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1. 血まみれのハープ(間諜視点)
しおりを挟む手が痛い。
座り込んだ俺は血まみれになっている自分の手を見下ろした。最初は中指と親指だけだったのが今はもう小指まで切れて傷だらけになってしまっている。
今日は来たときからハープを弾き通しだ。
感覚がなくなってきたので正直そろそろ演奏をやめたいが、この場の主役が音楽をご所望なので、道化師兼ハープ弾きとしての俺はやめるわけにはいかなかった。
本来俺はこんな役柄じゃない。俺は貴族の令嬢に雇われた間諜だ。その名もジョゼフィーヌ・ド・ギロー、伯爵家のわがままな一人娘だ。いつもであれば俺は誰にも目に入らないような天井裏、屋根の上、塀の影、路地裏なんかを居場所とする人間なのに、今日は生まれて初めて道化師なんかをやっている。間諜がこんな注目を浴びる場所にいるなんて、この仕事の名折れじゃないか。
しかしこれは主人ジョゼフィーヌの命令だった。
『モルドレッド子爵の長女レリアが王太子の婚約候補の一人に入っているなんて信じられない。今度の彼女の屋敷で開かれる誕生日会で、あの女にどんな思惑があるのか尻尾を掴むのよ。弱みがないか調べるの。彼女はハープが好きらしいからそれを弾く道化師になりなさい。情報次第で給金ははずむわ』
伯爵家の一人娘なのに、王太子を狙っているのか? 仮に王太子と結婚して、伯爵家の後継ぎはどうする。そんなことも考えられないような馬鹿娘なのだが、給金がそれなりに高いので今は彼女の元で働いている。
誕生日会にはすでに本物の音楽師が呼ばれていたようだったので、彼には事前に断りの知らせを入れておいた。こうした根回しは簡単だが、俺の方の準備はさっぱりだった。間諜としての仕事なら得意だが、ハープなんか弾けるわけがない。急いでハープを用意して練習に励み、わずか数日で本番を迎えることになった。
そして今日はモルドレッド子爵、三女オデットの誕生日会だ。何歳かは忘れたが、見た様子だと十歳から十二歳というところだろう。標的とする姉のレリアも必ず出席するはずだ。会場はもちろん子爵家の屋敷、屋外の庭園で行われている。良い庭師がいるのだろう、花々はきれいに咲き乱れ、春の庭は美しい花園となっていた。
演奏の方はまあまあそれなりに弾けているはずだ。
しかし残念なことに、音楽を楽しんでいるのは主役のオデットとその客たちばかりで、肝心の標的レリアは、長女だからか会場の準備や進行、メイドたちへの指示で忙しそうにしており、俺の方に近づきもしない。
遠目に見てわかったことは、パッと花が咲いたような美女だということ、それから長女として三女である妹オデットを大事にしていること、客たちが楽しめるように気を配れる、教育の行き届いた貴族令嬢らしい女ということだ。
次女らしき娘が「お姉様、私が代わるから姉様は座って」と姉に駆け寄っても、長女は「いいのよ、ルイーズも楽しんで。何かあったらお願いするから」と微笑んで妹を席につかせている。
それに、飲み物の瓶を大量に抱えて持ってきたメイドに「ありがとう、私も持つわ」と言っていくつか瓶を手に取っているから、下の位の人間にも思いやりのある人間らしい。全く、数日でハープを弾けるようにしろと無茶を言うどこかの伯爵令嬢も見習ってほしいところだ。
誕生日会は、お茶の時間、ゲームと続いており、夕刻が近づいていた。もちろん日が暮れても誕生日会はまだまだ続くはずだ。屋敷の中に引き上げることになる夜の食事まで、俺はずっとハープを弾きっぱなしだろう。仕方ない。この会場に到着したときに主役から「今日はずっと弾き続けてちょうだい」と言われているし、弾いていなかったら俺はここにいることは許されない。
