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1 大人ポチとの遭遇、こんなに近くにいたの?
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今日も資料がぽつんと残っている。
ため息がでる。
先に帰って行った周囲の人、先輩、後輩まで。
イジメ、ある意味そういう報復とも思えそう。
でも敵もその辺はうまくて、私の能力が至らないと言わんばかりのさり気なさ。
しかも異動して来てそれほど経ってない私。
能力的にそんなものだろうとも思われ、いろんな人が親切にも手伝おうかと言ってくれた。
ただ、私にだって意地がある、一人でやっつけてやろうじゃないか、そう思った最初の頃。
断って『ありがとう。』とだけ言っていたら、もはやそんな気遣いも無用だと思われて。
今ではさっさとみんなが帰るようになった。
定時の頃からソワソワと、仕事の区切りをつけて。
今日なんて手伝ってくれる人はいないのは当たり前。
金曜日なんて一秒だって早く会社からは帰りたいし。
そして、そのうち誰もいなくなる。
そう、押し付けてきた当人さえ。
まぁ、一緒に残られても困る、さっさと帰れ!
ついでに電車のドアにでも無様にはさまれてしまえ。
前歯の一本でも折ってくれたらスッキリするのに。
腫れた唇から息が抜ける間抜けな声を想像して笑いが出た。
「楽しそうですが、仕事は終わりそうですか?」
声がした方をふり向いた。
ギクリとしたのはビクッとしたに見えただろうか。
なんでいる?
予定では、あくまでも私の予定では、今頃安酒に酔って、前歯へし折りの一時間前ですが・・・・。
近寄って書類を見られた。
「まだ途中です。ご心配なさらずに、きちんと仕上げて提出して帰りますので。安心して先にお帰りください。」
さっさと帰れ!と、そんな気持ちで見上げて答えた。
今は先輩であっても憎むべき敵と言えるくらいだ。
「・・・そう、じゃあよろしく。」
そう言って向きを変えて出ていった。
とっくに帰ったと思ってたのに。
へらへらフラフラしてる時間があるなら、自分でこのくらいの仕事しろ!
そうだ、明らかにアイツ、もうアイツ呼ばわりでもいい、この書類はアイツの仕事でもいいのだ。
大体の約束は『俺の雑用を引き受けろ。』だった。
約束というか命令、指示・・・・やっぱり嫌がらせだ。
なんでそんな理不尽に耐えているかというと・・・・。
残念ながら自分に原因がある、十分ある。
そもそも雑用でも何でも引き受けると先に言ってしまったのは私の口だったのだから・・・・・・。
ああ・・・・なんでこんなことに・・・・・。
子供は誰でも正直に生きている。
生まれた時から『おっぱい』『おむつ』『遊べ』とこの3つの使い分けで大人を従わせて育つんだから。嘘をつく理由がない。
猿くらいの知能がつくと、ある程度の序列を作ることを覚える。
親だっていつまでも大人しく言うことを聞いてはくれないから、じゃあ他に言うことを聞く下僕を作るしかない。
そして、私にはちょうどいい具合の下僕が近くにいて、まさに需要と供給ピッタリ、デコとボコがハマったのだ。一人っ子なのに、うってつけの人物がそこにいたんだから。
その下僕が歳上だと知ったのは、すっかり従え慣れてからで、だからと言って出来上がった二人の関係にはなんの影響もなかった。
時々理不尽に振る舞ってた私に悔しい顔をして見返して、時々は涙を浮かべてたかもしれない。
それでも走って逃げられることもなく。
