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希望の光
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「おめでとう!菜乃花ちゃん。ようやくね。はあー、本当に良かった!」
両家への挨拶を済ませて婚姻届を提出し、二人は身近な人達へ結婚の挨拶をして回った。
有希と春樹は、とにかく良かった!と手放しで喜んでくれる。
「颯真、本当にヤキモキしたぞ。奥手なお前のことだから時間かかるだろうと思ってたけど、まさか別のドクターにプロポーズされ…」
「春樹!」
すかさず有希が鋭い視線で遮る。
「もう!いつもひと言余計なの。でも本当にハラハラしたわ。颯真先生、菜乃花ちゃん、おめでとう!末永くお幸せにね」
「ああ、そうだな。颯真、菜乃花。これからも夫婦でよろしくな」
颯真と菜乃花は笑顔で頷いた。
そして三浦のところにも二人で報告にいく。
「そうか!本当に良かったな。幸せになるんだよ、菜乃花ちゃん」
「はい、ありがとうございます」
「宮瀬先生、菜乃花ちゃんを少しでも泣かせたら、その時は俺が容赦しないから。覚えておいてね、俺を怒らせるとどうなるか…」
「は、はい!充分承知しております」
「そう。それなら良かった」
そう言うと、改めて二人を笑顔で祝福した。
「おめでとう!君達なら必ず幸せになれる。お似合いの二人だよ」
「ありがとうございます」
二人は深々と頭を下げた。
塚本達、ERのメンバー、小児科病棟のナース達、そして図書館の館長や谷川、加納夫妻も…。
たくさんの笑顔と祝福の言葉を胸に、颯真と菜乃花はより一層幸せを噛みしめていた。
◇
「菜乃花、片付け終わった?」
4月に入ってすぐ、菜乃花は颯真のマンションに引っ越してきた。
そんなに荷物は多くないが、やはり本だけは大量にあり、自分の部屋の棚に並べるのに時間がかかっていた。
「はい、やっと終わりました」
「そう、良かった。リビングでコーヒーでも…」
そこまで言って颯真は言葉を止める。
「ちょっ、菜乃花!だからそれはダメだってば!」
「ん?何がですか?」
菜乃花が颯真の視線の先を追うと、イーゼルに飾った颯真のサイン本があった。
「隠してって言ったでしょ?」
「はい。だからこうやって隠してます」
「どこがだよ?!」
「だって、私の部屋にあれば他の人の目には触れないでしょ?」
「菜乃花の目に触れるのも恥ずかしいの!」
「ええ?それだとサイン本の意味がないじゃない」
「いや、そもそもサイン本じゃないから!俺、筆者じゃないし」
「まあまあ、そうおっしゃらず。ほら、コーヒー淹れましょ!」
「なーのーかー!」
まだ抗議する颯真の背中を笑いながら押して、菜乃花は部屋を出た。
◇
翌年の3月末。
菜乃花は二人で、いつもの菜の花畑に来ていた。
二人といっても颯真とではない。
菜乃花は腕に、生後3ヶ月の赤ちゃんを抱いていた。
クリスマスイブに生まれた娘を連れて、館長や谷川に会いに来ていたのだ。
挨拶を済ませて図書館を出ると、隣の公園に向かい、ベンチに座って菜の花を眺めながら、綺麗だねーと娘に話しかける。
颯真との大切な娘は『どんな困難の中でも希望の光を見出せる子に。そしてキラキラと輝く人生を送って欲しい』と願いを込めて、『ひかり』と名付けた。
「ねえ、ひかり。これからのあなたの人生は、楽しいことばかりではないかもしれない。でもね、忘れないで。どんな時もパパとママはあなたのそばにいて、あなたを支えるから。それにあなたの周りには、こんなにも素敵な世界が広がっている。綺麗な花や自然があなたの心を癒やしてくれる。あなたの住む世界は、こんなにも優しくて温かいのよ」
菜乃花が語りかけると、ひかりは、あー!と声を出してにっこり笑う。
「ふふ、可愛い」
愛娘を見つめてから、菜乃花はもう一度顔を上げて菜の花畑に目をやった。
春の柔らかい陽射しは、颯真の明るい笑顔に似ている。
この温かい世界と優しい颯真は、いつも自分とひかりを守ってくれているのだ。
そう感じて、菜乃花はもう一度ひかりを見つめた。