そのときちょうど主役のオデットが「ねえ!」と庭園に響くくらいの大きな声を出した。
「次もゲームと言いたいところだけど、少し準備がかかるみたいなの」
よしよし。もしかしたら休憩をくれたりするかもしれない。内容によっては手を休める時間があることも考えられる。五分だけでもくれないだろうか、せめて血を拭きたい。
しかし、主役は続けて無邪気な笑顔で恐ろしいことを言った。
「だから、みんなでダンスでもしない? ハープがずっと鳴っているんだから踊りたいわ」
俺は自然と乾いた笑みがこみ上げてきた。
鳴っているんじゃない、俺が鳴らしているんだ、手から血を出してな……いいさ、感覚はなくなっているが指は動く。
間諜である俺に表で目立つ役をやらせると、かえって情報が得られないことを今回の件であのわがまま伯爵令嬢も思い知るだろう。
そんな風に思っていたときだ。
「ねえ、見て、星が出てるわっ!」
主役オデットのすぐそばで誰かが声を上げて、空を指さした。姉のレリアだ。
彼女の呼びかけに、皆が上を見上げる。
「まあ、ほんと」
「すっかり日が暮れていたのね」
「きれいな宵の明星」
令嬢たちが口々にそう言ったのに、レリアはよく通る声で提案した。
「ダンスもいいけど、その前に星の話をしない? ロザリンドは星にお詳しいのではなかった?」
レリアの言葉に、オデットも「まあそうなの?」と興味ありげに名前を言われた令嬢の方を見た。
「聞かせてロザリンド!」
「あなたの好きなお話でいいわよ」
「できればうんとロマンチックなのを」
呼ばれたロザリンドは少し得意げに「いいわ」と頷くと、「むかしむかしある王国に……」と語り始めた。
しめた! 会場にいた皆がその語りに耳を傾け始めたので、少し離れたところにいる音楽師の演奏なんて誰も気に留めないはずだ。
俺は演奏の手を止めると楽器から手を離したーーそのときだ。
目の前に誰かが立った。
皆が語りを聴きにロザリンドの周りに集まっているのに。くそ、演奏が止まったのが気に食わなかったか。
「し、失礼。語りが気になって演奏の手が止まってしまいやしたねえ」
俺は慣れない口調の軽口でごまかして、持ち合わせていない愛想で精いっぱい笑みを向けようとする。
ところが顔を見上げて、初めてそこにいるのが標的の人物レリアだということがわかった。
彼女は俺からハープを取り上げてしまうと、深刻そうな顔を向けた。澄んだはしばみ色の瞳がこちらを見ている。
「こちらへ」
そう言うと彼女は庭園の出口へと向かっていった。俺はぽかんとその姿を見ていたが、彼女が振り返って手まねきしているのが見えると、慌てて立ち上がって彼女の後に従った。
レリアは庭園を出ると、俺を連れてモルドレッド邸の中へ入った。
まずい、もしかして俺が間者だとばれたのか? いや、そんな素振りは全く見せなかったはずだ、疑われる隙は全くない……だがこのまま気づかれないうちに姿を消した方が賢明なのではないか。いや焦るな、ハープは彼女が持っている。あれは少々値が張った。あれに代わるくらいの代金はほしい。
俺は冷や汗をかきながらレリアについていった。
屋敷の中を歩いているとすぐにメイドの姿が通りかかった。レリアが彼女を引き止める。
「ネリー! ちょうどよかった」
「おやお嬢様、どうされました?」
ネリーと呼ばれたメイドに目をやる。やや太った中年の女だ。彼女に俺を引き渡すのだろうか。まずいな、体格の大きな人間は女だろうと力が強い。逃げ切れるだろうか。
ところがレリアは、突然俺の手を取るとメイドに見せた。
「見て、ひどい怪我でしょう? 手当てできるかしら」
「ありゃま、ひどい。まずは洗わないといけませんね……すぐ用意します。こっちへどうぞ」
怪我……俺のこの指のことらしい。それでここまで連れてきたっていうのか?
