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クリスマスイブ
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湾岸エリアプロジェクトは各チームに別れて本格的に始動し、翔が直接関わることはだんだん少なくなっていた。
海外支社でやり残した仕事も片付き、ようやく時間と気持ちに余裕が生まれる。
ある日翔は、プロジェクトの為の資料を作ってくれた秘書室のメンバーを労おうと、有名店のお菓子を持って秘書室を訪れた。
失礼、とドアの横で声をかけると、振り返ったメンバーが一斉に立ち上がる。
「副社長!?どうされました?」
「皆さんにお礼をと思って。よかったらどうぞ」
ええー?と驚きつつ、菜緒が嬉しそうに受け取る。
「資料の作成ありがとう、松村さん」
「いいえー。微力ながらお役に立てたなら光栄です。わあ!このお菓子、今人気のお店のですよね?ありがとうございます、副社長」
「どういたしまして。それじゃあ」
踵を返した翔は、ふと立ち止まってもう一度部屋の様子をうかがう。
ワイワイと賑やかにお菓子を広げるメンバーの中に、笑顔の芹奈がいた。
向かいの席の井口と「コーヒー淹れようか」と話しながら、二人で給湯室へと歩いて行く。
(ようやくつき合い始めたのかな?あの二人)
心の中でポツリと呟くと、翔は未練を断ち切るように背を向けて歩き出した。
◇
季節は徐々に移り行き、12月に入った。
「さむっ!日本の冬って寒いな」
朝、村尾がマンションまで迎えに行くと、翔は身震いしながら急いで車に乗り込む。
「副社長。まだまだ冬はこれからですよ?」
「これ以上寒くなるのか?俺、無理だわ」
「冬は寒いからこそ恋人達の距離が縮まるんです。クリスマスとか、バレンタインとか」
「おい、村尾。けんか売ってるか?独り身の俺は、身も心も寒くて越冬出来そうにない」
「俺もですよ。いっそのこと冬眠しましょうか」
「それいいな!するする」
ははは!と笑いながら会社に着くと、いつものように副社長室で仕事を始めた。
しばらくして休憩しようと部屋を出ると、吹き抜けになったラウンジへと向かう。
いつの間にか大きなクリスマスツリーが飾られていて、美しさに思わず目を見張った。
(綺麗だな。村尾には冬眠したいって言ったけど、クリスマスまでは起きてようかな)
ふっと笑みをもらし、コーヒーを飲みながら、翔はツリーの煌めきにしばし心を奪われていた。
◇
そしていよいよ、クリスマスイブがやって来た。
社員達は朝からソワソワと落ち着かない様子で、定時に上がれるようにと何度も時計を見ながら仕事をこなしている。
「芹奈さん、今夜のご予定は?」
菜緒に聞かれて「特にないよー」と芹奈は答える。
「それなら一緒に合コン行きません?」
「えー、そういうのはいいや。気後れしちゃうもん」
「でも人数多い方が盛り上がるし」
すると菜緒の隣の席の井口が口を開いた。
「じゃあ僕が行ってもいい?」
「え!?井口さん、合コンとか興味あるんですか?」
「今までなかったけど、行ってみようかなって思って。どうせ今夜暇だし」
「わー、大歓迎ですよ!井口さんを連れて行ったら、私の株も上がります!プライム上場です」
「あはは!何それ」
「じゃあ、井口さん。定時で上がりますよ?」
人差し指を立てて真剣な口調になる菜緒に、井口も真顔で「了解」と敬礼する。
あはは!と笑って仕事に戻る二人を、芹奈は微笑ましく見守った。
◇
「村尾、今日はもう上がってくれ」
副社長室でプロジェクトの進捗を聞いていた翔は、定時になったのを見て話を切り上げた。
「続きはまた明日聞く」
「かしこまりました。それでは、失礼いたします」
「ああ、お疲れ様。メリークリスマス。良い時間を」
「ありがとうございます。副社長も。メリークリスマス」
パタンとドアが閉まって静けさが広がると、翔は再びパソコンに向かう。
カタカタとしばらく集中して作業し、一区切りついたところで休憩することにした。
(どうせならクリスマスツリーを見ながら休憩しよう)
腕時計に目をやると、既に21時を過ぎている。
夕食どうしようかと考えながら、静まり返った社内をラウンジへと向かった。
照明が絞られた空間に、キラキラとツリーのライトが浮かび上がる。
(静かに瞬く聖夜の輝きだな。厳かな雰囲気がいい)
しばらく佇んでツリーを見上げてから、コーヒーを飲もうとツリーの裏側に回った。
するとすぐ横のカウンターに人影が見え、思わずビクッと立ちすくむ。
(びっくりした。まだ誰か社内に残ってたんだ。って、え!?)