時々おやつを多めに分けてやり優しさを見せていた。アメとムチだ。
我ながら恐ろしいコントロール術だった。
詳しくは小さすぎて忘れてることも多いけど、その関係は下僕が引っ越すことになるまで続いた。
引っ越しの日はすごく残念に思った。
「遠くに行くから、もう遊べなくなるからね。」そう言われた。
これからはおもちゃの片付けも、粗相の始末も、面倒で嫌な事全部を自分でしないといけないらしい。
・・・・便利だったのに、はっきりそんなことを思った気がする。
その瞬間は手を振って見送った。
車から嬉しそうに手を振る下僕。
悔しい私は笑顔は見せなかった。
その日から退屈になった。毎日一緒にいたのに。
幼稚園から帰ってきたらいつも一緒に遊んでた。
仲良くっぽく二人で留守番することもあった。
お母さんが買い物に行った本当に少しの時間なら、一緒におもちゃで遊んでた。
片付け係がいないとおもちゃを出すのも控えて、大人しくテレビを見てることも多かった。
ちょっと大人しめになったらしい私を見て、寂しくなって元気もなくなったと勘違いされて、習い事を勝手に決めてこられた。
どれも長続きしない中、水泳だけは小学生になっても通った。
冬は休みがちだったけど、夏は喜んだ。
そのうち一人に慣れると、下僕の記憶も薄れた。
小学生になると友達ができるから。
女の子の友達で、関係は対等、それでも賑やかに楽しく過ごせた。
昔の写真には一緒に写ってるものもたくさんある。
その写真も小学中学となるに従いどんどん古いものになり。
今も実家にはあるだろう。
もうずいぶん見てなくて、すっかり忘れてるいろんなシーンの子供の頃の二人。
ただ『ポチ』と呼んでたのは覚えてる。もう飼い犬のように。下僕のポチ。
私は『ネネちゃん』と呼ばれてた。
ポチの両親の前でもポチと呼んでいたのに、注意された覚えもない。
偉そうな年下の女の子にワンワンと従ってる息子をどう思ってたんだろうか?
私がよっぽど気が強そうに見えたか、もしくは大人には仲良く遊んてるように見えたのか。
まぁ忘れても問題ないくらいの昔の話だ。
思い出すこともほとんどない古い記憶だった。
これでもポチほどに使い勝手は良くなくても、面倒を頼まれてくれる男の子はいた。
学校でも、友達仲間でも、バイト先でも、もちろん彼氏にも。
偉そうにしなくても、ちょっと困ったように眉を下げれば、喜んで手伝ってくれる男の子はいた。
ああ、いい時代だった!
今いないのはまわりに女の人が多いから、だからだと思いたい!!
このところ全くだ。
ちょっと悲しい現実なのだ。
そして今の状況は・・・・・。
ため息をつく。
パソコンがいつの間にか休憩モードになっていた。
しょうがない、まだ終わらない。
頑張らないと、自分でやらないと帰れない。
パソコンを起こして、自分もぼんやりから覚めて、仕事を再開した。
アイツが帰ってから一時間。
前歯を折った報告が私に来ることはないけど、書類を提出したときに無人の席にぼんやりとマスク姿のアイツを想像して笑ってやった。
ただ虚しい気もして、笑顔もすぐに引っ込んだ。
今の直の先輩、一つ上の先輩、辺見芳一さん。
小さい頃ホウイチくんと呼はれてたのを『ポチ』と聞き間違えたんだろう。
あの頃背も小さく、体も薄く、一つお兄さんなんて思われる要素もなく。
優しいというより気が弱いといったような顔がまさにポチだった。
今じゃあすっかりポチ感がなくなってる。
ポチの呼び名しか覚えてなくて、同じ会社にいたのに三年間気がつきもせず。
頼りにしていた先輩だと思ったのが実は・・・・・小さい頃の下僕だったなんて事実、ある?
