クールな見かけに惹かれましたが、何か間違いましたか?

羽月☆

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32 非常階段の出来事の後始末

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「ねえ、大丈夫?」香が心配そうに聞いてくる。

「向こうで怒ってそうなそうな気配してたけど。」

「うん・・・・多分大丈夫。まあ、昨日いろいろと言ったから知ってるんだ、鈴木さんのことは。」

「え~、知っててもあんなに楽しそうに話しかけられてたら、それを見てるのって嫌なもんじゃない?」

「うん。でも友達というか、ちょっとお世話になって仲良くなっただけだから・・・。」

「それにしてはラブラブ光線出てた気がしたけど。喧嘩したらつらい思いするのは琴だし、旅行楽しみたいでしょう?私さりげなく伝えとこうか?」

香が優しくも大胆な提案をする。

「さすがにそれは・・・、何とかする自分で。」

「必要なら言ってね。」

「ありがとう、香」

笑顔で返す。今日はだって、だって、機嫌がいいからねっ。
萩原さんを見たのになんだかそうでもないみたいな表情で???

書類の抜けているところを確認するついでに滅多に行かない営業部にワクワクしながら顔を出し、目当ての人に声をかけてあっさり用件が済んだ。
せっかく出張ってきたのに、ドキドキしてたのに萩原さんはいない。
少しキョロキョロとしたので南田さんと目が合い呼ばれた。

「琴ちゃん、いろいろごめんね。」小声で謝罪される。

「いえ、大丈夫です。それより昨日のお昼は有難うございました。南田さんの言葉がなかったら素直に聞き入れられたかどうか・・・・。」

「まあね、人望のなせる業だよね。それより僕の選んだところ楽しんできてね。」

そういえばメールに南田さんが予約してくれたと書いてあった。

「ありがとうございます。」

「うん、じゃあね。」

手を振る南田さんにお辞儀をして戻る。

席に戻る前に誰もいない休憩室に入る。
箱根の旅館の名前を検索してみる。
いいのだろうか・・・・。
離ればかりの贅沢なつくりの旅館。こんなところ取れたの?
びっくり、ゆっくりのんびり出来そう。
もちろん露天風呂もついている、というか部屋についていますけど・・・・・。離れと言えばそうでしょうねぇ。
萩原さんが露天付き部屋をリクエストしたのかなあ。
私は普通の広い露天って意味でお願いしたんだけど。
今だって一緒に入ってるけど・・・・。
ムードというか何というか違うじゃない、今から緊張する。

一人顔を真っ赤にして携帯を握りしめていると名前を呼ばれた。

「相川さん、今日は楽しそうだね。」

思わず直立してしまう。
何でいつも変なところばかり目撃されるのか。
すっごく情緒不安定みたいじゃない。
こうも席を立ったタイミングで出会い、人目がない状況で話ができるとは・・・。
気が合うのかもしれないと思ったりして。
瞬間、怖い誰かの顔が浮かんで急いで『嘘です』と心でつぶやく。

赤面の元、携帯をポケットにしまい込み何気ない風を装う。

「こんにちは。休憩ですか?」

「うん、まあね。なんだかうなり声みたいなのが聞こえてきたから。まさか相川さんだったなんて。」

ゆるっと笑われる。
やっぱり恥ずかしい場面を見られていた、聞かれていた。

「この間までとは別人のように元気になったね。良かったけど、僕の存在は最初からいらなかったかな?」

笑顔だけど目が真剣みたいで。
ちゃんと答えなきゃ。これ以上萩原さんとこじれたくない。
さりげなく告げたい。

「はい、ちょっと好きな人と大喧嘩してしまって。本当にそんなことで仕事中に逃げ出すなんて情けないんですが・・・・。ちゃんと仲直りをしまして。」

「そうか、そうだよね。・・・・随分印象変わったよ。すごく素敵になった。きっと誰かのおかげだったんだね。」

そんなの肯定できません。

「あ、ありがとうございます。・・・・はい。」

萩原さんの優しい顔を思い出してしまう。
さっきはあんなに怒った顔で出てきたくせに、とつい文句を言った。
もちろん心の中で。

「そうか、やっぱり遅かったか。ふ~。しょうがない、とりあえずは諦めるよ。でももし又あんな風に悲しんでるのを見たりしたら今度はグイッと責めるかもね。じゃあ。」

とりあえず顔も見れずお辞儀をして足音を見送った。
とりあえずは言えた。伝わった。
緊張した~。
とりあえず後で報告、萩原さんと香に。
急いで席に戻り仕事を続けた。

明日は泊りの荷物を持って駅のロッカーに預けて。
あんな素敵なお宿に泊まるんだからスーツで行くとは言え翌日は女性らしい格好でいたい。
靴もちょっと違う感じにして。
雨が降った時の為に古いパンプスを置いてある。
仕事中はそれを履いて・・・・・。
あ~仕事にならない。
楽しみだなあ。
よくよく考えなくても彼氏とお泊り旅行って初めてなんですけど。
お家とは違うよね。
最大の問題も怒られる前に自分で解決。褒めてもらってもいいぐらい。
そういえば自分ももう一つ謝りたい。あの八つ当たりしたスコーン。
明日解凍して食べよう。
ちょっとボロッとなったかしら。
でも味は変わらないはず。

荷物が思いのほか大きくなってしまった。
一泊なのにとあきれられそう。
すっかり気分は箱根に飛んで行ってます。
昨日萩原さんに鈴木さんのことも報告した。よし。
もちろん香にも報告済!
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