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雨に打たれて
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重い足取りで帰路につく。
頭の中は、どうしてこんなことに? いつまで続くの?という言葉がぐるぐると回り続けていた。
(明日からなにしよう……)
楽しい予定も思いつかないまま、自宅のマンションに着いた。
だがエントランスを見て、美月はハッとする。
見覚えのない女性三人が、なにやら話しながらエントランスの脇に立っていた。
(誰? まさか、私を探して?)
自宅マンションまで把握されているはずはない。
誰か別の住人の知り合いだろう。
そう自分に言い聞かせるが、でも、もし、という気持ちがよぎった。
それに今日は、美空は横須賀の実家に泊まることになっている。
美月は、心細さと不安でいっぱいになり、マンションに背を向けて来た道を戻り始めた。
行く宛もなく、気づけばいつものカフェに来ていた。
温かいカプチーノを飲んで、ようやく人心地つく。
本を読む気にもならず、ひたすらうつむいたまま必死に心を落ち着けていた。
◇
どれくらいそうしていたのだろう。
ザーッというかすかな音に、美月は顔を上げる。
(雨……。いつの間に?)
窓の外は、降りしきる雨で景色が霞んで見えた。
「あー、降ってきた」
「ほんとだ。もう梅雨入りしたもんね」
近くのテーブル席から、女の子達の会話が聞こえてくる。
「やだなー。雨の日って髪型も決まらないし、服も濡れちゃうからオシャレ出来ないよね」
「分かる。バッグも靴も、防水スプレーしないといけないし」
「私、もう開き直って、レインコートとレインシューズで通勤してるよ」
「それ、正解だよ。最近は可愛いの売ってるもんね」
「ねー。今年も新調しようかな」
「うんうん。テンション上げて、鬱陶しい梅雨を乗り切ろう!」
楽しそうに笑う女の子達を、美月は遠くに感じた。
(私とは違う。こんなふうに楽しい日々は送れない。私の心境は、この雨そのもの)
明るい女の子達の雰囲気に居たたまれなくなり、美月は席を立った。
カフェを出ると屋根の下で、バッグの中から折りたたみ傘を取り出す。
その拍子に、文庫本も一緒にバッグから落ちた。
パサッと開いたページから、またしても栞がひらりと滑り落ちる。
拾い上げようと屋根の下から1歩踏み出した美月に、サーッと雨が降り注ぐ。
緊張の糸が切れたように、ふいに涙が込み上げてきた。
(もう嫌だ、なにもかも)
しゃがみ込むと、両腕の中に顔をうずめる。
雨に打たれていたい。
全部全部、どうでもいい。
投げやりになってそう考えた時、突然雨が止んだ。
え?と、美月は顔を上げる。
「どうした!?」
「……雨宮さん?」
優吾が傘をかざして屈み込み、心配そうに美月の様子をうかがっていた。
「なにがあった?」
「あ、いえ。栞を拾おうとしただけです」
美月は急いで、足元の栞と本を拾ってから立ち上がる。
「すみません、ありがとうございました」
顔を伏せたままお礼を言い、その場から立ち去ろうとする美月を、優吾が後ろから腕を伸ばして止めた。
「ちょっと待って。どうして泣いてる?」
「違います、これは雨で」
美月は慌てて手のひらで頬を拭う。
「泣いてるだろう。なにがあった?」
「本当になにもないんです。それでは、失礼します」
再び頭を下げる美月に、優吾は着ていたサマージャケットを脱いでふわりと羽織らせた。
「え? あの……」
「そのままでは風邪を引く。うちまで送るから、おいで」
美月はその場に佇んで優吾の手を振りほどいた。
「風間さん?」
「えっと、一人で帰れますので」
「……そう。髪も濡れてるし、身体も冷えてるだろうから、タクシーを使った方がいい。そこの通りで拾おう」
そう言って優吾は美月の肩を抱き、傘の中に入れた。
大通りに出ると、手を挙げて空車のタクシーを止める。
「どうぞ、乗って」
「あの、ジャケットを」
美月が返そうとすると、優吾は首を振った。
「そのまま着てて」
美月の腕を支えて後部シートに座らせると、優吾は運転手に「お願いします」と声をかけてから美月に尋ねる。
「自宅はどっち方面?」
「あの……今夜は自宅には、帰れなくて」
「え?」
消え入りそうなほど小さく呟いてうつむいた美月を、優吾はしばらくじっと見つめてから、自分もタクシーに乗り込んだ。
「すみません、有明までお願いします」