4月に異動になったこの課。
会社は文具全般を扱っている。
今までは商品流通管理課にいた。
華やかじゃないけど、少しは自社商品に関わっていれたのに。
今は全く数字のみ。
なんだか面白くもない。
ただの長い数字の商品コードにいろんな数字をくっつけていく。
小さな数字を固まりに、何倍にもしたら大きな数字になって、そこから諸々の数字を引いたら、多分利益。
そんなデータを日々更新したりまとめたり、比較しやすいように並べたり、なんだりかんだり。
単純すぎて誰でもできそう。
だから押し付けられてる今の現実。
雑用中の雑用、やっつけ仕事だ。
最初の頃、異動してきたばかりの頃いろいろ教わったのが成長したポチ、辺見先輩だった。
新人と横並びとはいえ、四年目。
さっさと一人立ち出来たけど、一応まだ先輩に報告したり相談したり。
時々伺うような視線を感じてた。
大丈夫だろうかと心配してくれてるんだろうと思っていた。
それでも気になって、ついでのときに聞いてみた。
「何か間違ってたりしてましたか?」
見上げられて、止まる。
何かあったのだろうか?
「いや、特にないよ。」
そう言われた。
軽く微笑まれたようにも見えた。
ほっと安心して、思わず笑顔になったと思う。
今考えると、あれは人生で一番無駄な笑顔だったかもしれない。
「これからも何か気がついたら教えてください。」
そう言ってまた笑顔を追加してしまった。
それも人生で二番目に無駄な笑顔だったと思う。
その後、一度だけ面倒な書類を頼まれた。
やれどもやれども終わらない。
昼ごはんも自分の席で最短で終わらせて、一日パソコンに向き合った。
それでも一時間弱の残業をして、出来上がった書類を提出した。
「一人に任せて悪かったね。他とメンバーと分ければ良かったかな。」
時計を見られて、そう言われた。
「大丈夫です。遅くなってすみませんでした。」
まだ慣れてなかったはじめの頃でもあったし、そう言ってみた。
他の人は帰っていて、辺見さんもすっかりパソコンを閉じていた。
待たせただろうか?
そうも思った。
簡単にチェックしてもらう間、大人しく待っていた。
「ありがとう、大丈夫です。お疲れ様。」
「はい、お疲れ様でした。」
笑顔でお辞儀をして自分の席に戻ったのだ。
パソコンを閉じて、もう一度声をかけて帰った。しばらく笑顔だった。
疲れたけどようやく終わったと嬉しかったから。
あぁ、あのときの笑顔こそ、人生三番目に無駄な笑顔だっただろう。
はぁ~。
ため息がでる。
先に帰って行った周囲の人、先輩、後輩まで。
イジメ、ある意味そういう報復とも思えそう。
でも敵もその辺はうまくて、私の能力が至らないと言わんばかりのさり気なさ。
しかも異動して来てそれほど経ってない私。
能力的にそんなものだろうとも思われ、いろんな人が親切にも手伝おうかと言ってくれた。
ただ、私にだって意地がある、一人でやっつけてやろうじゃないか、そう思った最初の頃。
断って『ありがとう。』とだけ言っていたら、もはやそんな気遣いも無用だと思われて。
今ではさっさとみんなが帰るようになった。
定時の頃からソワソワと、仕事の区切りをつけて。
今日なんて手伝ってくれる人はいないのは当たり前。
金曜日なんて一秒だって早く会社からは帰りたいし。
そして、そのうち誰もいなくなる。
そう、押し付けてきた当人さえ。
まぁ、一緒に残られても困る、さっさと帰れ!
ついでに電車のドアにでも無様にはさまれてしまえ。
前歯の一本でも折ってくれたらスッキリするのに。
腫れた唇から息が抜ける間抜けな声を想像して笑いが出た。
「楽しそうですが、仕事は終わりそうですか?」
声がした方をふり向いた。
ギクリとしたのはビクッとしたに見えただろうか。
なんでいる?
予定では、あくまでも私の予定では、今頃安酒に酔って、前歯へし折りの一時間前ですが・・・・。
近寄って書類を見られた。
「まだ途中です。ご心配なさらずに、きちんと仕上げて提出して帰りますので。安心して先にお帰りください。」
さっさと帰れ!と、そんな気持ちで見上げて答えた。
今は先輩であっても憎むべき敵と言えるくらいだ。
「・・・そう、じゃあよろしく。」
そう言って向きを変えて出ていった。
とっくに帰ったと思ってたのに。
へらへらフラフラしてる時間があるなら、自分でこのくらいの仕事しろ!
