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ビジネスパートナー
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数日後。
正式にホテル フィオーレの須崎支配人から依頼を受け、大地と花穂、そして大森の3人は打ち合わせの為にホテルに向かった。
「これはこれは、お越しくださってありがとうございます。オープニングセレモニーでは本当にお世話になりました」
ロビーで出迎えた須崎は、破顔して3人に握手を求めた。
「おかげさまでホテル フィオーレの第一印象はとても高評で、たくさんのお客様にご利用いただき、ご予約も毎日ほぼ満室です」
「そうでしたか。少しでもお力になれたのなら我々も嬉しく思います」
「本当はこのロビーのクリスマス装飾もお三方にお願いしたかったのですが、時期的に別の業者に頼んでしまっていたので。ですが今後はぜひとも、年間を通してお力添えをいただきたいと思っております」
詳しい話はお食事をしながら、と須崎は3人を個室のあるフレンチレストランに案内した。
「こちらは我が広報課が企画した年間イベントのスケジュールでございます。まだ大まかにしか決めておりませんが、ぜひともこの全てを皆様の手に委ねて盛り上げていただきたい、そう思っております」
食事が来る前に話をしておきたいと、須崎は早速テーブルに資料を広げた。
「こちらの希望といたしましては、やはりホテル名にちなんで花を絡めていただきたい。それだけです。あとは皆様のセンスにお任せいたします。日程が近くなりましたら、広報課の担当者がご連絡いたしますので、打ち合わせをお願いいたします」
「かしこまりました。それまでにこの資料をもとに、ある程度案を練っておきます」
「はい、どうぞよろしくお願いいたします」
丁寧に頭を下げると「どうぞごゆっくり」と言って須崎は仕事に戻っていった。
◇
「ふーん、なるほど。まずはバレンタインとホワイトデーの装飾からか。次に春休み期間の桜のイベント。初夏のあじさい祭りに、夏休みの催し、秋のミニコンサートと冬のクリスマス。それに絡めてレストランやブライダルもフェアを企画するのか。こりゃ、なかなかですな」
資料を見ながら半分おどけたように言って、大森は胸を反らした。
「でもその分やりがいは大盛りだ。大森だけに」
シン……と静けさが広がり、大森が咳払いする。
「とにかくさ、この3人でまた大成功を収めようじゃないの。舞台はこのホテルの全てだ。腕が鳴るぜ」
「そうだな。長期にわたってのプロジェクトになる。よろしく頼む」
「もっちろん。花穂ちゃんもね」
大森に笑顔を向けられて、花穂も「はい」と頷いた。
美味しいフランス料理を味わいながら、花穂の頭の中は早くも空間デザインのことでいっぱいになる。
(これから色んな場所にいって感覚を養っていこう。ホテルやレストラン、ガーデンや、あとどこだろう? ちょうどクリスマスシーズンだから、街のイルミネーションを見るだけでも参考になりそう)
デザインは考え始める時が一番楽しい。
花穂は終始笑顔で食事を楽しみながら、デザインを思い描いていた。
◇
クリスマスシーズンの街並みはカップルの姿で溢れ、バレンタインのイベントにも大いに参考になりそうだ。
花穂は仕事終わりに、ふらりとデートスポットに立ち寄るのが日課になっていた。
(やっぱりなんと言っても写真映えするフォトスポットよね。あとは二人の記念になるような、願いごとを書いて吊るせるような……って、それだと七夕か。うーん、赤いカードにお互いのメッセージを書くのはどう? 大きな白いハート型のボードを設置しておいて、赤いカードに愛のひとことを書き込むの。それを貼っていったらだんだんハートが赤くなって、全部埋まれば赤いハートが完成!って)