運転手にそう告げる優吾を、今度は美月がじっと見つめる。
「あの、雨宮さん?」
「ひとまず俺の部屋に行こう。とにかく身体を温めないと。話はそれからだ」
そう言うとスマートフォンを取り出してなにやら操作し始めた優吾に、美月はそれ以上は言えずに口をつぐんだ。
◇
「どうぞ入って」
着いたのは湾岸エリアの高層マンション。
25階に上がると、優吾は突き当りの部屋のドアを開けて、美月を振り返った。
「はい、失礼します」
促されるまま、美月はぼんやりとした表情で中に足を踏み入れる。
パッと明るくなった玄関の奥の部屋から、温かい空気が流れてきた。
「暖房を入れておいた。すぐにシャワーを浴びておいで。お湯も張ってあるから」
「え? あの、そんな。ドライヤーだけ貸していただければ、すぐに帰ります」
「どこに? 自宅には帰れないんじゃないのか?」
「ですから、その……。どこか、夜を明かせるところに」
優吾は大きなため息をつく。
「きちんとした性格かと思いきや、随分危なっかしいことを言うんだな。分かってる? 女の子が雨に濡れたまま夜の街をさまようのが、どんなに危険かってこと」
「……はい」
「分かってないね。冷えきった身体のままでいたら、風邪を引くってことも。ほら、早く温まっておいで」
優吾は美月をパウダールームに連れて行くと、タオルとバスローブを渡した。
「服はこの洗濯機に入れて、このボタンを押して。自動で乾燥までいくから。シャンプーやボディソープも、俺ので良ければなんでも自由に使って。じゃあ、ごゆっくり」
パタンとドアが閉まり、静けさが広がる。
途端に寒気がして、美月は身震いした。
服を脱いで洗濯機に入れ、スイッチを押してからバスルームに入る。
「わあ、素敵」
まるでホテルのような、広くて高級感あふれるバスルームに、美月は思わずうっとりと呟いた。
早速シャワーを浴びると、温かさと心地良さに心の底からホッとした。
「えっと、これもお借りしていいのかな?」
スタイリッシュなボトルが並ぶラックに目を凝らし、シャンプーやコンディショナーを借りて髪を洗う。
ボディーソープのポンプからは、ふんわりときめ細かな泡が出てきて、思わず笑みが浮かんだ。
「はあ、気持ちいい」
大きなバスタブのお湯に肩まで浸かり、手足を伸ばすと、心も身体もほぐれていく。
「幸せ……」
ポツリと呟いてから、さっきまであんなに打ちひしがれてたのに?と、自分に苦笑いした。
「単純だな、私って」
いや、案外そういうものかもしれない。
気持ちが落ち込んでいる時は、せめて身体だけでも労ろう。
そうすれば、自然に心も回復するかもしれないから。
美月はそう思いながら、ゆっくりと時間をかけて身体を温めていた。
◇
「お風呂ありがとうございました」
髪もドライヤーで乾かしてから、美月はリビングでコーヒーを淹れている優吾に声をかけた。
「どういたしまして。温まった?」
「はい。とっても気持ち良かったです」
「そう」
美月に笑顔を向けてから、優吾はふと真顔になる。
「そのバスローブ、そんなに大きかった?」
「え?」
美月は自分が着ているバスローブに目を落とした。
丈は足首まであり、袖も手の甲が隠れるくらい長い。
「雨宮さんにはぴったりかと思いますが、私には……。子どもが大人サイズを着たみたいですね」
「うん。バスローブの萌え袖って、なんかちょっと、やられる」
「もえそでって、なんですか?」
「いや、ごめん。いいよ、知らなくて。コーヒーどうぞ」
取り繕うように、優吾は美月をソファに促した。
「それで、聞いてもいいか? 帰れない事情を」
「あ、はい」
コーヒーを飲んで落ち着くと、優吾に切り出され、美月は順を追って話し始める。
全て聞き終えると、優吾は「そうだったのか」と呟いた。
「大変だったな。近年のSNSの影響は、凄まじいものがある。テレビの中の世界とは違って、実生活に直結する。職場も自宅も脅かされたのでは、心身ともに参ってしまう。君は自分が思うよりも、もっと大変な状況にあったはずだ。本当によくがんばった」
思わぬ言葉をかけられて、美月の目が涙で潤む。
「これ以上我慢する必要はない。君はなにも悪くないんだから」
「でも、どうすればいいのか分からなくて……」
「しばらく仕事を休めるんだろう? まずはゆっくり安全な場所で過ごすといい。それからよければ、そのSNSの写真を俺も見てみていいか?」
「はい。私はSNSをやってないのでよく分からないのですが、友利 健二と検索すれば出るそうです」
「分かった、ありがとう」
