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63.山頂からの襲撃者
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「ズルガ侯爵、コタン村の討伐の方は、どうなっておる?」
「はいトリニド陛下、重装歩兵五百と騎兵三百を向かわせました」
「その数で大丈夫なのか? あそこを攻めるには、道が問題だと聞くぞ!」
「何も問題はございません。 あの者達を向かわせましたので、兵達は麓の平野で待ち受けていれば、向うから降りて参ります。相手が三百程の数であれば十分な布陣です。まあ、どれ程の者が麓までたどり付けるか………見物でございますなぁ~」
玉座に座るトリニド陛下は、ズルガ侯爵の言葉に頷き、この戦の勝算を確信するのであった。
トリニド陛下は、ガズール帝国の第二王子であったが、王と第一王子が原因不明の病の為、トリニド陛下が現在のガズール帝国を治めていた。
そして、トリニド陛下の執り成しで、異国より来たズルガが侯爵位を賜り、今はガズール帝国の実権を握っていた。
この人事に数多くの貴族達が異議を申し立てたが、その事如くが不慮の死を遂げるか、隠居して人知れず自領へと消えて行った。
現在、ガズール帝国に残る貴族達は、トリニド陛下の子飼いか、家督を継いでズルガ侯爵に付き従う者のみとなっていた。
響の提供した料理を満喫した村人達は、久しぶりの満腹感を味わい、幸せな夜を迎えていた。
見張りを残して、村人達は各々の家へと帰って行き、響も族長夫人の家に泊まる事になった。
そんな村の様子を、山の上から見つめる者達がいた。
王族風の鎧をまとう二人は、馬に乗り魔物達と死人を従えて、村が寝静まるのを息を潜めて待っている。
「響、起きよ! 山より敵が攻めて来るぞ!」
「分かってるよ!」
魔王ベルランスの声に、苛立つかのように返却されたブロードソードと短剣を手に取ると、族長夫人の家から外へと飛び出して行く。
山を見上げると暗くてよく見えない。
響は視覚を暗視モ-ドに切り替える。
そこには、夥しい数の魔物と野人達が、村を目指して山頂より押し寄せていた。
「村の人達に知らせている、余裕は無いな!」
響は徐に両手を上げると、山の山腹に向けて『ダ-クショット』を放って行く。
敵の足止めと村人達に危険を知らせるために、『ダ-クショット』の威力は押さえ気味だ。
山腹の岩が崩れて、村に被害があっては元も子もない。
「何ごとだぁ!」
「この音はなんだ!」
『ダ-クショット』の爆裂音を聞き付けた村の者達が、家やテントから飛び出して来る。
「響殿、あれは………」
暗闇の山腹に響の放つ『ダ-クショット』が、炸裂する光りの中にその姿が浮かび上がる。
「敵です! 魔物や野人達が、向って来ています。早く皆を逃がして下さい! 足止めもそう長くは、つうようしそうもない!」
族長夫人と諜報活動の責任者パ-ソンは、村人を誘導しながら麓で警戒にあたっている、マエラの元を目指して山を下りて行く。
残ったモンタナ達八十一名は、響の後ろで二列になり抜刀して、敵の接近を待ち受ける。
響も敵との距離が近づいた事から、攻撃の内容を足止めから、爆裂の威力を上げて敵への直接攻撃へと、攻撃方法を変えていた。
しかし、爆裂が直撃した一体は倒せるものの、周りに居た敵は吹き飛び、倒したかと思うと暫くすると立ち上がり、また向かって来るのであった。
「あれだけの攻撃を受けて、奴らは不死身かぁ!」
パ-ソンは、響に近づくと確認するかのように、大声を上げる。
「奴らは皆、既に死んでいるんです。あの中に操る奴がいるはずです。入口の砦まで後退して下さい」
パ-ソン達は、響の指示に従い後退して行く。
響も後退すると近づく敵を見て、ポーチから火炎瓶を二十本取り出すと、ビンから伸びる布にパ-ソンが持つ松明の火を移し、敵の前に次々と投げ付けて行き、炎の壁を作って行く。
それを見ていたパ-ソン達も、響の意向を汲んだのか、置かれた火炎瓶に火を点けると、投げ付けて行く。
接近した敵の動きは、炎の壁の前でいったん止まるが、炎の壁の隙間から炎を避けて向って来る魔物達がいた。
響は、ブロードソードを抜くと、『ダ-クショット』を放ちながら、魔物達の中に向かって行く。
最初の相手は、足の速いワーウルフ達だ。
ワーウルフの爪は鋭く、体毛は固い。
並みの騎士では、剣は跳ね返されて撃退どころではないだろう。
しかし、今の響にとっては、ワーウルフの体毛の固さなど、何も貸与されていないブロードソードで十分である。
魔王ベルランスとシンクロした事で、剣を振る速さが十倍になり、検圧はアックスの二十倍を超えていた。
その繰り出されるブロードソードによって、ワーウルフの首は次々と跳ねられて行った。
ワーウルフを十五体倒した辺りで、ナイトベア-と死人と化した野人の集団が集まって来る。
強くは無いけど、数が多いなぁ~!
