お守りマンはきっとすぐそこにいます

羽月☆

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12 囁かれていた噂話 ~ヒーローになるには何か足りない男①

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何度か会って、一緒に食事をしてる。
久しぶりに夜勤明けと休みが重なった週、一日一緒に過ごした。
・・・というか昼前に待ち合わせして夕方までの時間を使って、少し遠くに出来かけた。

随分自分といる時も気を抜いてくれるようになったと思う。
言葉から固さも取れて、時々びっくりするような笑顔を見せてくれる。

慣れてきてくれたと言うべきか。
勿論すごくうれしかった。

それで、こっちも油断したんだと思う。

つい一緒に歩いてるときに肩を抱いてしまった。
油断という心の隙間から本能が顔を出した。
ただ、その体が一瞬で固くなり、足を止められた。
最初気が付かなかったくらい、自分では自然だったのだろう。
二人の距離感にさほど違和感もなく・・・・・。

でも、まだただの友達だから。

気が付いてすぐに肩から手を離した。

「ごめんね。つい、無意識に・・・・。」

離した手をポケットに入れた。
大人しくしまわれておきなさいと言わんばかりに、自分に課したお仕置きだった。

「すみません。・・・・ビックリしただけです。」

そう言って、また歩き出したけど、二人の距離が少し広がった気がする。
透明な壁が見えた気がしたから。

残念だがしょうがない事だった。

その時は、あまり慣れてないんだと思ってた。
失恋したばかりだと思ってたけど、ただの片思いというパターンもある。
彼氏との付き合いで別れが来た、とそういうパターンだけじゃないかもしれない。
慣れてないのなら、焦ってはいけないと、そう思った。



彼女に会うようになって、夜勤明けや休みの日に予定を入れると、ジムに行く日が少なくなって。
それだけなのに、運動が足りてないと感じるのは何なんだろうか?


だいたい、前みたいに集中できてない気がする。
ついぼんやりと回想したり、勝手に夢想したり、鏡に写った自分の顔がしまりなくて、恥ずかしくなってうつむくことも。

まだ友達なのに。
まだ、友達だから、とそう思って自分を鎮める



そんなある日、
長田さんという今日の相棒が足をくじいたと言って出勤してきた。
ここにたどり着くのも大変だったらしい。
痛みの為か、体をかばう不慣れな動きのせいか、顔に汗をかくくらいだった。
当然見回りなんてできなくて。

「じゃあ、僕が見回り担当します。嫌いじゃないんです。任せてください。」

そう言ってすべてを引き受けた。

階段をゆっくり上がって、各フロアの喫煙所や、非常階段、休憩室、食堂などをチェックしながら、あやしい物や火の始末などを確かめて歩く。
普通に会社のやってる時間なら、誰かがいるから、人がいたら変化も気が付くだろうと。
それでも目視を行い、影のように廊下を歩き。
そうやって非常階段から一階づつ上がっていく。

次は彼女の会社だ。
会えることは本当にないけど、ちょっと意識はする。

非常階段の上の方から複数の女性の話し声がする。


「まさかあんな大人しそうな子も?」

「2年目の柴田さん、逆に友達少ない子の方がバレなくていいんじゃない。噂も知らなそうじゃん。」

「噂の美人の子と最近一緒にいるよね?」

「あの子にはさすがに手を出してないよ、断られそうだよね、彼氏いるだろうし。」

「知ってるのかなあ、その柴田さん。」

「分からないけど、転勤を機会に振られたと思ってるだけかも。」

「もう、誰でもいいって感じだね。ある程度可愛かったら声をかけないと失礼って思ってるんじゃない?」

「誰か声かけられなかったの?実はこの中にもいたりして。」

「断ったわよ。当たり前でしょう。あんな奴のために友達無くしません。」

「えええ~、知らない、ちょっと待って。いつよ。」

「最初最初。あの子が片思いしてるってうっすら気が付いたころだから。」

「他には、いない?」

「なんだろうねえ、そこまで手当たり次第なのもいっそあっぱれ。失恋用の慰め係みたいな役でいいかも。便利に使うってどう?」

「需要はあるかも。友達の彼氏じゃなきゃね。」

「まあね。」

「ねえ、下の階のオフィスにさあ、すっごいかっこいい人がいるの、知ってる?」

噂話が他の会社のイケメン社員の話になった。
本当に静かな非常階段は話し声が響くのだ。
出来るだけ足音は立てるようにしてる。
規則的な足音を。

それでも数人でいて話が盛り上がっていたのだろう。
気が付かなかったらしい。
彼女の名前・・・・、珍しい名前とは言わないが、内容からも多分彼女の事だろう。

つい聞いていた部分だけでも、その内容がどんな話だか分かった。
いい話ではなかった。
ただ、文句を言われてたのではない、気の毒に・・・・とそんな話だった。
噂なのだろうか、確実な話なのだろうか?

