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24 やっと・・・・~ヒーローになれた男
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「順調にお付き合いを続けています。」
長田さんと食堂のおばちゃんに聞かれてそう答えた。
本当に同じように答えた。
どうせ裏で情報がつながるんだから、平等に。
ただ、自分も、ついでに長田さんにもビル内のうれしい偶然はなかった。
自分は相変わらず透明な存在で、彼女と遭遇するという偶然もなく、長田さんはまた会えるかも・・・なんて楽しみにしてるらしいが、あれ以来挨拶してくれた女子社員と会えることもないらしい。
やはり単調なラウンドだけに楽しみがあると違うのだが。
食堂のおばちゃんだけじゃあ、ちょっと足りなくて。
自分は勿論、多分長田さんも、ちょっとだけ足りなくて、・・・・内緒だけど。
お互いの仕事の後に会うことにも慣れてきて。
外が暗くなるのが早くなり、六時過ぎにビルを出ると真っ暗になっている。
そんな暗い中で、手をつないだ彼女しか見えてなくても問題ないけど。
本当に順調に付き合いが深まっていると思う。
最初の頃のようにぼんやりと空想することもないから、ジムでも真面目に集中できているし。
お陰で榎君がからかい半分に声をかけて来ることもない。
前回の試合で、すごく惜しい所で負けたらしい榎君。
痣と傷のある顔で残念そうに言っていた。
「残念だったね。」そうとしか言えない。
しばらくしたらいつものように復活して元気になる。
だいたい傷が消えるころには元気になる。
そんな話をしながら彼女と歩いていたら、彼女が先に立ち止まって前を向いたまま表情が硬くなった。
視線を追うように先を見ると、男性が女性の腰に手を当てながら、親密そうに歩いてくるところだった。
彼女が止まり、向こうでも男の人が先に気が付いたらしい。
男の人が立ち止まる。
その瞬間よりわずかに先に彼女が歩き出した。
サラリと横を通り過ぎる瞬間、彼女は前を向いていて。
彼は明らかに彼女を見た気がしたけど、すぐに自分の隣の彼女に笑顔を向けた。
「操・・・お腹空いたね。」
「正樹さん、今日は何を食べますか?」
それだけの会話にどんな意味があったのか。
自分の部屋でくっついてる時以外、呼び捨てで呼んだことはなかった。
そして彼女から下の名前で呼ばれたことも、それが初めてだった。
もう、それだけで相手が何に気が付いたか、分かっただろう。
お互いに隠してもしょうがない。
しばらく前を歩いていく彼女を呼んだ。
「操ちゃん、止まって。」
彼女が立ち止まる。振り返ろうとはしない。
「うちにおいで、・・・・大丈夫だから。」
そのまま彼女の手を引いて、大通りに出てタクシーを止める。
二人で無言のまま乗りこんで、行先を告げた後も手をつないだままだけど、会話はない。そっと彼女の顔を見る。外を向いているから分からないけど、泣いてる感じはない。ちょっとだけ安心する。
絶対大丈夫だから。
心の中で、今度は自分に言った。
道は空いていて思ったより早く着いた。
そのまま料金を払い降りる。
降りてから肩を抱いて促すように部屋に連れて行く。
どんどん彼女の顔が下を向く。
まだ傷つくんだろうか?
あんな場面を見て、まだ思い出して心が痛むんだろうか?
随分時間は経ってるし、すっかり忘れてくれていると疑いもしなかった自分は、おめでたかったのだろうか?
