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91.連行された住人

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 男達は戦に駆り出され、帝都に残ったのは、女、子供、老人と言ったところだろう。
 連行された女達は、監獄へ連れて行かれ。
 子供達は、教会へ集められていた。
 そして、何故だか老人達は、闘技場に連行されて行ったのだった。

「兵隊が、なぜあの一角だけの自国民を、連れて行くのでしょう?」

「何か訳がありようだな」

 連れて行かれる人数から、どうやら区画を分けて、連れて行っているようだ。
 響は、小型遠隔ドローン『ハチ型』を取り出すと、まずは教会へ向けて飛ばすのだった。

 教会の外には、十人の兵達が集まり何やら話し合っているようだ。
 響は、ドローンを戸の隙間から潜り込ませる。
教会の中では五十人程の子供達が、寄り添うように集まり、泣いている姿が映し出されていた。
 何か変わった事は無いかと、ドローンを飛ばし教会の中を調べてみたが、これと言って変わった事は何もないようだ。
 響は、ドローンを兵達の側に飛ばすと、兵達の会話に聞き入る。

 「隊長、これでよいのでしょうか? 我ら近衛騎士が家族のためとは言え、あんな奴らの為に、罪もない民を捕まえるなんて………」

 「仕方あるまい。トリニド殿下に逆らえば、我らとて、家族諸共皆殺しにされてしまう。それに、子供達はまだいい。当分は生きて居られる。だが、老人達は………もう、生きてはいないだろう。それに、女達は………」

 近衛騎士達は、もうそれ以上誰も話そうとはしなかった。
 
 響は、ドローンを闘技場へ飛ばす。
 響が見ているリストコントロールのモニタ-には、空からの凄惨せいさんな映像が映し出されていた。
 そこには、服をはぎ取られた老人達が、首を斬られ、逆さ吊りにされ、血抜きをされている姿が映し出されていた。
 そして、その奥では、血抜きされた遺体を、オークが大鍋で煮ている。

 こんな事だろうと思ったぞ!

 「何が、こんな事だ!」

 魔王ベルランスの言葉に、怒りを我慢出来ない響は、激怒する。

 オークが居ると言う事は、他にもゴブリン、コボルト、そしてオーガも居るかも知れぬぞ。
 老人は、オークの食欲を満たす餌。
 女は、ゴブリン達の種族を増やすための、畑。
 子供達は、生きた餌と言う所か………。

 「生きた餌とは、なんだ!」

 お主達も、食料を持ち歩くだろう。
 食料を長持ちさせる為には、乾燥させるか、塩付けにするか。
 牛を連れ歩くように、生きたまま連れて行くしかあるまい。

 「子供を食料にするのか!」

 そう言う事だ。
 
 「くそがぁ~!」

 はっはっは。

 「何がおかしいんだ!」

 お主も、牛やブタを食うであろう。
 それと同じ事よ!

 「………………奴らと同じにするな! 俺は、人間だぁ~! ティス、救出するぞ!」

 魔王の理屈に翻弄ほんろうされながらも、立ち位置を明確にする事で、響は結論を下す。

 「はい!」

 まぁ待て! 子供も直ぐに殺される事もあるまい。
 先ずは、城に忍び込み内情を探るのだ。
 それに、よく考えても見ろ。
 今、五十人の子供を助けた所で、この帝都にあと何人子供が居ると思う。
 この帝都の規模なら、男達は居ないにしても、大人を含めれば二万や三万は居るぞ。
 それを、どうやって助け出すのだ?
 
 「………………」

 響には、返す言葉が見つからなかった。
 前回、アリシアの故郷ランゲルンの住民四万を、『ヒビキアイランド』に移した時には、十日ほどかかった。
 あの時より、人数が少ないとは言え、その数は万を超える。
 そして、ここに居る住民は、響からすれば敵なのである。
 『ヒビキアイランド』に、迎へ入れる事など、今は考えられないのであった。
 しかし、ランベル王国とガズール帝国の戦は近く。
 第二王子のトリニドが、出陣するまで待ってはいられなかった。
 響が取るべき答えは一つ、事を急ぐ事だけだった。

 「今夜、城に潜入する!」

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