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七月に入ると、新しいスタッフの男の子が入ってきた。
なんでも、アメリカの有名なジャズの音楽院を卒業して帰国したばかりだという。
「佐川 光です。よろしくお願いします」
いかにもアメリカ帰りといった金髪と着崩したファッションに、おー、新たな世代の人種だーと思いながら、小夜も皆と一緒に拍手で迎える。
「佐川くんはジャズピアノが専攻だそうです。それに二十三歳と若いし、お客様のお問い合わせにも頼もしく答えてくれると思います。みんな、よろしくね」
「はい」
店長の言葉に返事をしながら、同い年か、と小夜はもう一度しげしげと彼を見る。
「えっと、佐川くんはしばらく小夜についてもらおうかな。同じピアノ専攻だし、確か年も同じよね?」
すると彼が、「えっ!」と驚いて小夜を見つめた。
「ほんとに二十三歳っすか? 十七くらいかと思った」
「ええ!? まさか」
「いや、だって。アメリカだと多分お酒出してもらえないっすよ。どう見てもティーンエイジャーですって」
「うっ……。すみませんねえ、大人の色気がないもんで」
「ははは! まあ、いいっすよ」
なんだこのノリは?と小夜は眉をひそめる。
(軽いなあ。嫌味っぽく返しても通じないし。文化の違い?)
この先が思いやられるが、しばらくは彼についていなければならない。
店長が「じゃあ、朝会終わり。今日もよろしくお願いします」と締めて解散となった。
◇
「えっと、それでは佐川くん」
「同い年だし、光でいいよ、小夜ちゃん」
「いやいや、ここは日本なんでね。佐川くんで」
「じゃあそう呼ばれたら、俺は小夜ちゃんって返す。アメリカ帰りなんでね」
「はいー?」
「光って呼んでくれたら、藤原さんって返すから」
「なによそれ。おかしいでしょ?」
「そういうゲーム」
小夜はもうポカンとするしかない。
仕事の話以前に、普通の会話すらままならない。
光はマイペースに、ポップスの棚から楽譜を取り出してぱらぱらとめくっている。
「へえー、今の日本ってこんなタイトルの曲が流行ってるんだ。ながっ! もはや文章じゃん」
「ああ、そうなんだよね。流行歌ってそういう傾向があるかも」
「流行歌かあ。いい音楽なら二十年先も三十年先も残っててほしいな」
おや、初めて真面目なセリフを聞いたと小夜は感心した。
「光くんは、ジャズをやってるんだよね?」
「そうだよ、小夜」
「ちょっと! 藤原さんって返す約束でしょ?」
「光って呼び捨てにしてくれたらね。光くん、だと小夜って返す」
「もう、なんなのよそれ。じゃあもう佐川くんにするから」
「わかったよ、小夜」
むー!っと小夜は光を横目で睨む。
「ははっ! 日本の女の子っておもしれえ」
「面白くないし、今は仕事中です。ほら、早くついて来て。店内を説明するから」
「サンキュー、小夜」
もう一度ジロリと視線を送ってから、小夜は光に背を向けて歩き出した。
「じゃあ、まずは入口から順に説明します。入って右側が楽器の展示と販売のコーナー。左側が楽譜。正面の丸いステージにあるグランドピアノは、主にミニコンサートやデモンストレーションに使ってます」
「ミニコンサート?」
「そう。音楽家を招いて、ピアノのソロだったり、フルートやヴァイオリンの伴奏だったり」
「へえ。ジャズも演奏する?」
「あ、言われてみればジャズのコンサートはなかったかも?」
「ふうん。やっぱりまだまだ日本はジャズって馴染みがないんだな」
どこか寂しそうに呟く光に、小夜は励ますように言う。
「そんなことないよ。若い世代はあんまり知らないかもしれないけど、年輩の男性とかはジャズ大好きだよ。私もバーで演奏する時は必ずジャズも弾くようにしてるし」
「え? 小夜、バーでジャズ弾いてるんだ。聴いてみたい」
「いやいやいや、光くんに比べたら全然ですよ。音大で専攻してたのはクラシックだから」
必死に手を振って否定してから、小夜は「そうだ!」と思いつく。
「光くん、早速デモンストレーションでジャズピアノ弾いてくれない? 店長に聞いてくるから!」
