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51.ム-ス公爵邸へ
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亜空間ベース『レオン』のメディカルルームには、カプセル状のメディカルポッドが二つある。
現在その内の一つには、ア-リン・リドルが治療のために入っている。
彼女の治療も後二日程で感知すると、さっきティスが教えてくれた。
それを聞いた響は、一つため息をつき安堵するのであった。
響は、自室で装備を脱ぎ、裸の上にガウンを羽織る。
今夜は、これから明日の夜にかけて二十四時間、年に一度、響の胸に付いている赤いクリスタルを外しての、メンテナンスが予定されていた。
この二十四時間の間は、亜空間エネルギ-の供給が止まるため、『ヒビキアイランド』の住人は外出禁止となり、騎士・兵士六千名が警備の為に総動員されていた。
『レオン』のエネルギ-は、亜空間探査用に撒かれたポッドから供給されているが、その量は『レオン』内で消費する最低限の量しかなかった。
クロエは、いつもの様にジュリアンとモカを誘い、ランタンの灯りを燈下した薄暗い食堂で、ビールを片手に『牛肉の大和煮』『サバの味噌煮』缶を開けて、酒盛りをしていた。
灯りや調理に使うエネルギ-も、今は使用禁止だ。だがクロエ達にとっては、この状況が当たり前で何の問題もなかった。
酔ったら後は寝るだけ、なのだから。
響は、メディカルルームに入ると、ガウンを脱ぎメディカルポッドに横になる。
ポッドに敷かれたマットは、ヒンヤリと響の体温を奪って行く。
「マスタ-、それじゃぁ……マスクを付けて……」
響は、琴祢に指示されたように、頭の上にあるマスクを付ける。
前に一度付けた事があるので、迷う事はない。
マスクを付け終えた響は、親指を立てて合図を送る。
「フード・クロ-ズ……ナノマシン安定溶液注入……シークエンス、スタ-ト」
メディカルポッド内に、ナノマシン安定溶液が注入されて行き、ポッド内が溶液で満たされる。
ティス・メイリンのアナウンスを聞きながら、響の意識は徐々に失われて行く。
「ティス、マスタ-のコンディションチェック、オ-ルグリ-ン、メンテナンスに入ってもいいよ」
「了解、クリスタルを外すね」
ティスが端末を操作すると、マットの横から小さな触手が現れて、響のクリスタルの取り外し作業に入るのだった。
シアンは、マゼンタと別れて、ハイリガ-・ム-ス公爵邸を目指して走る。
公爵邸に近づくと、門の外には警備と言うよりも、立っているだけの門番が二人いた。
シアンは、夜も遅く追い返されるのではないかと、公爵邸を訪れる事を少し躊躇したが、追手の事もあり意を決し門へと向かう。
ガズール帝国からの密書を持って来た事を伝えると、やはりあまり良い顔をされなかった。
こんな遅くに訪れた事が、気に入らないのであろう。
門の外から、中の門兵に嫌そうに伝えていた。
しばらくすると、執事らしい身なりの整った老齢の男が現れ、先程までの対応とはまったく違った歓迎を受ける。
「それでは、こちらで少々お待ち下さい」
「はい、ありがとうございます」
執事が出してくれたお茶は温かく、これまでの苦労がこれで一段落すると、シアンは安堵していた。
しかし、シアンとマゼンタを逃がす為に残った三人の事を思うと、早く話を済ませム-ス公爵に手勢を借りてでも、助けに行きたかった。
「お待たせいたしました。シアンさん、公爵は今手が離せないので、私ガルニアがお話を、お聞きしましょう。彼女に直ぐ食べれる食事を用意しなさい」
仕立ての良い服を着たガルニアが、執事を連れてシアンの横を通り、シアンの前に座る。
その姿は、公爵の身内と言われても、納得がいくような威厳を保ち、言葉使いも落ち着いた雰囲気を持ち、シアンを安心させた。
