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騎士

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そのときライネアさんが、チョコレート・ハウスを見上げた。

尋ねてくる。

「ところで……お前たちは、ずいぶんと珍奇ちんきな家に住んでいるのだな?」

ライネアさんの視線につられて、クレアベルも背後のチョコレート・ハウスを見上げる。

そしてクレアベルが答えた。

「これは、セレナが作ったんですよ」

「……なに? どういうことだ?」

「信じられないかもしれませんが、この家はセレナの魔法――――チョコレート魔法による創造物、ということです。すごいでしょう?」

とクレアベルが自慢げに微笑む。

ライネアさんが目を見開きつつ、つぶやく。

「それは……確かにすごいな。魔法で、家を」

「はい。ご覧の通り、ネリアンヌたちに山小屋が壊されましたからね。セレナが、当面の住みかを作ってくれたのです。セレナの魔法には度々たびたび驚かされていますが、今回は、特に驚きましたね」

とクレアベルは苦笑した。

ふむ……とライネアさんが感心したように鼻を鳴らす。

ライネアさんが言った。

「実は……ジルの件だけでなく、セレナさんについても、話があって来たのだ」

「セレナに?」

「ああ。――――セレナさん、君を是非、騎士団に勧誘したい」

「!!」

その発言に、私もクレアベルも驚愕する。

ライネアさんが、勧誘の理由を述べる。

「庶民が決闘にて貴族を打ち破るなど異例のことだ。特に、まだ子どもに過ぎない君が、ジルのような実力者に勝利するのは、にわかに信じがたい」

とライネアさんが賞賛しつつ、続けた。

「このような家を創造できる力も、実に魅力的だ。セレナさんには、ぜひ騎士団員きしだんいんとして、国や人々のために、その力をふるってもらいたいと思う。……いかがだろうか?」

ライネアさんは、真摯しんしな目つきで私を見つめてくる。

冗談ではなく、本気で勧誘してきているのだ。

しかし。

私は騎士になるつもりなどなかった。

「申し訳ありませんが……遠慮します」

「……そうか」

とライネアさんは食い下がりはしなかった。

彼女は告げる。

「しかし、騎士団はいつでも君の入隊を歓迎している。気が向いたら、王都の騎士団を訪ねてくれ。……では、私はこれにて失礼する」

用が済んだか、ライネアさんがきびすを返して歩き出した。

やがてライネアさんの背中が見えなくなったところで、クレアベルが言った。

「……お前の人生だから、あまりとやかく言いたくはないが」

そう前置きしてから、クレアベルが続ける。

「騎士になれば、騎士爵きししゃくという爵位が得られる。つまり貴族になれるんだ。こんなチャンスは二度とない。よく考えたほうがいいぞ」

わかっている。

騎士団に入れるチャンス。

望んだって、誰もが得られるものじゃない。

庶民が人生逆転する、千載一遇せんざいいちぐうの機会なのだろう。

しかし。

(騎士とか、興味ないもん)

私は異世界でスローライフをしたいと思っている。

いつか旅に出ることぐらいはあるかもしれないが、騎士になるという未来絵図みらいえずは、私にはない。

そんなことよりも、今は。

ジルをぶっ殺すことを考えなくちゃね。
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