優吾はスマートフォンを取り出すと、早速検索して記事にざっと目を通す。
「確かにかなり話題になってるな。だけど友利 健二がなにも反応していないのが幸いだ。本人が、取るに足りない噂に過ぎないという姿勢でいれば、少しずつ騒ぎも収まると思う。もう少しの辛抱だ」
「はい」
「さてと、じゃあ食事にしよう。お腹空いただろう?」
言われてみれば、なにも食べていなかったが、お腹が空いている感覚もなかった。
「温めるだけの、超必殺手抜き時短メニューをご用意するよ」
「ふふっ、なんですかそれ」
「まあ、見てなって。ダイニングテーブルにいて、すぐに運ぶから」
「お手伝いします」
「レンジに入れるだけだぞ?」
「ふふふ、はい」
キッチンに並んで立ち、レトルトの惣菜をお皿に移して温める。
「スープはどっちがいい? ミネストローネか、クラムチャウダー。俺のおすすめはクラムチャウダー」
「ふふっ。ではクラムチャウダーをお願いします」
「いい選択だ」
一人でいるとふさぎ込むばかりだったが、誰かがそばにいてくれるだけで、こうも気分が明るくなるとは。
美月は優吾に感謝しながら、美味しい食事を楽しんだ。
◇
「雨宮さん、本当にありがとうございました。そろそろ服も乾いたと思うので、着替えたら帰りますね」
食事のあとにそう切り出すと、優吾は心配そうな表情を浮かべた。
「……本当に大丈夫か?」
「はい。噂を否定する為にも、ビクビクしないで堂々としていたいです」
「そうか、分かった。じゃあせめて車で送る。着替えておいで」
「ありがとうございます」
美月はパウダールームに行くと、洗濯機から服を取り出して着替える。
乾燥を終えたばかりの暖かくふわふわした着心地に、思わず笑みがこぼれた。
「雨宮さん、お待たせしま……」
リビングに戻った美月は、険しい表情を浮かべてスマートフォンを見ている優吾に驚いて言葉を止める。
「雨宮さん? どうかしましたか?」
「ああ、うん。実は……ついさっき友利 健二がコメントを発表したらしい。噂になっている写真は事実無根だと」
「えっ、そうなのですか?」
「お相手の方のご迷惑になるような行為はやめていただくよう、切にお願い申し上げますと。だがそれが返って、ますます噂に火をつけてしまったようだな。かばうということは恋人だという証拠だと、SNSは荒れに荒れている」
「そんな!」
その時、美月のバッグの中からスマートフォンの着信音が聞こえてきた。
「すみません、失礼します」
優吾に断ってから電話に出る。
「もしもし」
『あ、もしもし、風間さん?』
「館長! どうかしましたか?」
嫌な予感がして、美月は両手でスマートフォンを握りしめた。
『それがね、さっき友利さんから電話があったんだ。風間さんをこれから迎えに行きたいって』
「友利さんが、私を? それって、どういうことでしょうか」
優吾がハッとしたように美月を振り返る。
『SNSの噂の件で、君が友利さんのファンに追いかけられていることを知ったらしい。今まで気づかなくて申し訳なかった、すぐに彼女を安全なところにお連れしたいからマネージャーに迎えに行かせるとおっしゃるんだ。風間さんは今はもう帰宅して、5日間休むことになったと伝えたら、それなら直接連絡を取りたいと。君の連絡先を聞かれたんだけど、教えてもいいかな?』
「えっ、あの、それは……」
すると優吾が、どうした?と言いたげに身を乗り出してきた。
「館長、今はまだ私の連絡先は友利さんには伝えないでください」
『そうか、分かった』
「すみません、お手数をおかけして。友利さんにも、私のことはご心配なくとお伝えください」
『そう伝えるよ。でも風間さん、本当に大丈夫なの?』
「はい、大丈夫です。明日からお休みさせていただき、ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
『気にしないでゆっくり休んで。またなにかあったら、連絡するから』
よろしくお願いしますと挨拶して電話を切ると、すぐさま優吾が近づいて来た。
「友利 健二が連絡してきたのか?」
「はい。どうやら噂のことを知ったようです。マネージャーの方に私を迎えに行かせて、安全な場所に連れて行きたいと」
「それで君の連絡先を尋ねたのか?」
「そのようです。でもこの状況では、たとえ電話でも接触しない方がいいですよね?」
「ああ、その方が賢明だ。誰の口からどんな話がもれるか分からない。火のないところに煙を立たせるのが、こういうくだらない噂話だから」