「畏まりました」
ガルニアに命じられた執事は、扉から出て行く。
「では、お話を伺いましょうか」
そのガルニアの言葉を切っ掛けに、シアンは密書を渡して話始めるのだった。
食堂『サミット』では、冒険者達が集まりビ-ルやワインを飲みながら、肉料理を楽しんでいた。
普段であれば、夜の営業はコ-ス料理のみで、とても冒険者達が口に出来る様な金額ではないのだが、日ごろ毎日やって来ては丼物を食べて行き、暇があれば出前に出て行く娘達の、警護に付いて行くのである。
最近では、そのような冒険者が増えて、警護に付いて行く冒険者の順番が、毎朝くじで決められるようになっていた。
そんな姿を毎日見ていたアリシアは、響に相談して二ヶ月に一度、酒と料理を格安な金額で、冒険者達だけに振る舞う事にしたのだ。
ただ、酒を飲んで暴れた場合は、今後この店への出入り禁止にする事が、言い渡されていた。
「店長、ロックフェル商会への料理が出来ました」
厨房から料理を入れた、オカモチを持って村娘が出て来る。
この店は、アリシアを筆頭に可愛い娘ばかりだと、最近は評判になっていた。
そして、その娘達を選んでいるのが響であり、『アイツに不埒な事をさせるな』『皆で見張るぞ』と言うのが、冒険者達の合言葉であった。
「はぁ~い。それじゃぁ夜も遅いから、私が行って来るわ」
アリシアは、腰のベルトに剣を装備して、出前の準備をして行く。
元々アリシアは聖騎士見習いであり、剣の腕前はそこそこであった。
夜盗、チンピラの類であれば、まず負ける事はない。
「はいはい、俺達の出番ですぜ!」
「おい、こらぁ! 次は俺達の番なんだよ! お前ら引っ込んでろ!」
アリシアが、出前に出ると知った冒険者達が、席を立ち集まって来る。
みんなアリシア目当てに、集まった冒険者達だ。
アリシアが出前に出るのは久しぶりで、皆、個人的に話が出来る唯一の一時だから、付いて行きたいのである。
「夜も遅いし、うるさいから皆で行きなさい!」
マリア・レジ-ナ組合長の一声で、十六人もの冒険者達が付いて行く事となった。
現在その内の一つには、ア-リン・リドルが治療のために入っている。
彼女の治療も後二日程で感知すると、さっきティスが教えてくれた。
それを聞いた響は、一つため息をつき安堵するのであった。
響は、自室で装備を脱ぎ、裸の上にガウンを羽織る。
今夜は、これから明日の夜にかけて二十四時間、年に一度、響の胸に付いている赤いクリスタルを外しての、メンテナンスが予定されていた。
この二十四時間の間は、亜空間エネルギ-の供給が止まるため、『ヒビキアイランド』の住人は外出禁止となり、騎士・兵士六千名が警備の為に総動員されていた。
『レオン』のエネルギ-は、亜空間探査用に撒かれたポッドから供給されているが、その量は『レオン』内で消費する最低限の量しかなかった。
クロエは、いつもの様にジュリアンとモカを誘い、ランタンの灯りを燈下した薄暗い食堂で、ビールを片手に『牛肉の大和煮』『サバの味噌煮』缶を開けて、酒盛りをしていた。
灯りや調理に使うエネルギ-も、今は使用禁止だ。だがクロエ達にとっては、この状況が当たり前で何の問題もなかった。
酔ったら後は寝るだけ、なのだから。
響は、メディカルルームに入ると、ガウンを脱ぎメディカルポッドに横になる。
ポッドに敷かれたマットは、ヒンヤリと響の体温を奪って行く。
「マスタ-、それじゃぁ……マスクを付けて……」
響は、琴祢に指示されたように、頭の上にあるマスクを付ける。
前に一度付けた事があるので、迷う事はない。
マスクを付け終えた響は、親指を立てて合図を送る。
「フード・クロ-ズ……ナノマシン安定溶液注入……シークエンス、スタ-ト」
メディカルポッド内に、ナノマシン安定溶液が注入されて行き、ポッド内が溶液で満たされる。
ティス・メイリンのアナウンスを聞きながら、響の意識は徐々に失われて行く。