俺が何も言わないでいるうちに、小さなダイニングに辿り着くと、ネリーは桶に張った水に俺の両手をひたした。
「いっ!」
思わず声を上げてしまった。傷口に水が入り込むのがナイフで切られるように痛い。
「我慢して! まずは傷口を洗っておかないと」
じゃばじゃばとネリーの太い指ですすがれて、何度か「いて」「うっ」と声を上げつつも、血まみれで真っ赤だった俺の手は本来の肌色に戻った。
それからレリアが柔らかい布巾を用意しており、優しく拭かれた。
その後は椅子に座らされると、ネリーとレリアの二人に薬を塗られ、御大層にも傷口があるところすべてに細い布まで巻かれた。
「大したことないのに」
そうつぶやくと、ネリーが傷口をぎゅっと絞めて言った。
「何言ってるの、ハープ弾きは指が命でしょうが」
あ、そうか。俺は今ハープ弾きの道化師だった。危なかった。
手当てが終わると、ネリーはハープを洗ってくるからと言ってダイニングを後にした。大きな楽器が血まみれだから、井戸の水を汲んで洗ってくれるのだろう。弦が痛むかもしれないが、もう弾く気はないからいい。
それにしても指全部に布が巻かれているなんて、どこかの古代文明の死体みたいだな。俺が自分の手を見下ろしていると、突然レリアにその手をそっと掴まれた。
ぎょっとして逃げるために腰を浮かせようしたが、レリアの顔は悲しげで、掴んだ手も振りほどけばすぐ離れてしまいそうな力だ。
「ごめんなさい」
はしばみ色の瞳が再びこちらを見つめた。
「あなたがこんな指になってしまうまで気づかなかったなんて。ずっと音楽が聞こえていたのに」
俺は目の前に立つ女を見上げた。
レリア・ド・モルドレッド。モルドレッド子爵家の長女。
間近で見る彼女は雇い主が嫉妬するのも頷けるほど、可憐で美しい顔をしていた。歳はわからないが三女のオデットとは十離れていると先ほど客たちが話しているのが聞こえた。
事前に調べた情報では彼女は前妻の娘、妹二人は今の妻の娘らしい。前妻は今の妻と比べて身分が低かったため、子爵家を継ぐのは妹二人のどちらかであるべきだと考えられているのが噂だ。しかし、見た様子では性格は温厚、妹二人とも仲が良く、会場の雰囲気からも険悪ではなさそうだ。主人によれば王太子妃候補の一人になっているそうだが、それはおそらくこの目立つような美しい顔立ちから噂に上がっているのだろう。
レリアは心配そうに俺に言った。
「その、近いうちに演奏の仕事が入っていたりするのかしら。明日や明後日は弾く予定はあるの?」
弾く? ああ、ハープのことか。
「いいや、当分は……」
当分どころかもう二度と弾くものか。今メイドが洗ってくれているハープも高値で売ってやる。
レリアは俺の返事を聞いて「そう」と少しほっとした顔になった。
「美しい音楽をありがとう。妹はとても喜んでくれたわ。私も、ずっと聞いていたいと思ってしまったもの……ごめんなさいね」
また謝った。俺が指から血を流しながら弾いていたことが、よほど申し訳なかったらしい。確かに痛かったしもう二度とごめんだが、そんなに落ち込まないでほしい。何を言えば彼女の気が晴れるだろう……ああ、そうだ。
「給金を」
俺は咳払いして言った。
「給金をはずんでくれたら、指の怪我は差し引きゼロに……」
金をくれるのであれば、今回の俺の頑張りも報われる。
俺が遠慮がちにそう言ったのに、レリアはふんわりと微笑んだ。
「そうさせてもらうわね……ほんとうに素敵な音楽だったわ、今日は来てくれてありがとう」
彼女の微笑みはほんとうに花が咲いたようで、これほどの美女にこんな顔を向けられるなんて、人生で二度とないなとしみじみ思った。
それから俺は金貨のいっぱい詰まった袋を受け取ると、メイドが洗ってくれたハープを背負って帰路についた。
大した情報は得られなかったが、一応雇い主ジョゼフィーヌ・ド・ギローの元へ行き、誕生日会で呼ばれていた客たちやその様子を報告した。
「あの長女は? レリアの尻尾は掴んだの」
そういえばそんな仕事内容だった。俺は何と言おうか迷った。レリアの弱みといえば大事にしている妹たちだろう。だがそんなことはこの主人もわかっていることだ。