「はい」
「それにしても、困ったな。彼がコメントを発表したことによって、状況はますます悪化した。君の自宅が安全だとは言い切れない」
そんな……と美月は絶句する。
「君の勤めているコミュニティセンターは、たくさんの利用者がいるんだね。サークル活動とかで使っている人が、君のことを書き込んでいる。……実はもう、君の名前も挙がっているんだ。受付カウンターにいつもいる、風間 美月さんだと」
「えっ!」
美月の顔からみるみるうちに血の気が引いた。
「名前と勤務先が分かれば、いずれは自宅の場所も知られてしまう。帰るのは危険だ。誰か頼れる人はいないか? 職場の人以外に、あまり親しくない友人とかで……って、ごめん。そんな人いないよな」
美月が頷くと、優吾は思いついたように顔を上げた。
「いや、いるな。君との接点はまるでなくて、誰もそこから君にはたどり着けない人間が」
「え、誰ですか?」
優吾は美月を見て、不敵な笑みを浮かべる。
「俺だ」
「……は?」
「俺は君の自宅はおろか、連絡先も知らない。勤務先もついさっき教えられたばかりだ。君のことは、名前しか知らなかった。あとは妹さんがいることと、綺麗な栞を持ち歩いているってことくらいかな」
そう言うと、真剣な顔で美月を見つめた。
「しばらくここにいればいい」
「ここって、雨宮さんのお部屋にってことですか? まさか、そんな」
「ではどうするつもり?」
「えっと、実家に帰ろうかと」
「フルネームが分かったってことは、地元の同級生が一斉に君だと認識する。はっきり言って、今君が住んでる場所よりも実家の方が特定は簡単だ」
そんな……と美月は呆然とする。
「それになるべく一人にならない方がいい。なにも気にせず、ここにいろ」
考える力もなくなり、美月は小さく頷いた。
◇
服や身の回りのものはネットで注文し、明日の朝に最速で届けてもらうことにした。
「君は寝室を使って。シーツも新品に変えてある」
「雨宮さんは?」
「俺はこれからアメリカの本社と、オンラインミーティングがあるんだ。そのままソファで寝るから」
「えっ、あの」
戸惑う美月を残し、優吾は「おやすみ」とリビングに戻る。
ミーティングの邪魔をする訳にはいかず、美月はおとなしくベッドを借りて横になった。
シーツは真新しいが、ベッドからはほのかに良い香りがしてドギマギする。
するとスマートフォンに電話がかかってきた。
表示を見てから、美月は通話ボタンをスワイプする。
「もしもし、美空?」
『お姉ちゃん! ちょっと、大丈夫なの?』
「ああ、もしかしてSNSのこと? もう美空も知ってるのね」
『この間の合コンのグループメッセージで知ったの。みんな、スーザン姉さん大丈夫!? って、心配してたよ』
「そう、ありがとう。大丈夫だから心配しないでって言っておいて」
『でもお姉ちゃん、一人だと身動き取れないでしょ? 私、これから終電でそっちに帰ろうか?』
ええ?と美月は驚いた。
「それこそ危ないわ。だめよ、美空。それに私、自宅のマンションじゃなくて知り合いのところに泊めてもらってるから」
『そうなの? それなら良かった。って、誰よそれ。もしかして、男?』
「お、女の人」
『嘘だ!』
「どうしてよ。私に恋人がいるとでも思うの?」
『そりゃ、少し前までなら女の人だって疑わなかったけど、この間ショッキングな話聞いちゃったもんね。お姉ちゃん、隅に置けないわ。その証拠に、イケメンピアニストと噂になるなんて……。はっ、まさか! お姉ちゃん今、そのピアニストのところに?』
やれやれと美月はため息をつく。
「そんな訳ないでしょう? とにかく私のことは気にしないで。美空こそ、しばらくは実家の横須賀から大学に通った方がいいわ」
『私は学生だからどうにでもなるけど、お姉ちゃん、仕事は?』
「ああ、それも5日間有給休暇もらってるから心配しないで」
『えっ、その間どこでなにするの?』
「さあね。あっ、充電なくなりそうだから、もう切るわね」
『ちょ、待って、お姉ちゃん!』
「おやすみー」
プツッと電話を切ると、枕元にスマートフォンを置いて目を閉じた。
頭の中は、どうしてこんなことに? いつまで続くの?という言葉がぐるぐると回り続けていた。
(明日からなにしよう……)
楽しい予定も思いつかないまま、自宅のマンションに着いた。
だがエントランスを見て、美月はハッとする。
見覚えのない女性三人が、なにやら話しながらエントランスの脇に立っていた。
(誰? まさか、私を探して?)