内容がかなりきわどいとも言える。
自分たちの階の一つ上で話してる、そんな感じだ。

まさか彼女の一つ上の階の会社にも、同じ2年目の柴田さんという大人しい女子社員がいるとは思わない。美人の友達、それはとても目立つアイコンで、間違いないだろう。

しばらく止まった足。
意識的に大きな音を立てて歩き出した。

上の階の声が少し落とされる。

彼女の会社のフロアに出る。
今、会いたくはない。
機械的に足と視線を動かして、廊下を行き、休憩室を通り過ぎる。
人がいたので問題ないだろう。
奥まで言って、階段をのぞいて、引き返す。

かなり急いだ足取りだったかもしれない。
いつもならもっとゆっくり動く唯一のフロアなのに。
非常階段に戻るとホッとした自分。

向こうの階段から上がればよかったと少し後悔した。

もう上の踊り場に女性たちはいなかった。
自分の足音に気が付いて、仕事に戻ろうと言い出したのかもしれない。

本当に彼女の事だっただろうか?
本当に上の階の子の話じゃなかっただろうか?

その後はほとんど意識が飛んでいたかもしれない。
奥歯をかみしめて同じような動きを何度も繰り返し、下の事務所に逃げるように戻った。

「お疲れさま、疲れただろう。悪いね。」

そこは変わりない空間。
長田さんがお茶を入れてくれる。

「特に問題なしです。」

「本当にありがとう。」

「いえ、最近運動不足だったんです。ちょうど良かったです。」

「安達君は本当にいい子だね。」

長田さんは自分の父親より少し上の年だ。
ちょっお腹に貫禄がある笑顔の警備員。
膝が痛い、夜勤が辛いと時々言っていた。
確かに14階もあるビルの階段昇降は膝に来るだろう、夜も寝たいだろう。
それでも雨風のない場所での仕事は楽だと思う。
下の階に商業施設も入ってない分、静かだし。
それでも、自分もいつか辛いと思うようになるんだろうか。

「安達君、本当にうちの子のお婿に欲しいくらいだ。」

「お嬢さん、結婚したばかりじゃないですか。」

「まあね、何も言ってこないからうまくやってるのかなとは思うけど、相手もいい人だったし。」

「じゃあ、お嬢さんを信じてください。」

「妻と同じことを言うなあ。だいたい妻は自分よりは娘と話をしてるんだと思うんだよね。男親って何だか寂しいもんだよ。」

「大丈夫です、その内家族が増えます。そういえば、息子さんのところもそろそろじゃないですか?」

「そうかもね。その辺も妻は知ってるかもしれないけど、どうなんだろう。息子の奥さんもいい子でね、いろいろ気を遣ってくれるんだよ。本当に息子が全然だから、その分その子がね。」

「羨ましい話じゃないですか。長田さん幸せですよ。足をくじいてる場合じゃないですよ、早く治してくださいね。」


「ありがとう。安達君は、結婚は?」

「まだまだ全然、予定も相手もなしです。」

「相手がいないの?」

「そんな・・・・びっくりされると悲しいです。」

「だっててっきり着実に将来固めてそうだから。」

「残念ながら、寂しいです。」

「あらら。もったいないねえ。でも安達君なら、その気になれば相手はゴロゴロいそうだからね。」

その気にはなってますが、ゴロゴロとは必要ないです。
一人で充分ですから。
なかなか思う通りには行かない現状です。

ため息が出そうになるのをお茶を飲んで誤魔化した。

「病院に行ったらどうですか?シップが出るくらいかもしれませんが。」

「大丈夫だよ、帰りにサポーターとシップを買おうと思ってるから。」

「そうですか?無理をしないでくださいね。」

その日は来客も業者も少なかったらしい。
長田さんもゆっくりと出来た。それは良かった。
ただ静かな事務所にいると、さっきの非常階段の話が勝手に頭の中で繰り返される。

先輩の男と付き合っていた、そう思ってたのは彼女だけかもしれなくて、実は他にも何人にも声をかけていたらしい。転勤して終わりになっただろうと。それが知り得た事すべて。

彼女はどこまで知ってるんだろうか?
どのくらいの付き合いだっただろうか?
・・・・それなりだろうか?