その時ボスッと誰かの背中にぶつかり、花穂は「痛っ」と鼻を押さえた。
「すみません、ぼんやりしていて」
「いや、こちらこそ……って、青山?」
「え? 浅倉さん! どうしたんですか、こんなカップルで賑わう街におひとりで」
「銀座の例のジュエリーショップに様子を見に行く途中だから、いわば仕事だ。そう言うお前は誰かと一緒なのか?」
「いえ、ひとりですけど。でも私もデザインの参考にあちこち見て回ってるので、いわば仕事です」
ツンと澄まして言うと「往生際の悪い」と大地が呟く。
「なんですって?」
「いや、別に。じゃあな」
抗議する暇もなく去って行く後ろ姿を、むーっと唇を尖らせて見送る。
(いいもん。だってほんとにこれも仕事のうちなんだからね)
そう思い、くるりと反対方向に向かって歩き始めた時だった。
「彼女ー、なになに? さっきの男にフラれたの? それなら俺とデートしようよ」
「は?」
いきなり見知らぬ男に肩を抱かれて、花穂はキョトンと顔を見上げる。
「あの、私になにかご用ですか?」
「そう、君にご用だよー。どこに行こうか」
強引に歩き始める男に花穂は足を踏ん張るが、抵抗も虚しく身体ごと抱き寄せられた。
「やめてください」
「君だってこんなカップルだらけの中、ひとりぼっちは寂しいでしょ? つき合ってあげるって言ってんの」
「そんなこと頼んでません!」
必死で身をよじるが、力では敵わない。
このままどこかに連れて行かれるのかと怖くなった時、いきなり横から手が伸びてきて、グイッと花穂を男から引き離した。
「人の女に手出すんじゃねえよ」
え?と顔を上げると、花穂は大地の腕の中に抱きしめられていた。
「浅倉さん!」
男は「チッ! なんだよ」と舌打ちして去って行く。
大地は腕を緩めて身体を離すと、花穂を見て小さくため息をついた。
「お前な、ナンパされてもついて行くんじゃない。危ないだろ」
「違います! ついて行ったりなんてしません。男の人って力が強くて、抵抗しても敵わなくて……」
強引に引っ張られた時の恐怖が蘇り、花穂はうつむいて涙をこらえる。
(こんなことで泣くつもりなんかなかったのに)
唇を噛みしめた時、右手をギュッと大地に握りしめられた。
「俺から離れるなよ」
「……はい」
大勢のカップルが行き交う中を、手を繋がれたまま歩き出す。
「それで、どこに行くつもりだったんだ?」
「えっと、特に決めてませんでした。恋人たちが喜びそうなフォトスポットがないかなって」
「ふうん。なら、ジュエリーショップにつき合ってもらえるか?」
「はい。私も実際の様子を見に行きたいです」
「分かった」
そのまま10分ほど歩き続けてたどり着くと、店内はたくさんのカップルで賑わっていた。
「すごいですね! ハイブランドのお店なのに、こんなにギュウギュウになってるなんて」
店に入ろうとするカップルにドアマンがうやうやしく頭を下げ、店内の混雑の為、入場を制限していると話している。
「クリスマス前だからな。一番忙しい時期なんだろう」
「なるほど。でもここまでくると、もはや店内の装飾なんて誰も見てくれなさそうですね」
「そんなことはない。外からだと分かりづらいけど、中にいればたくさんの煌めきが目に飛び込んでくる。それにショーケースも、クリスタルが華やかにジュエリーを引き立てている」
「そうだといいなあ」
ガラス越しに店内の様子を見守っていると、通りに面したディスプレイに目を留めた女の子が隣の彼の腕を引いた。
「わあ、見て。この指輪すごく素敵。大人っぽくて高級感があって、憧れちゃうな」
「うん、いいね。じゃあエンゲージリングはこれにしようか」
「えっ!」
女の子は驚いたように目を見開いたあと、ぽろぽろと涙をこぼし始めた。
(ええ!? ど、どうしたのかしら)
身体を固くして横目で様子をうかがっていると、彼が優しく女の子を抱きしめた。