そうだ、明らかにアイツ、もうアイツ呼ばわりでもいい、この書類はアイツの仕事でもいいのだ。
大体の約束は『俺の雑用を引き受けろ。』だった。
約束というか命令、指示・・・・やっぱり嫌がらせだ。
なんでそんな理不尽に耐えているかというと・・・・。
残念ながら自分に原因がある、十分ある。
そもそも雑用でも何でも引き受けると先に言ってしまったのは私の口だったのだから・・・・・・。
ああ・・・・なんでこんなことに・・・・・。
子供は誰でも正直に生きている。
生まれた時から『おっぱい』『おむつ』『遊べ』とこの3つの使い分けで大人を従わせて育つんだから。嘘をつく理由がない。
猿くらいの知能がつくと、ある程度の序列を作ることを覚える。
親だっていつまでも大人しく言うことを聞いてはくれないから、じゃあ他に言うことを聞く下僕を作るしかない。
そして、私にはちょうどいい具合の下僕が近くにいて、まさに需要と供給ピッタリ、デコとボコがハマったのだ。一人っ子なのに、うってつけの人物がそこにいたんだから。
その下僕が歳上だと知ったのは、すっかり従え慣れてからで、だからと言って出来上がった二人の関係にはなんの影響もなかった。
時々理不尽に振る舞ってた私に悔しい顔をして見返して、時々は涙を浮かべてたかもしれない。
それでも走って逃げられることもなく。
時々おやつを多めに分けてやり優しさを見せていた。アメとムチだ。
我ながら恐ろしいコントロール術だった。
詳しくは小さすぎて忘れてることも多いけど、その関係は下僕が引っ越すことになるまで続いた。
引っ越しの日はすごく残念に思った。
「遠くに行くから、もう遊べなくなるからね。」そう言われた。
これからはおもちゃの片付けも、粗相の始末も、面倒で嫌な事全部を自分でしないといけないらしい。
・・・・便利だったのに、はっきりそんなことを思った気がする。
その瞬間は手を振って見送った。
車から嬉しそうに手を振る下僕。
悔しい私は笑顔は見せなかった。
その日から退屈になった。毎日一緒にいたのに。
幼稚園から帰ってきたらいつも一緒に遊んでた。
仲良くっぽく二人で留守番することもあった。
お母さんが買い物に行った本当に少しの時間なら、一緒におもちゃで遊んでた。
片付け係がいないとおもちゃを出すのも控えて、大人しくテレビを見てることも多かった。
ちょっと大人しめになったらしい私を見て、寂しくなって元気もなくなったと勘違いされて、習い事を勝手に決めてこられた。
どれも長続きしない中、水泳だけは小学生になっても通った。
冬は休みがちだったけど、夏は喜んだ。
そのうち一人に慣れると、下僕の記憶も薄れた。
小学生になると友達ができるから。
女の子の友達で、関係は対等、それでも賑やかに楽しく過ごせた。
昔の写真には一緒に写ってるものもたくさんある。
その写真も小学中学となるに従いどんどん古いものになり。
今も実家にはあるだろう。
もうずいぶん見てなくて、すっかり忘れてるいろんなシーンの子供の頃の二人。
ただ『ポチ』と呼んでたのは覚えてる。もう飼い犬のように。下僕のポチ。
私は『ネネちゃん』と呼ばれてた。
ポチの両親の前でもポチと呼んでいたのに、注意された覚えもない。
偉そうな年下の女の子にワンワンと従ってる息子をどう思ってたんだろうか?
私がよっぽど気が強そうに見えたか、もしくは大人には仲良く遊んてるように見えたのか。
まぁ忘れても問題ないくらいの昔の話だ。
思い出すこともほとんどない古い記憶だった。
これでもポチほどに使い勝手は良くなくても、面倒を頼まれてくれる男の子はいた。
学校でも、友達仲間でも、バイト先でも、もちろん彼氏にも。
偉そうにしなくても、ちょっと困ったように眉を下げれば、喜んで手伝ってくれる男の子はいた。
ああ、いい時代だった!
