32 / 40
32 非常階段の出来事の後始末
しおりを挟む
「ねえ、大丈夫?」香が心配そうに聞いてくる。
「向こうで怒ってそうなそうな気配してたけど。」
「うん・・・・多分大丈夫。まあ、昨日いろいろと言ったから知ってるんだ、鈴木さんのことは。」
「え~、知っててもあんなに楽しそうに話しかけられてたら、それを見てるのって嫌なもんじゃない?」
「うん。でも友達というか、ちょっとお世話になって仲良くなっただけだから・・・。」
「それにしてはラブラブ光線出てた気がしたけど。喧嘩したらつらい思いするのは琴だし、旅行楽しみたいでしょう?私さりげなく伝えとこうか?」
香が優しくも大胆な提案をする。
「さすがにそれは・・・、何とかする自分で。」
「必要なら言ってね。」
「ありがとう、香」
笑顔で返す。今日はだって、だって、機嫌がいいからねっ。
萩原さんを見たのになんだかそうでもないみたいな表情で???
書類の抜けているところを確認するついでに滅多に行かない営業部にワクワクしながら顔を出し、目当ての人に声をかけてあっさり用件が済んだ。
せっかく出張ってきたのに、ドキドキしてたのに萩原さんはいない。
少しキョロキョロとしたので南田さんと目が合い呼ばれた。
「琴ちゃん、いろいろごめんね。」小声で謝罪される。
「いえ、大丈夫です。それより昨日のお昼は有難うございました。南田さんの言葉がなかったら素直に聞き入れられたかどうか・・・・。」
「まあね、人望のなせる業だよね。それより僕の選んだところ楽しんできてね。」
そういえばメールに南田さんが予約してくれたと書いてあった。
「ありがとうございます。」
「うん、じゃあね。」
手を振る南田さんにお辞儀をして戻る。
席に戻る前に誰もいない休憩室に入る。
箱根の旅館の名前を検索してみる。
いいのだろうか・・・・。
離ればかりの贅沢なつくりの旅館。こんなところ取れたの?
びっくり、ゆっくりのんびり出来そう。
もちろん露天風呂もついている、というか部屋についていますけど・・・・・。離れと言えばそうでしょうねぇ。
萩原さんが露天付き部屋をリクエストしたのかなあ。
私は普通の広い露天って意味でお願いしたんだけど。
今だって一緒に入ってるけど・・・・。
ムードというか何というか違うじゃない、今から緊張する。
一人顔を真っ赤にして携帯を握りしめていると名前を呼ばれた。
「相川さん、今日は楽しそうだね。」
思わず直立してしまう。
何でいつも変なところばかり目撃されるのか。
すっごく情緒不安定みたいじゃない。
こうも席を立ったタイミングで出会い、人目がない状況で話ができるとは・・・。
気が合うのかもしれないと思ったりして。
瞬間、怖い誰かの顔が浮かんで急いで『嘘です』と心でつぶやく。
赤面の元、携帯をポケットにしまい込み何気ない風を装う。
「こんにちは。休憩ですか?」
「うん、まあね。なんだかうなり声みたいなのが聞こえてきたから。まさか相川さんだったなんて。」
ゆるっと笑われる。
やっぱり恥ずかしい場面を見られていた、聞かれていた。
「この間までとは別人のように元気になったね。良かったけど、僕の存在は最初からいらなかったかな?」
笑顔だけど目が真剣みたいで。
ちゃんと答えなきゃ。これ以上萩原さんとこじれたくない。
さりげなく告げたい。
「はい、ちょっと好きな人と大喧嘩してしまって。本当にそんなことで仕事中に逃げ出すなんて情けないんですが・・・・。ちゃんと仲直りをしまして。」
「そうか、そうだよね。・・・・随分印象変わったよ。すごく素敵になった。きっと誰かのおかげだったんだね。」
そんなの肯定できません。
「あ、ありがとうございます。・・・・はい。」
萩原さんの優しい顔を思い出してしまう。
さっきはあんなに怒った顔で出てきたくせに、とつい文句を言った。
もちろん心の中で。
「そうか、やっぱり遅かったか。ふ~。しょうがない、とりあえずは諦めるよ。でももし又あんな風に悲しんでるのを見たりしたら今度はグイッと責めるかもね。じゃあ。」
とりあえず顔も見れずお辞儀をして足音を見送った。
とりあえずは言えた。伝わった。
緊張した~。
とりあえず後で報告、萩原さんと香に。
急いで席に戻り仕事を続けた。
明日は泊りの荷物を持って駅のロッカーに預けて。
あんな素敵なお宿に泊まるんだからスーツで行くとは言え翌日は女性らしい格好でいたい。
靴もちょっと違う感じにして。
雨が降った時の為に古いパンプスを置いてある。
仕事中はそれを履いて・・・・・。
あ~仕事にならない。
楽しみだなあ。
よくよく考えなくても彼氏とお泊り旅行って初めてなんですけど。
お家とは違うよね。
最大の問題も怒られる前に自分で解決。褒めてもらってもいいぐらい。
そういえば自分ももう一つ謝りたい。あの八つ当たりしたスコーン。
明日解凍して食べよう。
ちょっとボロッとなったかしら。
でも味は変わらないはず。
荷物が思いのほか大きくなってしまった。
一泊なのにとあきれられそう。
すっかり気分は箱根に飛んで行ってます。
昨日萩原さんに鈴木さんのことも報告した。よし。
もちろん香にも報告済!
