NineRing~捕らわれし者たち~

吉備津 慶

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92.ソ-ドブレ-ド

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 帝都ガズ-ルの町に、昼はもちろんましてや、夜に出歩く者は一人もいない。
 この帝都の住人達は、食べる物にも事欠いているはずである。
 大人達は我慢出来ても、子供達には今置かれている実情など通用しない。
 響が城に付くまでに、どれだけの家から子供達の泣き声が、聞こえて来ただろうか。
 そして、そんな住民達をよそに、一部では悲惨とも言える出来事が進んでいる。
 響は、光学迷彩を使い、城の中へと忍び込んで行くのだった。


 
 「響は一人で、大丈夫なのかい?」

 「行く前に、準備はして行きました………」

 教会の近くで待機するクロエの問いかけに、ティスはハッキリとした返答が出来なかった。
 と言うのも、響から捕らえられている子供達の事を、任されたからである。
 当初、ティスは響に付いて行く心算つもりだった。
 しかし、響はクロエを呼び寄せ、『子供達に危険が及んだら、どんな手を使っても躊躇せず助けろ』と言い残して、ティスの心配をよそに一人城へ向かったのだ。

 「だけどマスタ-も、あんな技をいつから使えるようになったのかな?」
 
 「琴祢も知らなかったのかい? 錬金術の応用だって言ってたけど………」

 琴祢とクロエの会話を聞きながら、ティスは思い出していた。
 響が、あらかじめマジックサ-クルが描かれた紙を広げ、その上にキングワ-ムとの戦いで破損したつかだけの『ソ-ドブレ-ド』『七色鋼』『魔素クリスタル』『魔核』赤茶けた色をした『アダマンタイトインゴット』を取り出し、マジックサ-クルの上に置いたかと思うと、両手を付きマジックサ-クルへエネルギ-を流し込んだ。
 紙は燃え上がり、マジックサ-クルが地面に刻み込まれ、マジックサ-クルは光を放ち『ソ-ドブレ-ド』と材料を飲み込んで行く。
 しばらくするとその光は弱まり、マジックサ-クルの中心から『ソ-ドブレ-ド』が、その姿を現してくる。
 響は、『ソ-ドブレ-ド』の柄を右手で掴むと、亜空間エネルギ-を流し込んだ。
 その『ソ-ドブレ-ド』の柄からは、黄金に輝くブレ-ドが伸びて来る。
 ティスは、響の行動に驚くとともに、黄金に輝くブレ-ドを不思議に見入ってしまう。
 それは、今までの『ソ-ドブレ-ド』とは、けた違いのエネルギ-量を持っていたからだ。
 それもその筈である。
 亜空間エネルギ-を、物質変換してブレ-ドを作る『ソ-ドブレ-ド』に、『七色鋼』を融合した事で反物質が生まれ。
 その反物質が亜空間エネルギ-を吸収する事により、膨大なエネルギ-を持ったのだ。
 このエネルギ-を持ったブレ-ドで物質を斬れば、物質と反物質が衝突する事により対消滅を起こし、消滅したそれらの質量に相当するエネルギーが、そこに残り大爆発を起こしてしまう。
 そこで、そのエネルギーを吸収し、大爆発を避ける為に『魔素クリスタル』を組み込み、エネルギーの暴走を制御する為に、『魔核』を融合したのであった。
 『魔核』を融合した事で、響の手にする『ソ-ドブレ-ド』には、まだ幼いが意志が存在していた。
 そこで響は、この『ソ-ドブレ-ド』に、『唯月いつき』と言う名を与えてやった。
 そして、響が『唯月』に魔素を流し込むと、黄金に輝くブレ-ドの周りに黒煙がまとわり付き、響の腰に在る魔剣を遥かに凌ぐ一振りとなっていた。
 
 「ティス! どうしたんだい考え込んで、響の事でも考えていたんだろう?」

 「そんな事ありません! これからの事を、色々と考えていただけです」

 「そうかい」

 ティスは否定したが、クロエにはバレバレであった。

 「んっ! 何か動きがあるようだね」

 クロエが指さす方向には、教会へ近づいて来る男達の集団の姿があった。



 城の地下牢は、夜になると灯り一つ無く暗闇に包まれる。
 そんな地下牢への階段を、視覚を暗視モ-ドにした響が下りて行く。
 
 城の警備兵が、誰もおらぬな!

 ああ、へんだな。

 響と魔王ベルランスは、城に潜入してからこれまで、警備兵どころか使用人の一人も、見かける事が無かった。
 いくら戦の為に兵隊を出したとしても、最低限の警備兵は残すである。
 それに、ここは帝国の城である。
 使用人達が、居ない訳がないのだ。
 響は、地下牢に降りて行き、牢の中を一つ一つ確認して行く。
 二十程ある牢の中には、身なりがしっかりした男女や使用人達の、息絶えた死体が折り重なるように、屍の山を造っていた。
 
 城の中に、人が居ない訳だ!

 響! 奥を見よ!

 魔王ベルランスが言う先には、人の死骸をむさぼり食う五匹のオークが居た。
 そしてその先の牢には、一人の女性が捕らえられていた。

 どうやらあのオーク共は、あの女の見張りのようじゃな………。響、どうした?

 響に、魔王ベルランスの声など、聞こえてはいなかった。
 響は、オーク達に近づくと、腰の魔剣を抜き、死骸を貪り食うオーク達を、切り刻み魔剣の黒煙で焼き払うのだった。
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