俺は当たり障りのないことを言った。
「……あまり表舞台には立つことは控えているようです。メイドと一緒になって目立たないような役割を引き受けており、招待客と会話している様子は見受けられませんでした」
「ふん、内輪の誕生日会でもあの女は仮面を被っているってわけね」
いや、そうは言ってないだろう。俺は咳払いして続けて言った。
「揉め事は避けようとしているように窺えました。おそらく王太子の件は噂に過ぎないかとーー」
「自分が子爵の家を継げないからって、王太子を狙うなんておこがましいにもほどがあるのよ。あんな美貌を兼ね揃えているから自信があるのだわ。いいわ、何か策を考える」
聞いちゃいない。こりゃ、そのうち暴走するんじゃないか。恐ろしい女だ。あのレリアって女も気の毒なことだ。
俺は肩をすくめて主人の前から下がった。
しかしあんな大輪の花みたいな美女だったら、王太子が婚約者候補に入れていても不思議じゃないかと思えるな。俺だって、一度はあんな美女の隣を歩いてみたいものだ。
まあ今の王太子は馬鹿じゃないし、貴族たちの態度にも敏感だから、揉め事を起こすようなことはしないだろう。第一に子爵家は下級貴族だから王太子妃の枠から対象外のはずだ。
それにしても手が痛い。慣れないハープをずっと弾き通しだったからだ。そろそろこんな無茶を言うわがまま娘から雇用主を替えようか。
彼女のように私的な理由で間諜を雇う人物は、この国にはあまりいない。大体は一族をあげて政治的な策略を企むためだったり、王族の陰謀なんかで雇われたりする。暗殺なんかも要求してくる家もあるのだろう。もちろんその方が給金も高いが、血なまぐさいのはできるだけ避けたい。
そうしてわがまま娘のお守りで我慢する毎日だった。
だがそれから数日もしないある午後、天井裏でうたたねしていたとき、わがまま娘が誰かと話しているのが聞こえてむくりと起きた。
雇い主ジョゼフィーヌが、特に仲の良い友人たち三人ほどと、何やらこそこそと話している。
俺は耳をすませた。
「……お茶会で? でも、お茶はみんなに注ぐものよ。茶葉に入れてしまってはみんなが飲むことになってしまうわ」
「お砂糖もそうね」
「カップ! カップがいいわ、席は私が定めるのだし、あの女が座る場所も決めてしまえるから、そこに置かれるカップに毒を塗っておけばいいのよ」
「いいアイディアだわ。メイドたちの数は最小限にしましょ」
「毒はどんなものなの?」
「即効性ではないけど、だんだん気分が悪くなってくるはずよ。もしかしたらその場で胃のものを戻してしまうかも。そうなれば一生の恥。ふふ、もう社交界に顔を出せないわ」
「まあ、ジョゼフィーヌ! あなたって策士ね」
「きっとモルドレッド邸に手紙を出せば三人一緒に来るわ。妹たちが味方するかもしれないから、長女のレリアだけお茶会に来るように招待状を出しましょう」
「断られたらどうするの?」
「大丈夫、ハープ弾きを呼ぶって言えばきっと来るわよ、うちに専属がいるから。それに招待状には王太子も招待しているって書くのだから、来ないわけがないわ」
「『王太子はどこなの?』ってあの子が言ったら、それこそみんなで大笑いよ!」
「ふふっ、楽しみね」
誰が専属だ、この性悪女。全く、ひどいことを企む女たちがいたものだ。
俺は吐き気がするのを堪えて彼女たちがお茶会の日付を決めて解散するまでの会話を聞き取ると、あぐらをかいて考えた。
おそらくジョゼフィーヌは本気でこの企みを実行するだろう。こうしたいたずらやいじめを彼女は何度となく行っていたが、今回は阻止した方がいい。毒など専門家でないのだから分量などわかるはずがない。下手すれば命を奪いかねない。なにより俺はもう二度とハープは弾かないと決めたんだ。
あのモルドレッド子爵の長女が茶会を断れば万事解決であるが、そうさせるにはどうすればいいのだろうか。
俺は夜通し考えた。
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