自宅マンションまで把握されているはずはない。
誰か別の住人の知り合いだろう。
そう自分に言い聞かせるが、でも、もし、という気持ちがよぎった。
それに今日は、美空は横須賀の実家に泊まることになっている。
美月は、心細さと不安でいっぱいになり、マンションに背を向けて来た道を戻り始めた。
行く宛もなく、気づけばいつものカフェに来ていた。
温かいカプチーノを飲んで、ようやく人心地つく。
本を読む気にもならず、ひたすらうつむいたまま必死に心を落ち着けていた。
◇
どれくらいそうしていたのだろう。
ザーッというかすかな音に、美月は顔を上げる。
(雨……。いつの間に?)
窓の外は、降りしきる雨で景色が霞んで見えた。
「あー、降ってきた」
「ほんとだ。もう梅雨入りしたもんね」
近くのテーブル席から、女の子達の会話が聞こえてくる。
「やだなー。雨の日って髪型も決まらないし、服も濡れちゃうからオシャレ出来ないよね」
「分かる。バッグも靴も、防水スプレーしないといけないし」
「私、もう開き直って、レインコートとレインシューズで通勤してるよ」
「それ、正解だよ。最近は可愛いの売ってるもんね」
「ねー。今年も新調しようかな」
「うんうん。テンション上げて、鬱陶しい梅雨を乗り切ろう!」
楽しそうに笑う女の子達を、美月は遠くに感じた。
(私とは違う。こんなふうに楽しい日々は送れない。私の心境は、この雨そのもの)
明るい女の子達の雰囲気に居たたまれなくなり、美月は席を立った。
カフェを出ると屋根の下で、バッグの中から折りたたみ傘を取り出す。
その拍子に、文庫本も一緒にバッグから落ちた。
パサッと開いたページから、またしても栞がひらりと滑り落ちる。
拾い上げようと屋根の下から1歩踏み出した美月に、サーッと雨が降り注ぐ。
緊張の糸が切れたように、ふいに涙が込み上げてきた。
(もう嫌だ、なにもかも)
しゃがみ込むと、両腕の中に顔をうずめる。
雨に打たれていたい。
全部全部、どうでもいい。
投げやりになってそう考えた時、突然雨が止んだ。
え?と、美月は顔を上げる。
「どうした!?」
「……雨宮さん?」
優吾が傘をかざして屈み込み、心配そうに美月の様子をうかがっていた。
「なにがあった?」
「あ、いえ。栞を拾おうとしただけです」
美月は急いで、足元の栞と本を拾ってから立ち上がる。
「すみません、ありがとうございました」
顔を伏せたままお礼を言い、その場から立ち去ろうとする美月を、優吾が後ろから腕を伸ばして止めた。
「ちょっと待って。どうして泣いてる?」
「違います、これは雨で」
美月は慌てて手のひらで頬を拭う。
「泣いてるだろう。なにがあった?」
「本当になにもないんです。それでは、失礼します」
再び頭を下げる美月に、優吾は着ていたサマージャケットを脱いでふわりと羽織らせた。
「え? あの……」
「そのままでは風邪を引く。うちまで送るから、おいで」
美月はその場に佇んで優吾の手を振りほどいた。
「風間さん?」
「えっと、一人で帰れますので」
「……そう。髪も濡れてるし、身体も冷えてるだろうから、タクシーを使った方がいい。そこの通りで拾おう」
そう言って優吾は美月の肩を抱き、傘の中に入れた。
大通りに出ると、手を挙げて空車のタクシーを止める。
「どうぞ、乗って」
「あの、ジャケットを」
美月が返そうとすると、優吾は首を振った。
「そのまま着てて」
美月の腕を支えて後部シートに座らせると、優吾は運転手に「お願いします」と声をかけてから美月に尋ねる。
「自宅はどっち方面?」
「あの……今夜は自宅には、帰れなくて」
「え?」
消え入りそうなほど小さく呟いてうつむいた美月を、優吾はしばらくじっと見つめてから、自分もタクシーに乗り込んだ。
「すみません、有明までお願いします」
運転手にそう告げる優吾を、今度は美月がじっと見つめる。
「あの、雨宮さん?」
「ひとまず俺の部屋に行こう。とにかく身体を温めないと。話はそれからだ」
そう言うとスマートフォンを取り出してなにやら操作し始めた優吾に、美月はそれ以上は言えずに口をつぐんだ。
◇
「どうぞ入って」
着いたのは湾岸エリアの高層マンション。
25階に上がると、優吾は突き当りの部屋のドアを開けて、美月を振り返った。