「返事は指輪を贈った時にちょうだい」
「うんっ!」
女の子はギュッと彼に抱きついて胸に顔をうずめている。
「ははっ、これでノーって言われたら立ち直れないな」
彼の言葉に、ようやく花穂は理解する。
(こ、これは、もしや。そういうシチュエーション? なんて素敵なの、ドラマみたい)
真っ赤になって固まっていると、大地が繋いだ手を引いて歩き出した。
「おい、いくら感激したからって泣くなよ。いい迷惑だ」
「な、泣いて、なんか、ううっ」
「こら! 人の服で顔を拭うな」
「大丈夫です、泣いてませんから」
「泣いてるだろうが!俺のコートで涙を拭くなってば」
「だってあんなこと言われたら、誰だって……」
「お前が言われた訳じゃないだろ。ちょ、鼻水だけはやめろよ?」
「私、今すぐ彼にイエスって伝えたい!」
「なんでお前が!」
大通りを抜けて路地裏に入ると、大地はようやく花穂の手を離す。
「ほら、顔拭け」
そう言ってネイビーのハンカチを差し出した。
「浅倉さん、ハンカチ持ち歩いてるんですか? すごいですね」
「持ってないお前がおかしいんだろ! まったく。ほら、早く拭け」
「あ、大丈夫です。もうすっかり乾きましたから」
「……さては全部俺のカシミアのコートに吸わせたな」
「これ、カシミアですか? どうりで肌触りが良かった訳ですね。いいなー、カシミア」
スリスリとコートをなでる花穂に、はあ……と大地は深いため息をつく。
「なんか、もう、疲れた。帰るぞ」
「店長に挨拶しなくていいんですか?」
「あんなに忙しそうなんだ。迷惑なだけだろ。また日を改める」
「そうですね」
大地は車道に出るとタクシーに手を挙げて止め、慣れた様子で花穂のマンションの場所を運転手に伝えた。
「ありがとうございます、浅倉さん。タクシー代は会社でお支払いしますからね」
「だから大きな声で言うなってば!」
大地はこめかみを押さえながら窓枠に肘をつき、最後まで無言を貫いていた。
正式にホテル フィオーレの須崎支配人から依頼を受け、大地と花穂、そして大森の3人は打ち合わせの為にホテルに向かった。
「これはこれは、お越しくださってありがとうございます。オープニングセレモニーでは本当にお世話になりました」
ロビーで出迎えた須崎は、破顔して3人に握手を求めた。
「おかげさまでホテル フィオーレの第一印象はとても高評で、たくさんのお客様にご利用いただき、ご予約も毎日ほぼ満室です」
「そうでしたか。少しでもお力になれたのなら我々も嬉しく思います」
「本当はこのロビーのクリスマス装飾もお三方にお願いしたかったのですが、時期的に別の業者に頼んでしまっていたので。ですが今後はぜひとも、年間を通してお力添えをいただきたいと思っております」
詳しい話はお食事をしながら、と須崎は3人を個室のあるフレンチレストランに案内した。
「こちらは我が広報課が企画した年間イベントのスケジュールでございます。まだ大まかにしか決めておりませんが、ぜひともこの全てを皆様の手に委ねて盛り上げていただきたい、そう思っております」
食事が来る前に話をしておきたいと、須崎は早速テーブルに資料を広げた。
「こちらの希望といたしましては、やはりホテル名にちなんで花を絡めていただきたい。それだけです。あとは皆様のセンスにお任せいたします。日程が近くなりましたら、広報課の担当者がご連絡いたしますので、打ち合わせをお願いいたします」
「かしこまりました。それまでにこの資料をもとに、ある程度案を練っておきます」
「はい、どうぞよろしくお願いいたします」
丁寧に頭を下げると「どうぞごゆっくり」と言って須崎は仕事に戻っていった。
◇