今いないのはまわりに女の人が多いから、だからだと思いたい!!
このところ全くだ。
ちょっと悲しい現実なのだ。
そして今の状況は・・・・・。
ため息をつく。
パソコンがいつの間にか休憩モードになっていた。
しょうがない、まだ終わらない。
頑張らないと、自分でやらないと帰れない。
パソコンを起こして、自分もぼんやりから覚めて、仕事を再開した。
アイツが帰ってから一時間。
前歯を折った報告が私に来ることはないけど、書類を提出したときに無人の席にぼんやりとマスク姿のアイツを想像して笑ってやった。
ただ虚しい気もして、笑顔もすぐに引っ込んだ。
今の直の先輩、一つ上の先輩、辺見芳一さん。
小さい頃ホウイチくんと呼はれてたのを『ポチ』と聞き間違えたんだろう。
あの頃背も小さく、体も薄く、一つお兄さんなんて思われる要素もなく。
優しいというより気が弱いといったような顔がまさにポチだった。
今じゃあすっかりポチ感がなくなってる。
ポチの呼び名しか覚えてなくて、同じ会社にいたのに三年間気がつきもせず。
頼りにしていた先輩だと思ったのが実は・・・・・小さい頃の下僕だったなんて事実、ある?
4月に異動になったこの課。
会社は文具全般を扱っている。
今までは商品流通管理課にいた。
華やかじゃないけど、少しは自社商品に関わっていれたのに。
今は全く数字のみ。
なんだか面白くもない。
ただの長い数字の商品コードにいろんな数字をくっつけていく。
小さな数字を固まりに、何倍にもしたら大きな数字になって、そこから諸々の数字を引いたら、多分利益。
そんなデータを日々更新したりまとめたり、比較しやすいように並べたり、なんだりかんだり。
単純すぎて誰でもできそう。
だから押し付けられてる今の現実。
雑用中の雑用、やっつけ仕事だ。
最初の頃、異動してきたばかりの頃いろいろ教わったのが成長したポチ、辺見先輩だった。
新人と横並びとはいえ、四年目。
さっさと一人立ち出来たけど、一応まだ先輩に報告したり相談したり。
時々伺うような視線を感じてた。
大丈夫だろうかと心配してくれてるんだろうと思っていた。
それでも気になって、ついでのときに聞いてみた。
「何か間違ってたりしてましたか?」
見上げられて、止まる。
何かあったのだろうか?
「いや、特にないよ。」
そう言われた。
軽く微笑まれたようにも見えた。
ほっと安心して、思わず笑顔になったと思う。
今考えると、あれは人生で一番無駄な笑顔だったかもしれない。
「これからも何か気がついたら教えてください。」
そう言ってまた笑顔を追加してしまった。
それも人生で二番目に無駄な笑顔だったと思う。
その後、一度だけ面倒な書類を頼まれた。
やれどもやれども終わらない。
昼ごはんも自分の席で最短で終わらせて、一日パソコンに向き合った。
それでも一時間弱の残業をして、出来上がった書類を提出した。
「一人に任せて悪かったね。他とメンバーと分ければ良かったかな。」
時計を見られて、そう言われた。
「大丈夫です。遅くなってすみませんでした。」
まだ慣れてなかったはじめの頃でもあったし、そう言ってみた。
他の人は帰っていて、辺見さんもすっかりパソコンを閉じていた。
待たせただろうか?
そうも思った。
簡単にチェックしてもらう間、大人しく待っていた。
「ありがとう、大丈夫です。お疲れ様。」
「はい、お疲れ様でした。」
笑顔でお辞儀をして自分の席に戻ったのだ。
パソコンを閉じて、もう一度声をかけて帰った。しばらく笑顔だった。
疲れたけどようやく終わったと嬉しかったから。
あぁ、あのときの笑顔こそ、人生三番目に無駄な笑顔だっただろう。
はぁ~。
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