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7 目が覚めて現実を知る
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ゆっくりと目を覚ました。何かが窮屈な気がする。
目を開けて目に入った色味の景色に寝ぼけた頭がついていかない。
何だっけ?
次第に頭が動いていく、目に映るこの部屋を記憶に結びつけようとする。
いや、無理。どこ? ここどこ?
がばっと起き上がりキョロキョロする。
自分の部屋じゃない。あとは・・・・。どこ?わからないんですけど。
少し空いた隙間から向こうスペースが見える。
誰かいる。
その前に自分の格好を見ると、スーツ?
窮屈なはずだ。
え、待って・・・・・待ってほしいのは思い出しそうな自分。
思い出したくない気がする。
でも思い出すんだ、だめ、待ってってば~。
脳内会議には持ち主の意志は反映されず。
勝手に昨日のことがフラッシュバックする。
昨日萩原さんに誘われて食事して、タクシーに乗って最寄りの駅からナビするはずが・・・・。
どこに案内したの?私。
ゆっくり起きながらも髪と皺だらけの服をちょっとだけ整え、かすかな気配におびえつつ部屋を出ようとする。
当然向こうには想像した人がいて・・・・・。
目が合ったとたん何故かドアを閉めて背中を預けてしまった。
夢なら醒めて・・・・現実に戻りたい・・・・・・。
うん、これは本当です、本心です。本当に戻りたいです。
一生懸命唱えて目を開けたのに先ほどと変わらない視界が広がる。
リアルもリアル。これは現実でした。
覚悟を決めてドアに向き合うとドアの向こうで声がした。
「おはよう、相川さん。何か心配してるようなら・・・・それは大丈夫だから。出てきてくれないかな?」
それはこの格好を見ればわかって安心している。その心配はないけど。
ただ申し訳なさと情けなさと恥ずかしさで、どうやって顔を合わせればいいか。
加えて歯磨きもシャワーも浴びずにぐっすり寝たなんて。
ゆっくりうつむきながら部屋を出る。
リビングだろう部屋を歩いて萩原さんの足下が見えた。
「本当に、どこまでも、ずうずうしく、重ね重ねご迷惑をかけましたっ。申し訳ありませんでした。」
ガバッと腰を折りお辞儀をして謝罪する。
「うん、謝ることは何もないよ。とりあえずこっちに必要なもの用意してるからどうぞ。」
手を引かれ洗面所へ。
コンビニの袋を手渡されてタオルとドライヤーと。
「あと必要なもの使って。コーヒー淹れて待ってるね。」
もごもごとお礼を口にして受け取る。
背後でとびらが閉まった。
コンビニの袋には洗顔セットと歯ブラシが入っていた。
朝起きて買ってきてくれたんだろう。
顔を上げて鏡を見ると我ながらひどい格好だった。
皺だらけの服で外を歩く羽目になるらしい。
顔を洗って入ってるものをすべて顔に塗り、髪の毛も水で濡らしてドライヤーを借りる。
タオルを顔に当てて洗面所を離れる。
「あの、ありがとうございました。」
「ああ、そこに座って。」
ソファに座るとコーヒーが運ばれてきた。
「お腹空いてる?スコーン食べれる?」
「はい。」
タオルを顔に当てて返事をする。
失礼極まりないと分かってるのに・・・・
顔を上げると「今更だからいいんじゃない?」と指さされた。
タオルのことだろう。
なんだかため息が出て手にしたタオルもゆっくり下ろす。
「本当に失礼しました。洗顔セットや歯ブラシもわざわざありがとうございました。」
後でお会計してもらおう、いろいろ。
今気がついた、もしかして彼女のもの?
ど、ど、どうしよう・・・・。でも新品で袋にも入ってて・・・・。
「まあ、いろいろ話を聞きたいだろうし、僕も話があるから。でもとりあえず朝ごはんにしよ。本当に大丈夫だから、・・・・僕はそこに寝たし。」
萩原さんがソファを指さす。一瞬腰を浮かせてしまった。
さっきからタオルの代わりに私が手にしてたクッションはもしかして・・・。枕・・・・?