「ふーん、なるほど。まずはバレンタインとホワイトデーの装飾からか。次に春休み期間の桜のイベント。初夏のあじさい祭りに、夏休みの催し、秋のミニコンサートと冬のクリスマス。それに絡めてレストランやブライダルもフェアを企画するのか。こりゃ、なかなかですな」
資料を見ながら半分おどけたように言って、大森は胸を反らした。
「でもその分やりがいは大盛りだ。大森だけに」
シン……と静けさが広がり、大森が咳払いする。
「とにかくさ、この3人でまた大成功を収めようじゃないの。舞台はこのホテルの全てだ。腕が鳴るぜ」
「そうだな。長期にわたってのプロジェクトになる。よろしく頼む」
「もっちろん。花穂ちゃんもね」
大森に笑顔を向けられて、花穂も「はい」と頷いた。
美味しいフランス料理を味わいながら、花穂の頭の中は早くも空間デザインのことでいっぱいになる。
(これから色んな場所にいって感覚を養っていこう。ホテルやレストラン、ガーデンや、あとどこだろう? ちょうどクリスマスシーズンだから、街のイルミネーションを見るだけでも参考になりそう)
デザインは考え始める時が一番楽しい。
花穂は終始笑顔で食事を楽しみながら、デザインを思い描いていた。
◇
クリスマスシーズンの街並みはカップルの姿で溢れ、バレンタインのイベントにも大いに参考になりそうだ。
花穂は仕事終わりに、ふらりとデートスポットに立ち寄るのが日課になっていた。
(やっぱりなんと言っても写真映えするフォトスポットよね。あとは二人の記念になるような、願いごとを書いて吊るせるような……って、それだと七夕か。うーん、赤いカードにお互いのメッセージを書くのはどう? 大きな白いハート型のボードを設置しておいて、赤いカードに愛のひとことを書き込むの。それを貼っていったらだんだんハートが赤くなって、全部埋まれば赤いハートが完成!って)
その時ボスッと誰かの背中にぶつかり、花穂は「痛っ」と鼻を押さえた。
「すみません、ぼんやりしていて」
「いや、こちらこそ……って、青山?」
「え? 浅倉さん! どうしたんですか、こんなカップルで賑わう街におひとりで」
「銀座の例のジュエリーショップに様子を見に行く途中だから、いわば仕事だ。そう言うお前は誰かと一緒なのか?」
「いえ、ひとりですけど。でも私もデザインの参考にあちこち見て回ってるので、いわば仕事です」
ツンと澄まして言うと「往生際の悪い」と大地が呟く。
「なんですって?」
「いや、別に。じゃあな」
抗議する暇もなく去って行く後ろ姿を、むーっと唇を尖らせて見送る。
(いいもん。だってほんとにこれも仕事のうちなんだからね)
そう思い、くるりと反対方向に向かって歩き始めた時だった。
「彼女ー、なになに? さっきの男にフラれたの? それなら俺とデートしようよ」
「は?」
いきなり見知らぬ男に肩を抱かれて、花穂はキョトンと顔を見上げる。
「あの、私になにかご用ですか?」
「そう、君にご用だよー。どこに行こうか」
強引に歩き始める男に花穂は足を踏ん張るが、抵抗も虚しく身体ごと抱き寄せられた。
「やめてください」
「君だってこんなカップルだらけの中、ひとりぼっちは寂しいでしょ? つき合ってあげるって言ってんの」
「そんなこと頼んでません!」
必死で身をよじるが、力では敵わない。
このままどこかに連れて行かれるのかと怖くなった時、いきなり横から手が伸びてきて、グイッと花穂を男から引き離した。
「人の女に手出すんじゃねえよ」
え?と顔を上げると、花穂は大地の腕の中に抱きしめられていた。
「浅倉さん!」
男は「チッ! なんだよ」と舌打ちして去って行く。
大地は腕を緩めて身体を離すと、花穂を見て小さくため息をついた。
「お前な、ナンパされてもついて行くんじゃない。危ないだろ」
「違います! ついて行ったりなんてしません。男の人って力が強くて、抵抗しても敵わなくて……」
強引に引っ張られた時の恐怖が蘇り、花穂はうつむいて涙をこらえる。
