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82.ナルミ・エスタニアの初陣-3
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ブラッド騎士団の殆どの騎士が、傷付いていた。
この世界で傷に対する治療は、アルコ-ル度の高い酒もしくは消毒薬での消毒と、抗菌作用のある薬草をベースにした止血用軟膏を付けるか、傷口を縫い合わせる事くらいのものだ。
後は、『回復ポーション』で、体力の回復をするぐらいだろう。
しかし、『回復ポーション』も、騎士が気軽に使える金額ではない。
冒険者組合で買うと、一瓶小金貨三枚はする。
日本円で換算すると、三万円ってところだ。
その『回復ポーション』を、響は、騎士一人一人に一瓶ずつ配って行く。
ブラッド騎士団の騎士達は、直ぐに飲む者、雑嚢に大切に仕舞う者、それぞれ様々だ。
この『回復ポーション』は、『ドルン村』に住むドワ-フが、薬草に特定の要素を追加する技能『エンチャント』によって作った物だ。
当初、琴祢に作らせようとしたが、武器の時と同じく、出来上がった物は単なる栄養ドリンクに過ぎなかった。
ティスは覆面をしているので顔が見えないが、クロエは見た目アリシアの姿なので、騎士達の心を和ませていた。
ティスとクロエは、騎士の傷の手当に当たっている。
クロエが傷を縫い。
ティスが、出血量が多い者のラインを取って、輸液の点滴を行う。
「………それは、何をやってるんだい?」
クロエも騎士と同じく、ティスがしている事が気になるようだ。
「これはね。出た血の代わりに、この輸液を血管から体にもどし入れてやる道具なの。血が少なくなると、全身の臓器障害や、心臓のポンプ機能の低下で死んでしまうのよ」
「………………」
クロエは、ティスの言う事が理解出来ないようだ。
「アクラ様、こちらに………」
響は、転送されて姿を現したアクラ族長に、『自分の事は内緒に』とウインクして合図を送る。
するとアクラ族長も『分かった』と、ウインクを返してくる。
響は、ナルミの元にアクラ族長を案内すると、アクラ族長の後ろへと回る。
「コタン村のアクラでございます。ご無事でよろしゅう御座いました」
「はい。そちらの方達に、助けて頂きました………。私は、ナルミ・エスタニア。父、ゾンネル・エスタニアの命で参りました。しかし、何故ワーウルフが、ここに居たのでしょうか?」
コタン村の土地に入り、警戒心が薄れた所をワーウルフに襲われたナルミは、アクラ達に不信感を抱いても、仕方ないのかもしれない。
アクラは、そんなナルミに、今までの経緯について話をした。
コタン村が、アイスウォ-カ-に襲われて、壊滅した事を。
そして、今は身を隠している事を、ナルミに話をした。
「そうでしたか………それは、お気の毒に………」
「それで、御父上の命とは?」
「はい。これを渡して、アクラ様の命に従えと言われました」
ナルミは、雑嚢から箱と手紙を取り出すと、アクラに手渡す。
アクラは、箱と手紙を受け取ると、その手紙の内容に目を通す。
そこには、ゾンネル・エスタニア侯爵と、娘タ-ニャ・エスタニアの身に何かあった場合。
ナルミ・エスタニアを領主として、エスタニア侯爵領の後見役を、頼みたいと言う内容が書かれていた。
そして箱の中の物を『ナルミに渡して欲しい』と。
その中には、ゾンネルがいつも身に着けていた。
雷属性のリングが入っていた。
アクラは、その箱と手紙をナルミに手渡すのだった。
「………父は、死ぬつもりなのでしょうか?」
ナルミは、目に涙を浮かべながら、アクラにその答えを求めようとする。
素直に大声で泣き喚ければ楽になるのだろうが、家臣の手前我慢しているようだ。
