クールな見かけに惹かれましたが、何か間違いましたか?

羽月☆

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After1 いろんな誤解が重なり形が出来る

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どうしてこうなったのか分からない。
今日ランチ後にトイレに行くと先輩数人に寄ってこられた、というか囲まれた・・・私じゃない、その中心にいたのは香だった。
そしてはじかれた形の私が見るに、その先輩方の顔には見覚えがあった。
最近の南田さんの取り巻きじゃない。うっそ~。
香ぃ~。


仲直り旅行から大分立つ。
あの旅館はとても気に入ったけど、やっぱりおねだりするには料金がお高いのだ。
前回は1ケ月の大阪プロジェクトの特別お手当が出てほくほくしていた萩原さんに、噂のお詫びということもあってまるっと出してもらった。

「また来たい、すごくいい。」

何て言ってたのは会計の前まで。
無理でしょう。軽々しくはお願いできない。
ちなにに南田さんがお勧めしてくれたところも検索してみたけど。
同じような離れのあるお宿、こちらも甲乙つけがたく素敵で・・・。
ただ残念、すこぶるお財布に優しくない。
ものすごく堪能したけどもったいなかったって思うくらい。
もっと早くに着いてのんびりべったりと過ごしたかった。
あ~、もったいない。
それに萩原さんのお部屋だって居心地いいし、荷物も置いてあるのでいつでも行ける、泊まれる、出勤できる状態。幸せなのは週末だけじゃなく、仕事が早く終わりそうな時は終業時間前にメールが来て一緒に帰ることもある。

南田さん曰く、この1年萩原さんの仕事効率がよく、集中力が半端ないらしい。
それはいわゆるストーキングされていた頃のことも含む期間で。
南田さんにはにっこりと言われて、その後ろで怖い顔を装いつつも必死に照れ隠しする萩原さんが見えていた。
もうそんなに経つ。大きな事件はあの一つきり。
それ以降はもうにやけるような日々が続いていた。

そして最近事情を知る香以外にも言われるようになったのだ、あのセリフを。

「ねえ、琴ってばなんだかグッと女っぷり良くなったよね。服もすごくセンス良く女らしくなったし、前の地味子脱出とともに明るくなって綺麗になって。さては・・・・何か報告があるんじゃない?」

うれしい、思わず喜んだ。

「本当?本当に綺麗になったって思ってくれる?」

うれしい、念願のセリフ。両手はガッツポーズ。
だって服の趣味のが変わった事は言われたけど、なかなか中身の事は言われなかった。
南田さんと鈴木さんのみ。ん?男性の方が敏感?
南田さんはあんなにきれいな蝶たちに囲まれてるのに、私ごときの変化を認めてくれるなんて格別にうれしかった。鈴木さんはタイミングの問題、一応好意を持ってくれていたならちょっとの変化でも気が付いただろうということで。
ここにきて同期にやっと言われた。女性は同性に厳しいということか?
香には早い段階で言われていたけど。

やっぱりうれしい。
ニコニコと誉め言葉の余韻に浸る私に呆れる友達。

「もう、嬉しそうだけど、どうなのよ。報告するようなこと、きっかけ。」

「あ・・・。えっと香に言われて努力した。へへっ。」とりあえずごまかす。

「なんだ~ハッピーな報告無いの?」

「へへへ。頑張る。」首をかしげて笑ってごまかす。

「本当に、ちゃんとつかんだ幸せは報告してね、楽しみに待ってる。」

「うっ。」香に言われた。うなずく他の2人。

香の一押しもあってなんとかごまかせたらしい。危ない危ない。
言えない、まだ言えない。すっと見上げた視線がばっちり合う。
あの人がきっかけで、報告レポートもたくさん書けるくらいいろいろあって。
何とラブラブな恋人とは。

最近香との2人のランチ時、すっかり蝶たちが立ち去ると南田さんがやってくる。
終業あと10分というくらいの時間。
先に南田さんがこっちに来て話をする。

トレイを片付けさせられてる風の萩原さん。
はた目にはとっても献身的な萩原さんと、奔放でうっすら噂のある恋人南田さんに見える。
でも・・・・トレイを片付けてしぶしぶとこっちに萩原さんが歩いてきて南田さんに時間だぞ!といつもの声をかけるまでの数分。隣で南田さんと香が盛り上がって話をしてるので、残り者二人みたいに私と萩原さんが話をすることになる。
そして「行くぞ、南田。」と立ち上がるまでの時間を萩原さんが楽しんでくれてる事を。
まさかこれが南田さんの戦略とは誰も思わない。
そこまでしてごまかす意味もある?って感じで。
よく考えるとなぜ?誰のため?
でも、こういう気の使い方が素敵なんだろうなあ。万事行き届いて。
取りあえず感謝。

