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休日出勤
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「おはようございまーす!って、芹奈さん?どうしたんですか、そのブレスレット!」
秘書室に入ってくるなり目ざとく見つけた菜緒に、芹奈は困ったように笑う。
「おはよう、菜緒ちゃん」
「それってやっぱり、プレゼントですか?彼氏からの」
「えっと。彼氏からではないよ」
嘘は言ってないよね、と芹奈の心の中でひとりごつ。
「えー!?じゃあ、どなたから?」
「うーんと、それは内緒なんだけど、とにかく彼氏からじゃないの」
……怪しい、と菜緒は真顔で呟く。
「ほんとだってば!私、誰ともおつき合いしてないから。それより、ほら。今日で仕事納めでしょ?やることたくさんあるわよ」
「あー!そうだった。今日、残業は免れませんよね?」
「大丈夫。がんばれば終わるわよ」
「はい。じゃあ、がんばります!」
「うん」
早速仕事に取り掛かると始業時間が近づき、他のメンバーも続々と出社して来た。
やり残した仕事がないかを皆で確認しながら作業し、夕方になると大掃除を始める。
「定時で終わらせて忘年会行こー!」
おー!と盛り上がり、手際良く掃除を済ませると、社長達に挨拶してから皆で居酒屋に向かった。
◇
「今年もお疲れ様でしたー!乾杯!」
グラスを合わせて乾杯し、あとはひたすら食事とおしゃべりを楽しむ。
お酒が入るとだんだん饒舌になり、皆の爆弾発言が相次いだ。
「えー、プロポーズされたんですか!?」
菜緒が、30代の先輩に詰め寄っている。
「そうなの。クリスマスイブにね」
「それでそれで?お返事はもちろん、オッケー?」
「うん、まあね」
「きゃー!おめでとうございます」
周りからも拍手が起こる。
「ありがとう。結婚しても仕事は続けるから、これからもよろしくね」
「もちろんです!それにしても、クリスマスイブにプロポーズなんて、素敵ですね」
うっとりと両手を頬にやる菜緒とは対照的に、芹奈は冷静に隣の席の村尾に話し出した。
「やっぱりクリスマスってすごいわよね。ここから経済が更に動くのよ」
「またそれかよー?ほんとに色気の欠片もないな」
「だって私、肌で感じたの。クリスマスのカップル事情。もうジュエリーショップもレストランも、そこかしこで盛り上がってたし」
すると菜緒が何やらモジモジしながら井口に近づくのが見えた。
ん?と思っていると、二人でヒソヒソと言葉を交わしてから皆に向き直った。
「えっと、皆さん。実は私達、おつき合いすることになりました!」
えー!?と一斉に声が上がる。
「菜緒が?井口くんと?」
「ひゃー!なんか、お似合いかも」
そんな中、芹奈はまたしても冷静に村尾に呟く。
「やっぱりね。私の睨んだ通りよ」
「え、芹奈、気づいてたのか?」
「もちろん。私、経済効果とカップルの動きについてはスパイ活動してたから」
「は?何言ってんだ?」
「とにかく良かったわ。落ち着くところに落ち着いたって感じで。お似合いだもん、あの二人」
「ああ、そうだな」
芹奈は幸せそうな井口と菜緒に、心の中で「おめでとう」と祝福した。
◇
『夜分遅くに申し訳ない。明日もし予定が空いていたら、午前中に少しだけ、やり残した仕事を手伝ってもらえないかな?』
忘年会の帰りの電車の中で、芹奈は翔からのメッセージを読んでいた。
特に予定もなかった為、『かしこまりました。伺います』と送る。
『ありがとう。都合の良い時間に来てくれて構わない』と即座に返事が来た。
『では10時頃伺います。よろしくお願いいたします』と返信して、スマートフォンをコートのポケットに入れる。
左手でつり革に掴まると、キラキラと輝くダイヤモンドのブレスレットが目についた。
(綺麗……。こんな高価なもの、本当にいただいても良かったのかな?だって私と副社長、つき合ってもいないのに)
好きだと言われても返事は何もしていないままで、恋人同士とは言えない関係だった。
(お返事、した方がいいのかな。でも私からは言えないよ。恥ずかしいし、そんな勇気もない。いっそのこと「君は俺が好き?」って聞いてくれたら、うんって頷けるのに)
そんなことを期待するのはわがままかな?と思い悩んでいるうちに最寄り駅に到着し、芹奈は気を取り直して電車を降りた。
◇
次の日の10時ちょうど。
芹奈は会社に出向き、副社長室のドアをノックした。
「どうぞ」
「失礼いたします」
ドアを開けて中に入ると、翔はスーツではなくラフなスタイルでパソコンに向かっていた。
「悪いね、もう年末の休暇に入ったのに」
「いいえ。私も少しやり残した仕事があったので」
「そう。俺からお願いしたいのは、ニックナックの家具と雑貨のピックアップなんだ。マンションのモデルルームに取り入れるっていう君のアイデア、ぜひ実現したくてね。良さそうな商品を一覧にしてくれる?提出は年始に入ってからで構わない」
「かしこまりました。私のチョイスで構いませんか?」
「ああ、頼むよ」
そのままソファを借りて作業をし、12時になると翔がパソコンを閉じた。
「今日はもうこれくらいにして、お昼食べに行こう。何がいい?」
「え?そんな。私は帰りますので、どうぞお気遣いなく」
「一人で食べに行くのも味気ないから、一緒に行って欲しいんだけど。ひょっとして迷惑かな?」
翔は妙に機嫌が良く「迷惑かな?」と聞きつつ、「いいよね?」と言いたげに、にこにこと笑っている。