「その覚悟で、事に当たられるおつもりのようですな。だが、亡くなった訳ではない。これからの事を、考えましょう………。そして、第二王子について、お話しておきたい事があります」
アクラは、秘密機関タンバが調べた事を話した。
第二王子が秘密結社アーネストと裏で手を組み、王と第一王子を幽閉している事を話した。
「そう言えば、父と別れる前にタイニ-小隊長が、第一王子の警護についていた姉が、陛下と王子が病で引き込まれてから、その消息が掴めないと言っていました」
「タイニ-・ギャレイが………」
「タイニ-小隊長を、ご存知だったのですか?」
「タイニ-は、我が村から派遣した。タンバの者です」
アクラは、タイニ-・ギャレイの名を聞き、タイニ-の家族を守れなかった事を、悔やむのであった。
タイニ-の両親と妹は、アイスウォ-カ-に村が襲撃された時に、逃げ遅れて敵の餌食となっていたのだ。
そのタイニ-は、その事を知らずに死んで行った。
そして、タイニ-が既に亡くなっている事を、アクラは知らないのである。
「アクラ様、ナルミ様、一先ずここを離れませんと、又いつ襲われるとも限りません」
響はナルミ達を、亜空間ベース『レオン』のホール隔離スペースに、連れて行く事を決めた。
響よ。その方もお人好しよのう。その方の知人を、手に掛けるやもしれぬ者達を助けるとは。
仕方ないだろ………。アクラさんが、助けて欲しいって言うんだから。取りあえず『レオン』で、傷の手当をしてから領地に送るよ。
「琴祢、ホール隔離スペースの準備をしてくれ。騎士達を治療する。後、遺体は棺に入れて保管。馬は、コタン村に転送してくれ」
「了解。コタン村には連絡しとくね」
響は、琴祢の『準備が出来た』と言う連絡を合図に、ナルミ達を『レオン』のホール隔離スペースに転送する。
その時、『転移魔法を封じた魔封じのクリスタルだ』と言って、ただのガラス玉をナルミ達の目の前で、地面に叩き付けて割って見せたのは、アクラには滑稽に見えたかもしれない。
この世界で傷に対する治療は、アルコ-ル度の高い酒もしくは消毒薬での消毒と、抗菌作用のある薬草をベースにした止血用軟膏を付けるか、傷口を縫い合わせる事くらいのものだ。
後は、『回復ポーション』で、体力の回復をするぐらいだろう。
しかし、『回復ポーション』も、騎士が気軽に使える金額ではない。
冒険者組合で買うと、一瓶小金貨三枚はする。
日本円で換算すると、三万円ってところだ。
その『回復ポーション』を、響は、騎士一人一人に一瓶ずつ配って行く。
ブラッド騎士団の騎士達は、直ぐに飲む者、雑嚢に大切に仕舞う者、それぞれ様々だ。
この『回復ポーション』は、『ドルン村』に住むドワ-フが、薬草に特定の要素を追加する技能『エンチャント』によって作った物だ。
当初、琴祢に作らせようとしたが、武器の時と同じく、出来上がった物は単なる栄養ドリンクに過ぎなかった。
ティスは覆面をしているので顔が見えないが、クロエは見た目アリシアの姿なので、騎士達の心を和ませていた。
ティスとクロエは、騎士の傷の手当に当たっている。
クロエが傷を縫い。
ティスが、出血量が多い者のラインを取って、輸液の点滴を行う。
「………それは、何をやってるんだい?」
クロエも騎士と同じく、ティスがしている事が気になるようだ。
「これはね。出た血の代わりに、この輸液を血管から体にもどし入れてやる道具なの。血が少なくなると、全身の臓器障害や、心臓のポンプ機能の低下で死んでしまうのよ」
「………………」
クロエは、ティスの言う事が理解出来ないようだ。
「アクラ様、こちらに………」
響は、転送されて姿を現したアクラ族長に、『自分の事は内緒に』とウインクして合図を送る。
するとアクラ族長も『分かった』と、ウインクを返してくる。