響の目の前には、まだ二百体近くのワーウルフ、ナイトベア-、死人と化した野人の集団が押し寄せていた。
響よ! あの奥に居る二体のアイスウォ-カ-が見えるか! あれが、こ奴らを操る本体ぞ。
魔王ベルランスが言う先には、馬に乗る二体のアイスウォ-カ-が槍を持ち、戦いの行方を眺めていた。
その姿は、貴族風の鎧をまとい、顔や素肌はミイラのように皮だけとなり、その目は青く不気味に輝いていた。
ベルランス、あの二体を倒せば、何とかなるのか?
ああ、そうじゃ。だが、侮るなよ! 奴らに触れると危険だぞ!
魔王ベルランスは、響に危険だとは知らせるが、何が危険なのかは教えはしなかった。
響の秘められた力量を、見ようとでも考えているのであろう。
何時かは戦わなくてはいけない相手なのだから………
「皆は、砦で敵を押さえてくれ!」
響は、パ-ソン達に向かって指示を告げる。
炎の壁で遮られている内に、パ-ソン達は移動を開始する。
パ-ソン達が砦に入り終える頃には、響の持つブロードソードは三振り目となり、敵の首も二十五を越えていた。
よし、じゃ~行くか!
炎の明るさに照らされる響の姿は、次の瞬間、パ-ソン達の目の前から消えていた。
「はいトリニド陛下、重装歩兵五百と騎兵三百を向かわせました」
「その数で大丈夫なのか? あそこを攻めるには、道が問題だと聞くぞ!」
「何も問題はございません。 あの者達を向かわせましたので、兵達は麓の平野で待ち受けていれば、向うから降りて参ります。相手が三百程の数であれば十分な布陣です。まあ、どれ程の者が麓までたどり付けるか………見物でございますなぁ~」
玉座に座るトリニド陛下は、ズルガ侯爵の言葉に頷き、この戦の勝算を確信するのであった。
トリニド陛下は、ガズール帝国の第二王子であったが、王と第一王子が原因不明の病の為、トリニド陛下が現在のガズール帝国を治めていた。
そして、トリニド陛下の執り成しで、異国より来たズルガが侯爵位を賜り、今はガズール帝国の実権を握っていた。
この人事に数多くの貴族達が異議を申し立てたが、その事如くが不慮の死を遂げるか、隠居して人知れず自領へと消えて行った。
現在、ガズール帝国に残る貴族達は、トリニド陛下の子飼いか、家督を継いでズルガ侯爵に付き従う者のみとなっていた。
響の提供した料理を満喫した村人達は、久しぶりの満腹感を味わい、幸せな夜を迎えていた。
見張りを残して、村人達は各々の家へと帰って行き、響も族長夫人の家に泊まる事になった。
そんな村の様子を、山の上から見つめる者達がいた。
王族風の鎧をまとう二人は、馬に乗り魔物達と死人を従えて、村が寝静まるのを息を潜めて待っている。
「響、起きよ! 山より敵が攻めて来るぞ!」
「分かってるよ!」
魔王ベルランスの声に、苛立つかのように返却されたブロードソードと短剣を手に取ると、族長夫人の家から外へと飛び出して行く。
山を見上げると暗くてよく見えない。
響は視覚を暗視モ-ドに切り替える。
そこには、夥しい数の魔物と野人達が、村を目指して山頂より押し寄せていた。
「村の人達に知らせている、余裕は無いな!」
響は徐に両手を上げると、山の山腹に向けて『ダ-クショット』を放って行く。
敵の足止めと村人達に危険を知らせるために、『ダ-クショット』の威力は押さえ気味だ。
山腹の岩が崩れて、村に被害があっては元も子もない。
「何ごとだぁ!」
「この音はなんだ!」
『ダ-クショット』の爆裂音を聞き付けた村の者達が、家やテントから飛び出して来る。
「響殿、あれは………」