「はい、失礼します」
促されるまま、美月はぼんやりとした表情で中に足を踏み入れる。
パッと明るくなった玄関の奥の部屋から、温かい空気が流れてきた。
「暖房を入れておいた。すぐにシャワーを浴びておいで。お湯も張ってあるから」
「え? あの、そんな。ドライヤーだけ貸していただければ、すぐに帰ります」
「どこに? 自宅には帰れないんじゃないのか?」
「ですから、その……。どこか、夜を明かせるところに」
優吾は大きなため息をつく。
「きちんとした性格かと思いきや、随分危なっかしいことを言うんだな。分かってる? 女の子が雨に濡れたまま夜の街をさまようのが、どんなに危険かってこと」
「……はい」
「分かってないね。冷えきった身体のままでいたら、風邪を引くってことも。ほら、早く温まっておいで」
優吾は美月をパウダールームに連れて行くと、タオルとバスローブを渡した。
「服はこの洗濯機に入れて、このボタンを押して。自動で乾燥までいくから。シャンプーやボディソープも、俺ので良ければなんでも自由に使って。じゃあ、ごゆっくり」
パタンとドアが閉まり、静けさが広がる。
途端に寒気がして、美月は身震いした。
服を脱いで洗濯機に入れ、スイッチを押してからバスルームに入る。
「わあ、素敵」
まるでホテルのような、広くて高級感あふれるバスルームに、美月は思わずうっとりと呟いた。
早速シャワーを浴びると、温かさと心地良さに心の底からホッとした。
「えっと、これもお借りしていいのかな?」
スタイリッシュなボトルが並ぶラックに目を凝らし、シャンプーやコンディショナーを借りて髪を洗う。
ボディーソープのポンプからは、ふんわりときめ細かな泡が出てきて、思わず笑みが浮かんだ。
「はあ、気持ちいい」
大きなバスタブのお湯に肩まで浸かり、手足を伸ばすと、心も身体もほぐれていく。
「幸せ……」
ポツリと呟いてから、さっきまであんなに打ちひしがれてたのに?と、自分に苦笑いした。
「単純だな、私って」
いや、案外そういうものかもしれない。
気持ちが落ち込んでいる時は、せめて身体だけでも労ろう。
そうすれば、自然に心も回復するかもしれないから。
美月はそう思いながら、ゆっくりと時間をかけて身体を温めていた。
◇
「お風呂ありがとうございました」
髪もドライヤーで乾かしてから、美月はリビングでコーヒーを淹れている優吾に声をかけた。
「どういたしまして。温まった?」
「はい。とっても気持ち良かったです」
「そう」
美月に笑顔を向けてから、優吾はふと真顔になる。
「そのバスローブ、そんなに大きかった?」
「え?」
美月は自分が着ているバスローブに目を落とした。
丈は足首まであり、袖も手の甲が隠れるくらい長い。
「雨宮さんにはぴったりかと思いますが、私には……。子どもが大人サイズを着たみたいですね」
「うん。バスローブの萌え袖って、なんかちょっと、やられる」
「もえそでって、なんですか?」
「いや、ごめん。いいよ、知らなくて。コーヒーどうぞ」
取り繕うように、優吾は美月をソファに促した。
「それで、聞いてもいいか? 帰れない事情を」
「あ、はい」
コーヒーを飲んで落ち着くと、優吾に切り出され、美月は順を追って話し始める。
全て聞き終えると、優吾は「そうだったのか」と呟いた。
「大変だったな。近年のSNSの影響は、凄まじいものがある。テレビの中の世界とは違って、実生活に直結する。職場も自宅も脅かされたのでは、心身ともに参ってしまう。君は自分が思うよりも、もっと大変な状況にあったはずだ。本当によくがんばった」
思わぬ言葉をかけられて、美月の目が涙で潤む。
「これ以上我慢する必要はない。君はなにも悪くないんだから」
「でも、どうすればいいのか分からなくて……」
「しばらく仕事を休めるんだろう? まずはゆっくり安全な場所で過ごすといい。それからよければ、そのSNSの写真を俺も見てみていいか?」
「はい。私はSNSをやってないのでよく分からないのですが、友利 健二と検索すれば出るそうです」
「分かった、ありがとう」
優吾はスマートフォンを取り出すと、早速検索して記事にざっと目を通す。
「確かにかなり話題になってるな。だけど友利 健二がなにも反応していないのが幸いだ。本人が、取るに足りない噂に過ぎないという姿勢でいれば、少しずつ騒ぎも収まると思う。もう少しの辛抱だ」