そっと背中の方へ回し、手を放す。
チン!
トースターの音がしておいしそうな匂いがしてきた。
ペーパーナプキンの上に小さめのスコーンが2個づつ。
籐製の入れ物にいれられてくるなんて・・・・・意外な女子力を発見。
「近くのパン屋さんでまとめて買って冷凍して週末に食べるんだ。美味しいよ。」
「いただきます。毎日こんな感じですか?」
「いや、週末だけ。仕事の日は食べるより寝ていたいタイプだから。」
焼きたてのようにあったかくてさっくりしたスコーン。
コーヒーも胃にしみる。
「本当においしいです。帰りに買って帰ろうかなあ。」
つい能天気につぶやいてしまった。
「あとで一緒に行こうか?」
萩原さんは昨日となんら態度が変わらない。
むしろくつろいだ分言葉も優しくて、大切にされてる感覚に勘違いしそうになる。
ナッツとチョコ。
甘さ控えめでそれぞれ粉も違っていた。本当においしい。
こんな週末の朝が恥ずかしいアクシデントによるものでも、少し幸せを感じてうれしくなる。
朝ごはんも終わり、コーヒーのお代わりを注いでくれた萩原さんが隣に落ち着く。
いつまでもお邪魔してるわけにはいかない。
早くおいとましなきゃいけない・・・・。
覚醒後数時間を持ってとける魔法。
夜中にとけなかっただけでも良しとしたい。
本当は昨日の夜のうちに綺麗になくなっていた景色なのだから。
「何か先に聞きたいことはある?」
「・・・・・・ありすぎて・・・。」
「今日何か予定は?」
「いえ、特にないです。」
「じゃあ、長くなるけど覚悟はいい?」
長くなる?・・・それに覚悟?・・・・。
何やらやってしまいましたか・・・一気に不安が押し寄せてくる。
でも萩原さんが嬉しそうな顔をしているのを見ると・・・許された気がして勝手に安心する自分がいる。
「お、お願いします。」
「本当に長いよ、多分。」
目を開けて目に入った色味の景色に寝ぼけた頭がついていかない。
何だっけ?
次第に頭が動いていく、目に映るこの部屋を記憶に結びつけようとする。
いや、無理。どこ? ここどこ?
がばっと起き上がりキョロキョロする。
自分の部屋じゃない。あとは・・・・。どこ?わからないんですけど。
少し空いた隙間から向こうスペースが見える。
誰かいる。
その前に自分の格好を見ると、スーツ?
窮屈なはずだ。
え、待って・・・・・待ってほしいのは思い出しそうな自分。
思い出したくない気がする。
でも思い出すんだ、だめ、待ってってば~。
脳内会議には持ち主の意志は反映されず。
勝手に昨日のことがフラッシュバックする。
昨日萩原さんに誘われて食事して、タクシーに乗って最寄りの駅からナビするはずが・・・・。
どこに案内したの?私。
ゆっくり起きながらも髪と皺だらけの服をちょっとだけ整え、かすかな気配におびえつつ部屋を出ようとする。
当然向こうには想像した人がいて・・・・・。
目が合ったとたん何故かドアを閉めて背中を預けてしまった。
夢なら醒めて・・・・現実に戻りたい・・・・・・。
うん、これは本当です、本心です。本当に戻りたいです。
一生懸命唱えて目を開けたのに先ほどと変わらない視界が広がる。
リアルもリアル。これは現実でした。
覚悟を決めてドアに向き合うとドアの向こうで声がした。
「おはよう、相川さん。何か心配してるようなら・・・・それは大丈夫だから。出てきてくれないかな?」
それはこの格好を見ればわかって安心している。その心配はないけど。
ただ申し訳なさと情けなさと恥ずかしさで、どうやって顔を合わせればいいか。
加えて歯磨きもシャワーも浴びずにぐっすり寝たなんて。
ゆっくりうつむきながら部屋を出る。
リビングだろう部屋を歩いて萩原さんの足下が見えた。
「本当に、どこまでも、ずうずうしく、重ね重ねご迷惑をかけましたっ。申し訳ありませんでした。」
