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23 特別なのか普通なのか、でもすごく大切なのは分かってる。
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何も変わらない。
そう思ってる。
ただ涼太の近くに居れる。
少し諦めかけたけど、それもたったの一日くらいで。
まだ諦めなくていいって教えてもらえた。
ずっと一緒にいれたらいいって、私は素直にそう思っていいと。
「舞さん。」
知念君に声をかけられた。
あの時喋ってからそんな機会はなかった、あの後はなかった。
ただ軽くあいさつするくらいが何度かあっただけ。
初めての久しぶり。
「久しぶり。ねえ、何かいい事あったよね?」
なんで確信的に聞くの?
「そんな感じがしてる。」
どの事を指すんだろう?
今朝までの流れ、全部嬉しかった事、いい事。
「あったんだ。」
少しうなずいた。
「良かったね。」
思いっきり笑顔で言われた。
「ありがとう。知念君のおかげでもある。」
「それは・・・・微妙だけど、まあ、うれしいかな。」
「ねえ、まだ同期で飲んでるの?」
「まったくないよ。瀬野尾がプライベート優先しだしたら途端にね。」
「そうなんだ。」
「知念君は?」
「いつでも空いてるよ。」
同じ笑顔で、そう言われる。
一歩下がる。やっぱり私じゃないから。
「無い物ねだりだな。都会的美人に惹かれる。」
指を指された。
失礼な感じもするのに知念君だと全くそうは思わない。
その笑顔は子供の笑顔と同じくらいに、カラッとしてる。
「私の実家は結構な山の方だから。」
答える私も笑顔になる。
「う~ん、雰囲気。」
「ありがとう。」
ちょっとした気分転換。
幸せに気が付いて、手放しくないってしがみつきそうなその空気の中を、カラッとした心地いい風が吹き抜けた。
少しくらい手をゆるめても、失くしたり、見失ったりしない。
そこにきっとある。すぐそばにあるって思えるから。
信じてる。涼太の気持ちも、自分の気持ちも。
改めてそう思った。
誰にも言ってない、もちろん、ゆかりにも。
だって、言えない。
ビックリした顔も見たいけど、言えない。
きっと一番ビックリするのは筒井さんかも。
まさか後輩が会社経営者関係なんて。
今のこの子会社の社長は実務登用で親族じゃないと聞いている。
必ずトップに親族が立つ訳じゃないらしい。
だから涼太がここで上に立つというわけじゃない。
出来たら私は働いていたい。
そんなに友達もいないのに主婦になったら誰とも話をしなくなりそう。
だからこのままでいい。
そう思ってる。
空になったカップを捨てて、席に戻った。
時間になって残りを片付けて帰る。
日曜日、家を出た時のことをずいぶん遠くに感じる。
何も変わらない部屋に帰る。
この三日あまりのことは現実から遠い話のような気がしてる。
普段の涼太を見てても全然想像できないし。
知念君が普通で落ち着いた。
あの頃喋った印象と少しも変ってなかった。
見た通り普通。
そう私は思ってるけど、実は・・・・・って事がないとは言えないけど。
まあ、実際はよく知らない。
涼太も普通なのに。
ただ、その周りがちょっと普通じゃなかった。
昨日、涼太に言った。
「全然、普通なのに。」
「褒めてるの?何だかどこにでもいそうなのにって、全然嬉しくない気がする響きだよ。」
そう言いながらも笑顔で。
「全然普通じゃないよ、僕にとっての舞は、特別だから。お兄さんたちも、きっとご両親も。特別で大切。全然普通じゃないから。そんなの最初っからわかってた。でも、今はちょっと普通になった。だって一緒にいて当たり前で、一緒にいる今が僕にとってはもう『普通』だって思えるから・・・・って、結局どっちなんだろうね。」
普通だって思っても、もっと深く知るときっと皆、誰かの特別だったりすると思う。
きっと知念君も。
そして涼太は私の家族みんなも特別だと言ってくれた。
すごくうれしい。そんな涼太が一番の特別だけど、私も涼太の周りの人をそう思えるようになりたいと思う。
その涼太のトランペット。
早く聞きたい。
きっと甘く優しい音がしそうだから。
大切な楽器は手入れすればずっと音が出る。
もしかしたら、子供とか、その先とか。
どんな今も未来に続いてる。
その未来にも、一緒に笑顔でいたいと思う。
たくさんの『ありがとう』をまだまだいっぱい聞きながら。
end
そう思ってる。
ただ涼太の近くに居れる。
少し諦めかけたけど、それもたったの一日くらいで。
まだ諦めなくていいって教えてもらえた。
ずっと一緒にいれたらいいって、私は素直にそう思っていいと。
「舞さん。」
知念君に声をかけられた。
あの時喋ってからそんな機会はなかった、あの後はなかった。
ただ軽くあいさつするくらいが何度かあっただけ。
初めての久しぶり。
「久しぶり。ねえ、何かいい事あったよね?」
なんで確信的に聞くの?
