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34.大所帯
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「こちらでございます。鍵はお渡しするので、後は宜しくお願い致します」
『ロックフェル商会』から店の男性に、案内されて来た先は、一軒の閉じられた宿屋だった。
それも、『ロックフェル商会』から目と鼻の先と近い。
ここは、売りに出された物件を、『ロックフェル商会』が買い取り、響達の王都での活動の拠点に、貸し与えてくれたのだ。
その裏には、マ-ク・ロックフェルの娘を、アルン村で面倒を見てもらう事への礼と、今後王都で面倒事が起きた場合の、対応を考えた上での事だ。
この宿屋は木造二階建て、入口を入ってホ-ルと受付のカウンターがあり、左手に食堂、右手にバ-カウンターとテ-ブルが置かれ、その奥に厨房があった。
そして階段を上った先には、大小の貸部屋が合わせて十二部屋あり、宿屋の裏手には厩舎と倉庫があった。
響、アリシア、アリス団長、マリア組合長の四人は…………
「何で貴方がいるんですか? 冒険者組合は、そんなに暇なんですか!」
響が驚くのも無理はない、振り向いたら居たのだから。
「別にいいでしょ! 貴方を見付けたら何をするのか、気になったんだから」
先日のいっけんで、目を付けられたようだ。
組合長と言う立場を考えて、響達もマリア組合長に、あまり詳しい話をしていないのだから、仕方ないとも言える。
..
「もぉ~仕方ないなぁ~」
あっさり許してしまう響であった。と言うのも今日は、物件の下調べだけなので、特に隠すような所も無いからだ。
「ここで君達は、宿屋でもしようと言うのですか? それとも娼館とかではないでしょうね?」
マリア組合長にとって、宿屋と管理された娼館は、冒険者達を管理する上で必要な物の一つと言えた。
「違いますよ。食堂と甘味処の店を出そうと、見に来たんです」
アリシアは、マリア組合長の考えを察して説明する。
食堂では酒は出さず。甘味処は、女子供相手の店にして、あまり遅くまでは営業をしない。そして、チ-ム『ファルコン』の拠点となる事を伝えた。
「それじゃ、私もここに住む事にするわ! 私も元チ-ム『ファルコン』の一員だからね」
「「「…………」」」
響達の完敗の瞬間であった。
宿屋をひと通り見て回り、響達は一旦『ロックフェル商会』へ戻る事にした。何故なら、アルン村に戻る所を、他者に見られない様にするためだ。実際、マリア組合長のように疑いを持つ人もいたのだから。
しかし、マリア組合長が一緒に住む事になれば、隠しとおす事も出来ないので、響達は正直にアルン村に付いて話す事にした。
『ロックフェル商会』で、マリア組合長、マ-ク、ジュリアン、ア-リン、モカ、アリシア、アリス団長、ウルム村長、響の十人が集まって話しあった結果。
食堂では、昼に牛丼・かつ丼・親子丼等の丼物を安く提供し、夜は客数が少なくてもいいので、料金を高くコース料理を、提供する事になった。
甘味処の方は、バ-カウンターを解体しパーラー風に改装して、クレープ、パンケーキ、あんみつ、団子、紅茶、ミルクセーキなどを中心に夕方までの営業とした。
そして、店先で安い飴玉と水飴を、子供達だけにタダで配る事にした。実はこれには訳があり、子供達との世間話から、色々な王都の情報を聞き出すのが目的だ。
宿屋の二階にある十二部屋には、ジュリアン、ア-リン、モカ、チ-ム『ファルコン』の三名、マリア組合長、響、アリシアで六部屋。残りの六部屋は、店を手伝うメイドや村娘達の為に、開けておく事にした。
その後、マリア組合長がアルン村に連れて行けと、煩いので連れて行くと、広大な土地に住人が八十八人と少ないのに驚き、一つの提案をして来た。
それは、アルン村と同じく野人に襲われて、難民と化した村人達の一団が、至る所に住み着き問題となっているとの事で、要するにその農民達を引き取ってはどうか、と言う事であった。
「引き取るにしても、それって誘拐になるんじゃないですか?」
響が危惧しているのは、土地を管理する領主にとって村人は、税の元となる作物を作り出す重要な労働力であり、それを手放す事は、領土を無くすに等しいはずだからだ。
「大丈夫よ。領主達は残された農村と村人を守るのに精一杯だから。今は冒険者組合で、難民となった村人達を管理しているから。それに…………もうあの人達には、行く所が無いんだよ」
マリア組合長の、遠くを見るような瞳には、薄っすらと涙が浮かんでいた。
参ったなぁ~
「いったい、何人くらい居るんですか?」
「五百六十二人」
「それちょっと多くない…………ですヵ……まあいいか!」
マリア組合長の後ろにいる、アリシア、アリス団長、ウルム村長、ティス達の目が『引き取れ』と言っていた。
そして、響の元にはアルン村の八十八人に加えて、五百六十二人が増えて総勢六百五十人の大所帯となった。
その中には、百三十六人のドワ-フがおっり、これで鉱山採掘や武器防具の生産が可能となると言う、嬉しい誤算が発生していた。
そして、もう一つの誤算として、引き取る村人一人に付き金貨一枚、合計で五百六十二枚の金貨を冒険者組合から支給されたのである。
『ロックフェル商会』から店の男性に、案内されて来た先は、一軒の閉じられた宿屋だった。
それも、『ロックフェル商会』から目と鼻の先と近い。
ここは、売りに出された物件を、『ロックフェル商会』が買い取り、響達の王都での活動の拠点に、貸し与えてくれたのだ。
その裏には、マ-ク・ロックフェルの娘を、アルン村で面倒を見てもらう事への礼と、今後王都で面倒事が起きた場合の、対応を考えた上での事だ。
この宿屋は木造二階建て、入口を入ってホ-ルと受付のカウンターがあり、左手に食堂、右手にバ-カウンターとテ-ブルが置かれ、その奥に厨房があった。
そして階段を上った先には、大小の貸部屋が合わせて十二部屋あり、宿屋の裏手には厩舎と倉庫があった。
響、アリシア、アリス団長、マリア組合長の四人は…………
「何で貴方がいるんですか? 冒険者組合は、そんなに暇なんですか!」
響が驚くのも無理はない、振り向いたら居たのだから。
「別にいいでしょ! 貴方を見付けたら何をするのか、気になったんだから」
先日のいっけんで、目を付けられたようだ。
組合長と言う立場を考えて、響達もマリア組合長に、あまり詳しい話をしていないのだから、仕方ないとも言える。
..