ガバッと腰を折りお辞儀をして謝罪する。
「うん、謝ることは何もないよ。とりあえずこっちに必要なもの用意してるからどうぞ。」
手を引かれ洗面所へ。
コンビニの袋を手渡されてタオルとドライヤーと。
「あと必要なもの使って。コーヒー淹れて待ってるね。」
もごもごとお礼を口にして受け取る。
背後でとびらが閉まった。
コンビニの袋には洗顔セットと歯ブラシが入っていた。
朝起きて買ってきてくれたんだろう。
顔を上げて鏡を見ると我ながらひどい格好だった。
皺だらけの服で外を歩く羽目になるらしい。
顔を洗って入ってるものをすべて顔に塗り、髪の毛も水で濡らしてドライヤーを借りる。
タオルを顔に当てて洗面所を離れる。
「あの、ありがとうございました。」
「ああ、そこに座って。」
ソファに座るとコーヒーが運ばれてきた。
「お腹空いてる?スコーン食べれる?」
「はい。」
タオルを顔に当てて返事をする。
失礼極まりないと分かってるのに・・・・
顔を上げると「今更だからいいんじゃない?」と指さされた。
タオルのことだろう。
なんだかため息が出て手にしたタオルもゆっくり下ろす。
「本当に失礼しました。洗顔セットや歯ブラシもわざわざありがとうございました。」
後でお会計してもらおう、いろいろ。
今気がついた、もしかして彼女のもの?
ど、ど、どうしよう・・・・。でも新品で袋にも入ってて・・・・。
「まあ、いろいろ話を聞きたいだろうし、僕も話があるから。でもとりあえず朝ごはんにしよ。本当に大丈夫だから、・・・・僕はそこに寝たし。」
萩原さんがソファを指さす。一瞬腰を浮かせてしまった。
さっきからタオルの代わりに私が手にしてたクッションはもしかして・・・。枕・・・・?
そっと背中の方へ回し、手を放す。
チン!
トースターの音がしておいしそうな匂いがしてきた。
ペーパーナプキンの上に小さめのスコーンが2個づつ。
籐製の入れ物にいれられてくるなんて・・・・・意外な女子力を発見。
「近くのパン屋さんでまとめて買って冷凍して週末に食べるんだ。美味しいよ。」
「いただきます。毎日こんな感じですか?」
「いや、週末だけ。仕事の日は食べるより寝ていたいタイプだから。」
焼きたてのようにあったかくてさっくりしたスコーン。
コーヒーも胃にしみる。
「本当においしいです。帰りに買って帰ろうかなあ。」
つい能天気につぶやいてしまった。
「あとで一緒に行こうか?」
萩原さんは昨日となんら態度が変わらない。
むしろくつろいだ分言葉も優しくて、大切にされてる感覚に勘違いしそうになる。
ナッツとチョコ。
甘さ控えめでそれぞれ粉も違っていた。本当においしい。
こんな週末の朝が恥ずかしいアクシデントによるものでも、少し幸せを感じてうれしくなる。
朝ごはんも終わり、コーヒーのお代わりを注いでくれた萩原さんが隣に落ち着く。
いつまでもお邪魔してるわけにはいかない。
早くおいとましなきゃいけない・・・・。
覚醒後数時間を持ってとける魔法。
夜中にとけなかっただけでも良しとしたい。
本当は昨日の夜のうちに綺麗になくなっていた景色なのだから。
「何か先に聞きたいことはある?」
「・・・・・・ありすぎて・・・。」
「今日何か予定は?」
「いえ、特にないです。」
「じゃあ、長くなるけど覚悟はいい?」
長くなる?・・・それに覚悟?・・・・。
何やらやってしまいましたか・・・一気に不安が押し寄せてくる。
でも萩原さんが嬉しそうな顔をしているのを見ると・・・許された気がして勝手に安心する自分がいる。
「お、お願いします。」
「本当に長いよ、多分。」
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