「そんな感じがしてる。」
どの事を指すんだろう?
今朝までの流れ、全部嬉しかった事、いい事。
「あったんだ。」
少しうなずいた。
「良かったね。」
思いっきり笑顔で言われた。
「ありがとう。知念君のおかげでもある。」
「それは・・・・微妙だけど、まあ、うれしいかな。」
「ねえ、まだ同期で飲んでるの?」
「まったくないよ。瀬野尾がプライベート優先しだしたら途端にね。」
「そうなんだ。」
「知念君は?」
「いつでも空いてるよ。」
同じ笑顔で、そう言われる。
一歩下がる。やっぱり私じゃないから。
「無い物ねだりだな。都会的美人に惹かれる。」
指を指された。
失礼な感じもするのに知念君だと全くそうは思わない。
その笑顔は子供の笑顔と同じくらいに、カラッとしてる。
「私の実家は結構な山の方だから。」
答える私も笑顔になる。
「う~ん、雰囲気。」
「ありがとう。」
ちょっとした気分転換。
幸せに気が付いて、手放しくないってしがみつきそうなその空気の中を、カラッとした心地いい風が吹き抜けた。
少しくらい手をゆるめても、失くしたり、見失ったりしない。
そこにきっとある。すぐそばにあるって思えるから。
信じてる。涼太の気持ちも、自分の気持ちも。
改めてそう思った。
誰にも言ってない、もちろん、ゆかりにも。
だって、言えない。
ビックリした顔も見たいけど、言えない。
きっと一番ビックリするのは筒井さんかも。
まさか後輩が会社経営者関係なんて。
今のこの子会社の社長は実務登用で親族じゃないと聞いている。
必ずトップに親族が立つ訳じゃないらしい。
だから涼太がここで上に立つというわけじゃない。
出来たら私は働いていたい。
そんなに友達もいないのに主婦になったら誰とも話をしなくなりそう。
だからこのままでいい。
そう思ってる。
空になったカップを捨てて、席に戻った。
時間になって残りを片付けて帰る。
日曜日、家を出た時のことをずいぶん遠くに感じる。
何も変わらない部屋に帰る。
この三日あまりのことは現実から遠い話のような気がしてる。
普段の涼太を見てても全然想像できないし。
知念君が普通で落ち着いた。
あの頃喋った印象と少しも変ってなかった。
見た通り普通。
そう私は思ってるけど、実は・・・・・って事がないとは言えないけど。
まあ、実際はよく知らない。
涼太も普通なのに。
ただ、その周りがちょっと普通じゃなかった。
昨日、涼太に言った。
「全然、普通なのに。」
「褒めてるの?何だかどこにでもいそうなのにって、全然嬉しくない気がする響きだよ。」
そう言いながらも笑顔で。
「全然普通じゃないよ、僕にとっての舞は、特別だから。お兄さんたちも、きっとご両親も。特別で大切。全然普通じゃないから。そんなの最初っからわかってた。でも、今はちょっと普通になった。だって一緒にいて当たり前で、一緒にいる今が僕にとってはもう『普通』だって思えるから・・・・って、結局どっちなんだろうね。」
普通だって思っても、もっと深く知るときっと皆、誰かの特別だったりすると思う。
きっと知念君も。
そして涼太は私の家族みんなも特別だと言ってくれた。
すごくうれしい。そんな涼太が一番の特別だけど、私も涼太の周りの人をそう思えるようになりたいと思う。
その涼太のトランペット。
早く聞きたい。
きっと甘く優しい音がしそうだから。
大切な楽器は手入れすればずっと音が出る。
もしかしたら、子供とか、その先とか。
どんな今も未来に続いてる。
その未来にも、一緒に笑顔でいたいと思う。
たくさんの『ありがとう』をまだまだいっぱい聞きながら。
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