響は、ナルミの元にアクラ族長を案内すると、アクラ族長の後ろへと回る。
「コタン村のアクラでございます。ご無事でよろしゅう御座いました」
「はい。そちらの方達に、助けて頂きました………。私は、ナルミ・エスタニア。父、ゾンネル・エスタニアの命で参りました。しかし、何故ワーウルフが、ここに居たのでしょうか?」
コタン村の土地に入り、警戒心が薄れた所をワーウルフに襲われたナルミは、アクラ達に不信感を抱いても、仕方ないのかもしれない。
アクラは、そんなナルミに、今までの経緯について話をした。
コタン村が、アイスウォ-カ-に襲われて、壊滅した事を。
そして、今は身を隠している事を、ナルミに話をした。
「そうでしたか………それは、お気の毒に………」
「それで、御父上の命とは?」
「はい。これを渡して、アクラ様の命に従えと言われました」
ナルミは、雑嚢から箱と手紙を取り出すと、アクラに手渡す。
アクラは、箱と手紙を受け取ると、その手紙の内容に目を通す。
そこには、ゾンネル・エスタニア侯爵と、娘タ-ニャ・エスタニアの身に何かあった場合。
ナルミ・エスタニアを領主として、エスタニア侯爵領の後見役を、頼みたいと言う内容が書かれていた。
そして箱の中の物を『ナルミに渡して欲しい』と。
その中には、ゾンネルがいつも身に着けていた。
雷属性のリングが入っていた。
アクラは、その箱と手紙をナルミに手渡すのだった。
「………父は、死ぬつもりなのでしょうか?」
ナルミは、目に涙を浮かべながら、アクラにその答えを求めようとする。
素直に大声で泣き喚ければ楽になるのだろうが、家臣の手前我慢しているようだ。
「その覚悟で、事に当たられるおつもりのようですな。だが、亡くなった訳ではない。これからの事を、考えましょう………。そして、第二王子について、お話しておきたい事があります」
アクラは、秘密機関タンバが調べた事を話した。
第二王子が秘密結社アーネストと裏で手を組み、王と第一王子を幽閉している事を話した。
「そう言えば、父と別れる前にタイニ-小隊長が、第一王子の警護についていた姉が、陛下と王子が病で引き込まれてから、その消息が掴めないと言っていました」
「タイニ-・ギャレイが………」
「タイニ-小隊長を、ご存知だったのですか?」
「タイニ-は、我が村から派遣した。タンバの者です」
アクラは、タイニ-・ギャレイの名を聞き、タイニ-の家族を守れなかった事を、悔やむのであった。
タイニ-の両親と妹は、アイスウォ-カ-に村が襲撃された時に、逃げ遅れて敵の餌食となっていたのだ。
そのタイニ-は、その事を知らずに死んで行った。
そして、タイニ-が既に亡くなっている事を、アクラは知らないのである。
「アクラ様、ナルミ様、一先ずここを離れませんと、又いつ襲われるとも限りません」
響はナルミ達を、亜空間ベース『レオン』のホール隔離スペースに、連れて行く事を決めた。
響よ。その方もお人好しよのう。その方の知人を、手に掛けるやもしれぬ者達を助けるとは。
仕方ないだろ………。アクラさんが、助けて欲しいって言うんだから。取りあえず『レオン』で、傷の手当をしてから領地に送るよ。
「琴祢、ホール隔離スペースの準備をしてくれ。騎士達を治療する。後、遺体は棺に入れて保管。馬は、コタン村に転送してくれ」
「了解。コタン村には連絡しとくね」
響は、琴祢の『準備が出来た』と言う連絡を合図に、ナルミ達を『レオン』のホール隔離スペースに転送する。
その時、『転移魔法を封じた魔封じのクリスタルだ』と言って、ただのガラス玉をナルミ達の目の前で、地面に叩き付けて割って見せたのは、アクラには滑稽に見えたかもしれない。
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