「ティス、マスタ-のコンディションチェック、オ-ルグリ-ン、メンテナンスに入ってもいいよ」
「了解、クリスタルを外すね」
ティスが端末を操作すると、マットの横から小さな触手が現れて、響のクリスタルの取り外し作業に入るのだった。
シアンは、マゼンタと別れて、ハイリガ-・ム-ス公爵邸を目指して走る。
公爵邸に近づくと、門の外には警備と言うよりも、立っているだけの門番が二人いた。
シアンは、夜も遅く追い返されるのではないかと、公爵邸を訪れる事を少し躊躇したが、追手の事もあり意を決し門へと向かう。
ガズール帝国からの密書を持って来た事を伝えると、やはりあまり良い顔をされなかった。
こんな遅くに訪れた事が、気に入らないのであろう。
門の外から、中の門兵に嫌そうに伝えていた。
しばらくすると、執事らしい身なりの整った老齢の男が現れ、先程までの対応とはまったく違った歓迎を受ける。
「それでは、こちらで少々お待ち下さい」
「はい、ありがとうございます」
執事が出してくれたお茶は温かく、これまでの苦労がこれで一段落すると、シアンは安堵していた。
しかし、シアンとマゼンタを逃がす為に残った三人の事を思うと、早く話を済ませム-ス公爵に手勢を借りてでも、助けに行きたかった。
「お待たせいたしました。シアンさん、公爵は今手が離せないので、私ガルニアがお話を、お聞きしましょう。彼女に直ぐ食べれる食事を用意しなさい」
仕立ての良い服を着たガルニアが、執事を連れてシアンの横を通り、シアンの前に座る。
その姿は、公爵の身内と言われても、納得がいくような威厳を保ち、言葉使いも落ち着いた雰囲気を持ち、シアンを安心させた。
「畏まりました」
ガルニアに命じられた執事は、扉から出て行く。
「では、お話を伺いましょうか」
そのガルニアの言葉を切っ掛けに、シアンは密書を渡して話始めるのだった。
食堂『サミット』では、冒険者達が集まりビ-ルやワインを飲みながら、肉料理を楽しんでいた。
普段であれば、夜の営業はコ-ス料理のみで、とても冒険者達が口に出来る様な金額ではないのだが、日ごろ毎日やって来ては丼物を食べて行き、暇があれば出前に出て行く娘達の、警護に付いて行くのである。
最近では、そのような冒険者が増えて、警護に付いて行く冒険者の順番が、毎朝くじで決められるようになっていた。
そんな姿を毎日見ていたアリシアは、響に相談して二ヶ月に一度、酒と料理を格安な金額で、冒険者達だけに振る舞う事にしたのだ。
ただ、酒を飲んで暴れた場合は、今後この店への出入り禁止にする事が、言い渡されていた。
「店長、ロックフェル商会への料理が出来ました」
厨房から料理を入れた、オカモチを持って村娘が出て来る。
この店は、アリシアを筆頭に可愛い娘ばかりだと、最近は評判になっていた。
そして、その娘達を選んでいるのが響であり、『アイツに不埒な事をさせるな』『皆で見張るぞ』と言うのが、冒険者達の合言葉であった。
「はぁ~い。それじゃぁ夜も遅いから、私が行って来るわ」
アリシアは、腰のベルトに剣を装備して、出前の準備をして行く。
元々アリシアは聖騎士見習いであり、剣の腕前はそこそこであった。
夜盗、チンピラの類であれば、まず負ける事はない。
「はいはい、俺達の出番ですぜ!」
「おい、こらぁ! 次は俺達の番なんだよ! お前ら引っ込んでろ!」
アリシアが、出前に出ると知った冒険者達が、席を立ち集まって来る。
みんなアリシア目当てに、集まった冒険者達だ。
アリシアが出前に出るのは久しぶりで、皆、個人的に話が出来る唯一の一時だから、付いて行きたいのである。
「夜も遅いし、うるさいから皆で行きなさい!」
マリア・レジ-ナ組合長の一声で、十六人もの冒険者達が付いて行く事となった。
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