に、響はマリアに『ダ-クオ-ラ』を掛けておいた。
マリアの力量を考えると、響に手加減するような余裕を、与えてくれるかどうか分からないからだ。
まず『オートコンバットモード』で、戦ってみる。
リミッター解除レベル1では、レベル四十のマリアの攻撃に、ついて行くのがやっとだ。
次に、『オートコンバットモード』を外してみる。
ダメだ~! 全く攻撃も防御も付いて行けない。
リミッター解除レベル2。
防御は出来るが、攻撃が出来ない。
『オートコンバットモード』オン。攻撃が出来るようになった。だけど動きがぎこちない。
リミッター解除レベル3。
マリアの動きが手に取るように見える。レベル四十ならリミッター解除レベル3で、十分なようだ。
だけど、組合長に勝つのは不味いよな~
リミッター解除レベル2『オートコンバットモード』オン。
これで、互角の戦いだ。
「そこまで! マリアそのくらいでいいんじゃないか」
ジュリアンは、膠着状態になったところで、的確な判断を下す。
「なんだか、こちらが試されているような、感じも有りましたが……いいでしょう」
その後、組合長の執務室で、響の冒険者登録が行われた。
冒険者登録に、お金がいるとは思わなかった……
それも金貨三枚………三十万!
「ああ、金はマ-クさんから預かっているから」
慌てている響を見て、ジュリアンが気付いたようだ。
「それでは、これが登録者カードです。組合で得た報酬と貴方のレベル、そしてチ-ム登録などが、そのカードに登録されます」
「今マリアが言った事だが、響くん、もしよければうちのチ-ムに入らないか?」
「珍しいですね。貴方が勧誘なんて……」
そうだな、色々と知られているから……
こうして響は、チ-ム『ファルコン』の一員となったのである。
そして、左には食堂があり、右には武器屋、防具屋と雑貨屋が店を連ねていた。
この組合中でも、顔を知られているジュリアンは、誰に止められる事もなく、カウンタ-横の扉を開き、響を連れて中に入って行く。
そこには、薄暗い室内に重工なテ-ブルが一つあり、制服を着た女性が一人座っていた。
「いらっしゃい、ジュリアン。ノックくらいはして欲しいものね。今日はどのようなご用件?」
彼女はマリア・レジ-ナ、三十歳とまだ若いがこの冒険者組合の組合長だ。三年前までは、チ-ム『ファルコン』のメンバーで、両手剣を使い、火属性持ちの冒険者だったのだ。
「今日は、彼の冒険者登録をしに来たんだ。これが、チ-ム『ファルコン』の推薦状だ! そして、驚くなよ……これが、『ロックフェル商会』マ-ク・ロックフェルの紹介状だ!」
「ほぉ~、ロックフェルの紹介状か……事情は話せないが、若いのに、余程の実力者と言う所だね?」
マリアは、マ-クの紹介状に目を通す。
マリアが、感心するのには訳がある。それは、マ-ク・ロックフェルが、この大陸に点在する冒険者組合連合の理事だからだ。
そしてこの事は、機密扱いとなっている。
マ-クが、冒険者組合連合の理事になったのは、『ロックフェル商会』の支店が他国にも点在しており、問題が起きても各国の冒険者組合に、手助けをさせるのが狙いなのだ。だから、理事の殆どが商人なのである。
冒険者組合自体も、物資、金銭問題に頭を悩ませる事が無くなるので、お互い様なところもある。
ちなみに、マリア・レジ-ナが組合長になったのも、マ-クの後押しがあっての事だ。
「それでは……響くんか? この石板に、両手を乗せてもらえる」
「はい」
響が石板に両手を乗せると、石板が紫色に光りだし、十五と言う数字が浮き上がって来る。
「魔族性持ちとは珍しい……だけどレベル十五と言うのは、低いんじゃないかしら?」
この世界で計測出来るレベルは、最高が九十九となっている。
それを超えると勇者クラスになり、冒険者組合連合の理事の仲間入りとなる資格を持つ。
このレベル確定の元になるのが、個人の持つ魔素量だ。
そして、属性持ちになる為には、最低レベルが三十以上の魔素量が必要で、それ以下では魔法を使う事が出来ないと言われている。
だからマリアは『レベル十五が低い』と、言っているのだ。
「それでは、腕試しと行きましょうか!」
やっぱりそうなるんだぁ~。
ジュリアンさん、笑い堪えてるし…………
こうなる事を、黙っていたな!
マリアの執務室、奥の扉を開くとそこには、地下に続く真っ暗な階段がある。
マリアは、階段わきにある溝に、コップ一杯の油を流し、そこに火を点けると……火を点けると……点けると……あっ!
火打石を忘れたんですか。
響は、ポーチからマッチを出して火を点ける。その火は、溝に沿って階段わきを下へと、照らしていく。
「ななぁんですか、それ~!」
「話が長くなるので、行きましょうか……それ差し上げますので……」
響は、マリアにマッチを渡す。
マリアとジュリアンは、階段を下りながらマッチを点けて、遊んでいる。
火事起こすなよ!
地下に降りるとそこには武闘場があり、マリアは備え付けの松明に火を点けて回る。
「武器はどうします。壁にある物を好きに使って構いませんよ。あたしは、自前のこれで」
マリアは、腰に差した刃渡り五十センチの、二振りの『グラディウスソード』を、叩いて見せた。
響は、マリアの武器を見て、ブロードソード二振りを取り出す。
これで、お互いに両手剣での腕試しとなった。
ジュリアンが立ち合いとなり、向き合う二人は剣を抜き、ジュリアンの一声で戦い始める。
戦いの前に、響はマリアに『ダ-クオ-ラ』を掛けておいた。
マリアの力量を考えると、響に手加減するような余裕を、与えてくれるかどうか分からないからだ。
まず『オートコンバットモード』で、戦ってみる。
リミッター解除レベル1では、レベル四十のマリアの攻撃に、ついて行くのがやっとだ。
次に、『オートコンバットモード』を外してみる。
ダメだ~! 全く攻撃も防御も付いて行けない。
リミッター解除レベル2。
防御は出来るが、攻撃が出来ない。
『オートコンバットモード』オン。攻撃が出来るようになった。だけど動きがぎこちない。
リミッター解除レベル3。
マリアの動きが手に取るように見える。レベル四十ならリミッター解除レベル3で、十分なようだ。
だけど、組合長に勝つのは不味いよな~
リミッター解除レベル2『オートコンバットモード』オン。
これで、互角の戦いだ。
「そこまで! マリアそのくらいでいいんじゃないか」
ジュリアンは、膠着状態になったところで、的確な判断を下す。
「なんだか、こちらが試されているような、感じも有りましたが……いいでしょう」
その後、組合長の執務室で、響の冒険者登録が行われた。
冒険者登録に、お金がいるとは思わなかった……
それも金貨三枚………三十万!
「ああ、金はマ-クさんから預かっているから」
慌てている響を見て、ジュリアンが気付いたようだ。
「それでは、これが登録者カードです。組合で得た報酬と貴方のレベル、そしてチ-ム登録などが、そのカードに登録されます」
「今マリアが言った事だが、響くん、もしよければうちのチ-ムに入らないか?」
「珍しいですね。貴方が勧誘なんて……」
そうだな、色々と知られているから……
こうして響は、チ-ム『ファルコン』の一員となったのである。
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