93 / 95
92.ソ-ドブレ-ド
しおりを挟む
帝都ガズ-ルの町に、昼はもちろんましてや、夜に出歩く者は一人もいない。
この帝都の住人達は、食べる物にも事欠いているはずである。
大人達は我慢出来ても、子供達には今置かれている実情など通用しない。
響が城に付くまでに、どれだけの家から子供達の泣き声が、聞こえて来ただろうか。
そして、そんな住民達をよそに、一部では悲惨とも言える出来事が進んでいる。
響は、光学迷彩を使い、城の中へと忍び込んで行くのだった。
「響は一人で、大丈夫なのかい?」
「行く前に、準備はして行きました………」
教会の近くで待機するクロエの問いかけに、ティスはハッキリとした返答が出来なかった。
と言うのも、響から捕らえられている子供達の事を、任されたからである。
当初、ティスは響に付いて行く心算だった。
しかし、響はクロエを呼び寄せ、『子供達に危険が及んだら、どんな手を使っても躊躇せず助けろ』と言い残して、ティスの心配をよそに一人城へ向かったのだ。
「だけどマスタ-も、あんな技をいつから使えるようになったのかな?」
「琴祢も知らなかったのかい? 錬金術の応用だって言ってたけど………」
琴祢とクロエの会話を聞きながら、ティスは思い出していた。
響が、予めマジックサ-クルが描かれた紙を広げ、その上にキングワ-ムとの戦いで破損した柄だけの『ソ-ドブレ-ド』『七色鋼』『魔素クリスタル』『魔核』赤茶けた色をした『アダマンタイトインゴット』を取り出し、マジックサ-クルの上に置いたかと思うと、両手を付きマジックサ-クルへエネルギ-を流し込んだ。
紙は燃え上がり、マジックサ-クルが地面に刻み込まれ、マジックサ-クルは光を放ち『ソ-ドブレ-ド』と材料を飲み込んで行く。
しばらくするとその光は弱まり、マジックサ-クルの中心から『ソ-ドブレ-ド』が、その姿を現してくる。
響は、『ソ-ドブレ-ド』の柄を右手で掴むと、亜空間エネルギ-を流し込んだ。
その『ソ-ドブレ-ド』の柄からは、黄金に輝くブレ-ドが伸びて来る。
ティスは、響の行動に驚くとともに、黄金に輝くブレ-ドを不思議に見入ってしまう。
それは、今までの『ソ-ドブレ-ド』とは、けた違いのエネルギ-量を持っていたからだ。
それもその筈である。
亜空間エネルギ-を、物質変換してブレ-ドを作る『ソ-ドブレ-ド』に、『七色鋼』を融合した事で反物質が生まれ。
その反物質が亜空間エネルギ-を吸収する事により、膨大なエネルギ-を持ったのだ。
このエネルギ-を持ったブレ-ドで物質を斬れば、物質と反物質が衝突する事により対消滅を起こし、消滅したそれらの質量に相当するエネルギーが、そこに残り大爆発を起こしてしまう。
そこで、そのエネルギーを吸収し、大爆発を避ける為に『魔素クリスタル』を組み込み、エネルギーの暴走を制御する為に、『魔核』を融合したのであった。
『魔核』を融合した事で、響の手にする『ソ-ドブレ-ド』には、まだ幼いが意志が存在していた。
そこで響は、この『ソ-ドブレ-ド』に、『唯月』と言う名を与えてやった。
そして、響が『唯月』に魔素を流し込むと、黄金に輝くブレ-ドの周りに黒煙がまとわり付き、響の腰に在る魔剣を遥かに凌ぐ一振りとなっていた。
「ティス! どうしたんだい考え込んで、響の事でも考えていたんだろう?」
「そんな事ありません! これからの事を、色々と考えていただけです」
「そうかい」
ティスは否定したが、クロエにはバレバレであった。
「んっ! 何か動きがあるようだね」
クロエが指さす方向には、教会へ近づいて来る男達の集団の姿があった。
城の地下牢は、夜になると灯り一つ無く暗闇に包まれる。
そんな地下牢への階段を、視覚を暗視モ-ドにした響が下りて行く。
城の警備兵が、誰もおらぬな!
ああ、へんだな。
響と魔王ベルランスは、城に潜入してからこれまで、警備兵どころか使用人の一人も、見かける事が無かった。
いくら戦の為に兵隊を出したとしても、最低限の警備兵は残すである。
それに、ここは帝国の城である。
使用人達が、居ない訳がないのだ。
響は、地下牢に降りて行き、牢の中を一つ一つ確認して行く。
二十程ある牢の中には、身なりがしっかりした男女や使用人達の、息絶えた死体が折り重なるように、屍の山を造っていた。
城の中に、人が居ない訳だ!
響! 奥を見よ!
魔王ベルランスが言う先には、人の死骸を貪り食う五匹のオークが居た。
そしてその先の牢には、一人の女性が捕らえられていた。
どうやらあのオーク共は、あの女の見張りのようじゃな………。響、どうした?