最初の頃にお願いされたあの約束に、彼女の傷の深さはわかった気がしたのに。
それでも初めてここで夜を過ごした時に、それほど深い仲じゃなかっただろうと勝手に安心した自分。
自信がなくなってきた。
でも大丈夫だからと言った言葉に嘘はない。
一緒に帰って来たことも間違ってないと思う。
ソファに座らせて、まだ無言でいる彼女を抱きしめた。
自分から言う方がいいだろう。
「操ちゃん、ごめんね。少しだけ知ってたんだ。偶然ラウンドをしてた時に数階上の非常階段で話されてたうわさ話に、『大人しそうな柴田さん』『二年生』って聞こえて。ちょっとだけ話を聞いてたら、操ちゃんのことかもしれないって思えて。酷い奴だったって、他にも何人かの女性の名前が出てきたりして。だからもしかしてってずっと思ってた。最初に付き合ってる人はいるのか聞いたときも、最近別れたばっかりって言うような返事も聞いたし。話の内容とも合ったから、そうだったんだって思った。でも、絶対忘れてくれるだろうと思ってた。自分が一緒にいたら忘れてくれるだろうって。・・・・・そこは気になってるんだけど、どう?」
「もちろんです。忘れてました。私も先輩たちが話してた噂を偶然聞いて、それまで他の女性の事なんて全然知らなくて。響さんが忘れた方がいいロクデナシだからって、教えてくれて。そんな縁で響さんと仲良くなれたから、逆に感謝したくらいで、意外にすぐに忘れました。思い出すこともなかったし、それなのに、さっきは立ち止まってしまって・・・・すみませんでした。本当に全然違います。何とも思ってません。でも少しはロクデナシの大馬鹿野郎って怒ってたのかもしれません。あんな風に安達さんのことも・・・呼んだことない呼び方をしてしまって。自分でも分からない・・・・。」
「いいよ、俺もそうしたし。俺は見せつけたかっただけだけどね。もう自分のものだから、手を出すなって。」
「相手の男性の事も知ってたんですか?」
少し声を低くして聞かれた。
「ううん、さすがに知らないよ。操ちゃんが立ち止まらなければ気が付かなかった。ただ、もしかしてって思っただけ。勘が当たっただけ。」
「本当にすみません。ちょっとびっくりしただけだと思います。」
「ねえ、こっちを見て、ちゃんと俺の目を見て言ってくれる?」
そう言ったらすぐに顔をあげてくれた。
ちゃんと目は合った。
自分の瞳には彼女がうつってるだろう。
もちろん彼女の瞳の中の自分もちゃんと確認したいと、じっと見つめた。
「全然、未練はありません。」
「知ってる。だから大丈夫。本当に疑ったことはないよ。でも、傷ついてる?」
「いいえ、それもないです。今度会ったらちゃんと挨拶できるくらいです。」
そう言って笑顔になる。いつもと変わらない笑顔に。
「それはしなくていいよ。無視無視。話しかけたりしないでいいよ。でも操ちゃんがきれいになってびっくりしてるかも。惜しいことしたなあって悔やんで欲しいくらい。」
「それはないです。他にもたくさん綺麗な人とお付き合いしてたと思います。同僚の女性たちに病気だって言われてました。それでも好きで愛想つかさず横にいてくれる彼女がいるらしいです。」
「何て贅沢な。」思わず反射的につぶやいた。
「安達さん・・・・それはどこに向いたセリフですか?」
「ああ・・・いや、別に・・・・。罰が当たれって思ったくらいなのに・・・って事で・・・・。」
「安達さん、そんなに言いよどんだら、逆に疑わしいです。」
「ええ~、それはないよ。絶対、違うから。」
「・・・・・知ってます。信じてます。私も疑ってません。」
「でしょう?もう、今日は相棒と食堂のおばちゃんに『順調に交際を続けてます。』って言ったばかりなんだから。
嘘をついたらバレるから。」
「あの警備員さんも優しそうなおじさんですよね。一度挨拶しただけですけど、声も態度もすごく優しそうでした。」
普通の顔で言う彼女。
「ん?長田さんの事?もしかして挨拶してくれた可愛い女子社員って、操ちゃんだったの?」
「分かりません。でも前に、あいさつしたその日に安達さんが言ってました。だから、もしかして・・・とか?でも、他の階の人も挨拶してくれてて、そっちの人の事かもしれないですよ。」