そう言うと、返事も待たずに小夜はカウンターに向かった。
「店長! 光くんにデモでジャズピアノ弾いてもらってもいいですか?」
「へえ、いいわね。私も聴きたい」
「はい! じゃあ早速お願いしてきます」
そしてまた光のもとへ戻る。
「光くん、弾いてみて」
「なんか小夜、ほんとに子どもみたいだな。ちょこまかどっか行ったと思ったら、目輝かせて戻って来るし」
「ね、ほら。みんなも集まってきたし、聴かせてよ」
「はいはい。ちびっこ小夜ちゃんにお願いされたら弾かなきゃな」
光はひょうひょうとしながらステージに上がり、ストンとピアノの前に座る。
しばらく天井を見上げたかと思ったら、いきなりジャン!とパワー全開で弾き始めた。
「す、すごっ」
思わず小夜は目を見開く。
うねるような音圧が押し寄せ、たたみかけるようなリズムに鼓動が速くなった。
(なにこれ。旋律も拍子も掴みどころがない)
伝わってくるグルーヴにただ呑み込まれそうになる。
全身の血が脈打つような興奮に包まれた。
「わあ、かっこいいね」
店内に入って来たばかりの女性客たちは、光のピアノに引き寄せられる。
楽譜のコーナーにいたギターを背負った若い男の子も、ステージの前までやって来た。
(やっぱりジャンルなんて関係ない。いいものはいいんだ)
小夜は改めてそう思いながら、生き生きと躍動するように演奏する光を見つめていた。
最後の音を、まるで身体が跳ねるようにジャン!と光が響かせると、皆は一斉に拍手を贈る。
立ち上がった光は、にこっと人懐っこい笑顔を浮かべてからお辞儀をした。
「どうだった? 小夜」
「すっごかった! ジャズってああいうのを言うのね。私が弾いてたのはジャズじゃなかった」
「ははっ、なんだそれ」
「だって私の認識では、ジャズって『ズーダズーダ』って感じなんだもん。でも光くんのは全然違った」
「小夜、バーで『ズーダズーダ』弾いてたのか?」
「うん、今も弾いてる。やだ、恥ずかしくなってきちゃった。もう弾けない」
「いいじゃん、そういうのがいわゆるモダンジャズの王道だからさ。けど、ジャズは常に進化してる。遥か昔からの奏法を守り続けるクラシックとは違ってね」
うんうん、と小夜は頷いた。
「はあ、なんか新たな世界が開けた感じ。でも絶対に真似できないな」
「あっさり真似されたら、俺もへこむわ」
「そうだよね。光くんはアメリカの名門でしっかり学んできた優秀なジャズピアニストだもんね」
「小夜も音大でクラシック勉強したんだろ? 俺だって小夜の真似はできない。それでいいんだよ。音楽は一人一人違っててさ」
「そっか、そうだね。でも光くんにジャズ教えてもらいたい。私にできる範囲で取り入れたいんだ。バーのお客様に喜んでもらいたいから」
「そういうことなら、いつでもどうぞ」
「ほんと? 嬉しい! ありがとう」
さっきまでのわかり合えない関係ではなく、小夜は光との今後にわくわくし始めていた。
なんでも、アメリカの有名なジャズの音楽院を卒業して帰国したばかりだという。
「佐川 光です。よろしくお願いします」
いかにもアメリカ帰りといった金髪と着崩したファッションに、おー、新たな世代の人種だーと思いながら、小夜も皆と一緒に拍手で迎える。
「佐川くんはジャズピアノが専攻だそうです。それに二十三歳と若いし、お客様のお問い合わせにも頼もしく答えてくれると思います。みんな、よろしくね」
「はい」
店長の言葉に返事をしながら、同い年か、と小夜はもう一度しげしげと彼を見る。
「えっと、佐川くんはしばらく小夜についてもらおうかな。同じピアノ専攻だし、確か年も同じよね?」
すると彼が、「えっ!」と驚いて小夜を見つめた。
「ほんとに二十三歳っすか? 十七くらいかと思った」
「ええ!? まさか」
「いや、だって。アメリカだと多分お酒出してもらえないっすよ。どう見てもティーンエイジャーですって」
「うっ……。すみませんねえ、大人の色気がないもんで」
「ははは! まあ、いいっすよ」
なんだこのノリは?と小夜は眉をひそめる。
(軽いなあ。嫌味っぽく返しても通じないし。文化の違い?)