響に、魔王ベルランスの声など、聞こえてはいなかった。
響は、オーク達に近づくと、腰の魔剣を抜き、死骸を貪り食うオーク達を、切り刻み魔剣の黒煙で焼き払うのだった。
この帝都の住人達は、食べる物にも事欠いているはずである。
大人達は我慢出来ても、子供達には今置かれている実情など通用しない。
響が城に付くまでに、どれだけの家から子供達の泣き声が、聞こえて来ただろうか。
そして、そんな住民達をよそに、一部では悲惨とも言える出来事が進んでいる。
響は、光学迷彩を使い、城の中へと忍び込んで行くのだった。
「響は一人で、大丈夫なのかい?」
「行く前に、準備はして行きました………」
教会の近くで待機するクロエの問いかけに、ティスはハッキリとした返答が出来なかった。
と言うのも、響から捕らえられている子供達の事を、任されたからである。
当初、ティスは響に付いて行く心算だった。
しかし、響はクロエを呼び寄せ、『子供達に危険が及んだら、どんな手を使っても躊躇せず助けろ』と言い残して、ティスの心配をよそに一人城へ向かったのだ。
「だけどマスタ-も、あんな技をいつから使えるようになったのかな?」
「琴祢も知らなかったのかい? 錬金術の応用だって言ってたけど………」
琴祢とクロエの会話を聞きながら、ティスは思い出していた。
響が、予めマジックサ-クルが描かれた紙を広げ、その上にキングワ-ムとの戦いで破損した柄だけの『ソ-ドブレ-ド』『七色鋼』『魔素クリスタル』『魔核』赤茶けた色をした『アダマンタイトインゴット』を取り出し、マジックサ-クルの上に置いたかと思うと、両手を付きマジックサ-クルへエネルギ-を流し込んだ。
紙は燃え上がり、マジックサ-クルが地面に刻み込まれ、マジックサ-クルは光を放ち『ソ-ドブレ-ド』と材料を飲み込んで行く。
しばらくするとその光は弱まり、マジックサ-クルの中心から『ソ-ドブレ-ド』が、その姿を現してくる。
響は、『ソ-ドブレ-ド』の柄を右手で掴むと、亜空間エネルギ-を流し込んだ。
その『ソ-ドブレ-ド』の柄からは、黄金に輝くブレ-ドが伸びて来る。
ティスは、響の行動に驚くとともに、黄金に輝くブレ-ドを不思議に見入ってしまう。
それは、今までの『ソ-ドブレ-ド』とは、けた違いのエネルギ-量を持っていたからだ。
それもその筈である。
亜空間エネルギ-を、物質変換してブレ-ドを作る『ソ-ドブレ-ド』に、『七色鋼』を融合した事で反物質が生まれ。
その反物質が亜空間エネルギ-を吸収する事により、膨大なエネルギ-を持ったのだ。
このエネルギ-を持ったブレ-ドで物質を斬れば、物質と反物質が衝突する事により対消滅を起こし、消滅したそれらの質量に相当するエネルギーが、そこに残り大爆発を起こしてしまう。
そこで、そのエネルギーを吸収し、大爆発を避ける為に『魔素クリスタル』を組み込み、エネルギーの暴走を制御する為に、『魔核』を融合したのであった。
『魔核』を融合した事で、響の手にする『ソ-ドブレ-ド』には、まだ幼いが意志が存在していた。
そこで響は、この『ソ-ドブレ-ド』に、『唯月』と言う名を与えてやった。
そして、響が『唯月』に魔素を流し込むと、黄金に輝くブレ-ドの周りに黒煙がまとわり付き、響の腰に在る魔剣を遥かに凌ぐ一振りとなっていた。
「ティス! どうしたんだい考え込んで、響の事でも考えていたんだろう?」
「そんな事ありません! これからの事を、色々と考えていただけです」
「そうかい」
ティスは否定したが、クロエにはバレバレであった。
「んっ! 何か動きがあるようだね」
クロエが指さす方向には、教会へ近づいて来る男達の集団の姿があった。
城の地下牢は、夜になると灯り一つ無く暗闇に包まれる。
そんな地下牢への階段を、視覚を暗視モ-ドにした響が下りて行く。
城の警備兵が、誰もおらぬな!
ああ、へんだな。
響と魔王ベルランスは、城に潜入してからこれまで、警備兵どころか使用人の一人も、見かける事が無かった。
いくら戦の為に兵隊を出したとしても、最低限の警備兵は残すである。
それに、ここは帝国の城である。
使用人達が、居ない訳がないのだ。
響は、地下牢に降りて行き、牢の中を一つ一つ確認して行く。
二十程ある牢の中には、身なりがしっかりした男女や使用人達の、息絶えた死体が折り重なるように、屍の山を造っていた。
城の中に、人が居ない訳だ!
響! 奥を見よ!
魔王ベルランスが言う先には、人の死骸を貪り食う五匹のオークが居た。
そしてその先の牢には、一人の女性が捕らえられていた。
どうやらあのオーク共は、あの女の見張りのようじゃな………。響、どうした?
響に、魔王ベルランスの声など、聞こえてはいなかった。
響は、オーク達に近づくと、腰の魔剣を抜き、死骸を貪り食うオーク達を、切り刻み魔剣の黒煙で焼き払うのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる