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再会
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控え室で着替えを終え、小夜はスマートフォンを手にしていた。
ロビーで待ってる、と言って先に出ていった光にメッセージを打つ。
【マスターがケーキを振る舞ってくれたの。これからいただくから、光くんは先に帰っててね】
送信するとテーブルにスマートフォンを置き、美味しそうなブッシュドノエルに思わず笑みを浮かべた。
「いただきまーす」
手を合わせてから、早速ひとくち食べてみる。
(んー、美味しい。コンサートも無事に終わったし、最高のクリスマスイブ)
ふふっと頬に手を当てて、紅茶と一緒に美味しく味わった。
「さてと、マスターに挨拶して帰ろう」
荷物をまとめると、店内に繋がるドアを開けた。
次の瞬間……
(えっ?)
月明かりに浮かび上がるステージの上でピアノに向かっている人影に、小夜は息を呑んだまま動けなくなった。
(嘘でしょ、幻? だってあの人……)
どうしても信じられない。
ここに想がいるなんて。
誰もいないバーで、ピアノの前に座った想は、うつむいたまま微動だにしない。
その姿に、やっぱり幻想なんだと思った時だった。
想がゆっくりと顔を上げて、鍵盤に手を載せる。
長い指が柔らかくピアノに触れた刹那、綺麗に澄み切った音色が、真っ直ぐ小夜の心に届いて響いた。
小夜の胸はギュッと締めつけられ、なにも考えられなくなる。
優しくささやくようなメロディ。
温かく包み込んでくれるような音色。
直接語りかけてくる想の言葉。
想いのこもった演奏に、小夜の目から涙が溢れた。
頬を伝ってポロポロとこぼれ落ちる涙をどうすることもできず、ただ小夜はその場に立ち尽くし、想の奏でるピアノに全身を包まれる。
(この曲は、彼の想いそのもの。伝えたかったすべて)
小夜はただそのことだけを確信していた。
◇
演奏を終えた想は、やり切ったというようにしばらく動かなかった。
顔を伏せ、ただ現実が戻ってくるのを待っているようにも見える。
本当に彼なのだろうか。
やはりこれは夢では?
小夜が再びそんな考えにとらわれた時、想がゆっくりと顔を上げ、ふと視線を移した。
(あっ……)
見つかってしまう、と思った時には遅かった。
想は小夜に気づくと目を見開き、ガタッと音を立てて立ち上がる。
「……小夜?」
小夜の胸がドキッと跳ねた。
あの声で名前を呼ばれるとは。
(たったひと晩のできごとを、彼はまだ覚えていたの? 遊びのつもりで、ほんのちょっと手を出しただけの相手を?)
いいえ、違う。
彼はそんな人ではない。
それくらい、最初からわかっていたはず。
なぜならあの夜、大切に愛おしそうに抱いてくれたから。
壊れものに触れるかのように、そっと優しく。
まるで今聴いたばかりのピアノのように。
そう考えていた小夜は、またしても動くのが遅れた。
想が焦りを隠さずに小夜のもとへと駆け寄って来る。
「待て! 小夜」
立ち去ろうとした小夜の腕を掴み、そのまま胸に抱きしめた。
(え……?)
いったいなにが起きているのかと、小夜は信じられない思いで身を固くする。
切なさがそのまま伝わってくるかのように、想は小夜の頭を抱え込み、耳元でささやいた。
「……小夜」
かすれた声で振り絞るように名前を呼ばれ、小夜の胸がキュッと痛む。
「ずっと、ずっと求めてた。俺の心が、君を」
それはまるで魂の悲痛な叫びのようで、かすかに身体が震えている想に、小夜の目にも涙が込み上げてきた。
心の奥底にしまい込み、決して考えてはいけないと目をそらしてきた自分の気持ちが、せきを切ったように溢れ出す。
想も、小夜も。
おずおずと想の背中に手を回し、小夜は想の胸に顔をうずめて涙をこぼす。
想はそんな小夜を、ますます強く抱きしめていた。
ロビーで待ってる、と言って先に出ていった光にメッセージを打つ。
【マスターがケーキを振る舞ってくれたの。これからいただくから、光くんは先に帰っててね】
送信するとテーブルにスマートフォンを置き、美味しそうなブッシュドノエルに思わず笑みを浮かべた。
「いただきまーす」
手を合わせてから、早速ひとくち食べてみる。
(んー、美味しい。コンサートも無事に終わったし、最高のクリスマスイブ)
ふふっと頬に手を当てて、紅茶と一緒に美味しく味わった。
「さてと、マスターに挨拶して帰ろう」
荷物をまとめると、店内に繋がるドアを開けた。
次の瞬間……
(えっ?)