カウンターチェアに座り、頬杖をついてうっとりとツリーを見ているその横顔に、翔は信じられないとばかりに大きく目を見開いた。
海外支社でやり残した仕事も片付き、ようやく時間と気持ちに余裕が生まれる。
ある日翔は、プロジェクトの為の資料を作ってくれた秘書室のメンバーを労おうと、有名店のお菓子を持って秘書室を訪れた。
失礼、とドアの横で声をかけると、振り返ったメンバーが一斉に立ち上がる。
「副社長!?どうされました?」
「皆さんにお礼をと思って。よかったらどうぞ」
ええー?と驚きつつ、菜緒が嬉しそうに受け取る。
「資料の作成ありがとう、松村さん」
「いいえー。微力ながらお役に立てたなら光栄です。わあ!このお菓子、今人気のお店のですよね?ありがとうございます、副社長」
「どういたしまして。それじゃあ」
踵を返した翔は、ふと立ち止まってもう一度部屋の様子をうかがう。
ワイワイと賑やかにお菓子を広げるメンバーの中に、笑顔の芹奈がいた。
向かいの席の井口と「コーヒー淹れようか」と話しながら、二人で給湯室へと歩いて行く。
(ようやくつき合い始めたのかな?あの二人)
心の中でポツリと呟くと、翔は未練を断ち切るように背を向けて歩き出した。
◇
季節は徐々に移り行き、12月に入った。
「さむっ!日本の冬って寒いな」
朝、村尾がマンションまで迎えに行くと、翔は身震いしながら急いで車に乗り込む。
「副社長。まだまだ冬はこれからですよ?」
「これ以上寒くなるのか?俺、無理だわ」
「冬は寒いからこそ恋人達の距離が縮まるんです。クリスマスとか、バレンタインとか」
「おい、村尾。けんか売ってるか?独り身の俺は、身も心も寒くて越冬出来そうにない」
「俺もですよ。いっそのこと冬眠しましょうか」
「それいいな!するする」
ははは!と笑いながら会社に着くと、いつものように副社長室で仕事を始めた。
しばらくして休憩しようと部屋を出ると、吹き抜けになったラウンジへと向かう。
いつの間にか大きなクリスマスツリーが飾られていて、美しさに思わず目を見張った。
(綺麗だな。村尾には冬眠したいって言ったけど、クリスマスまでは起きてようかな)
ふっと笑みをもらし、コーヒーを飲みながら、翔はツリーの煌めきにしばし心を奪われていた。
◇
そしていよいよ、クリスマスイブがやって来た。
社員達は朝からソワソワと落ち着かない様子で、定時に上がれるようにと何度も時計を見ながら仕事をこなしている。
「芹奈さん、今夜のご予定は?」
菜緒に聞かれて「特にないよー」と芹奈は答える。
「それなら一緒に合コン行きません?」
「えー、そういうのはいいや。気後れしちゃうもん」
「でも人数多い方が盛り上がるし」
すると菜緒の隣の席の井口が口を開いた。
「じゃあ僕が行ってもいい?」
「え!?井口さん、合コンとか興味あるんですか?」
「今までなかったけど、行ってみようかなって思って。どうせ今夜暇だし」
「わー、大歓迎ですよ!井口さんを連れて行ったら、私の株も上がります!プライム上場です」
「あはは!何それ」
「じゃあ、井口さん。定時で上がりますよ?」
人差し指を立てて真剣な口調になる菜緒に、井口も真顔で「了解」と敬礼する。
あはは!と笑って仕事に戻る二人を、芹奈は微笑ましく見守った。
◇
「村尾、今日はもう上がってくれ」
副社長室でプロジェクトの進捗を聞いていた翔は、定時になったのを見て話を切り上げた。
「続きはまた明日聞く」
「かしこまりました。それでは、失礼いたします」
「ああ、お疲れ様。メリークリスマス。良い時間を」
「ありがとうございます。副社長も。メリークリスマス」
パタンとドアが閉まって静けさが広がると、翔は再びパソコンに向かう。
カタカタとしばらく集中して作業し、一区切りついたところで休憩することにした。
(どうせならクリスマスツリーを見ながら休憩しよう)
腕時計に目をやると、既に21時を過ぎている。
夕食どうしようかと考えながら、静まり返った社内をラウンジへと向かった。
照明が絞られた空間に、キラキラとツリーのライトが浮かび上がる。
(静かに瞬く聖夜の輝きだな。厳かな雰囲気がいい)
しばらく佇んでツリーを見上げてから、コーヒーを飲もうとツリーの裏側に回った。
するとすぐ横のカウンターに人影が見え、思わずビクッと立ちすくむ。
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