「はい」
「さてと、じゃあ食事にしよう。お腹空いただろう?」
言われてみれば、なにも食べていなかったが、お腹が空いている感覚もなかった。
「温めるだけの、超必殺手抜き時短メニューをご用意するよ」
「ふふっ、なんですかそれ」
「まあ、見てなって。ダイニングテーブルにいて、すぐに運ぶから」
「お手伝いします」
「レンジに入れるだけだぞ?」
「ふふふ、はい」
キッチンに並んで立ち、レトルトの惣菜をお皿に移して温める。
「スープはどっちがいい? ミネストローネか、クラムチャウダー。俺のおすすめはクラムチャウダー」
「ふふっ。ではクラムチャウダーをお願いします」
「いい選択だ」
一人でいるとふさぎ込むばかりだったが、誰かがそばにいてくれるだけで、こうも気分が明るくなるとは。
美月は優吾に感謝しながら、美味しい食事を楽しんだ。
◇
「雨宮さん、本当にありがとうございました。そろそろ服も乾いたと思うので、着替えたら帰りますね」
食事のあとにそう切り出すと、優吾は心配そうな表情を浮かべた。
「……本当に大丈夫か?」
「はい。噂を否定する為にも、ビクビクしないで堂々としていたいです」
「そうか、分かった。じゃあせめて車で送る。着替えておいで」
「ありがとうございます」
美月はパウダールームに行くと、洗濯機から服を取り出して着替える。
乾燥を終えたばかりの暖かくふわふわした着心地に、思わず笑みがこぼれた。
「雨宮さん、お待たせしま……」
リビングに戻った美月は、険しい表情を浮かべてスマートフォンを見ている優吾に驚いて言葉を止める。
「雨宮さん? どうかしましたか?」
「ああ、うん。実は……ついさっき友利 健二がコメントを発表したらしい。噂になっている写真は事実無根だと」
「えっ、そうなのですか?」
「お相手の方のご迷惑になるような行為はやめていただくよう、切にお願い申し上げますと。だがそれが返って、ますます噂に火をつけてしまったようだな。かばうということは恋人だという証拠だと、SNSは荒れに荒れている」
「そんな!」
その時、美月のバッグの中からスマートフォンの着信音が聞こえてきた。
「すみません、失礼します」
優吾に断ってから電話に出る。
「もしもし」
『あ、もしもし、風間さん?』
「館長! どうかしましたか?」
嫌な予感がして、美月は両手でスマートフォンを握りしめた。
『それがね、さっき友利さんから電話があったんだ。風間さんをこれから迎えに行きたいって』
「友利さんが、私を? それって、どういうことでしょうか」
優吾がハッとしたように美月を振り返る。
『SNSの噂の件で、君が友利さんのファンに追いかけられていることを知ったらしい。今まで気づかなくて申し訳なかった、すぐに彼女を安全なところにお連れしたいからマネージャーに迎えに行かせるとおっしゃるんだ。風間さんは今はもう帰宅して、5日間休むことになったと伝えたら、それなら直接連絡を取りたいと。君の連絡先を聞かれたんだけど、教えてもいいかな?』
「えっ、あの、それは……」
すると優吾が、どうした?と言いたげに身を乗り出してきた。
「館長、今はまだ私の連絡先は友利さんには伝えないでください」
『そうか、分かった』
「すみません、お手数をおかけして。友利さんにも、私のことはご心配なくとお伝えください」
『そう伝えるよ。でも風間さん、本当に大丈夫なの?』
「はい、大丈夫です。明日からお休みさせていただき、ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
『気にしないでゆっくり休んで。またなにかあったら、連絡するから』
よろしくお願いしますと挨拶して電話を切ると、すぐさま優吾が近づいて来た。
「友利 健二が連絡してきたのか?」
「はい。どうやら噂のことを知ったようです。マネージャーの方に私を迎えに行かせて、安全な場所に連れて行きたいと」
「それで君の連絡先を尋ねたのか?」
「そのようです。でもこの状況では、たとえ電話でも接触しない方がいいですよね?」
「ああ、その方が賢明だ。誰の口からどんな話がもれるか分からない。火のないところに煙を立たせるのが、こういうくだらない噂話だから」