月明かりに浮かび上がるステージの上でピアノに向かっている人影に、小夜は息を呑んだまま動けなくなった。
(嘘でしょ、幻? だってあの人……)
どうしても信じられない。
ここに想がいるなんて。
誰もいないバーで、ピアノの前に座った想は、うつむいたまま微動だにしない。
その姿に、やっぱり幻想なんだと思った時だった。
想がゆっくりと顔を上げて、鍵盤に手を載せる。
長い指が柔らかくピアノに触れた刹那、綺麗に澄み切った音色が、真っ直ぐ小夜の心に届いて響いた。
小夜の胸はギュッと締めつけられ、なにも考えられなくなる。
優しくささやくようなメロディ。
温かく包み込んでくれるような音色。
直接語りかけてくる想の言葉。
想いのこもった演奏に、小夜の目から涙が溢れた。
頬を伝ってポロポロとこぼれ落ちる涙をどうすることもできず、ただ小夜はその場に立ち尽くし、想の奏でるピアノに全身を包まれる。
(この曲は、彼の想いそのもの。伝えたかったすべて)
小夜はただそのことだけを確信していた。
◇
演奏を終えた想は、やり切ったというようにしばらく動かなかった。
顔を伏せ、ただ現実が戻ってくるのを待っているようにも見える。
本当に彼なのだろうか。
やはりこれは夢では?
小夜が再びそんな考えにとらわれた時、想がゆっくりと顔を上げ、ふと視線を移した。
(あっ……)
見つかってしまう、と思った時には遅かった。
想は小夜に気づくと目を見開き、ガタッと音を立てて立ち上がる。
「……小夜?」
小夜の胸がドキッと跳ねた。
あの声で名前を呼ばれるとは。
(たったひと晩のできごとを、彼はまだ覚えていたの? 遊びのつもりで、ほんのちょっと手を出しただけの相手を?)
いいえ、違う。
彼はそんな人ではない。
それくらい、最初からわかっていたはず。
なぜならあの夜、大切に愛おしそうに抱いてくれたから。
壊れものに触れるかのように、そっと優しく。
まるで今聴いたばかりのピアノのように。
そう考えていた小夜は、またしても動くのが遅れた。
想が焦りを隠さずに小夜のもとへと駆け寄って来る。
「待て! 小夜」
立ち去ろうとした小夜の腕を掴み、そのまま胸に抱きしめた。
(え……?)
いったいなにが起きているのかと、小夜は信じられない思いで身を固くする。
切なさがそのまま伝わってくるかのように、想は小夜の頭を抱え込み、耳元でささやいた。
「……小夜」
かすれた声で振り絞るように名前を呼ばれ、小夜の胸がキュッと痛む。
「ずっと、ずっと求めてた。俺の心が、君を」
それはまるで魂の悲痛な叫びのようで、かすかに身体が震えている想に、小夜の目にも涙が込み上げてきた。
心の奥底にしまい込み、決して考えてはいけないと目をそらしてきた自分の気持ちが、せきを切ったように溢れ出す。
想も、小夜も。
おずおずと想の背中に手を回し、小夜は想の胸に顔をうずめて涙をこぼす。
想はそんな小夜を、ますます強く抱きしめていた。
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