この間慣れてないんだろうなんて思って納得した自分。
そんな訳ないよな。
勝手にそう思ったのは自分なのに、心のどこかで裏切られたなんて思ってしまいそうになる自分もいて。

恋愛相談を友達にする彼女。
肩に手を置いただけで動きを止めて固くなる彼女。
慣れてない、そう思ったんだ。

又奥歯をかみしめていた。

体の力を抜いて深呼吸する。
やはり動いてるほうが楽だ。
こんなに静かだとじわじわと何かに攻められてしまうようだ。

立ち上がって体を動かす。
奥の部屋の扉は空いてる。
沢山のモニターがあって、映像が切り替わるのをぼんやりとチェックしてるだろう長田さん。

「長田さん、足は大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫。ありがとう。ねえ、安達君、会社の・・・・主催するパーティーとか行ったことある?」

会社が主催するのは小さなイベントと社員対象の旅行と実務から趣味までの各種研修、お見合いパーティー。
いずれもない。

「全くないです。お見合いパーティーの事ですか?」

「うん、まあそうなんだけど。」

「どうしたんですか?急に。」

「いや、安達君すごくいい子だから、早く幸せになってもらいたいなあなんて勝手な親心だよ。悪いね。」

「ああ、きっと長田さん幸せが落ち着いて、誰かの事を世話したくなったんじゃないですか?今に満足してる証拠ですよ。」

「そうかなあ?」

「はい。それに好きな人はいるんです。」

「ええ、何、さっき全然って言ってたから、てっきり。」

「全然ですよ。本当に。」

「相手には伝えてないの?」

「伝えてますよ。」

「それで・・・・・。」

「まだ友達です。もっとお互いを知らないと、さすがにいきなりは恋人にはなれないですから。」

今笑えてるのか自信はない。
それでも長田さんがホッとした、うれしそうな顔をしたから、まあまあ楽しそうな笑顔をしてたんだろう。

「良かった、じゃあ、うまくいくといいね。」

「はい、僕もそう思いますけど、なかなか。」

「大丈夫、安達君なら。」

「もう、身びいきですよ。そこまで万能なら、僕ももっと早く親を喜ばせてます。」

実際長田さんの子供は2人とも自分より年下だ。
そんな年齢だ。
友達でも毎年どんどん家族を増やしてる奴が多い。

まだまだ一人という友達もたくさんいるから、焦ることはないけど。

「じゃあ、最後のラウンド行ってきます。留守にしますね。」

「ありがとう。いってらっしゃい。」

「でも、その前にトイレを済ませます。」

そう言ってトイレに入り、また非常階段に足をかけた。


終業間近の時間だと休憩室が空いてることが多い。
誰もいなくても声をかけて入り、喫煙所のたばこの火を確認して。
廊下を歩いて、奥の階段をチェックして。
その繰り返し。

食堂のフロアにも行く。

上の方にビル内の社員が使える食堂がある。
この時間はキッチンの人が後始末をしてる時間だ。

声をかけて、挨拶をする。
さすがに顔見知りが増える。
おばちゃんたちがお茶を飲みながら、在庫チェックや、食材の管理をしたりしている。
そんな時間らしいが、ほとんど茶飲み話のようだ。

時々せんべいをもらったり、飴をもらったりする。

基本的に仕事中に自分の用意したもの以外は口にしてはいけないことになってる。
それはおばちゃんたちも知っているから、だから個包装の物をもらう。
さすがに断れないので、その場では食べないが、帰ってから自分の部屋で食べたりする。先輩達もそうしてるらしいから。

「安達君、お疲れ様。」

「お疲れ様です。」

そう言いながらせんべいを差し出された。
笑顔で受け取る。

「ごちそうになります。特に問題ないですか?」

「無いよ。火の元、チェックOK。」

「ありがとうございます。」

「安達君、今日は誰と?」

「長田さんです。」

警備の情報を漏らすこともよくないのだが、この場所も相手も緊張感はない。

「ああ、のんびりしてたでしょう?」

「そうですね。静かな一日でした。」

「やっぱり。長田さんがいつもぼんやりしてるって言うから。」

「そうなんですか?ぼんやりしながらも一応モニターチェックはしてますよ。ぼんやりしないと目が疲れるんです。真剣に見てたら瞬きが多くなりますし。」

「いや、絶対ぼんやりしてるんだと思うよ。」

自信を持って言われた。
長田さん、ここでどんなつぶやきをしてるんですか。

「そうなんだ。気が付かなかった。もしかして目を開けたまま寝てても気が付かないかもしれません。」

「たまに声をかけて起こしてね。あまりほっといてボケても困るし。」

「了解しました。注意して見てます。」

笑いながら、挨拶をして、次のフロアへ行く。

途端にまた透明人間のように気配を薄くする。
そんな特技はないけど、実際制服を着るとそうなるらしい。
まだまだ威厳もないから。

そう思うことにしよう。

いつものように見回りを済ませて戻り、日報を書く。
後は引き継げばいい。

「長田さん、帰れますか?タクシー必要なら呼んだりしますけど。」

「大丈夫だよ。ゆっくり帰ってもいいし。本当に迷惑かけたね。」

「いえ、全然です。いい運動になりました。」

「そう?」

「はい。」

それは嘘ではなくて。

交代のメンバーに引きついだ。
何をする気にもならない。
いつもならすぐに見る携帯も電源を落としてバッグにいれた。



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