「はい」
「それにしても、困ったな。彼がコメントを発表したことによって、状況はますます悪化した。君の自宅が安全だとは言い切れない」
そんな……と美月は絶句する。
「君の勤めているコミュニティセンターは、たくさんの利用者がいるんだね。サークル活動とかで使っている人が、君のことを書き込んでいる。……実はもう、君の名前も挙がっているんだ。受付カウンターにいつもいる、風間 美月さんだと」
「えっ!」
美月の顔からみるみるうちに血の気が引いた。
「名前と勤務先が分かれば、いずれは自宅の場所も知られてしまう。帰るのは危険だ。誰か頼れる人はいないか? 職場の人以外に、あまり親しくない友人とかで……って、ごめん。そんな人いないよな」
美月が頷くと、優吾は思いついたように顔を上げた。
「いや、いるな。君との接点はまるでなくて、誰もそこから君にはたどり着けない人間が」
「え、誰ですか?」
優吾は美月を見て、不敵な笑みを浮かべる。
「俺だ」
「……は?」
「俺は君の自宅はおろか、連絡先も知らない。勤務先もついさっき教えられたばかりだ。君のことは、名前しか知らなかった。あとは妹さんがいることと、綺麗な栞を持ち歩いているってことくらいかな」
そう言うと、真剣な顔で美月を見つめた。
「しばらくここにいればいい」
「ここって、雨宮さんのお部屋にってことですか? まさか、そんな」
「ではどうするつもり?」
「えっと、実家に帰ろうかと」
「フルネームが分かったってことは、地元の同級生が一斉に君だと認識する。はっきり言って、今君が住んでる場所よりも実家の方が特定は簡単だ」
そんな……と美月は呆然とする。
「それになるべく一人にならない方がいい。なにも気にせず、ここにいろ」
考える力もなくなり、美月は小さく頷いた。
◇
服や身の回りのものはネットで注文し、明日の朝に最速で届けてもらうことにした。
「君は寝室を使って。シーツも新品に変えてある」
「雨宮さんは?」
「俺はこれからアメリカの本社と、オンラインミーティングがあるんだ。そのままソファで寝るから」
「えっ、あの」
戸惑う美月を残し、優吾は「おやすみ」とリビングに戻る。
ミーティングの邪魔をする訳にはいかず、美月はおとなしくベッドを借りて横になった。
シーツは真新しいが、ベッドからはほのかに良い香りがしてドギマギする。
するとスマートフォンに電話がかかってきた。
表示を見てから、美月は通話ボタンをスワイプする。
「もしもし、美空?」
『お姉ちゃん! ちょっと、大丈夫なの?』
「ああ、もしかしてSNSのこと? もう美空も知ってるのね」
『この間の合コンのグループメッセージで知ったの。みんな、スーザン姉さん大丈夫!? って、心配してたよ』
「そう、ありがとう。大丈夫だから心配しないでって言っておいて」
『でもお姉ちゃん、一人だと身動き取れないでしょ? 私、これから終電でそっちに帰ろうか?』
ええ?と美月は驚いた。
「それこそ危ないわ。だめよ、美空。それに私、自宅のマンションじゃなくて知り合いのところに泊めてもらってるから」
『そうなの? それなら良かった。って、誰よそれ。もしかして、男?』
「お、女の人」
『嘘だ!』
「どうしてよ。私に恋人がいるとでも思うの?」
『そりゃ、少し前までなら女の人だって疑わなかったけど、この間ショッキングな話聞いちゃったもんね。お姉ちゃん、隅に置けないわ。その証拠に、イケメンピアニストと噂になるなんて……。はっ、まさか! お姉ちゃん今、そのピアニストのところに?』
やれやれと美月はため息をつく。
「そんな訳ないでしょう? とにかく私のことは気にしないで。美空こそ、しばらくは実家の横須賀から大学に通った方がいいわ」
『私は学生だからどうにでもなるけど、お姉ちゃん、仕事は?』
「ああ、それも5日間有給休暇もらってるから心配しないで」
『えっ、その間どこでなにするの?』
「さあね。あっ、充電なくなりそうだから、もう切るわね」
『ちょ、待って、お姉ちゃん!』
「おやすみー」
プツッと電話を切ると、枕元にスマートフォンを置いて目を閉じた。
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