本当の愛を知るまでは

葉月 まい

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この空に誓う

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翌年の3月27日
花純の29歳の誕生日に、二人は結婚式を挙げた。
横浜港に面したホテルで式を挙げ、披露宴は大型クルーザーを貸し切って行う。
クロスリンクワールドの業績もまだ完全に回復していない中、花純は「そんな贅沢ダメ!」と反対したが、「二人の門出に節約なんてしてられるか。景気づけだ!」と光星は譲らなかった。

朝からホテルで支度を整えていると、窓の外はしとしとと小雨が降り始めた。

「あれ? 私、晴れ女なのにな。天気予報も降水確率低かったのに」

花純の言葉に、光星がニヤリとする。

「俺の雨男パワーが勝ったな。俺の方が花純を愛してるって証拠だ」
「なあに? それ」

呆れつつ、花純は苦笑いを浮かべた。

やがて時間になり、列席者が見守る中、二人の結婚式が始まる。
Aラインのノーブルな純白のウエディングドレスは花純の清らかさと上品さを際立たせて、息を呑むほど美しい。
光星のシャンパンゴールドの衣裳も、凛とした佇まいで優しく花純を見守る光星に良く似合っていた。

千鶴や原、部長や同僚たち、そして滝沢や臼井に祝福されながら、二人は永遠の愛を誓い合う。
フラワーシャワーを浴びて階段を下りると、いつの間にか雨は上がり、青空が広がっていた。

「やった! 私の晴れ女パワーの勝ちね。私の方が光星さんを愛してます」
「なにをー!? 絶対俺の方が花純を愛してる。どれだけ俺の愛が重いか知ってるか?」

言い合う二人を、臼井がやれやれとなだめる。

「お二人さん、不毛な言い合いはそれくらいで。ほら、写真撮影に行くぞ」
「はい!」

腕を組んで、ホテルの前に広がる大きな公園に行く。
海をバックに見事な桜の木が咲き誇っていた。

「わあ、綺麗!」

見とれる花純と優しく見守る光星を、カメラマンが何枚も写真に収める。
列席者との集合写真も撮ると、いよいよクルーザーに皆で乗り込んだ。

「ひゃー! さっすがセレブね。こんなに大きなクルーザーを貸し切るなんてすごい」

千鶴が目を輝かせて船内を見渡す。

「セレブじゃないんだけどねえ。まったくもう……」

呟く花純に、滝沢が笑いかけた。

「いいじゃないっすか、愛する奥さんの為ならこれくらい。金は天下の回りものって言うしね」

そうそう、と原も同意する。

「それにクロスリンクワールドなら、あっという間に業績もV字回復するよ。以前より更に伸びるんじゃないか?」
「そうなの?」
「ああ。疑惑は無事に晴れたし、何もやましいことはない。それに他のサイトに移行したユーザーも、やっぱりクロスリンクワールドの方が良かったって再認識して戻ってきてる。スポンサーもな」
「そうだったのね」

光星からは聞かされていなかったことを教えられ、花純はホッとする。

「だからさ、今日はパーッと盛大に祝おうぜ。二人の未来と、クロスリンクワールドの前途を祝して」

かんぱーい!となぜだかその場で盛り上がる。
美味しい料理を食べ、お酒を飲み、デッキに上がって海からの景色を眺めた。
誰もが笑顔を浮かべている。

「花純、ここにいたんだ」
「光星さん!」

職場の人とのおしゃべりを終えた光星と肩を並べて潮風に吹かれる。

「気持ちいいね」
「ああ、そうだな」
「ん? 光星さん! 見て、あれ。虹!」
「え、ほんとだ」

傾きかけた太陽に照らされ、青空に七色の虹がかかっていた。
周りのゲストも歓声を上げて写真を撮る。

「花純」
「はい」
「見られたな、雨上がりの綺麗な虹」
「ええ」

二人で肩を寄せ合い、静かに語りながら思い出す。
長く暗く、雨に打たれたように辛かったあの日々。
いつか空は晴れると信じて、虹を見ようと励まし合ったあの時。
二人で乗り越え、こうして一緒に虹を見られた幸せを噛みしめる。

「花純となら、この先の未来に何が起きても信じられる。いつか雨は止み、空は晴れ、綺麗な虹がかかると」
「ええ。そして必ず光る星が私たちを照らしてくれる。輝く私たちの未来を」
「そうだな。この空に誓うよ、俺は花純を必ず幸せにすると」
「私もです、光星さん」

皆が虹に見とれる中、二人は微笑み合い、そっと口づけを交わした。
ようやく見つけた本当の愛を噛みしめながら……

(完)
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