南田さんの恋人はどんな人なんだろう。
同級生と聞いた、長い付き合いとも聞いた。
南田さんが甘える様子なら簡単に想像つく。
きっとしっかり者ではっきりものをいうタイプの女性?
思わず並べた仮想恋人と南田さん。何故か結婚式当日。
私と萩原さんもドレスアップして参加している。
放り投げられたブーケをもらって嬉しそうに笑ってる私。
その想像がぐるっと回って、私が純白のドレスを着て、隣には勿論・・・・、嘘。
なんて嬉しいビジョン。ああ、突然予知能力が目覚めて近い将来のビジョンを見たと誰か言ってくれない?
うっうっ。にやけていいのか、夢見がちな自分を笑ってしまえばいいのか?
南田さんの相手を想像してたはずなのに。

「琴、どうした?」

ハッとしてキョロキョロする。
すっかり馴染んだ萩原さんの部屋。

「あ、ちょっと頭脳散歩。」

「ふ~ん、ねえ、琴はさあ、俺の名前、一度も呼んでないよね。今更だけど知ってるよね、俺の名前。」

「勿論です。ちゃんと、萩原さんが私を知るよりずっと前の前から知ってます。」

そこは自信がある。四カ月の片思いを威張られるのは浅いのだよ。
だって私は南田さんを見た瞬間から隣の萩原さんを見続けていたのだから。

「ねえ、じゃあ呼んでよ。」

「え・・・・」

「ねえ、『タクミ』だよ。そのままがいいなあ。間違ってもタックンとか呼ばないでね。」

ふざけながらも目が真剣?

「でも初めてはもっと色っぽい声での披露でもいいかな。あとであっちでね。」

耳元で言われて視線は寝室を見てしまう。
悔しくて大きな声で呼んでやろうとしたら口を塞がれた。
とても甘く効率いい方法で。
無理やりではあったが・・・黙ってやる。
してやったりの顔が悔しい。
だって会社でつい出ちゃったらみんなびっくりするじゃない。
香も南田さんも。それ以外なんて特に。
うっかりやりそうな自分が怖くて一人でも呼んだことがない。
はずかしいし、萩原さんというのがしっくりと来ていて。
やっぱり色気ないかなあ?
後でちょっとだけ試そう。
きちんと顔を見て、どんな顔をするだろう、思いっきりの瞬間に、リクエスト通りに甘く呼んでやる。

そういえば・・・・。

「南田さんは彼女の写真、見せてくれないの?」

「ああ?ああ。何だろうな、秘密主義。出かける話はするけど名前も顔も知らない。」

「えええ~、本当に?」

「ああ、会社ではほとんどその存在ごと隠してる感じだ。」

「実在はするのよね?・・・まさか・・・女の人よね。」

「そこ疑う理由はないけど。今度聞いてみようかな?あんまり聞いてないんだよ。」

「そうなの?」

私と香なんて二人っきりの秘密の情報量すごい密度が濃いですけど。
萩原さんが知られてないと思ってることも言ってるかも。
香は聞き上手だし、いろいろ初めてだから比較するデータは外注しかない。
そうなると香にしか聞けないということで。
男の人はそんな話はしないのだろう。
となると私のこともあんまり南田さんに知られてないはず、良かった・・・なんだかどこまで萩原さんが暴露してるかと思うと恥ずかしいし。

ちらりと見るとニヤリとされる。

「なんか色っぽい事考えてたでしょう?耳まで真っ赤。」

思わず両手で耳を押さえるように隠す。

「ん?何々?俺で良かったら相談に乗るけど、何だろう?知りたいなぁ。」

首筋に顔をうずめながら攻めてくる。
だからそうやってのせるから私が恥ずかしい思いをするのよ・・・・。
明日も普通に仕事って分かってるのに。
なんだか無駄に体力がついてきたこの頃。ついでに筋肉もうっすら。
たいていのことは経験してしまってるかも?
それでもやっぱり触れ合うのは特別で。
また欲張っておねだりしてしまう。

頭を撫でられながら額を胸につけられて。頭の上で声がする。

「最近琴の見た目とおねだりぶりにギャップがなくなってきた。慣れてきた俺だけじゃなくて誰も昔の琴ような純真素朴素直でシャイなイメージ持ってないかも。結構攻めてくるかもって想像できる。最初の頃はうれしい誤算と思ったけど、もしかして琴も毛足の長い猫かぶってたんじゃないの?」

「ち、ちがう。萩原さんがそうしたの。」

このセリフもどうかすると恥ずかしい。
おねだり大好き認めたみたいじゃない。
だって聞いてくれるから。
すごく喜んでおねだりを叶えてくれるから。

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