「いえ、迷惑という訳では……」
「じゃあ行こう」
「あ、はい」
芹奈は首をひねりながらも、翔に続いて部屋を出た。
秘書室に入ってくるなり目ざとく見つけた菜緒に、芹奈は困ったように笑う。
「おはよう、菜緒ちゃん」
「それってやっぱり、プレゼントですか?彼氏からの」
「えっと。彼氏からではないよ」
嘘は言ってないよね、と芹奈の心の中でひとりごつ。
「えー!?じゃあ、どなたから?」
「うーんと、それは内緒なんだけど、とにかく彼氏からじゃないの」
……怪しい、と菜緒は真顔で呟く。
「ほんとだってば!私、誰ともおつき合いしてないから。それより、ほら。今日で仕事納めでしょ?やることたくさんあるわよ」
「あー!そうだった。今日、残業は免れませんよね?」
「大丈夫。がんばれば終わるわよ」
「はい。じゃあ、がんばります!」
「うん」
早速仕事に取り掛かると始業時間が近づき、他のメンバーも続々と出社して来た。
やり残した仕事がないかを皆で確認しながら作業し、夕方になると大掃除を始める。
「定時で終わらせて忘年会行こー!」
おー!と盛り上がり、手際良く掃除を済ませると、社長達に挨拶してから皆で居酒屋に向かった。
◇
「今年もお疲れ様でしたー!乾杯!」
グラスを合わせて乾杯し、あとはひたすら食事とおしゃべりを楽しむ。
お酒が入るとだんだん饒舌になり、皆の爆弾発言が相次いだ。
「えー、プロポーズされたんですか!?」
菜緒が、30代の先輩に詰め寄っている。
「そうなの。クリスマスイブにね」
「それでそれで?お返事はもちろん、オッケー?」
「うん、まあね」
「きゃー!おめでとうございます」
周りからも拍手が起こる。
「ありがとう。結婚しても仕事は続けるから、これからもよろしくね」
「もちろんです!それにしても、クリスマスイブにプロポーズなんて、素敵ですね」
うっとりと両手を頬にやる菜緒とは対照的に、芹奈は冷静に隣の席の村尾に話し出した。
「やっぱりクリスマスってすごいわよね。ここから経済が更に動くのよ」
「またそれかよー?ほんとに色気の欠片もないな」
「だって私、肌で感じたの。クリスマスのカップル事情。もうジュエリーショップもレストランも、そこかしこで盛り上がってたし」
すると菜緒が何やらモジモジしながら井口に近づくのが見えた。
ん?と思っていると、二人でヒソヒソと言葉を交わしてから皆に向き直った。
「えっと、皆さん。実は私達、おつき合いすることになりました!」
えー!?と一斉に声が上がる。
「菜緒が?井口くんと?」
「ひゃー!なんか、お似合いかも」
そんな中、芹奈はまたしても冷静に村尾に呟く。
「やっぱりね。私の睨んだ通りよ」
「え、芹奈、気づいてたのか?」
「もちろん。私、経済効果とカップルの動きについてはスパイ活動してたから」
「は?何言ってんだ?」
「とにかく良かったわ。落ち着くところに落ち着いたって感じで。お似合いだもん、あの二人」
「ああ、そうだな」
芹奈は幸せそうな井口と菜緒に、心の中で「おめでとう」と祝福した。
◇
『夜分遅くに申し訳ない。明日もし予定が空いていたら、午前中に少しだけ、やり残した仕事を手伝ってもらえないかな?』
忘年会の帰りの電車の中で、芹奈は翔からのメッセージを読んでいた。
特に予定もなかった為、『かしこまりました。伺います』と送る。
『ありがとう。都合の良い時間に来てくれて構わない』と即座に返事が来た。
『では10時頃伺います。よろしくお願いいたします』と返信して、スマートフォンをコートのポケットに入れる。
左手でつり革に掴まると、キラキラと輝くダイヤモンドのブレスレットが目についた。
(綺麗……。こんな高価なもの、本当にいただいても良かったのかな?だって私と副社長、つき合ってもいないのに)
好きだと言われても返事は何もしていないままで、恋人同士とは言えない関係だった。
(お返事、した方がいいのかな。でも私からは言えないよ。恥ずかしいし、そんな勇気もない。いっそのこと「君は俺が好き?」って聞いてくれたら、うんって頷けるのに)
そんなことを期待するのはわがままかな?と思い悩んでいるうちに最寄り駅に到着し、芹奈は気を取り直して電車を降りた。
◇
次の日の10時ちょうど。
芹奈は会社に出向き、副社長室のドアをノックした。
「どうぞ」
「失礼いたします」
ドアを開けて中に入ると、翔はスーツではなくラフなスタイルでパソコンに向かっていた。
「悪いね、もう年末の休暇に入ったのに」
「いいえ。私も少しやり残した仕事があったので」
「そう。俺からお願いしたいのは、ニックナックの家具と雑貨のピックアップなんだ。マンションのモデルルームに取り入れるっていう君のアイデア、ぜひ実現したくてね。良さそうな商品を一覧にしてくれる?提出は年始に入ってからで構わない」
「かしこまりました。私のチョイスで構いませんか?」
「ああ、頼むよ」
そのままソファを借りて作業をし、12時になると翔がパソコンを閉じた。
「今日はもうこれくらいにして、お昼食べに行こう。何がいい?」
「え?そんな。私は帰りますので、どうぞお気遣いなく」
「一人で食べに行くのも味気ないから、一緒に行って欲しいんだけど。ひょっとして迷惑かな?」
翔は妙に機嫌が良く「迷惑かな?」と聞きつつ、「いいよね?」と言いたげに、にこにこと笑っている。
「いえ、迷惑という訳では……」
「じゃあ行こう」
「あ、はい」
芹奈は首をひねりながらも、翔に続いて部屋を出た。
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