ふわりと風に揺れて花開く菜の花のように、優しい微笑みを浮かべながら…
(完)
両家への挨拶を済ませて婚姻届を提出し、二人は身近な人達へ結婚の挨拶をして回った。
有希と春樹は、とにかく良かった!と手放しで喜んでくれる。
「颯真、本当にヤキモキしたぞ。奥手なお前のことだから時間かかるだろうと思ってたけど、まさか別のドクターにプロポーズされ…」
「春樹!」
すかさず有希が鋭い視線で遮る。
「もう!いつもひと言余計なの。でも本当にハラハラしたわ。颯真先生、菜乃花ちゃん、おめでとう!末永くお幸せにね」
「ああ、そうだな。颯真、菜乃花。これからも夫婦でよろしくな」
颯真と菜乃花は笑顔で頷いた。
そして三浦のところにも二人で報告にいく。
「そうか!本当に良かったな。幸せになるんだよ、菜乃花ちゃん」
「はい、ありがとうございます」
「宮瀬先生、菜乃花ちゃんを少しでも泣かせたら、その時は俺が容赦しないから。覚えておいてね、俺を怒らせるとどうなるか…」
「は、はい!充分承知しております」
「そう。それなら良かった」
そう言うと、改めて二人を笑顔で祝福した。
「おめでとう!君達なら必ず幸せになれる。お似合いの二人だよ」
「ありがとうございます」
二人は深々と頭を下げた。
塚本達、ERのメンバー、小児科病棟のナース達、そして図書館の館長や谷川、加納夫妻も…。
たくさんの笑顔と祝福の言葉を胸に、颯真と菜乃花はより一層幸せを噛みしめていた。
◇
「菜乃花、片付け終わった?」
4月に入ってすぐ、菜乃花は颯真のマンションに引っ越してきた。
そんなに荷物は多くないが、やはり本だけは大量にあり、自分の部屋の棚に並べるのに時間がかかっていた。
「はい、やっと終わりました」
「そう、良かった。リビングでコーヒーでも…」
そこまで言って颯真は言葉を止める。
「ちょっ、菜乃花!だからそれはダメだってば!」
「ん?何がですか?」
菜乃花が颯真の視線の先を追うと、イーゼルに飾った颯真のサイン本があった。
「隠してって言ったでしょ?」
「はい。だからこうやって隠してます」
「どこがだよ?!」
「だって、私の部屋にあれば他の人の目には触れないでしょ?」
「菜乃花の目に触れるのも恥ずかしいの!」
「ええ?それだとサイン本の意味がないじゃない」
「いや、そもそもサイン本じゃないから!俺、筆者じゃないし」
「まあまあ、そうおっしゃらず。ほら、コーヒー淹れましょ!」
「なーのーかー!」
まだ抗議する颯真の背中を笑いながら押して、菜乃花は部屋を出た。
◇
翌年の3月末。
菜乃花は二人で、いつもの菜の花畑に来ていた。
二人といっても颯真とではない。
菜乃花は腕に、生後3ヶ月の赤ちゃんを抱いていた。
クリスマスイブに生まれた娘を連れて、館長や谷川に会いに来ていたのだ。
挨拶を済ませて図書館を出ると、隣の公園に向かい、ベンチに座って菜の花を眺めながら、綺麗だねーと娘に話しかける。
颯真との大切な娘は『どんな困難の中でも希望の光を見出せる子に。そしてキラキラと輝く人生を送って欲しい』と願いを込めて、『ひかり』と名付けた。
「ねえ、ひかり。これからのあなたの人生は、楽しいことばかりではないかもしれない。でもね、忘れないで。どんな時もパパとママはあなたのそばにいて、あなたを支えるから。それにあなたの周りには、こんなにも素敵な世界が広がっている。綺麗な花や自然があなたの心を癒やしてくれる。あなたの住む世界は、こんなにも優しくて温かいのよ」
菜乃花が語りかけると、ひかりは、あー!と声を出してにっこり笑う。
「ふふ、可愛い」
愛娘を見つめてから、菜乃花はもう一度顔を上げて菜の花畑に目をやった。
春の柔らかい陽射しは、颯真の明るい笑顔に似ている。
この温かい世界と優しい颯真は、いつも自分とひかりを守ってくれているのだ。
そう感じて、菜乃花はもう一度ひかりを見つめた。
ふわりと風に揺れて花開く菜の花のように、優しい微笑みを浮かべながら…
(完)
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