暗闇の山腹に響の放つ『ダ-クショット』が、炸裂する光りの中にその姿が浮かび上がる。
「敵です! 魔物や野人達が、向って来ています。早く皆を逃がして下さい! 足止めもそう長くは、つうようしそうもない!」
族長夫人と諜報活動の責任者パ-ソンは、村人を誘導しながら麓で警戒にあたっている、マエラの元を目指して山を下りて行く。
残ったモンタナ達八十一名は、響の後ろで二列になり抜刀して、敵の接近を待ち受ける。
響も敵との距離が近づいた事から、攻撃の内容を足止めから、爆裂の威力を上げて敵への直接攻撃へと、攻撃方法を変えていた。
しかし、爆裂が直撃した一体は倒せるものの、周りに居た敵は吹き飛び、倒したかと思うと暫くすると立ち上がり、また向かって来るのであった。
「あれだけの攻撃を受けて、奴らは不死身かぁ!」
パ-ソンは、響に近づくと確認するかのように、大声を上げる。
「奴らは皆、既に死んでいるんです。あの中に操る奴がいるはずです。入口の砦まで後退して下さい」
パ-ソン達は、響の指示に従い後退して行く。
響も後退すると近づく敵を見て、ポーチから火炎瓶を二十本取り出すと、ビンから伸びる布にパ-ソンが持つ松明の火を移し、敵の前に次々と投げ付けて行き、炎の壁を作って行く。
それを見ていたパ-ソン達も、響の意向を汲んだのか、置かれた火炎瓶に火を点けると、投げ付けて行く。
接近した敵の動きは、炎の壁の前でいったん止まるが、炎の壁の隙間から炎を避けて向って来る魔物達がいた。
響は、ブロードソードを抜くと、『ダ-クショット』を放ちながら、魔物達の中に向かって行く。
最初の相手は、足の速いワーウルフ達だ。
ワーウルフの爪は鋭く、体毛は固い。
並みの騎士では、剣は跳ね返されて撃退どころではないだろう。
しかし、今の響にとっては、ワーウルフの体毛の固さなど、何も貸与されていないブロードソードで十分である。
魔王ベルランスとシンクロした事で、剣を振る速さが十倍になり、検圧はアックスの二十倍を超えていた。
その繰り出されるブロードソードによって、ワーウルフの首は次々と跳ねられて行った。
ワーウルフを十五体倒した辺りで、ナイトベア-と死人と化した野人の集団が集まって来る。
強くは無いけど、数が多いなぁ~!
響の目の前には、まだ二百体近くのワーウルフ、ナイトベア-、死人と化した野人の集団が押し寄せていた。
響よ! あの奥に居る二体のアイスウォ-カ-が見えるか! あれが、こ奴らを操る本体ぞ。
魔王ベルランスが言う先には、馬に乗る二体のアイスウォ-カ-が槍を持ち、戦いの行方を眺めていた。
その姿は、貴族風の鎧をまとい、顔や素肌はミイラのように皮だけとなり、その目は青く不気味に輝いていた。
ベルランス、あの二体を倒せば、何とかなるのか?
ああ、そうじゃ。だが、侮るなよ! 奴らに触れると危険だぞ!
魔王ベルランスは、響に危険だとは知らせるが、何が危険なのかは教えはしなかった。
響の秘められた力量を、見ようとでも考えているのであろう。
何時かは戦わなくてはいけない相手なのだから………
「皆は、砦で敵を押さえてくれ!」
響は、パ-ソン達に向かって指示を告げる。
炎の壁で遮られている内に、パ-ソン達は移動を開始する。
パ-ソン達が砦に入り終える頃には、響の持つブロードソードは三振り目となり、敵の首も二十五を越えていた。
よし、じゃ~行くか!
炎の明るさに照らされる響の姿は、次の瞬間、パ-ソン達の目の前から消えていた。
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