「もぉ~仕方ないなぁ~」
あっさり許してしまう響であった。と言うのも今日は、物件の下調べだけなので、特に隠すような所も無いからだ。
「ここで君達は、宿屋でもしようと言うのですか? それとも娼館とかではないでしょうね?」
マリア組合長にとって、宿屋と管理された娼館は、冒険者達を管理する上で必要な物の一つと言えた。
「違いますよ。食堂と甘味処の店を出そうと、見に来たんです」
アリシアは、マリア組合長の考えを察して説明する。
食堂では酒は出さず。甘味処は、女子供相手の店にして、あまり遅くまでは営業をしない。そして、チ-ム『ファルコン』の拠点となる事を伝えた。
「それじゃ、私もここに住む事にするわ! 私も元チ-ム『ファルコン』の一員だからね」
「「「…………」」」
響達の完敗の瞬間であった。
宿屋をひと通り見て回り、響達は一旦『ロックフェル商会』へ戻る事にした。何故なら、アルン村に戻る所を、他者に見られない様にするためだ。実際、マリア組合長のように疑いを持つ人もいたのだから。
しかし、マリア組合長が一緒に住む事になれば、隠しとおす事も出来ないので、響達は正直にアルン村に付いて話す事にした。
『ロックフェル商会』で、マリア組合長、マ-ク、ジュリアン、ア-リン、モカ、アリシア、アリス団長、ウルム村長、響の十人が集まって話しあった結果。
食堂では、昼に牛丼・かつ丼・親子丼等の丼物を安く提供し、夜は客数が少なくてもいいので、料金を高くコース料理を、提供する事になった。
甘味処の方は、バ-カウンターを解体しパーラー風に改装して、クレープ、パンケーキ、あんみつ、団子、紅茶、ミルクセーキなどを中心に夕方までの営業とした。
そして、店先で安い飴玉と水飴を、子供達だけにタダで配る事にした。実はこれには訳があり、子供達との世間話から、色々な王都の情報を聞き出すのが目的だ。
宿屋の二階にある十二部屋には、ジュリアン、ア-リン、モカ、チ-ム『ファルコン』の三名、マリア組合長、響、アリシアで六部屋。残りの六部屋は、店を手伝うメイドや村娘達の為に、開けておく事にした。
その後、マリア組合長がアルン村に連れて行けと、煩いので連れて行くと、広大な土地に住人が八十八人と少ないのに驚き、一つの提案をして来た。
それは、アルン村と同じく野人に襲われて、難民と化した村人達の一団が、至る所に住み着き問題となっているとの事で、要するにその農民達を引き取ってはどうか、と言う事であった。
「引き取るにしても、それって誘拐になるんじゃないですか?」
響が危惧しているのは、土地を管理する領主にとって村人は、税の元となる作物を作り出す重要な労働力であり、それを手放す事は、領土を無くすに等しいはずだからだ。
「大丈夫よ。領主達は残された農村と村人を守るのに精一杯だから。今は冒険者組合で、難民となった村人達を管理しているから。それに…………もうあの人達には、行く所が無いんだよ」
マリア組合長の、遠くを見るような瞳には、薄っすらと涙が浮かんでいた。
参ったなぁ~
「いったい、何人くらい居るんですか?」
「五百六十二人」
「それちょっと多くない…………ですヵ……まあいいか!」
マリア組合長の後ろにいる、アリシア、アリス団長、ウルム村長、ティス達の目が『引き取れ』と言っていた。
そして、響の元にはアルン村の八十八人に加えて、五百六十二人が増えて総勢六百五十人の大所帯となった。
その中には、百三十六人のドワ-フがおっり、これで鉱山採掘や武器防具の生産が可能となると言う、嬉しい誤算が発生していた。
そして、もう一つの誤算として、引き取る村人一人に付き金貨一枚、合計で五百六十二枚の金貨を冒険者組合から支給されたのである。
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