「向こうで怒ってそうなそうな気配してたけど。」
「うん・・・・多分大丈夫。まあ、昨日いろいろと言ったから知ってるんだ、鈴木さんのことは。」
「え~、知っててもあんなに楽しそうに話しかけられてたら、それを見てるのって嫌なもんじゃない?」
「うん。でも友達というか、ちょっとお世話になって仲良くなっただけだから・・・。」
「それにしてはラブラブ光線出てた気がしたけど。喧嘩したらつらい思いするのは琴だし、旅行楽しみたいでしょう?私さりげなく伝えとこうか?」
香が優しくも大胆な提案をする。
「さすがにそれは・・・、何とかする自分で。」
「必要なら言ってね。」
「ありがとう、香」
笑顔で返す。今日はだって、だって、機嫌がいいからねっ。
萩原さんを見たのになんだかそうでもないみたいな表情で???
書類の抜けているところを確認するついでに滅多に行かない営業部にワクワクしながら顔を出し、目当ての人に声をかけてあっさり用件が済んだ。
せっかく出張ってきたのに、ドキドキしてたのに萩原さんはいない。
少しキョロキョロとしたので南田さんと目が合い呼ばれた。
「琴ちゃん、いろいろごめんね。」小声で謝罪される。
「いえ、大丈夫です。それより昨日のお昼は有難うございました。南田さんの言葉がなかったら素直に聞き入れられたかどうか・・・・。」
「まあね、人望のなせる業だよね。それより僕の選んだところ楽しんできてね。」
そういえばメールに南田さんが予約してくれたと書いてあった。
「ありがとうございます。」
「うん、じゃあね。」
手を振る南田さんにお辞儀をして戻る。
席に戻る前に誰もいない休憩室に入る。
箱根の旅館の名前を検索してみる。
いいのだろうか・・・・。
離ればかりの贅沢なつくりの旅館。こんなところ取れたの?
びっくり、ゆっくりのんびり出来そう。
もちろん露天風呂もついている、というか部屋についていますけど・・・・・。離れと言えばそうでしょうねぇ。
萩原さんが露天付き部屋をリクエストしたのかなあ。
私は普通の広い露天って意味でお願いしたんだけど。
今だって一緒に入ってるけど・・・・。
ムードというか何というか違うじゃない、今から緊張する。
一人顔を真っ赤にして携帯を握りしめていると名前を呼ばれた。
「相川さん、今日は楽しそうだね。」
思わず直立してしまう。
何でいつも変なところばかり目撃されるのか。
すっごく情緒不安定みたいじゃない。
こうも席を立ったタイミングで出会い、人目がない状況で話ができるとは・・・。
気が合うのかもしれないと思ったりして。
瞬間、怖い誰かの顔が浮かんで急いで『嘘です』と心でつぶやく。
赤面の元、携帯をポケットにしまい込み何気ない風を装う。
「こんにちは。休憩ですか?」
「うん、まあね。なんだかうなり声みたいなのが聞こえてきたから。まさか相川さんだったなんて。」
ゆるっと笑われる。
やっぱり恥ずかしい場面を見られていた、聞かれていた。
「この間までとは別人のように元気になったね。良かったけど、僕の存在は最初からいらなかったかな?」
笑顔だけど目が真剣みたいで。
ちゃんと答えなきゃ。これ以上萩原さんとこじれたくない。
さりげなく告げたい。
「はい、ちょっと好きな人と大喧嘩してしまって。本当にそんなことで仕事中に逃げ出すなんて情けないんですが・・・・。ちゃんと仲直りをしまして。」
「そうか、そうだよね。・・・・随分印象変わったよ。すごく素敵になった。きっと誰かのおかげだったんだね。」
そんなの肯定できません。
「あ、ありがとうございます。・・・・はい。」
萩原さんの優しい顔を思い出してしまう。
さっきはあんなに怒った顔で出てきたくせに、とつい文句を言った。
もちろん心の中で。
「そうか、やっぱり遅かったか。ふ~。しょうがない、とりあえずは諦めるよ。でももし又あんな風に悲しんでるのを見たりしたら今度はグイッと責めるかもね。じゃあ。」
とりあえず顔も見れずお辞儀をして足音を見送った。
とりあえずは言えた。伝わった。
緊張した~。
とりあえず後で報告、萩原さんと香に。
急いで席に戻り仕事を続けた。
明日は泊りの荷物を持って駅のロッカーに預けて。
あんな素敵なお宿に泊まるんだからスーツで行くとは言え翌日は女性らしい格好でいたい。
靴もちょっと違う感じにして。
雨が降った時の為に古いパンプスを置いてある。
仕事中はそれを履いて・・・・・。
あ~仕事にならない。
楽しみだなあ。
よくよく考えなくても彼氏とお泊り旅行って初めてなんですけど。
お家とは違うよね。
最大の問題も怒られる前に自分で解決。褒めてもらってもいいぐらい。
そういえば自分ももう一つ謝りたい。あの八つ当たりしたスコーン。
明日解凍して食べよう。
ちょっとボロッとなったかしら。
でも味は変わらないはず。
荷物が思いのほか大きくなってしまった。
一泊なのにとあきれられそう。
すっかり気分は箱根に飛んで行ってます。
昨日萩原さんに鈴木さんのことも報告した。よし。
もちろん香にも報告済!
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる