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16 その美人の正体は。
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「ごめん、ふざけた。嘘だよ。さっき言ったことはわざと言った。写真見れば分かってもらえると思ってたから。『何だぁ。』って安心してもらえると思ってた。その一緒にいるのを見られた美人は姉だから。切っても切れない縁で小さい頃はお風呂も寝るのも一緒だったから。冗談で・・・・ごめん。ひどい冗談言って。ごめん。千鶴ちゃん。」
力なくうつむく私を包むように抱きしめて言う。
「本当だよ。携帯を見せる。写真も、買い物に付き合ってくれたお礼とかもある。子供と旦那の写真もある。見てよ。」
それでも目を開けたくなくて。
「信じて。嘘は言ってない。」
陽菜ちゃんも言ってた。信じてくださいと。
好きになった先輩を信じてくださいと。
陽菜ちゃんの声が聞こえるけど今は何も考えたくない。
いろんなことがありすぎて。
今教えられた真実を見ようと思っても、いろんな思いが取り巻いて惑わされそうで。
期待しそうで、そして、また、その期待ごと裏切られそうで。
「ずっとずっと会いたくて。絶対東京に帰ってまた初めからやり直したいと思ってた。こんなに長くなるなら、あの時もっとちゃんと伝えておくんだったって、本当に何度も思った。だからちゃんと伝えたい。ずっと好きだった。誰にも取られないように祈ってた。もし誰かに取られそうになったら、すぐに帰ってくるつもりで。絶対取り返すつもりで。」
「そんな・・・何もないのに、そんなずっと思えてるなんて・・・そんなことないですよね。無理でしょう、普通。これも冗談ですか?やめてください。どこまで私を・・・・。」
「普通?どんな普通?じゃあ、きっとそんな普通じゃなかったから、異常でもいい。ずっと細い情報だけで気持ちを保ったよ。正直に言うと、・・・・・・・もう想像では何度も何度も抱いたよ。仕事が終わって一人で部屋にいて、寂しくて、会いたい夜に。写真だけじゃこらえられない夜に。こうやって抱きしめるんじゃなくて、なにも着てない千鶴ちゃんとくっついて、ベッドの中で。」
写真?・・・・何?知らないことばかり、次々と。
「ねえ、今度も忘れるの?冗談だって言い切るの?こんなに必死に伝えてるのに。あの時だって、何で冗談に思われたのか分からないよ。そんなタイプでもなかったでしょう?そんな事を冗談で後輩に言う男に見えてたの?」
だって・・・そんな・・・あの時は覚えてない・・・・けど。
わからないけど。
何でそう思ったのか。
きっと焦ったんだと思う。ビックリしたんだと思う。
じゃあ、今は?今も驚いてパニック中。
・・・・好きだといわれて。
返事しないと、また何も終わらない、そして始まらない。
いいの?信じていいの?
ゆっくり目を開けた。
顔を上げるとすぐ近くに先輩の顔があって。
体を起こして離れた。
私が話す番。
先輩が待ってる。目がそう言ってる。
「先輩・・・・・。」
でも言葉は続かない。
「ここは寒いから。リビングに行かない?水分取ったほうがいいよ。」
握られた手はお互い冷たくて。冷え切っていた。
「風邪ひくから。」
リビングは暖房が効いて暖かい。
「暖かい飲み物持ってくる。座ってて。」
濃いミルクでいれてくれたロイヤルミルクティーとお砂糖。
カップの暖かさにホッとする。
少しづつ飲む。
「忙しかったの?具合悪かった?」
肩に置かれた手はまだ遠慮がちで。
首を振る。
「何か薬飲む?ないけど買ってくるよ。」
先輩を見る。あの頃と変わらない心配そうな顔。
最後のコーヒー屋でも見た気がする表情。
変わってない、そんなの見た瞬間分かってたのに。
「大丈夫です。少し温まったらだいぶ気分もよくなりました。」
「そう。冗談言ってごめん。誤解してるって分かったら、原因が分かったらちょっと安心して。じゃあその誤解が解けたら、全部うまくいくのかなって考えが先走って・・・。」
そういって携帯を見せてくれた。
家族写真。
そこにはこの間見た気がする美人の女性が男性と並んで子供を一人づつ抱いていた。
どう見てもその四人が家族。後は両親と先輩。
スライドさせられた写真はもっと明らかで。母親としての女性が写ってた。
「信じてくれた?」
「・・・・はい。」
「良かった。僕と姉は似てないからね。」
まあ、そうかも。
でもしっくりいってた、横に並んだ二人がとても似合ってた。
それもある意味、当たり前だったらしい。
力なくうつむく私を包むように抱きしめて言う。
「本当だよ。携帯を見せる。写真も、買い物に付き合ってくれたお礼とかもある。子供と旦那の写真もある。見てよ。」
それでも目を開けたくなくて。
「信じて。嘘は言ってない。」
陽菜ちゃんも言ってた。信じてくださいと。
好きになった先輩を信じてくださいと。
陽菜ちゃんの声が聞こえるけど今は何も考えたくない。
いろんなことがありすぎて。
今教えられた真実を見ようと思っても、いろんな思いが取り巻いて惑わされそうで。
期待しそうで、そして、また、その期待ごと裏切られそうで。
「ずっとずっと会いたくて。絶対東京に帰ってまた初めからやり直したいと思ってた。こんなに長くなるなら、あの時もっとちゃんと伝えておくんだったって、本当に何度も思った。だからちゃんと伝えたい。ずっと好きだった。誰にも取られないように祈ってた。もし誰かに取られそうになったら、すぐに帰ってくるつもりで。絶対取り返すつもりで。」
「そんな・・・何もないのに、そんなずっと思えてるなんて・・・そんなことないですよね。無理でしょう、普通。これも冗談ですか?やめてください。どこまで私を・・・・。」
「普通?どんな普通?じゃあ、きっとそんな普通じゃなかったから、異常でもいい。ずっと細い情報だけで気持ちを保ったよ。正直に言うと、・・・・・・・もう想像では何度も何度も抱いたよ。仕事が終わって一人で部屋にいて、寂しくて、会いたい夜に。写真だけじゃこらえられない夜に。こうやって抱きしめるんじゃなくて、なにも着てない千鶴ちゃんとくっついて、ベッドの中で。」
写真?・・・・何?知らないことばかり、次々と。
「ねえ、今度も忘れるの?冗談だって言い切るの?こんなに必死に伝えてるのに。あの時だって、何で冗談に思われたのか分からないよ。そんなタイプでもなかったでしょう?そんな事を冗談で後輩に言う男に見えてたの?」
だって・・・そんな・・・あの時は覚えてない・・・・けど。
わからないけど。
何でそう思ったのか。
きっと焦ったんだと思う。ビックリしたんだと思う。
じゃあ、今は?今も驚いてパニック中。
・・・・好きだといわれて。
返事しないと、また何も終わらない、そして始まらない。
いいの?信じていいの?
ゆっくり目を開けた。
顔を上げるとすぐ近くに先輩の顔があって。
体を起こして離れた。
私が話す番。
先輩が待ってる。目がそう言ってる。
「先輩・・・・・。」
でも言葉は続かない。
「ここは寒いから。リビングに行かない?水分取ったほうがいいよ。」
握られた手はお互い冷たくて。冷え切っていた。
「風邪ひくから。」
リビングは暖房が効いて暖かい。
「暖かい飲み物持ってくる。座ってて。」
濃いミルクでいれてくれたロイヤルミルクティーとお砂糖。
カップの暖かさにホッとする。
少しづつ飲む。
「忙しかったの?具合悪かった?」
肩に置かれた手はまだ遠慮がちで。
首を振る。
「何か薬飲む?ないけど買ってくるよ。」
先輩を見る。あの頃と変わらない心配そうな顔。
最後のコーヒー屋でも見た気がする表情。
変わってない、そんなの見た瞬間分かってたのに。
「大丈夫です。少し温まったらだいぶ気分もよくなりました。」
「そう。冗談言ってごめん。誤解してるって分かったら、原因が分かったらちょっと安心して。じゃあその誤解が解けたら、全部うまくいくのかなって考えが先走って・・・。」
そういって携帯を見せてくれた。
家族写真。
そこにはこの間見た気がする美人の女性が男性と並んで子供を一人づつ抱いていた。
どう見てもその四人が家族。後は両親と先輩。
スライドさせられた写真はもっと明らかで。母親としての女性が写ってた。
「信じてくれた?」
「・・・・はい。」
「良かった。僕と姉は似てないからね。」
まあ、そうかも。
でもしっくりいってた、横に並んだ二人がとても似合ってた。
それもある意味、当たり前だったらしい。
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