「今度聞いて見る。一緒になったら、どのフロアだか聞いてみる。ずっと会えるのを楽しみにしてるから、名前は知らなくても、フロアは覚えてるだろうし。」
知らなかった。
大変だ。変な聞きかたをしてバレる様なことは出来ない。
さり気なく、話が出た時に聞いてみよう。
普通レベルの興味がある風に装って。
抱きしめたまま、そう思った。
結局あの男のお陰で今日一緒に過ごすことが出来る。
まさか今更帰るとかは言わないだろう。
泊ることは問題ないはずだ。
帰さないつもりだし。
でも、一応聞いてみる。
「ねえ、泊っていくよね。」
「はい。」
「そうだよね。」
忘れようと、思えた。多分・・・いや、絶対忘れる。
過去にいたことがあっても、未来には全く関わらない存在だ。
いらない、ロクデナシだ。
一切、近づけたくもない。
自分が守る、あの瞬間、そう思えたのだから。
長田さんと食堂のおばちゃんに聞かれてそう答えた。
本当に同じように答えた。
どうせ裏で情報がつながるんだから、平等に。
ただ、自分も、ついでに長田さんにもビル内のうれしい偶然はなかった。
自分は相変わらず透明な存在で、彼女と遭遇するという偶然もなく、長田さんはまた会えるかも・・・なんて楽しみにしてるらしいが、あれ以来挨拶してくれた女子社員と会えることもないらしい。
やはり単調なラウンドだけに楽しみがあると違うのだが。
食堂のおばちゃんだけじゃあ、ちょっと足りなくて。
自分は勿論、多分長田さんも、ちょっとだけ足りなくて、・・・・内緒だけど。
お互いの仕事の後に会うことにも慣れてきて。
外が暗くなるのが早くなり、六時過ぎにビルを出ると真っ暗になっている。
そんな暗い中で、手をつないだ彼女しか見えてなくても問題ないけど。
本当に順調に付き合いが深まっていると思う。
最初の頃のようにぼんやりと空想することもないから、ジムでも真面目に集中できているし。
お陰で榎君がからかい半分に声をかけて来ることもない。
前回の試合で、すごく惜しい所で負けたらしい榎君。
痣と傷のある顔で残念そうに言っていた。
「残念だったね。」そうとしか言えない。
しばらくしたらいつものように復活して元気になる。
だいたい傷が消えるころには元気になる。
そんな話をしながら彼女と歩いていたら、彼女が先に立ち止まって前を向いたまま表情が硬くなった。
視線を追うように先を見ると、男性が女性の腰に手を当てながら、親密そうに歩いてくるところだった。
彼女が止まり、向こうでも男の人が先に気が付いたらしい。
男の人が立ち止まる。
その瞬間よりわずかに先に彼女が歩き出した。
サラリと横を通り過ぎる瞬間、彼女は前を向いていて。
彼は明らかに彼女を見た気がしたけど、すぐに自分の隣の彼女に笑顔を向けた。
「操・・・お腹空いたね。」
「正樹さん、今日は何を食べますか?」
それだけの会話にどんな意味があったのか。
自分の部屋でくっついてる時以外、呼び捨てで呼んだことはなかった。
そして彼女から下の名前で呼ばれたことも、それが初めてだった。
もう、それだけで相手が何に気が付いたか、分かっただろう。
お互いに隠してもしょうがない。
しばらく前を歩いていく彼女を呼んだ。
「操ちゃん、止まって。」
彼女が立ち止まる。振り返ろうとはしない。
「うちにおいで、・・・・大丈夫だから。」
そのまま彼女の手を引いて、大通りに出てタクシーを止める。
二人で無言のまま乗りこんで、行先を告げた後も手をつないだままだけど、会話はない。そっと彼女の顔を見る。外を向いているから分からないけど、泣いてる感じはない。ちょっとだけ安心する。
絶対大丈夫だから。
心の中で、今度は自分に言った。
道は空いていて思ったより早く着いた。
そのまま料金を払い降りる。
降りてから肩を抱いて促すように部屋に連れて行く。
どんどん彼女の顔が下を向く。
まだ傷つくんだろうか?
あんな場面を見て、まだ思い出して心が痛むんだろうか?
随分時間は経ってるし、すっかり忘れてくれていると疑いもしなかった自分は、おめでたかったのだろうか?