(こんなことで泣くつもりなんかなかったのに)
唇を噛みしめた時、右手をギュッと大地に握りしめられた。
「俺から離れるなよ」
「……はい」
大勢のカップルが行き交う中を、手を繋がれたまま歩き出す。
「それで、どこに行くつもりだったんだ?」
「えっと、特に決めてませんでした。恋人たちが喜びそうなフォトスポットがないかなって」
「ふうん。なら、ジュエリーショップにつき合ってもらえるか?」
「はい。私も実際の様子を見に行きたいです」
「分かった」
そのまま10分ほど歩き続けてたどり着くと、店内はたくさんのカップルで賑わっていた。
「すごいですね! ハイブランドのお店なのに、こんなにギュウギュウになってるなんて」
店に入ろうとするカップルにドアマンがうやうやしく頭を下げ、店内の混雑の為、入場を制限していると話している。
「クリスマス前だからな。一番忙しい時期なんだろう」
「なるほど。でもここまでくると、もはや店内の装飾なんて誰も見てくれなさそうですね」
「そんなことはない。外からだと分かりづらいけど、中にいればたくさんの煌めきが目に飛び込んでくる。それにショーケースも、クリスタルが華やかにジュエリーを引き立てている」
「そうだといいなあ」
ガラス越しに店内の様子を見守っていると、通りに面したディスプレイに目を留めた女の子が隣の彼の腕を引いた。
「わあ、見て。この指輪すごく素敵。大人っぽくて高級感があって、憧れちゃうな」
「うん、いいね。じゃあエンゲージリングはこれにしようか」
「えっ!」
女の子は驚いたように目を見開いたあと、ぽろぽろと涙をこぼし始めた。
(ええ!? ど、どうしたのかしら)
身体を固くして横目で様子をうかがっていると、彼が優しく女の子を抱きしめた。
「返事は指輪を贈った時にちょうだい」
「うんっ!」
女の子はギュッと彼に抱きついて胸に顔をうずめている。
「ははっ、これでノーって言われたら立ち直れないな」
彼の言葉に、ようやく花穂は理解する。
(こ、これは、もしや。そういうシチュエーション? なんて素敵なの、ドラマみたい)
真っ赤になって固まっていると、大地が繋いだ手を引いて歩き出した。
「おい、いくら感激したからって泣くなよ。いい迷惑だ」
「な、泣いて、なんか、ううっ」
「こら! 人の服で顔を拭うな」
「大丈夫です、泣いてませんから」
「泣いてるだろうが!俺のコートで涙を拭くなってば」
「だってあんなこと言われたら、誰だって……」
「お前が言われた訳じゃないだろ。ちょ、鼻水だけはやめろよ?」
「私、今すぐ彼にイエスって伝えたい!」
「なんでお前が!」
大通りを抜けて路地裏に入ると、大地はようやく花穂の手を離す。
「ほら、顔拭け」
そう言ってネイビーのハンカチを差し出した。
「浅倉さん、ハンカチ持ち歩いてるんですか? すごいですね」
「持ってないお前がおかしいんだろ! まったく。ほら、早く拭け」
「あ、大丈夫です。もうすっかり乾きましたから」
「……さては全部俺のカシミアのコートに吸わせたな」
「これ、カシミアですか? どうりで肌触りが良かった訳ですね。いいなー、カシミア」
スリスリとコートをなでる花穂に、はあ……と大地は深いため息をつく。
「なんか、もう、疲れた。帰るぞ」
「店長に挨拶しなくていいんですか?」
「あんなに忙しそうなんだ。迷惑なだけだろ。また日を改める」
「そうですね」
大地は車道に出るとタクシーに手を挙げて止め、慣れた様子で花穂のマンションの場所を運転手に伝えた。
「ありがとうございます、浅倉さん。タクシー代は会社でお支払いしますからね」
「だから大きな声で言うなってば!」
大地はこめかみを押さえながら窓枠に肘をつき、最後まで無言を貫いていた。
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