この先が思いやられるが、しばらくは彼についていなければならない。
店長が「じゃあ、朝会終わり。今日もよろしくお願いします」と締めて解散となった。
◇
「えっと、それでは佐川くん」
「同い年だし、光でいいよ、小夜ちゃん」
「いやいや、ここは日本なんでね。佐川くんで」
「じゃあそう呼ばれたら、俺は小夜ちゃんって返す。アメリカ帰りなんでね」
「はいー?」
「光って呼んでくれたら、藤原さんって返すから」
「なによそれ。おかしいでしょ?」
「そういうゲーム」
小夜はもうポカンとするしかない。
仕事の話以前に、普通の会話すらままならない。
光はマイペースに、ポップスの棚から楽譜を取り出してぱらぱらとめくっている。
「へえー、今の日本ってこんなタイトルの曲が流行ってるんだ。ながっ! もはや文章じゃん」
「ああ、そうなんだよね。流行歌ってそういう傾向があるかも」
「流行歌かあ。いい音楽なら二十年先も三十年先も残っててほしいな」
おや、初めて真面目なセリフを聞いたと小夜は感心した。
「光くんは、ジャズをやってるんだよね?」
「そうだよ、小夜」
「ちょっと! 藤原さんって返す約束でしょ?」
「光って呼び捨てにしてくれたらね。光くん、だと小夜って返す」
「もう、なんなのよそれ。じゃあもう佐川くんにするから」
「わかったよ、小夜」
むー!っと小夜は光を横目で睨む。
「ははっ! 日本の女の子っておもしれえ」
「面白くないし、今は仕事中です。ほら、早くついて来て。店内を説明するから」
「サンキュー、小夜」
もう一度ジロリと視線を送ってから、小夜は光に背を向けて歩き出した。
「じゃあ、まずは入口から順に説明します。入って右側が楽器の展示と販売のコーナー。左側が楽譜。正面の丸いステージにあるグランドピアノは、主にミニコンサートやデモンストレーションに使ってます」
「ミニコンサート?」
「そう。音楽家を招いて、ピアノのソロだったり、フルートやヴァイオリンの伴奏だったり」
「へえ。ジャズも演奏する?」
「あ、言われてみればジャズのコンサートはなかったかも?」
「ふうん。やっぱりまだまだ日本はジャズって馴染みがないんだな」
どこか寂しそうに呟く光に、小夜は励ますように言う。
「そんなことないよ。若い世代はあんまり知らないかもしれないけど、年輩の男性とかはジャズ大好きだよ。私もバーで演奏する時は必ずジャズも弾くようにしてるし」
「え? 小夜、バーでジャズ弾いてるんだ。聴いてみたい」
「いやいやいや、光くんに比べたら全然ですよ。音大で専攻してたのはクラシックだから」
必死に手を振って否定してから、小夜は「そうだ!」と思いつく。
「光くん、早速デモンストレーションでジャズピアノ弾いてくれない? 店長に聞いてくるから!」
そう言うと、返事も待たずに小夜はカウンターに向かった。
「店長! 光くんにデモでジャズピアノ弾いてもらってもいいですか?」
「へえ、いいわね。私も聴きたい」
「はい! じゃあ早速お願いしてきます」
そしてまた光のもとへ戻る。
「光くん、弾いてみて」
「なんか小夜、ほんとに子どもみたいだな。ちょこまかどっか行ったと思ったら、目輝かせて戻って来るし」
「ね、ほら。みんなも集まってきたし、聴かせてよ」
「はいはい。ちびっこ小夜ちゃんにお願いされたら弾かなきゃな」
光はひょうひょうとしながらステージに上がり、ストンとピアノの前に座る。
しばらく天井を見上げたかと思ったら、いきなりジャン!とパワー全開で弾き始めた。
「す、すごっ」
思わず小夜は目を見開く。
うねるような音圧が押し寄せ、たたみかけるようなリズムに鼓動が速くなった。
(なにこれ。旋律も拍子も掴みどころがない)
伝わってくるグルーヴにただ呑み込まれそうになる。
全身の血が脈打つような興奮に包まれた。
「わあ、かっこいいね」
店内に入って来たばかりの女性客たちは、光のピアノに引き寄せられる。
楽譜のコーナーにいたギターを背負った若い男の子も、ステージの前までやって来た。
(やっぱりジャンルなんて関係ない。いいものはいいんだ)
小夜は改めてそう思いながら、生き生きと躍動するように演奏する光を見つめていた。
最後の音を、まるで身体が跳ねるようにジャン!と光が響かせると、皆は一斉に拍手を贈る。
立ち上がった光は、にこっと人懐っこい笑顔を浮かべてからお辞儀をした。
「どうだった? 小夜」
「すっごかった! ジャズってああいうのを言うのね。私が弾いてたのはジャズじゃなかった」
「ははっ、なんだそれ」
「だって私の認識では、ジャズって『ズーダズーダ』って感じなんだもん。でも光くんのは全然違った」
「小夜、バーで『ズーダズーダ』弾いてたのか?」
「うん、今も弾いてる。やだ、恥ずかしくなってきちゃった。もう弾けない」
「いいじゃん、そういうのがいわゆるモダンジャズの王道だからさ。けど、ジャズは常に進化してる。遥か昔からの奏法を守り続けるクラシックとは違ってね」
うんうん、と小夜は頷いた。
「はあ、なんか新たな世界が開けた感じ。でも絶対に真似できないな」
「あっさり真似されたら、俺もへこむわ」
「そうだよね。光くんはアメリカの名門でしっかり学んできた優秀なジャズピアニストだもんね」
「小夜も音大でクラシック勉強したんだろ? 俺だって小夜の真似はできない。それでいいんだよ。音楽は一人一人違っててさ」
「そっか、そうだね。でも光くんにジャズ教えてもらいたい。私にできる範囲で取り入れたいんだ。バーのお客様に喜んでもらいたいから」
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