最初の頃にお願いされたあの約束に、彼女の傷の深さはわかった気がしたのに。
それでも初めてここで夜を過ごした時に、それほど深い仲じゃなかっただろうと勝手に安心した自分。
自信がなくなってきた。
でも大丈夫だからと言った言葉に嘘はない。
一緒に帰って来たことも間違ってないと思う。
ソファに座らせて、まだ無言でいる彼女を抱きしめた。
自分から言う方がいいだろう。
「操ちゃん、ごめんね。少しだけ知ってたんだ。偶然ラウンドをしてた時に数階上の非常階段で話されてたうわさ話に、『大人しそうな柴田さん』『二年生』って聞こえて。ちょっとだけ話を聞いてたら、操ちゃんのことかもしれないって思えて。酷い奴だったって、他にも何人かの女性の名前が出てきたりして。だからもしかしてってずっと思ってた。最初に付き合ってる人はいるのか聞いたときも、最近別れたばっかりって言うような返事も聞いたし。話の内容とも合ったから、そうだったんだって思った。でも、絶対忘れてくれるだろうと思ってた。自分が一緒にいたら忘れてくれるだろうって。・・・・・そこは気になってるんだけど、どう?」
「もちろんです。忘れてました。私も先輩たちが話してた噂を偶然聞いて、それまで他の女性の事なんて全然知らなくて。響さんが忘れた方がいいロクデナシだからって、教えてくれて。そんな縁で響さんと仲良くなれたから、逆に感謝したくらいで、意外にすぐに忘れました。思い出すこともなかったし、それなのに、さっきは立ち止まってしまって・・・・すみませんでした。本当に全然違います。何とも思ってません。でも少しはロクデナシの大馬鹿野郎って怒ってたのかもしれません。あんな風に安達さんのことも・・・呼んだことない呼び方をしてしまって。自分でも分からない・・・・。」
「いいよ、俺もそうしたし。俺は見せつけたかっただけだけどね。もう自分のものだから、手を出すなって。」
「相手の男性の事も知ってたんですか?」
少し声を低くして聞かれた。
「ううん、さすがに知らないよ。操ちゃんが立ち止まらなければ気が付かなかった。ただ、もしかしてって思っただけ。勘が当たっただけ。」
「本当にすみません。ちょっとびっくりしただけだと思います。」
「ねえ、こっちを見て、ちゃんと俺の目を見て言ってくれる?」
そう言ったらすぐに顔をあげてくれた。
ちゃんと目は合った。
自分の瞳には彼女がうつってるだろう。
もちろん彼女の瞳の中の自分もちゃんと確認したいと、じっと見つめた。
「全然、未練はありません。」
「知ってる。だから大丈夫。本当に疑ったことはないよ。でも、傷ついてる?」
「いいえ、それもないです。今度会ったらちゃんと挨拶できるくらいです。」
そう言って笑顔になる。いつもと変わらない笑顔に。
「それはしなくていいよ。無視無視。話しかけたりしないでいいよ。でも操ちゃんがきれいになってびっくりしてるかも。惜しいことしたなあって悔やんで欲しいくらい。」
「それはないです。他にもたくさん綺麗な人とお付き合いしてたと思います。同僚の女性たちに病気だって言われてました。それでも好きで愛想つかさず横にいてくれる彼女がいるらしいです。」
「何て贅沢な。」思わず反射的につぶやいた。
「安達さん・・・・それはどこに向いたセリフですか?」
「ああ・・・いや、別に・・・・。罰が当たれって思ったくらいなのに・・・って事で・・・・。」
「安達さん、そんなに言いよどんだら、逆に疑わしいです。」
「ええ~、それはないよ。絶対、違うから。」
「・・・・・知ってます。信じてます。私も疑ってません。」
「でしょう?もう、今日は相棒と食堂のおばちゃんに『順調に交際を続けてます。』って言ったばかりなんだから。
嘘をついたらバレるから。」
「あの警備員さんも優しそうなおじさんですよね。一度挨拶しただけですけど、声も態度もすごく優しそうでした。」
普通の顔で言う彼女。
「ん?長田さんの事?もしかして挨拶してくれた可愛い女子社員って、操ちゃんだったの?」
「分かりません。でも前に、あいさつしたその日に安達さんが言ってました。だから、もしかして・・・とか?でも、他の階の人も挨拶してくれてて、そっちの人の事かもしれないですよ。」
「今度聞いて見る。一緒になったら、どのフロアだか聞いてみる。ずっと会えるのを楽しみにしてるから、名前は知らなくても、フロアは覚えてるだろうし。」
知らなかった。
大変だ。変な聞きかたをしてバレる様なことは出来ない。
さり気なく、話が出た時に聞いてみよう。
普通レベルの興味がある風に装って。
抱きしめたまま、そう思った。
結局あの男のお陰で今日一緒に過ごすことが出来る。
まさか今更帰るとかは言わないだろう。
泊ることは問題ないはずだ。
帰さないつもりだし。
でも、一応聞いてみる。
「ねえ、泊っていくよね。」
「はい。」
「そうだよね。」
忘れようと、思えた。多分・・・いや、絶対忘れる。
過去にいたことがあっても、未来には全く関わらない存在だ。
いらない、ロクデナシだ。
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自分が守る、あの瞬間、そう思えたのだから。
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