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74.タ-ニャは何処へ2

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 響がロックフェル商会を訪れるのは、久しぶりである。
 応接室に通された響は、少し硬めのソファ-に座り、マ-ク・ロックフェルを待っていた。
 店主のマ-ク・ロックフェルとミオは『ヒビキアイランド』で、度々会っていたようだが、響とマ-クが会うのは、響が娘ミオ・ロックフェルを、盗賊達から救出して以来となる。
 これも、響がこれまでに色々と、厄介な事に巻き込まれていたせいとも言える。

 「これは、響様! よくぞお越しくださいました。これ、直ぐにお茶を用意してくれ」

 「はい」

 響の前に、お茶も出していない事を見たマ-クは、一緒に部屋に入って来たメイドに、急いで指示を出す。そのメイドは、響を警戒しているような雰囲気を残して、部屋を出て行くのだった。

 「すみませんまだ来たばかりで、気が利かなくて」
 
 「彼女は、新しい『ガード』ですか?」

 「………ご存知だったんですか響様」

 「先日、ミオさんから聞きました。『ガード』と言う商家専門の護衛組織がある事を、情報収集も優れているそうですね」

 「そうですか~。はい、商人にとって情報は、金儲けの鍵ですから」

 響が、ミオから『ガード』の事について聞いたのは、マ-クの身辺警護を『タンバ』のメンバ-に、任せてはどうか話をした時に、既にマ-クには『ガード』が、付いていると言う事を聞いたからだ。
 だがそれは、不味かったようである。その証拠に、マ-クが思いのほか動揺している。それもその筈である。『ガード』の事は超極秘事項であり、響と言えども教えてはいけない事だったのだ。
 この事は店の中でも、マ-クとミオしか知らない。

 「ところで、今日は何の御用でお越しですか?」

 マ-クは、『ガード』の事は、もう聞くなと言わんばかりに、話題を逸らしてくる。

 「ああ、もうそろそろ『ヒビキアイランド』でも、貨幣の流通を始めようかと思うんだけど。『ヒビキアイランド』に、両替商の経験者がいなくてね。何処かで教えて貰える所は無いなか?」

 「それでしたら、仲間内に両替商がおりますので、ご紹介致しましょう。それで、取り扱う貨幣の方は、どうされるおつもりですか?」

 「それには、当てがあるから大丈夫」

 マ-クが、『ガード』の事を知られたく無いように、響も貨幣の事をマ-クには教えなかった。と言うのも、この世界と同じ貨幣を、『オートモジュールジェネレーター』を使って、勝手に造るのだから知られる訳には行かないのだ。
 だからと言って、造る貨幣は偽造ではない。材質は全く同じなのだから。
 
 後日、マ-クの紹介で両替商へおもむき教えを受けたメンバ-が、『ヒビキアイランド』で両替商を始めるのであった。
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